ソードアート・オンライン 黒の剣士と赤の少女   作:相馬エンジェル梅太郎

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心残り

 どこにいる。どこにいる。どこにいる。

探せば分かる。家だって知ってる。その気になれば会いにいける。

でも。

「もう会えないよ」

あの言葉は今も、俺の心を支配している。

行動を起こそうとすれば、あの恐怖に支配される。その衝動を感じた夜には必ず。

あの夢を見た。

手を開く。持っていたはずの剣はどこかに消えた。

ゲームに囚われて二年。血なんかずっと見ていない。

それでも、今俺の両手は血に濡れている。

誰の血なのか。答えは目の前に倒れる肉の塊が、物語っていた。

喋らない。けれど誰が殺したのか、なんて一目瞭然だ。

でも、殺した理由があった。確かな理由があった。

それでも胸を押しつぶさんとする、圧倒的な罪悪感には敵うはずもない。

殺したはずの俺が死体に恐怖する。

勝者の俺が敗者に恐怖する。

体が勝手に背後を向き始める。

辞めろ。もうこの光景は何度も見た。

辞めろ。もう何度も反省した。

辞めろ。もう何度も涙を流した。

辞めろ。もう償った。

だから辞めてくれ。それだけは見せないで。

俺の願いを振り切り、俺は背後を向く。

俺を見るのは、彼女の他にない。

恐怖に歪み、動けなくなる彼女。でも、顔は笑おうとしていた。けれど泣いていた。

「ごめん」

ポツリと。言葉が紡がれる。

「ごめんなさい」

それは徐々に音量を増して行く。

「ごめんなさいごめんなさい」

辞めろ。言葉が発せない。俺はただただ壊れ行く彼女を見ている。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

駆け寄りたい。抱きしめたい。言いたい。

エミリーが謝ることは何もない。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

無限に続きそうな地獄。俺が怖いのは死体でも無く、敗者でも無い。ただただ彼女が壊れてしまうこと。それだけ。

夢の中の俺が薄れて行く。夢が覚める。強烈な安堵感。けれど、俺は自分の意志で彼女に手を伸ばす。

届く。届く。絶対に届く。

俺の右手が彼女に触れるその瞬間。

「ッ」

彼女の顔がさらに恐怖に歪み、一歩身を引いた。

後悔。そんな表情。そして言った。

「ごめんなさい」

それを聞き俺は目を覚ました。

目を開ける。いつもの自分の部屋。質素な部屋。温かみがまるでない。

窓の外に目を向ける。

「雪だ」

外は雪が降っていた。今日は冷えるのだろう。頭が冴えない。まだ地獄のような光景の中にいるようだ。

あの光景に戻りたいとは思ない。頭が可笑しくなりそうだったから。

けれど、心残りが一つだけ。

夢の中とはいえ、彼女を取り残してしまった。

それだけが、唯一の心残りだ。

 

 

変わらない日常は酷く退屈で、あの短い時間だけど、確かな時間を共にした赤い少女との時間はどれ程までに充実していたのかを思い知らされる。

失ってしまった。失ってしまった。失ってしまった。

その事実だけが、たまらなく心に響く。

散ってしまった思い出の代用を見つけるような行為だと理解している。けれど、他にどうしようもない。

開いてしまった穴は、他の何かで埋めるしかない。

その何かの想いを踏みにじることになっても。

だから朝、目を開けて同じベットでオレンジ色の少女が隣で寝ていても、それは仕方ないことだと自分に言い聞かすことでしか、俺は自分を保つことが出来ない。

自身を正当化しようとすればする程、心が抉られていく。

それでも赤の変わりが欲しかった。

アスナを抱いても、俺の想いはエミリーにしか向いていなかった。

 

心残りは何だろう。

全てが心残りのような気がする。何も満足には満たされていない。

一度幸せを知ってしまったら、幸せのない生活は酷く苦痛だ。

思考が同じところをグルグル回っている。

考えて、怖くて、でも近づきたくて、やっぱり怖くて。最後にこれでいいのかと自分に問いかける。

答えは出ない。

私は恐れているのだろう。決定的な関係の崩壊を。

今の状態はもう最悪だ。けれど、まだ崩壊はしていない。

決定的な言葉を発した私が、キリト君との関係を維持しようと悩み続ける。

それの何て滑稽なことか。

自分が嫌になる。自己嫌悪に陥る。

それでも思考は止まらない。無限に続く悶絶の時間は、ある音に阻まれ止まった。

部屋のドアが叩かれる。この部屋に音が訪れるのは久しい。

いつもより幾分か弱弱しい。けれど、叩くのは辞めない。

彼女は戦っているのだ。私に拒絶される恐怖から。けれど、勝っている。

私にはそんなこと決して出来ない。そこにカリンの強さを垣間見た。

ドアを開ける。カリンは気まずそうな顔を何とか隠し、笑顔で立っていた。

「久しぶりカリン」

声を掛ける。

「久しぶりエミリー」

彼女の声を聞き心が穏やかになっていく。それが分かる。

「ねえ、エミリー。中に入れてもらえるかな?」

だが、それを長くは続かなかった。

「大事な話があるの」

カリンの表情は今にも泣きそうで、それでも視線は強く私を射抜いていた

 

 

部屋はいつもより、重い静寂が支配していた。

無音。カリンが私の部屋を訪れて、ここまで静かなことがあっただろうか。

それはないと断言できる。カリンは明るい子だ。どこまで明るい。

そんな子が今は俯き、言葉を発せずにいる。

それが痛々しくもあり、嫌な考えを増幅させる要因でもあった。

「ねえ、絵美ちゃん」

耳を疑った。絵美ちゃん。それは“過去の私”の呼び名だった。

“あの事件”以来誰も呼ばなくなった名前。それをカリンは発したのだ。

「何?」

思うことはあった。けれど、ここで何かを言えばカリンはまた黙ってしまう気がした。

それは予感では無く、絶対的なものだった。

「私は絵美ちゃんの力になれたのかな?」

「え?」

カリンは俯きながら言った。この悩みは“花梨”が“カリン”になる前から持ち続け、今も彼女を支配する問題なのだろう。それを他でもない私に尋ねる。それはとてつもない決断だったのだろう。その証拠にカリンは今も悩み続けている。無意識の内に私を“絵美ちゃん”と呼ぶのもそのためだろう。

「私は自信が無いよ。“絵美ちゃん”が私を守ってくれて、それで傷ついて。その傷ついた“絵美ちゃん”を支えるのが、私の役目だと思った。でも力になれてるのかな?」

カリンの氷のように冷たい心がゆっくりと、本当にゆっくりと、解け始めていく。

彼女が今まで隠してきたものがゆっくりと、本当にゆっくりと、現れ始める。

「力になろうとする行為そのものが、私は辛い。“絵美ちゃん”を助けよう、助けよう、助けよう、そう思えば思うほど自分の罪から目を背けようとする自分が許せない」

カリンは涙を流し始める。それでも口調はハッキリとしていた。

「“絵美ちゃん”を助けようとする意志が、私自身の心を守ろうとしているのが辛い。“絵美ちゃん”を支えようとすることで、罪から逃げようとしてる。ううん。支えることが懺悔になると勝手に思い混んでる。そんな自分がたまらなく嫌い」

大粒の涙を流す。

「私は本当に“絵美ちゃん”しかいなかった。そんな、“絵美ちゃん”を見捨てて、逃げた私が“絵美ちゃん”のそばにいていいのかな?」

口調は乱れ、私に問いかける。視線が遅れてゆっくりと上がり、私を捉えた。

怖いのだろう。震えている。視線が逃げそうになっている。

それでもカリンは私を見続けていた。

「絵美ちゃん」

「え?」

問いと違う答えを答えられ、カリンは疑問を浮かべるような表情を浮かべた。

「久しぶりに呼んでくれたね、絵美ちゃんって」

「え、あ。うん」

無意識だったのだから、仕方がない。カリンは曖昧な反応を示す。

「嫌だった?」

伺うように聞かれる。それに首を横に振って答える。

「そっか」

少し笑みを浮かべた。また訪れる沈黙。音はない。窓の外を見れば、雪が降っていた。

その雪を見て、真っ先に浮かんだのは黒の剣士では無く、目を覆いたくなる程の絶望だった。

「あの日も雪が降ってた」

カリンは黙る。けど、私が何を話そうとしているかは、理解しているように見えた。

「とても寒かった。でも、気温以上に私の体温の方が冷たかった。このまま雪と同じように溶けてしまうものだと思ってた」

カリンは辛そうな表情を浮かべる。けど、引き下がらない。これが最後のチャンスだ。

これを逃せばもう、向かう先は破滅しかない。カリンはそれを恐れて、ここに来た。そして語った。自分の想いを。なら、私も答えよう。あの日の想いを。

「本当に辛かった。時間が止まって感じた。それでも確かに、アイツは終わりに向かっていた。知識としては知ってたよ。でも、あそこまでだとは思わなかった。理想とはかけ離れてた。でも、現実を受け止めようとも思えなかった。いつになったら終わるんだろう。ずっとそれだけを考えてた」

カリンは辛そうな表情を浮かべる。今にも吐きそうな顔。それでも私は辞めない。

「中々終わらなかった。一生続くかもなんて思った。今でもたまに夢に見るよ。怖くて。怖くて。怖くて。どうしようもなくて。逃げた貴方を恨んだよ。アイツの次に殺してやりたいと思ったよ。本当に」

「ッ」

息を呑む。直接聞くのがどれ程辛いことかなんて、私だって分かってる。けど、これしかない。ここまで曝け出さないと、戻れないところまで私達は来てしまったのだ。

「殺したい。そう思った。けどね、“花梨”」

私の声に習って再びこちらを見る。

怯えている。もしかしたら殺されると思っているもかもしれない。

私が襲い掛かったとしても、彼女は何の抵抗もせずに受け入れるだろう。

苦しみから解放される喜びに浸るだろう。でも、そんなことはさせない。絶対に。

だって。

「私がこうして立ち直ることが出来たのは、“花梨”のお蔭でもあるんだよ」

出来る限り優しい声で、彼女が私の後を追いかけて来てくれてた、“あの頃”と同じトーンで彼女に告げた。

「私は今こうして生きているのは、“花梨”がいてくれたからなんだよ」

喉で声が詰まる。泣きそうになる。“花梨”はもうだらしない程の涙を流している。

「だから、“花梨”。そんなに自分を責めないで。貴方はもう十分償ってくれた。貴方はもう十分支えてくれた。だから」

最後の一言。それが出ない。でも言わなきゃ。言わなきゃ。言わなきゃダメだ。

「もう友達ごっこは辞めよう?」

激しく首を縦に振る。子犬のようだ。そんなことを思った。

「“立花花梨さん”。私とお友達になってください」

終わりが、終わった。始まりは今ここから。あの暖かな日と同じ言葉で。

二人でいれば、大丈夫。何も怖くない。取り戻そう。

永遠に続くはずだった、あの暖かな日常を。

 






キリト君。浮気とサイテー。
マジ無いんですけどー。
考えられないんですけどー。by作者

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