強い日が差す夏の日、とけるような感覚を感じながら舞はゴマさんと駅構内を歩いていた。
一人の少女を殺すためにーーー
汗で服が肌に張り付く
あっという間に飲み干したペットボトルをごみ箱に捨てた
「こんなに暑いのになんでここまで人が多いんですかね」
あまりの暑さに思わず愚痴をこぼしてしまう
「みんなやることがなきゃエアコンの下にいたいだろうよ、俺たちと一緒だ」
額の汗をぬぐいゴマさんは私をなだめるようにそう言った。
そう、今日私にはやらなくちゃいけないことがある。
ポケットの中の写真をもう一度手に取り確認する。そこに映るのは同じ年くらいの一人の少女、それが暗殺の任務が与えられた今回の目標だ。
「この人だかりの中から女の子を見つけるだなんてウゴウさんも無理を言いますよね」
ウゴウさんは今回の任務の指揮を執っていいる機関の上司だ。そして私の育ての親でもある。
「たしかに俺たちの担当場所が一番見つかる確率が低い、多分あいつなりの優しさだろうな」
私は物心がつく前に今の機関に拾われてから今日までウゴウさんたちに育てられた、そして今日初めて仕事を任せられたのだ。
訓練で銃の扱いを教えてもらってはいるが、人型の目標はあっても人に向かって撃ったことなんて一度もない
どうしても不安のほうが強かったがゴマさんが「舞ちゃんは見つけたら銃を抜かず報告してくれるだけでいい、その懐の銃は護身用だな」と駅に向かう途中で私に言ってくれたのが支えになった
「今回はいつもの任務と比べて何かが違う、よほど緊急だったのかかC班の手順をすっ飛ばしてるうえに舞をA班に入れている。ウゴウも言っていたが何かあっても絶対無茶はするなよ」
真剣な口調で私にそういった。
それぞれ、A班は実行でB班は後処理C班は下調べが主な仕事だ。私は基本的にいつもC班についていたけど今回は機関のメンバーが総出で捜索と暗殺に出向いている、どうやらよっぽど異例の事態らしい。
たった一人の少女にいったい何があるのか気になったがもちろん詮索することは許されなかった。
「最近のテレビの若いアイドルの見分けもつかないんだ、この量の人の中から見つけるなんて俺にはできっこないな。俺が舞ちゃんくらい若かったらよかったのにな」
ゴマさんは少し張り詰めた空気を崩すように冗談交じりにそう言った。
「この人込みなら私だって同じですよ」
ゴマさんの冗談のおかげで初任務で肩に力が入っていた私の緊張が少し溶けた。
「とにかく時間まで探したら、アイスでも買ってさっさと帰ろう。好きなアイス、考えておけよ」
「はい!ありがとうございます」
ゴマさんはいつだって私に優しい、私にはそんなささいな優しさが身に染みてうれしかった。
そうしてゴマさんとそんなたわいのない会話しながら小一時間液を練り歩いたが特に収穫はなく、ゴマさんも「そろそろ帰ろうか」と私にいった。
その時だった
絶えず動き続ける人込みの中の一人の少女に自然と目が奪われた。それは今まで感じたことのない不思議な感覚で
背を向けて歩いている顔の見えないその少女がなぜか写真の少女だと直感的にそう感じた。
「ゴマさん」
「どした、機関に戻る前にトイレ行っーー」
「あそこの切符の販売機の奥にいる背を向けて歩いている少女が見えますか、自信はないけどなにか気になって」
ゴマさんの顔が険しくなる、眉をしかめて遠くを見るような表情をした。
「断定はできないが容姿は資料の情報と似てる。一応あとをつけるぞ」
小声で隣の私にそう言い早歩きになったゴマさんの後ろにつき彼女を見失なわないように追いかけた
もし私が、彼女を見つけなかったら
これからも、同じような平和な日々が続いていただろうかーーー