*リムル・side
新天地で急ぎ開拓に取り掛かり、リムル配下の魔物達は急ピッチで作業に取り掛かっていた。
ドワーフ四人も不眠不休で働き、魔物達の指揮や指示をして大忙しだ。なんせ大勢の寝床が無く、その場所も無い状態だ。
オマケにリヴェルからキノコの魔物が食料を腐らせる胞子を撒くとの連絡が来た所為で、更に人手を割く羽目になった。
食料調達班であるゴブテとゴブツが幼い頃に飢餓で苦しんだ事があるので、怒りの形相でキノコの魔物の殲滅に奔走している。
幸いな事に現時点では、拠点の周辺にキノコの魔物は見つかっていない。
「すまないなカイジン、休ませてやれなくて」
「かまわねぇよ、ドワーフが徹夜なんて日常茶飯事だぜ。それに俺達の寝床もまだねーしな! ガハハ!」
ドワルゴンで仕入れた丈夫な皮を繋げてテントにしたり、雨宿りや、寝起きが出来る簡易な建物を作っている最中だ。
他のドワーフは衣服の作成や、道の整地を指示している。
「まったく。リヴェルの奴が居れば作業が早まるのに、何処で油を売っているんだか」
「連絡が無い間々、日が暮れちまったなぁ‥‥。リヴェルの旦那に、何かトラブルが遭ったんじゃねーか?」
大賢者、妹の方に連絡を取ってくれ。
《告。妹と連絡が取れません。繋がりが遮断されています。反応が無く、何らかの方法で遮断されているようです 》
何だと! 一体何が起きているんだ? そうだ、風音に連絡を。
『風音! 俺だ、リヴェルに一体何があったんだ!』
『大変です! リムル様! 主様の繋がりが遮断されて、念話も通じなくて!』
『落ち着け、すぐにそちらに向かう。リヴェルは生きているのか?』
『わかりません!! 上空から落ちてきた後に石の様に動かなくなって‥‥』
「くそっ! カイジン緊急事態だ。俺はリヴェルの所に向かう! ランガ行くぞ!」
「ハッ! 全速力で向かいます!!」
「頼む! 状況が分からない、皆は作業を続けてくれ。状況が解り次第連絡する!」
大勢の配下から返事があるが、リヴェルと繋がりが強いゴブリン達は動揺しているよ様だ。
「リヴェル様をよろしく頼むっすよリムル様。どうせ何かやらかしているだけっすよ」
「リムル様! リヴェル様を助けてくだせぇ、オラ心配で‥‥」
「俺に任せておけ。ぶん殴ってでも連れて帰る! 心配するな」
何が兄貴だ、世話の掛かる弟じゃねぇか! 心配掛けやがって‥‥。
待ってろよ馬鹿兄貴!!
俺を乗せたランガは急ぎ森を駆け抜け、数時間でリヴェルのルーラポイントのある森の境目に辿り着いた。
「ランガ、風音の所に向かってくれ」
「主! どうやらすぐ近くにいるようです」
匂いを嗅いだランガが早歩きで森を抜けると、走り寄る人影がリムルを抱きとめた。
「うえぇぇぇ〜〜〜ん! リムルさん、大変なんですぅ! 私が杖で思いっきり叩いたらリヴェルさんが動かなく、うえええぇぇ〜〜ん! 私の所為なんですぅ〜〜」
「落ち着けエレン! リヴェルは頑丈だ、お前が殴った位じゃ死にはしないんだよ」
俺は兎に角現状を把握したくて、仲間の二人を探すが見つからない。
「エレン、ギドとカバルはどうしたんだ? 一緒じゃないのか?」
泣きながら、たどたどしく話すエレン。
「グスン‥‥。ギドとカバルは私の代わりに、ブルムンド王に、報酬の件で呼び出しを受けていますぅ」
報酬? まぁ、何かあったんだろう‥‥。
詳しく話を聞けるのは風音だな。ん? 何だあのでかい卵は。
「風音! リヴェルは何処だ? それにこの馬鹿でかい卵は何だ?」
「リムル様! 石の様に動かなかった主様が殻に覆われていき、巨大な卵になりました。気配は無いままですが、生きているようです!!」
大賢者! 解析鑑定をリヴェルに! どういう状態か調べてくれ。
《告。妹とリンクが繋がりました。現在内部と外部から解析しています。暫くお待ちください 》
頼んだぞ。しかし卵か? ドラクエで卵といえばモンスターが生まれる奴だよな確か。別のモンスターになったりしないだろうな?
泣き止んだエレンが弱々しく話しかけてきた。
「リムルさん。リヴェルさんは大丈夫なんでしょうか?」
「卵になった経緯は謎だが、卵の中でスキルが反応しているみたいだ。だから命に別状はないし、気に病むな。どうせ悪いのはリヴェルだろ」
「ええ、ええ! そうですぅ! 悪いのは全部リヴェル何ですぅ!!」
大賢者の解析が終わるまで、俺はエレンに今まで在った事を愚痴を交えながら聞く羽目になった‥‥
《告。妹と解析した結果、99.99%の確率で進化をしていると確定いたしました 》
まじか‥‥。スライムの進化って何があったっけ? スライムナイトの場合はどっちが本体なんだ? 定番のホイミスライムだったりして‥‥クククッ。想像してちょっと笑えた。
村で心配している魔物達に、リヴェルの無事と進化の情報を伝えるとお祭り騒ぎだ。
「問題はリヴェルがいつ進化から目覚めるか何だよな‥‥」
「えっ!? リヴェルさん進化するんですか?」
「リムル様!! そうなんですか?」
「あれ? 俺言ってなかったっけ?」
風音とエレンに言ってない! と言われて怒られた‥‥解せぬ。
「俺達はリヴェルを村に連れて帰るけど、エレンはどうするんだ?」
「う〜〜ん。私も付いて行っちゃ駄目でしょうか? 色々追求されるのが嫌なので」
俺は笑いながら良いぞと言い。
卵を横にして風音の背に粘糸で括り付けた。
「それじゃーエレンは俺の後ろに乗れ。ランガ帰りはゆっくりだぞ」
「?? わかりました! お任せください! 主」
「兄さん‥‥絶対解ってませんね。エレンさんが酔うから軽く、駆ける程度でお願いしますね」
「??? うむ、任せておけ!」
その後、エレンの絶叫がジュラの森に鳴り響いたのだった。
村に着くと作業を中断した皆が酒盛りをしていた。
食料も目途が立ったし、今日くらいは良いかと俺も酒を飲んだ。
ハァ〜まったく世話の焼ける奴だ星は。人間の頃に世話になっていたのは俺だったんだがな‥‥。
小学生の頃のうんこ事件然り、デパート迷子事件、中学の野外活動小火騒ぎ、高校の‥‥うっ頭が。
「俺も星もこの世界に来て浮かれているのかもな‥‥」
「ははは、皆嬉しいのですよ! 無事にリヴェル様が戻られたのが」
俺の言に勘違いをしたリグルドにそうだなと呟き酒を煽る。
食べても、飲んでも味がしないのが辛い。
これだけはリヴェルが羨ましいわ。とため息を吐き卵を見ると、ゴブリナ達が卵を磨き祭壇みたいな場所に置いている。
「何か御神体みたいにされていないか? 変な属性付かないだろうな‥‥」
「うえぇぇ〜酷い目にあったわよぅ」
見せられないよ! の姿になったエレンが木の器に肉たっぷりのスープを貰ってモソモソ食べている。
「すまんな‥‥。あれでも速度を抑えてたんだ」
「兄が本当にすみません‥‥。力加減が未だに下手で」
リムルに続いて風音が謝る。
エレンが吐いて倒れた後も風音が優しい風を送り、エレンを介抱していた。
「あんなに速くて、揺れるとは思わなかったですぅ‥‥」
「エレンの話を聞いて、リヴェルが何で進化したかは解ったが。キノコの大繁殖は何が原因だったんだ?」
「あれだけの魔物を倒したら、嫌でも格は上がりますわよねぇ。魔物の異常発生原因は大まかに言えば、召喚か何らかの原因による大量の魔素の発生が原因です」
「魔素は魔物が死んだ時にも発生するのか? それに召喚って?」
「巨大な力を持つ魔物が死ねば、膨大な魔素から魔物が発生するかもしれませんが。消滅した後は魔素は周りのマナに溶け込み消えます。召喚は結構複雑で集団で行う召喚、生贄による召喚、魔元が詰まった遺物での召喚などがあります。魔物・悪魔・天使・ゴーレム・精霊などの種類も色々ありますからねぇ。あっ! ありがと風音ちゃん」
風音が甲斐甲斐しくエレンの世話を焼き、飲み物を渡しながら話す。
「道中に巨大な蟻の死骸が複数ありましたが、主様が言うには死体に宿り増殖するキノコだったりしてな‥‥ハハハと言ってましたよ」
「「・・・・・・・」」
《告。あのキノコは宿主に寄生する魔物ではありません。原因は他にあるかと思います 》
俺は盛大に安堵のため息を吐いた。
「あのキノコは寄生して増えるタイプじゃないみたいだな」
「今も増殖しているのを想像してましたわよぅ‥‥」
大賢者妹を通じてキノコの情報は得ているが、自然発生じゃない場合はこっちでも調べた方が良いかもな。
*エレン・side
リムルと風音が他の村人たちの元に向かい去った後に、蜂蜜酒を木陰でチビチビ飲んでいるとカバルからの通信魔法が起動した。
「おい! 今何処にいるんだ!? 無事なのはわかるが、勝手に一人で行動するんじゃない!」
「もう! うるさい。今はリムルさん所の村にいるわよぅ。リヴェルも無事みたいだし、明日風音ちゃんに送ってもらうから大丈夫ですわ」
「あの後大変だったんだぞ‥‥リヴェルの野郎! 後でぶん殴る! 絶対にだっ! 城のお抱え魔導士にとか勧誘もあったしな。報酬だけ貰って何とか帰れたが」
「リヴェルが目覚めるまで仕事は歩きなのよね‥‥嫌だわ。ギドはどうしたの? そっちに居ないみたいだけど?」
「ギドは今少し外しててな‥‥。リヴェルはまだ動けねえのか? どのみち調査依頼はキャンセルだぞ。ギルド側の方針で調査対象が異常発生になったからな。リヴェルの依頼は三カ月猶予があるから一度目は明日やるが、お前は一度国に帰る事になったぞ」
「ええええええええーーーーーーーーなんでよぅ!!!」
「はぁ〜〜そんなもん一つしかないだろう。大魔法使いエレンさんよう。くっくっく」
「もう! もぅ! パパにバレたのね! 私がやったんじゃないのに知らないわよぅ!」
「諦めろ。今回はお前に落度は無いんだから直ぐに解放されんだろ。依頼の方は俺達がやっておくから安心しろ」
「全部ばらしてやるぅ! リヴェルが全ての元凶なんだから〜〜!!」
「無駄だ、無駄。スライムが炎熱魔法で数千のモンスターを薙ぎ払ったなんて、一体誰が信じるんだよ? 精々言い訳に、自分の魔法の修行でもするんだな」
「ガッデムですぅーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
突然の大声に皆が一斉にエレンに注目するが。何だエレンか…と言い、宴を再開するのであった。
そんな中、世話の掛かる子供を見る様な眼差しで風音はエレンを見ていたのだった。