東方神聖軌 ~ 零のスペルカード   作:超絶暇人

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俺の能力、"無双"が、ここまで強力なモノだとは、思わなかった。まさかこれほどだったとは……。人間の域を圧倒し、全てが必殺になり得る"最後"の力、"無双"ーーーー

でも、これが後に運命ごと俺を変えてしまうモノだとは、全く思いもしなかった……


3章

紫によって晃太の能力が発現し、ついに“零番目のスペルカード”、"はじまり"の捜索を始める事になった優と晃太は、八雲邸外部にて話し合っていた。これからどうやって"はじまり"を探し、何処を当たるのかを……。

 

「とりあえず、幻想郷に長い間居て、住み続けた奴等には幻想郷の干渉がある為、探せないし見えない見つけられない。だから、どう言う場所にあっても不思議じゃねぇって事だな」

 

「でも、一体何処に在るんだ? それらしき場所を当たらないと、どれだけの時間が掛かるか、わかったもんじゃ無いし……」

 

「時間は掛けて当たり前、ならば時間の有る限り自由に探すってのが一番だろ」

 

「出来れば早く終わらせたいんですがね」

 

「まぁ、適当に当たるのが一番だな。行くぞ!」

 

「なんか嫌な予感……」

 

 

 

 

 

 

 

 

【3章】

〔無双解放〕

 

 

 

 

 

 

 

 

晃太は優の行動に早くも悪い予感を察知して、周囲を警戒しながら優の後ろを付いて行く事にした。優は飛ぶ事無く、堂々と歩き始め、暗がりの夜道を歩いて行った。

 

「優さん、もう暗くて殆ど何も見えないんですが……」

 

「それが良いんだよ、お前を鍛えるにはな!」

 

「はい? 今何て⁈」

 

晃太は全身で身の危険を直感する、"今すぐここから離れろ"と。直感に従って真上に跳躍すると、直ぐ真下に獣や得体の知れない触手やらが晃太の立っていた場所を一斉に襲撃する。

 

「優さん、これは一体どう言う事か説明をし……」

 

気が付くと何処を見渡しても優は()らず、晃太は長い溜め息を吐いた。嫌々ながらも覚悟を決め、深く息を吸い込んで呑み込むと、眼の奥が空のような澄み切った青に染まり、何も無い空中を蹴って地面に急降下した。

 

急降下の勢いで地面に向かって拳を放つと、地面に拳が直撃するや否や、一撃で半径50mの地面が一瞬で吹き飛んだ。地面と共に獣や触手の元も真上に吹き飛び、晃太は地面に着地した瞬間に真上の妖怪達に向かって高く跳躍した。

 

晃太が妖怪達とほぼ同じ高度に達した瞬間、まず狙いを付けたのは獣の妖怪。右足をしっかり伸ばし、腰の回転のみで左に振るう瞬間、途中から脚が見えなくなり、光のようなモノが見えた。

 

直後獣の妖怪は晃太と距離が離れている筈なのに体が横一閃に離れ、真っ二つの状態になり、続けざまに晃太は体を右側に倒して左に行き切った右足を軸に縦に回り出し、左脚を回転の運動に合わせて振り下ろす。

 

左脚の振り下ろす途中からまた光のようなモノが見えた時、獣の妖怪の体は縦一閃に離れ、二回の脚の攻撃で四等分に切り分けられた。そこから晃太は体を捻りながら回転、捻りや回転に合わせて脚を振るい、獣の妖怪を粉微塵にした後、体の回転を止めて右拳に光を集束させて思い切り振るった瞬間、獣の妖怪は跡形も無く消し飛んだ。

 

続けて晃太は触手の妖怪に向かって右拳を真っ直ぐ突き出す。すると離れた距離にも関わらず、触手と妖怪自身に人の頭くらいの風穴が空き、空洞になった内部から血液すら吹き出てくる事は無く、晃太は透かさず連続して拳を突き出し、その拳の連続が超音速へと一気に加速する。

 

触手と触手の妖怪自身はどんどんと体を削られ、くり抜かれ、みるみる内に蜂の巣のように穴だらけとなり、同時に体は微塵と化していた。トドメに右拳を思い切り触手の妖怪に突き出し、最後には空間に呑み込まれるようにして消滅した。

 

晃太は眼の色を元に戻すと、全身が一気に脱力し、地面に着地した時にはうつ伏せに倒れて呼吸をするだけだった。そして晃太が地面を殴ってから妖怪達を消し飛ばすまでに所有した時間は僅か数マイクロ秒程度である。

 

「うへぇ、こいつは凄ぇな。ストップウォッチじゃ断じて計測出来ねぇな、まさにSFの世界観ってヤツだな、改めて体感したぜ。そして、死体すら残らない拳圧と蹴圧、業物もビックリの手刀足刀の斬れ味、及びそれに見合う身体能力と"ナンタラの壁"すらブチ破る身体の頑強さ。まさに無双だな、うん。しかし死体の"し"の字すら残さないとなると、何処ぞの死体運送野郎は廃業かな?」

 

ーーーーーーーー

 

「へぷちゅッ!」

 

一方その頃、幻想郷の妖怪の山付近の地下穴の先にある地下都市の一戸の屋根上に座る一匹の黒猫が静かにくしゃみをした。自身の鼻を確かめるも、これと言って違和感は無く、埃でも入ったかと錯覚するのであった。

 

ーーーーーーーー

 

「ま、俺の気にする辺りじゃねぇな。さてと、力もわかった事だし、起こしてやるか」

 

優が晃太に近づき、腕を担ごうとした一瞬、優は動きを止めた。何故ならもう既に眠りに就く程の疲労で倒れている筈の晃太が、顔を左横向きにして見開いた左眼のみで優の眼をジッと見ていた。

 

それから晃太の眼の虹彩がやや滲んだかと思えば、直ぐに元の状態に戻り、晃太自身の身体に合わせるように左眼はゆっくりと瞼に包まれていった。優は晃太の能力の底、もしくは底無し模様を見たように、額から汗を垂らすのだった。

 

「こりゃなかなかの逸材を掘り当てちまったな、紫。案外お前の気まぐれな性格もたまには役に立つんだな」

 

口元を釣り上げるような笑みを浮かべ、優は晃太自身を背負い上げて飛行した。優が目指す先、見える先には鉄格子の門、背の高い煉瓦の壁、それに囲まれるように存在する紅色の館があった。

 

「やっぱ最初ならここだろぉ、俺もここに来始めの頃は最初に行った場所だしな。ゲームが新規発売された順からその舞台の地に赴くーー今思えば、なかなか選択に困った答えだが、順番に行く場所としては従順でわかりやすい選択だな」

 

優は口元を更に釣り上げて不気味な笑みを浮かべ、そのまま紅い館の門前まで降りて行った。すると優達の気配に気付いた緑服の女性が門前の真ん中にしっかりと立ちはだかった。

 

「よし、晃太起きろぉ。寝てるとお前の嫌そうな場所から調査するぞぉ」

 

「……何でそんな起こし方をするんですか」

 

「でも眼ぇ覚めたろ?」

 

「まぁね……。ところで、ココは?」

 

「人間が自ら近づく事は決して無い吸血鬼の館、だ……」

 

「うわあああああああああああああああああッ!!!」

 

「ーーなんてのがあったらアトラクションとしては最高だろ?」

 

「ですね、ただ俺はお断りするけど」

 

二人は独特の茶番劇を繰り広げ、門前の女性を唖然とさせた。そして奇妙でオチがわからない茶番劇によるものなのか、優と晃太と門前の女性の目の前には冷たい風が静かに吹いた。

 

「ーー優さん、今のやる意味あった?」

 

「さぁ? 何かのスペースは埋まったんだから良いだろ別に。それよりほら、向こうの中国にこんばんわくらい言ったらどうだ?」

 

「だから私は中国じゃありませんってば!」

 

「優さん、暗くてあんまり見えないんだけど……」

 

「おぉ、そうだったな。ほい」

 

優が手を握ると、握った手の中で光が漏れ出し、開いた時に光球となって周囲を照らす。優はそれを何度か繰り返して光球を創り出し、一定の空間内を昼の以上に明るい状態へと変えた。

 

「これなら良く見えるだろ」

 

「確かに、眩しいくらいの明るさなのに、目の妨げにならない。そして何より安心出来る」

 

「この光球は俺が創り出した"世の中で最も都合が良い光"だ。良く見えるし、全く眩しくない。そして必要な範囲を照らし、尚且つ相手の意思に反応して動き、邪魔にならず、光源も一体化するから自然の光と同等になる。"月"並か、それ以上の代物だ」

 

「へぇ。ーーあ、どうも初めまして。園岾 晃太です。えっと、御名前は……」

 

「私は紅 美鈴(ほん めいりん)です。間違っても"中国"だなんて呼ばないでくださいよ? それで、こんな暗い時間に何の用ですか?」

 

「そう、用ってのはさぁ、実は探し物をしててな。それで、この紅魔館の中を徹底的に漁らせて欲しいってワケだ」

 

「そうですか、なら私からの返答は、優さんなら検討が付きますよね?」

 

「ただじゃ通れない、まぁ当たり前だわな。そう言うワケだ晃太、行って勝ってこい!」

 

「はぁッ⁉ (なに)で!? なんで!!?」

 

晃太は突然優に背中を押されて勢いで前進するが、同時に咄嗟だったので前に倒れそうになるが、何とか転倒は免れた。しかし晃太は盛大に焦り、優の居る方向へ振り返りながら両腕を広げ、世にも奇妙なノートを手に入れて新世界の神になるなどと抜かした青年のようなポーズを執った。

 

「お前の為だから」

 

「そんなワケあるか!」

 

「晃太、こいつに勝てば此処を通してもらえるんだ、今のお前なら簡単だろ?」

 

「その根拠は一体何処から⁉」

 

晃太が優に根拠を訊いた時、優の表情と眼が変わった。その顔は晃太が紫のスキマの中で見た"あの顔"、百戦錬磨の実力と一騎当千の脅威を持った顔、妖怪以上の妖しさを秘めた顔、そしてどんな殺人鬼よりも、どんな修羅よりも、どんな神よりも恐ろしい表情、どんな獄炎だろうと、どんな地獄だろうと、どんな煉獄だろうと一瞬で凍てつかせる冷酷な眼差し。

 

その顔、その眼、その威圧、その存在が、晃太の中の隅々まで行き渡り、その流気は離れた美鈴の肌にも突き刺さるほどだった。すると優は暫らくして表情を元の薄笑い気味の笑みに戻した。

 

「何となくだ」

 

「何となくって……」

 

「イイから行ってこい、お前は勝てる。俺が保証する」

 

優のこの言葉に晃太はやや不安になりながらも、先ほどの戦闘を思い出し、内から自信が溢れていた。あの時の力が今一度、ここで出せたなら、きっと……いや、絶対勝てるーーと。

 

「わかりました。俺、勝ってきます」

 

「よく言った! じゃあ頑張って来いよ。間違っても死ぬなよ?」

 

「大丈夫ですよ、優さんが"信じた"俺なら」

 

言葉を吐き捨てた晃太は前を向き、もう既に構えている美鈴をしっかりと見る。そして晃太は先ほどの戦闘を思い出し、覚悟を決めつつ深く息を吸い込み、ゆっくりと呑み込んだ。

 

息を呑み込み、鼻から息を吐くと、耳からも空気が突き抜け、晃太の穴と言う穴から透き通った空気が流れ出し、開眼と同時にソニックブームと同等の空気圧が晃太の全身から放たれた。晃太の眼は澄み切った空の色となった。

 

「まだこの状態に慣れないんです、出来れば一瞬で終わらせたいので、覚悟してください」

 

 

 

 

 

 

 

続く




晃太は無双を目醒めさせ、紅魔館門番、美鈴に挑む!

「ところであの妖怪だが、あれは俺が創った」

「やっぱり」
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