「それを早く言いやがれ!」「何で先に言わないでやんす!!」
カバルとギドは急いで魔界樹に近寄り、剣と投斧で粘液の隙間に刃を何度も叩きつけるが固くて全く刃が通らない。
最初から説明しようとしてるのに、二人に罵倒されて納得がいかない俺はギドとカバルのケツを非殺傷ギラで焼いた。
「あっ熱! 何しやがる! 今はふざけてる場合じゃねーぞ!」
「う〜尻が痛いでやす‥‥そうでやすよ! ふざけるのは顔だけにするでやす!!」
まだ少し怒りが収まらないが、俺は大ちゃんで魔界樹を解析鑑定した。
「やっかいだな‥‥魔界樹がネヴァンさんに寄生してるから倒して取り出すのは無理そうだ。ネヴァンさんの魔力を原動力に魔界の門を開いて、悪魔を召喚する魔法陣が刻まれてるらしい」
クソッ! と剣を地面に突き刺し苛立つカバル。
「冷たい様で悪いが俺達の目的は姫様だ。助けれるなら助けてやりてえが…」
「魔界樹は此処で止めるでやす。最後まで諦めるつもりはねえでやすが、大勢のブルムンドの人の命が掛かってるでやす」
恨んでくれて構わねえと、二人は武器に魔力を通し魔法剣を発動させるが。
「仕方の無い犠牲だ。みたいな雰囲気だしてる所悪いけどさぁ〜その魔物倒したら体内の魔法陣が発動して大爆発するぞ?」
俺の言葉を聞いた二人が慌てて魔法剣を消した。
「どうすんだよ!!」
「何で爆発するでやすか!!」
「そのエルフさんは自爆魔法? 正式名称は精霊融合魔法かな? 魔法の二重詠唱だから高難易度魔法に分類され、精霊召喚と精霊融合の複合魔法だ。ペルソナ好きには堪らない魔法形態だよな! 正に精霊ならぬ悪魔合体! 実に興味深く面白い魔法じゃ〜ないか!」
ギドに大きな咳払いをされて話を止められ、俺はカバルに殴られて正気に戻る。
「痛い‥‥ごめんなさい。精霊では無く魔物を召喚で呼び出した場合は、術式的に強制融合で魔物化する事が失敗に当てはまる。この魔界樹との融合を何らかの方法で強制的に止めているけど、融合に使う魔力を生命で変換する術式は今も続いてるんだ。何方かが死ねば蓄えた魔力と生命エネルギーを合わせた大爆発が起きる仕掛けが魔法陣に刻まれて‥‥ドカーーンってなるみたいよ? 生かしても召喚、死んでも爆発。実に悪魔らしい仕掛けだな」
「魔法陣の場所は魔界樹とネヴァンの二か所か‥‥。魔法陣を止める方法は無いのかリヴェル?」
「うわ!? こいつ、リヴェルの旦那の粘液を千切って動き出しそうでやすよ!」
こういう自爆系って死ぬ瞬間に俺がルーラで飛んで、すまん界王様って別の場所で爆破するしか無いんか? 一人が死んでも残り7体の残機があるからな。命なんて安いものだ‥‥特に俺のはな的な?
《否定。現状でエルフの女性を仲間に登録できないのでルーラが使えません。それに痛覚無効も無い貴方が痛みや死の体験を全個体が共有するのは精神に危険が伴います》
聞いてないんですけど!? 大ちゃんが言うにはスキルでは無く、固有能力の分裂なので全部俺状態らしい。進化前の分裂なら問題なかったが今の分裂は数がそのままリスクしかないって事か。
それでネヴァンさんを助ける何か方法はある大ちゃん?
『やばいって助けて星! このエルフっ子めっちゃ強い。物理に特化しすぎだろ! 結界がワンパンで割られる!』
急に念話をしてくるリムルを見上げると、ランガから降りて空中戦をしている様だ。襲い掛かる魔法を拳や足で全部弾いてる。そこには立派な脳筋ダークエルフが居た。
「下等なスライム風情がちょこまかと頑張るではないか! ホラホラさっきの威勢はどうした?」
「エルフの癖に魔法を使えよ! 何で拳や足技ばかりなんだよ! あぶねっ!!」
『こっちも動き出しそうなんよ。倒したら大爆発するし、街に入ったら悪魔召喚ときた‥‥あっ! リムル、オートモードだ! 大賢者に任せたら時間は稼げる! その間にこっちを何とかするから』
『ひえっ! し、死ぬ〜!! お、オートモード!? 大賢者任せた!』
あの姫さん魔王か? リムルだってめちゃくちゃ強いと思ってたんだがな‥‥。
シエルさんに交代して魔法をガトリング撃ちしながら、結界を障害物にして相手の行動を阻害し始めた。
「風音とランガはリムルの援護! スクルトが割れたら、貼り直すまで無理せず逃げろ」
「「了解です主様! リヴェル様もご武運を!」」
《肯定。解析の結果、精霊召喚・悪魔召喚・融合魔法を取得しました》
やったーーー!! じゃねーよ! 大ちゃんそのエルフさんを助ける方法が知りたいの!
《‥‥‥》
え〜天下の大ちゃんともあろうお方が、エルフ一人救えないなんて嘘でしょう?
《‥‥不快。踊ってください。エルフと魔界樹を繋ぐ魔法陣の魔元を断つ事に意識を向けて、対象の生命を助けたいと踊りに込めて踊れば42%の確率で救助可能です》
は? どどど、どうしよう‥‥ついに大ちゃんが壊れちゃった‥‥。
《‥‥‥つーん》
俺は何かに吹き飛ばされて、魔界樹から転がる。
「そこをどきなさいスライム! 死ね」
目隠れエルフっ娘が俺を押しのけて何やら魔法を唱えている。
「おしっ! 助っ人が来たぞギド! 俺達は姫様の方に行くぞ!」
「了解でやす! 此処はパトさんに任せやすよ」
「姫様を傷つけたら殺すから。」
どうやらこのエルフは仲間みたいだな。しかし何の魔法だ? 効かなかったみたいだが。
「駄目ね‥‥片方の魔力供給を封じようとしても意味が無いって事よね‥‥ぶつぶつ」
急に考え込んだエルフに俺は言う。
「魔力を封じたら爆発はしないのか?」
「煩い死ね。魔物とこの女を両方同時に魔力遮断をしなきゃ意味がない。その上で魔法陣を書き換えないと‥‥」
死ねは口癖かな? でもちゃんと教えてくれるし良い子なのか?
『リヴェル! そっちは大丈夫か? ムキムキの婆さんがこっちに来て戦況はひっくり返ったぞ』
振り向くとダークエルフとマッチョエルフ婆さんがドラゴンボール戦をしていた。
『世界観違くない? 余裕そうならこっちで捕食使って魔物とエルフさん分離出来るか試してくれよ』
『いやもう解析結果は出てる。思考加速中の捕食でも確率はかなり低い‥‥。魔力を完全に遮断してからじゃないと命は助からない』
捕食中に分離しても命が失われるのか? 侵蝕部分だけ切り取って回復薬かければいけると思うんだが?
《否定。取り込んだ瞬間大爆発します。助ける方法は踊る事です。現在25%の確立まで低下しています》
訳が分からんけど意味の無い事を大ちゃんが言うはずがねぇ! 俺は大ちゃんを信じるぞぉ! うおおおおハッスル! ハッスル!!
俺はネヴァンさん助かれと体を揺らしながらジャンプする。魔法陣よ止まれと念じて、クルクル回り踊りだした。
「急に何をしてるのですか! 貴方は邪魔です! 死ね」
「メカクレちゃん。俺が躍るとこの人を助けれるみたいなんだ! 信じてくれ」
キタキタ親父!! 俺に力を貸してくれ!!
「ふざけている場合じゃないと‥‥何? 魔法陣から魔力が…魔力が消えていく!? まずい! 近くにいると私の魔力も吸い取られる! この馬鹿スライム! 後で覚えておきなさいっ!」
メカクレちゃんが何故か怒っていたが知らんな! 俺は踊る事しかできないんだ!
「ぴーらりひらひら! 調子が良いですぞ!」
『よくやった! だからもう踊るのは止めろ星! 周りの魔素も全部吸い尽くす気か!』
リムルに怒られ正気に戻った俺は踊るのをやめてメカクレちゃんにグリグリと足で踏まれた。
「メカクレちゃん。痛いですぞ! ご褒美ですかな? あっ赤だ」
「私じゃ助けれなかったから感謝はするけど、ムカつくから死ね!」
魔素が空になり魔物は死滅し、魔法陣も魔力が消え効果が無くなった。
リムルが寄生個所を分離して回復を済ませたので今は静かにネヴァンさんは眠っている。
「しかしお前の不思議な踊りは封印だな‥‥やばすぎるわ」
「あー不思議な踊りの効果だったんか!! なるほどね‥‥流石大ちゃん」
大ちゃんは何か言いたそうな雰囲気を出すので機嫌を取るために褒めまくる。
隣では知らないで使っていたのかよ‥‥。と呆れるリムル。
「はぁ…はぁ…私の魔力は、残ってないので、、お前達は早く姫様を助けなさい‥‥」
メカクレちゃんが魔力切れでフラフラに為りながらも俺を踏んでいたが限界みたいだ。その場で横に倒れてしまった。
「そうだった! まだ姫さんが残ってた」
「うへ〜俺あのダークエルフ娘苦手だわ‥‥」
話しているとエルフ婆さんがこっちに吹き飛ばされてきた。
「ベホイミ! おい婆さん大丈夫か? リムル早く加勢して! 補助は任せろ」
「ずるいぞリヴェル! 魔法で援護するからお前が逝け! 俺は嫌だ!」
「痛たた‥‥ありがとよ。心配しなくてもあんた達に任せたりはせんよっと!」
婆さんに襲い掛かる悪魔の拳を掴み取り、地面に叩きつけ殴ろうとするが拳が止まる。
「ぐはっ! 確かにお前は強いが俺がこの身体から抜け出たら姫は死ぬんだぞ? いいのか攻撃して?」
「姫様っ! 早く目を覚まして悪魔なんて追い払っちまいな!」
「無茶を言う。もうこの娘の魂はボロボロよ! 俺が受肉するまで大人しく見てろ婆ああぁ!!」
手が出せないのかエルフの婆さんは防戦一方だ。
遠くで折れた木に仰向けで気絶してるギドとカバルが見えた。
駆けつけてリムルがフルポを二人に掛けるが目覚めない。
「リムル何とかしろ! 婆さんを何度も回復させるのは虐待だぞ」
「お前が何とかしろ! 魂の修復なんて出来るわけないだろう!」
大賢者姉妹の解析と予測によると姫さんがネヴァンの魔物化をどうにかして停止させた影響で心核と魂に相当ダメージが入ってるみたい。
なので悪魔を痛めつけて外に出すと反動で魂が砕けて死に至るらしい。
成長したリムルなら可能だが今は無理か‥‥。
魔法はイメージ‥‥蘇生魔法も可能? でもザオラルくらいは無いと無理だろ‥‥ん? 融合魔法!?
「リムル! ちょっと試したいんだが」
「何だ? 踊りは駄目だぞ? 悪魔は消えるが姫さんが死んじまう」
わかってるよと言って、二人で試行錯誤して実験した。
大賢者姉妹からは高い成功率を出して貰ったので、俺は実行に必要な最大MP確保の為にゴブタに分裂体を3体運んでもらってる最中だ。
「これで後は姫様の身体から悪魔を追い出すだけか‥‥ハァ〜どうやってだよ」
リムルが悩むのも無理ねーな。婆さんに一か八かで姫様から悪魔出すけど手伝って! 死ぬかもしれんけど! なんて言える訳がねーよな‥‥。
「失敗したら蘇生魔法を覚えるまで道具袋中に入って貰うしかないかな‥‥はぁ〜天帝に殺される」
地面に倒れ伏す婆さんを殴っていた悪魔が急に騒ぎ出した。
「何故街に魔界樹が向かっていない! 爆発も起きていないぞ! 何故だ!」
「坊やだからさ‥‥あっ! つい反射ですみません。何でもないです」
「ブフッー! 俺もちょっと思ったけど! 口にしたら駄目だろう馬鹿リムル! 怒ってこっちに来たじゃねーか!」
怒りに顔をゆがませ猛スピードで襲い掛かるが、リムルが張った結界に阻まれ攻撃が止まる。すぐに俺がスクルトを重ね掛けして結界を補強して何とか猛攻を凌ぐ。
相手が本気なのか直ぐに結界を何重にも重ねるが長く持ちそうにない。
「貴様らの仕業か!! 魂もろとも消し去れ!」
悪魔の両手に魔力が集まり両拳に集中する重い必殺の一撃がくるのだろう。すでに俺はMPは無く万事休すだ。
「最後にカレー食いたかったな‥‥」
「俺はラーメンだな‥‥」
「「リヴェル様! リムル様!」」
俺達二人を交互に咥えて風音とランガが間一髪でその場を何とか離脱する。
「助かったランガ。ほらフルポーションだ」
「ありがとう風音死ぬかと思ったよ。ベホイミ」
二匹は傷を負いながらも俺達を無事に逃がしてくれたようだ。俺達は魔法のせいすいを飲んで一息つく。
「私は掠り傷です。それより撤退しましょうリヴェル様! 助けられない、攻撃できないなら無駄死にです」
「妹の言う通りですリムル様。お二人が我々と協力すれば倒せるはずです。それが出来ない現状では…」
悪魔がゆっくりと空から降りてくる。
「しぶとい奴らめ‥‥だがこの体にも慣れてきた。そろそろ終いにするぞ」
「お待たせっす!! リヴェル様! 三兄弟到着っすよ!」
「ナイスタイミングだゴブタ!」
「A、待たせたな! こいつが頼まれてた武器だ! 風音これを使え」
「よしC、D合体だ!」
俺達は全員合体してAとCの二体に分かれた。
「数が増えたところで俺には勝てんぞ? もう少しだ、もう少しで姫が死に受肉が完成する‥‥クハハッ!」
「グッジョブ! ナイスな武器じゃんリヴェル! 」
『よし! お前ら作戦はガンガン行こうぜだ!』
「「「了解」」」
リムルが結界に相手を閉じ込めてファイヤーランスを周囲に展開して一気に放出する。
俺Aが逃がさぬようにスクルトで結界を補強し、Cが悪魔にメラミx3を全力で放つ。
ランガの角が放電し溜めた魔力が黒い雷となって結界に解き放つ。
逃げ出すことも出来ず集中砲火を全て受けた悪魔が傷だらけで姿を現す。
「ぐはっ!! クソが! 俺が死んでも良いのか!? この女が死ぬんだぞ!」
あれだけ全員で攻撃しても五体満足で無事とか、この姫さん強すぎだろ‥‥。
「これで終わりです! ワオーーン」
皆で作った隙をついて、風音が疾風となって縦横無尽に悪魔を切り刻む。
全身を切り刻まれ止めに心臓を貫かれた悪魔は消滅する。
黒い霧が消滅した後に膝落ちで倒れ込むイリーナ。
「いやーーーーーーーーーーー!! リーナちゃーーーーーん!!」
其処にはいつの間にか涙を流して泣き叫ぶエレンが居た‥‥。