静寂に包まれている世界―――――
とても心地よい場所だ―――――
まるで母親の胎内にいるみたいな―――――
「おい、起きろリヴェル」
煩いな、俺はまだ寝ていたいんだ‥‥凄く居心地が良くて眠いんだ。
「進化中だから厳しいか? お前の分裂体の繋がりが切れてしまったからな」
もう〜母さんもう少し寝かせてよ‥‥あと30分。
「誰が母さんだ! 早く起きろ馬鹿リヴェル!」
誰だよ! 気持ちよく寝ていたのに! ここはどこだ? 真っ暗で何も見えない、喋れないぞ?
「少し待て。これがこうで、あれをこうして…ん? よし! ポチッとな」
「うわ! 最後のセリフやめろよ、爆発するだろうが! ん? ヴェルドラか? ここはリムルの胃袋の中だな」
「うむ、我のユニークスキル
「怖えわ! 人の魂を勝手にいじるなよ! なんで分裂体の繋がりが切れたんだ?」
ヴェルドラが指を挿しているのでその方向を見てみると。
「リムルの視界の景色か? 何だあのデカい卵は」
「オマエだ」
リムルの視界を通して、巨大な卵が祭壇のような場所に鎮座してる。
「ん? なにをいってるんだ? 俺はスライムで卵生物じゃねーぞ?」
「お前が進化をするときの形態が卵なんだろ? 竜も卵からだし、我に似たのだろうな」
「いや俺はスライムだぞ、おかしいだろ‥‥えっ? 進化? 俺が? マジか!!」
LVがカンストしたから進化したのか? 自分で進化先は選べてないから何になるんだ? この世界の進化基準だと純粋強化だから、スライムの系列だけでもかなりの種類だぞ‥‥。
タマゴロンだと泣けるぜ‥‥。
スライムナイトだとどっちが本体なんだ? 手が使いたいからナイトにしてくれ!
「お前もリムルも、そのホイミとか、ナイトだとかわけのわからんことを‥‥。翼が生えた竜になるに決まっておるだろう?」
「だから心の中を覗くなと‥‥。ん? 翼? ドラゴスライムかっ!! いや、ありだわ‥‥ブレス系強いし!」
「話は終わりだ、囲碁をするぞ! 置き石は8個で良いぞ! フハハ!」
「9子局のハンデで勝ったくらいで調子に乗って‥‥。いや、待ってくれ! お前に聞きたいことがあるんだ」
「なんだ? 我の武勇伝を聞かせるのも嫌いじゃないのでな、なんでも話してやろう」
ちょっと考えるから思考を読むなよ?
「馬鹿めっ! 思考に膜を張るイメージをするのだ、我も勝手に覗いたりはせん。お前が漏らしてるだけだ」
「思考にバリアを貼るイメージか? ATフィールドだな!」
聞こえるか? ふむ、大丈夫そうだな。
まずは整理しよう。
封印のことが先で、あとはルシア、ヴェルザード、ヴェルグリンドのことだ。
「お前を封印したのはルミナスじゃなくてマリアという女性だぞ?」
「結果的にはな‥‥。だが竜殺しの魔剣を用意した上で我を殺さず封印を指示したのはルミナスだ。あ奴の配下達と協力して我を封印したのだから同じことであろう?」
ヴェルドラを殺すことが出来たのに、封印を選んだのはルミナスの判断だってことか?
顎に手をあてウンウンと思い出しながら、数百年前の状況を色々教えてくれた。
へ〜竜殺しって魔法で作られた武器なのか‥‥ドラゴンキラーとどっちが上だ?
いずれは使うし、制作しとかないとな。
「あの時、首だけのヴェルドラが消滅してたら、残った本体も消えたのか?」
「恐らくそれが狙いであろう。我は不死身の身故な‥‥心臓が残れば復活はせず消滅したであろうな‥‥」
不死身殺しの策かよ‥‥まじで怖いなルミナスさん‥‥。
首だけが消滅し、心臓が生きてる限り生まれ変わらない‥‥まさに不死殺しの策だな。
「あの時の命の恩人って‥‥。本当にそう言う意味だったのか?」
「クククッ‥‥あっははははは!!! だが今頃奴は我が死んだと思って高笑いしてるのであろう? 愉快、愉快よなリヴェル!!」
駄目だ‥‥こいつもルミナスさんをサーチアンドデストロイだ‥‥。
目が殺意に満ちてやがるな。魂の回路さん早く仕事してくれーー!!
「あ〜なんだ、話を変えるんだが‥‥ルシアについて聞きたいんだよ」
俺も凄く言いづらい、まえからこの話題を俺自身も避けていたからな。
「‥‥‥‥」
「ヴェルドラの兄ちゃんの嫁さんで、お前の義理の姉さんのことだ」
「言いたくない‥‥」
腕を組んでソッポを向くヴェルドラさん。
ガチで嫌そうだな‥‥。でもすまんが、大事なことなんだよ。
「お前兄ちゃんと姉ちゃんが大好きで、それが急に亡くなってしまって‥‥悲しくて、寂しくて、それで暴れていたんじゃないのか?」
「‥‥‥‥」
「竜種の兄は復活するけど、人間のルシアさんとは二度と会えない。しかも兄は不死なのに何故か復活しないときた」
「煩い!! 黙れ!! お前に我のなにがわかる! 我の孤独が! 寂しさが! この怒りと悲しみが!」
「わかんねーよ! お前の気持ちも! ヴェルダナーヴァのことも! ルシアのこともだ! だから知りたいんだろうが!!」
俺達は睨み合いながら一歩も譲らない。
「前世の夢にルシアさんが毎回出て来るんだ‥‥。血だまりに横たわった姿で所々に出血があってさ‥‥。痛みで泣き叫びたいだろうに、それなのに微笑みながら最後に静かに涙を流して息を引き取るんだよ」
「‥‥‥‥」
「この世界に来た時も、俺に大賢者というユニークスキルを与えてくれたんだ」
「我はルシア姉上が好きだった‥‥。兄上と姉上だけが俺に優しくしてくれた。楽しかった‥‥。孤独も知らず、我の世界は兄上と姉上で成り立っていたのだ。お前の世界は狭いと兄上とルシア姉上によく諭されたものだ。そうして我も人間に興味を持つようになったのだ」
「この世界に来るまえに我を頼れとかお前が言ったんだ。お前には隠しごとはなしだ! 全部話すぞ」
俺は前世の記憶でこの世界のことを知る知識と、転スラの物語をヴェルドラに話した。
「リヴェルが森羅万象を保有していたとしても”知り過ぎている”理由がやっと解ったぞ! 俄かには信じがたいが‥‥姉上と兄上がテロで死んだことをお前が知ってるはずもないからな‥‥ん? 我はお前に頼れとか言ったか?」
「来る時に言ったんだよ竜王様。正直リムルにも話すべきだと思うが。物語が滅茶苦茶でな、正直どう転ぶかわからんから迷ってる」
「我は勇者クロノアに封印されて、リムルの胃袋で解析をするのは同じ流れか? リムルが魔王にならないと我が暴れて世界が崩壊するのか?」
「それはわからん。リムルが死ぬトリガーで、お前が覚醒して暴れるのはない話ではないと思うぞ。クロエが居ないからリムルの生存ルートを探すことが出来無いのが非常にまずい」
それからあーだこうだと話し合った俺達は結論の出ないまま話題を変えた。
「つまり俺はお前の姉二人をぶん殴るか、ぶっこ‥‥倒したいんだ」
「いやわけがわからん。我も姉上をぶん殴りたいが、何故リヴェルがそこまで怒っているのだ?」
「いや、だってさ。二人にはギィとルドラって大事な人がいたんだろ? 大事な者を失って悲しんでる弟を慰めもせず。毎回殺して記憶と人格を矯正って馬鹿じゃねーの! そりゃトラウマにもなるし、記憶に残る悲しい思い出が復活のたびに何度も繰り返して! 思い出す結果になったんだろうが! ヴェルドラが数百年もの間、暴れるわけだよ! ギルティ! あいつらぶっ殺そうぜ!!!」
「えっ!? あっ‥‥うん」
この話をリムルにもしたら一緒に一狩り行こうぜ! って言うはずだ! 駄目だ怒りが収まらん。あの馬鹿姉二人にヴェルドラの積年の恨みを晴らさせないと‥‥。
「確かにヴェルザードとヴェルグリンドのせいで悲しい記憶がぶり返してたかもしれん! が‥‥。純粋に暴れてた時期が我にもありまして‥‥。その‥‥あの‥‥」
「大丈夫だ! 心配するな!! 俺達三人で戦えば勝てる!!!」
「あっ‥‥はい」(駄目だこれ‥‥我し〜〜らない)
その後6子局までいったヴェルドラに別れを告げる瞬間が来た。
「何か急に眠気が‥‥」
「そろそろ進化が終わるのだろう。何度も言うが姉上に挑むのは止めるのだぞ! 絶対だからな!!」
わかってるよ‥‥今は‥‥な‥‥。
「殻が割れるっすよーーー!」
「主様! 新たなお姿‥‥が?」
殻が全て割れてつるんと出てきた俺にリムルが言い放つ。
「おいデブ! なんで太って出て来てんだよ!」
俺は怒りを込めて叫んだ!!
「デブじゃねーよ!! 俺はぽっちゃり系だ!!!」
どうやら俺はキングスライムの王冠無しバージョンで生まれて来たらしい。
「スライムナイトを期待したってのに‥‥デブとか」
「うるせぇ!! 俺だってスライムナイトに進化したかったんだよ!! 代わりにお前がナイトになるんだよぉ!!!!」
八つ当たりでリムルを頭上に担ぎ上げ、勢いをつけて高く飛ばした。
落ちてきたリムルを担いでノリでお神輿を始めてしまう。
俺がワッショイと叫ぶと皆もワッショイと連呼しお祭りの続きが開催された。
「「「ワッショイ! ワッショイ! ワッショイ!」」」
「お前の種族名キングスラリンだってさ! あはははははは!」
リムルに続いて風音、ゴブタ、ゴブツ、ゴブテ、ゴブゾウが話しかけてくる
「主様! ご無事でなによりです! 大きくなられて良かったですね」
「何喰ったらそうなるっすか? あははは!」
「正直姿が変わらなくて安堵しましたよリヴェル様!」
「うんうん、いつも通りの可愛いリヴェル様! ほっぺが可愛い!」
「オラ凄く心配したのによぉ〜リヴェル様。どこでそんなに食べたんだぁ? ずるいだ〜!」
その後は進化祝いとして俺が持ってる酒も開放して朝から宴会をした。
「皆! 心配かけてすまなかった! 俺の奢りだ飲んで食って騒げー! カイジン達も不眠不休だったろ? 今日くらいはゆっくりしてくれ!」
辺りに皆の歓声が鳴り響いた。
宴は昨日の夜から続いていたので眠りに付いてる者が多くいる。
リムルと俺はそんな皆を眺めながら話し始めた。
「じゃーエレンはもう帰ったのか? 別れの挨拶も出来なかったな…」
「凄く怒っていたからな、あとで謝っとけよ?」
また杖で殴られるぐらいは覚悟しておくか‥‥。
「何か手伝うことはあるか?」
「あるにはあるが、俺もお前も働き過ぎだとさ。暫く休んで下さいって皆に言われたよ」
「簡易だが俺達の小屋を先に建ててくれているもんな‥‥」
「今日の昼頃に1回目の荷物の受け取りがあるから、それが終わってから休暇にしてくれ。ゴブリン達と一緒にって‥‥お前小さくなれるのか?」
流石にこのサイズだと元の風音の大きさにもはみ出るなこりゃ。
折角、カイジン達が簡易で小屋を建ててくれたのに入れないじゃん‥‥。
「ふん〜! ふ〜〜ん! とう!」
ポヨ-ン ポヨーーーーン ポヨン! 色々試してみるがサイズ変更は無理みたいだ。
「困ったな‥‥カバルがお前に用事があるみたいなんだよ」
《解。リヴェル=テンペストの固有能力である分裂を使えばその問題は解決します 》
《否定。姉、マスターの説明は私の仕事です。割り込まないでください。現在8体まで分裂体を作れるようになりましたので、サイズも元の大きさに調整可能です 》
何故か姉妹同士で喧嘩を始めたぞ?
どうやら俺の進化の影響でリムルも強化されたみたいだな。
それで嬉しくてシエルさんがしゃしゃりでた感じか。
「トゥ! ヘァ! 分裂!」
キングスラリンから8体のスライムに分かれて俺は元のサイズに戻れたが‥‥。
「おいLVが1になってるぞ!」「でも覚えた魔法は使えるみたい」「並列存在と同じじゃないかこれ?」「すげー多重影分身だ!」「これって仲間機能が全部で24人登録できるんじゃね?」「今生産中だけど他にできる奴いる? 錬金はやっぱ一人だけか…」「交易売れてる! じゃんじゃん追加だな」「じゃー俺がカバルのところに行くわ」
「うるせーーーーーーーーーーーーーーー!!」
8体に分かれた俺達が、各々好き勝手に喋るもんだからリムルがキレた。
「とにかく1体はカバルのところにゴブリン達を連れて行ってくれ、今後も取引するからやり取りを教えてやってくれ。残りは全部合体しろ! うるさい!」
リヴェルAが風音とゴブリンライダー数人を引き連れて荷物の受け取りに向かった。
「駄目だ、7体分だとデカすぎる。小屋に入る時に一度分離しないと‥‥。リムルは何覚えたの?」
今も大賢者と確認中らしく喋らないリムル。
《肯定。貴方の進化の影響でリムルはメラ・メラミ・ギラ・スクルト・ベホイミをこちらの魔法形態に置き換えて習得が可能になりました 》
おおお! すげーじゃん ファイヤーランスとかファイヤーボールとか? スクルトはなんだ?
《肯定。守護結界です。自分の込める魔素で強度が変わります。ギラはフレアバースト、ベホイミはリジェネレーションです 》
「リヴェル!! でかした! 洞窟で試し打ちに行こうぜ」
そんじゃー俺が一緒に行くわとBが言う
「他の俺達は錬金とか色々したいから、俺がリムルと魔法の試し打ち行ってくるわ。ルーラ!」
勝利は俺のためにある! と叫びながらリムルがリヴェルBと飛び立っていった。
見送りを済ませた俺達は小屋で色々作業を開始することにした。
「じゃー俺Cは錬金で作れる物は全部一通り作成するぞ。Dは交易担当な。残りは魔術刻印と精霊工学と魔道具を研究しようぜ!」
「「ヤヴォール」」
部屋が狭いのでギラで地下室を掘って、木で補強してっと‥‥秘密研究所完成!
「どうせ悟にはバレるからあいつの隠れ部屋も作っといたら怒られんだろ」
秘密の地下室でドワルゴンで買ってきた本や資材を並べ、怪しい研究を開始するのであった‥‥。