ある程度三人に村の状態と食料が欲しい事を伝えた俺は、一度三人を連れてルーラでリムル王国に帰還する事にした。
「えっ! 転送魔法? 私達の体に異変は? 皆大丈夫!?」
「いきなりだなおい! リヴェル! 確認ぐらい取りやがれ!」
「警戒する暇も無かったでやすよ。人体に影響もなく転送を可能に‥‥。リヴェルさんやべぇスライムでやすか?」
俺はカバルに顔を拳でグリグリされながら、話し合いが出来そうな広場まで皆を誘導した。
まだ整地中なので大きな切り株をテーブル代わりにして、俺とリムルは話し合った。
「なるほどな。それをこの三人に依頼するわけか」
「そうそう、冒険者への依頼内容として頼もうかと」
ブルムンドで冒険者に依頼をして、護衛と食料の運搬を頼む予定だ。
俺がルーラで毎回運ぶとゴブリン達の仕事が無くなるので駄目だとリムルに怒られた。
本格的に話が始まる前に、ハルナとゴブテが笹茶を皆に配り始めた。
ゴブテが俺、リムル、ガルムの前に順に笹茶を入れたコップを目の前に置いていく。
「ブフッーー! 渋! ゴブテ。茶葉を入れ過ぎだ」
「ごほっ嬢ちゃん。湯を持って来てくれ」
リムルが平気だったから騙された。
けらけら笑いやがって、こっちはお前に味覚が無いから気まずいってのに‥‥。
ゴブテさん、貴方も指さして笑ってるんじゃありません。
「そういや何でお前達はこの森に調査に来ているんだ?」
「ん〜? 洞窟に邪竜が封印されていたんだけどね〜。気配が消えちゃったから大騒ぎになってるのよ!」
「ブフーーーッ。あの時の三人組か‥‥」
リムルが無事? 噴き出したのでお返しにニヤニヤしていたら目に水鉄砲が直撃した。
何処かの大佐の様に目が〜を連呼して苦しむ俺を無視して話が進む。
「お前なぁ‥‥。依頼内容を簡単にバラすんじゃねーよ。ギルマスに怒られんだろうが」
「エレンの姉さん、依頼内容はペラペラ喋っちゃ駄目でやすよ‥‥」
二人がエレンを咎めてる間にリムルが念話で話しかけてきた
『大騒ぎって、人間達が大勢調査に入りそうなのか?』
『クソッ! ホイミしてもまだ目が痛い。はぁ〜それを込みで冒険者にも探りを入れてくればいいんだろ?』
口を尖らせ反省をしないエレンに、ため息を吐きながらカバルとギドが言う。
「リヴェル。俺達を雇いたいのは解ったが、運搬仕事は数回ぐらいしか受けられないぞ? 俺達も他の仕事があるからな」
「それに依頼発注はどうするでやすか? 魔物がギルドに依頼届なんて出せないですぜ」
リムルが頷きながら会話を続ける。
「俺達も食料は自給自足を考えているんだ。それが出来るまでの繋ぎとして食料を確保したい。依頼はドワーフの誰かに頼みたい所だよな‥‥カイジンには総指揮を取って貰ってるから抜けられない。ガルム、悪いけど依頼出して来てくれないか? リヴェルに帰りは送らせるからさ」
「わかった。直ぐに帰ってこられるし、俺は構わねえよ」
「エレン、カバル、ギド。お前達が受けたジュラの森の調査依頼も、此処を拠点として活動して良いから頼んだぞ」
三人がリムルに頷き、了承を得れた。
食料調達を手伝う見返りとして、俺と風音はジュラの森の調査を手伝う事になった。
周辺調査は俺達も必要だし、周りの魔物を討伐して経験値も稼げるので一石二鳥だ。
ガルムも仕事が手一杯なので、俺達は急ぎブルムンドの領域近くの森までルーラした。
「それじゃー頼んだ。お金はガルムに渡してあるから、依頼料もそこから出してくれ」
「リヴェルさんは来ないの? 一緒に行こうよ!」
「ドワルゴンじゃ無いんだから魔物が中に入ればパニックになるだろうが‥‥」
「そうだわ! じゃー私のリュックの中に入ればいいよね。こう、ぐいぐいっと」
俺は無理やりエレンのカバンに詰められて連れて行かれた。
ギドが申し訳なさそうに頭を下げながら言う。
「姉さんがすみやせん、一度言い出したら聞かないもんで」
何事も無かったように鼻歌を歌いながら歩き出すエレン。
そのリュックの中から俺はギドに話しかけた。
「今更なんだが。得体の知らないスライムの依頼を、何であんた達はあっさり受け入れてくれたんだ?」
不思議だったんだよ‥‥。俺のルーラ登録も簡単に出来たし、いくらなんでも信頼を得るのが早すぎる。何か裏があるとしか‥‥いや、無いか。
「本当に今更でやすね‥‥。食料が何故か腐り困っていたのは本当でやす。森の調査依頼もリヴェルの旦那は協力してくれるんでしょう? 姉さんの安全の為にも人間と仲良くできる魔物がいるならそりゃ協力しやすぜ」
「逆に聞くけどよ、人間に敵対しない魔物の方が珍しいんだぜ? それを森の真ん中で呑気に料理なんか始めやがって。こっちは毒気を抜かれたってーの」
カルバが笑いながら、リーダーの俺がお前は問題ないと断言できるから魔物だろうが別にいいんだよと。
「他の人間が活動している様なので、エレンさん私も運んでください」
「きゃーぁぁあ! かわいすぎるぅう! 風音ちゃん持ち帰っていいですよね? お宝げっとーー!」
子犬サイズになった風音に、奇声を上げながら抱き着くエレンを全員が白い目で見た。
「駄目に決まってるだろう! 急いで都市まで歩いて一刻程度だな。最近は、ジュラの森から出て来るモンスターが増えていやがるから分からねぇけどな」
「調査に出て直ぐに帰るとか、ギルマスに絶対怒られやすよ‥‥。はぁ〜」
歩きながらカバルとギドが憂鬱になって言い訳を考えている中、俺とガルムは防具談義に花を咲かせた。
「リヴェルの自由に形を変えられる防具は魔法みたいですげーな。イメージが形になるっていうのは正直羨ましいぜ!」
「服とか防具は楽しんだけどな、武器にはイメージが影響しなくってさぁ。作った感じがしないのよね‥‥」
「そうだな‥‥俺が作る防具に自由に形を変えれるお前の防具を重ねたりすりゃ、面白い合作が出来そうじゃねーか?」
「おおおお! いいね! 面白そうだ。薄く軽くも出来るし、合金張り付けた感じになるのかな?」
「キノコの魔物だ! こいつらの胞子に気を付けろよ! 毒と麻痺の効果がある」
カバルが突如大声で叫ぶ。
すると木の上や草むらからモンスターが飛び出してきた。
「私は詠唱するから、ギドは援護をお願い!」
「ちと数が多すぎやせんかねぇ!! リヴェルの旦那! 手伝ってくだせぇ」
「あいよ、メラミ! うわ〜火力高すぎ。メラ、メラ、メラっと」
三人組「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」
最初のメラミで5体は消し炭に、残りはメラで燃え尽きた。
「えええええええ!? 詠唱無しであの火魔法はおかしいでしょ! 魔法陣が無い? 精霊魔法? 魔力の流れもおかしいしぃ‥‥ぶつぶつ」
「前言撤回だ‥‥。リーダの俺がお前は異常だと認識した! 悪い魔物だ!」
「助けを頼んだのはこっちでやすが、やりすぎでさー。やっぱやべぇスライムだったんすね‥‥」
「悪いスライムじゃねーよ。見ろよこの可愛い顔を」
「「「どう見ても 悪人面 」」」
風音助けて! 皆が虐めるのおぉ! えっ? 食べれない? 焼すぎ? いやこいつは見た目からしてマタンゴじゃん。毒以外でもなんかやばそうな色だぞ。
《肯定。解析の結果。カバル達の食料を腐らせたのはこのモンスターの胞子の菌が原因の様です》
「まじかよ‥‥こいつやべーやつじゃん。リムルに知らせないと」
「どうしたんですぅ? サクッと倒しちゃった癖に」
「この森に入る前にもこいつと戦ったんだよな‥‥ほんとにうじゃうじゃいやがる」
「火魔法があると楽でやすね。胞子ごと焼き払えるでやすから」
「お前たちの食料を腐らせたのは、こいつの胞子が原因みたいだぞ」
「「「マジか! 本当に!? 何かそんな気はしてたでやすよ‥‥」」」
俺はリムルに急遽報告し、キノコ狩りを頼んだ。
幸いな事に、村の周りにキノコ系のモンスターは居ないみたいだ。
なんか畑を狙ってくる鳥モンスターも居たけどキノコの方が数倍やべーな。
その後も数回キノコと蟻のモンスターが出てきたが。援護は補助魔法だけにした。
「ねぇ〜ねぇ〜。リヴェルさんも私達のPTに入ろうよ? 風音ちゃん、強い! 可愛い! 無敵〜! うふふ」
「どう見ても風音が目的だろうが! あと回転すんじゃねーよ!」
戦闘でも強くて可愛い風音を抱きしめてエレンがクルクルと回りながら嬉しそうだ。
風音もエレンと楽しそうにお喋りをしている。
「リヴェルは攻撃魔法、回復魔法、補助魔法も出来るのかよ。万能過ぎだろうが! これピオラだっけ? 速度上昇が楽しいよな♪ 達人になった気分だぜ。まじでうちに来ねーか?」
「正直舐てやした‥‥。魔力を全く感じない癖に、実力を隠し過ぎでやすよ! 頼もしい協力者が出来たって事で、今後も頼みやすよ? リヴェルの旦那」
「おーい! あんた達! もう都市は目の前何だから急いでくれ」
「「「「はーーーーい」」」」
仕事が山積みのガルムに怒られた俺達は早歩きで都市に入った。
ーーーブルムンド王国・冒険者支部長室ーーー
こめかみに青筋を立てながらフューズはカバルに言う
「食料が無くなったから直ぐに戻ってくる羽目になっただと? 馬鹿もんが! お前達は初心者冒険者じゃねーんだぞ!」
「そうなんだがよ、協力者も得られたからジュラの森での探索はすぐにでも始めれる。ほれ、ジュラの森で生活しているスライムのリヴェルだ」
小声で俺はエレンに聞く。
「いいのかよ? ギルマスにバラして。お前らが怒られるぞ?」
「いいよぅ〜話が出来る魔物なんて、ジュラの森の情報が欲しいギルマスにとってはねぇ」
ギドを見るが首を振ってヤレヤレポーズだ。
「初めましてギルマス。俺はジュラの森で生活しているリヴェルと言う。よろしく」
「‥‥驚いた。知性のあるスライムとは珍しい。進化したのか? ここでギルマスをやっているフューズだ。早速で悪いがお前さんには色々聞きたい事がある」
ヴェルドラが消滅した時の状況。現在の森の様子など言える範囲の情報はフューズに喋った。
「助かった。結果的には誰かがやったというよりは自然消滅の可能性が高いな。他国もどう動くかわからんからな」
「知りたいのは帝国の動向だろ?」
その場にいた全員が絶句した。やがてヒューズが溜息を吐き、ゆっくりと口を開く。
「はぁ〜そうだ。何か知っている情報があるなら教えて欲しい」
「俺も知りたい事がある。お互い情報交換しようぜ」
「わかった。先にこちらが色々聞いたから、答えれる範囲で全部答えよう」
「それじゃあ最初は魔王レオンに付いて聞きたい。知ってる範囲で構わない」
驚いた顔のフューズだが答えてくれた。
南の大陸にある黄金郷エルドラドに拠点を置く魔王。
元勇者で魔王になった経緯は不明。何かを探して各地を放浪しているらしい。
「レオンの傍に井沢静江とクロエという女性の話は聞いた事が無いか?」
「聞いた事が無いな。配下も連れずに一人で放浪しているらしいが‥‥」
どうする? レオンに直接会うなんて無理だぞ。
絶対殺されるだけだ‥‥。人物イメージも渡したがシズさんを知らないようだ。
「じゃー次。300年前にヴェルドラを封印したのは誰なんだ?」
ヴェルドラに聞いたらルミナスだ〜! とか言ってるけど、ルミナスにはそんな封印スキルは無いはずだ。だからこそ気になる。
「聖女マリア様だぞ? 光の勇者グランベル・ロッゾと魔王ロイ・ヴァレンタインが協力して封印したんだ」
「アイェェエ!? 聖女!? 聖女マリア生きてたナンデーーーー!? 」