二度転生したらスラりんだった件   作:Kut-Ku

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断章 イリーナ・サントハイム

 魔導王朝サリオンに聳え立つ神樹の内部に居住が許された皇族。

 

 十三王家の一柱。サントハイム家の屋敷である。

 

 ドガーーーーン!!

 

「パパ! お見合いなら断ったばかりでしょ!」

 

「ドアから入りなさい! まったくお前は毎回壁を壊しおって‥‥」

 

 足蹴りで壁を壊しながら部屋に入る娘はサントハイム家の長女イリーナ・サントハイム。土魔法で壁を直しながら説教するのは父親のアルダス・サントハイムだ。

 

「無理矢理結婚させるつもりならママに言いつけるから!」

 

「お前は自分が皇族だという自覚があるのか! 自分より強い相手としか結婚しないなど…違う! 今回呼び出したのは私の予知夢の話だ」

 

「予知夢? お父様のユニークスキルの未来視(ミトオスモノ)だったかしら?」

 

「そうだ。それによるとジュラの森で闇の帝王が誕生する‥‥蒼き偉大なる父、その半身である魔王と竜が死せる時、闇の帝王が誕生し世界が終焉を迎えるのを私は夢で見たのだ」

 

「ブティ! クリパトを呼んできてパパが病気よ!」

 

 アルダスの後ろで護衛をしているブティはやれやれと首を振りながら答える。

 

「殿下は気が触れたり病気もして無いよ姫様。黙って真面目に話を聞きな」

 

 咳ばらいをして話を続けるアルダス。

 

「この能力も万能とは言い難い。戦闘においては数秒先読みが出来るが、無数にある未来の中で自分に都合の良い夢を観るという事も出来ん。だが私の命の危機などに置いては高確率で予知してくれる」

 

「つまり世界が滅亡するという命の危機に、お父様のスキルが答えてるって事ですの?」

 

「そうだ、既にシルビア様に報告はしたが一笑された‥‥。現に魔王ミリムによって世界は一度滅亡の危機に晒されているからな」

 

「大好きなシルビア様に笑われたからって泣きそうな顔しないでよ‥‥ママが見たら殴られるわよ?」

 

「そっ‥そんなのではないわ! 闇の帝王が何処から生まれるかがわからん‥‥シルビア様から兵を借りることも許可されなかった。本当は凄〜〜く! 非常に! 嫌で嫌で仕方が無いが。実力者で嫁入り前の娘でもあるお前に、遺憾ながら調査を頼むしか無いのだ!!」

 

「やったーーーーー!! ありがとうパパ大好き! リューだけずるいんだから! 私も冒険よ!」

 

「ハァ〜〜まったくお前という奴は‥‥お供はクリパトとブティの二人だ。極秘任務だからな! ママにも内緒だぞ! バレたら花嫁修業再開だからな」

 

 両肩を抱き震えるイリーナは小声で「分かってるわ、もう地獄の日々は嫌!」と首を振る。

 

「お父様! それじゃー行ってくるけど‥‥もっと情報無いの? 魔王が関わるなら私も命がけなんだけど?」

 

「あの竜の姿は暴風龍ヴェルドラだった‥‥間違いない。蒼き父は闇の帝王がそう呼んでいたのだ‥‥。魔王には絶対に関わるんじゃないぞ? 出会ったらすぐに逃げるんだ」

 

「わかったわ。魔王と接触しそうになったら転移魔法陣で緊急退避も使うからね? それじゃー行ってきます!!」 

 

 楽しみねブティと言い部屋を後にし出ていくイリーナ。

 

 頭を下げて出ていくブティを見つめながらアルダスは呟く。

 

「許してくれイリーナ私にはこうするしか方法が無いのだ。私が見た予知はもう一つあったのだ‥‥。数か月後にお前は家出して死ぬ事になるが、今調査に出せば命は助かると‥‥」

 

 だから頼む‥‥無事でいてくれと呟き、ゆっくりと椅子にもたれ掛かるアルダスに容赦の無い妻の追い打ちが襲う。

 

 急にドアが破壊され微笑む妻がゆっくりとこちらに歩いてくる。

 

 目が笑っていない妻は中精霊の雷大蛇を夫の方へ向かう指示を出し、蛇はアルダスの身体にとぐろを巻いていく。

 

「ねぇ貴方? あの娘、お茶会をすっぽかして部屋を尋ねたら。【旅に出ます、探さないでください】って手紙がベッドに置いてあったんだけど? 詳しく聞かせてもらえますか? あ・な・た!!」

 

「イリーナ! やっぱ戻って来て! パパが先にダメかもぉーーー!!」

 

 

 

 

 

 

「クリパトが転送門の使用許可取ってる所じゃ。イングラシアの極東までは直ぐに行けるさねって何を祈ってるんだい?」

 

「お父様が尊い犠牲になった気がするの‥‥成仏してパパ」

 

「姫様〜許可が下りました! マジックバッグに食料も買い込みましたよ!」

 

 呆れた顔をしたブティ、両腕を組んで祈るイリーナ、手を振りながら駆け寄るクリパトが仲良く会話する。

 

「姫様、ホムンクルスは使わないのかい? エルメシア様に怒られるよ?」

 

「私アレ嫌なのよね‥‥妹を犠牲にしてるみたいで。リューもそうなんじゃない?」

 

「ブティ様も居るのですから旅先は安全ですよ! もちろん私も全力でお守りいたします!」

 

「わたしゃー知らないよ。心配性の姉二人の相手何てごめんさね」

 

「先に生まれただけじゃない。私もリューも同い年よ! でもエル姉が怒ってたら助けてねブティ?」

 

 ブティは知らん顔をして転移門に歩いて行く。それを急いで追いかける二人もゲートを潜った。

 

 

 

 旅はイングラシアから馬車を乗り継いで東のジュラの森に向けての旅だ。

 

 サリオンから直接に山を越えればジュラの森に辿り着けるが、魔王フレイを刺激する事になるので迂回しないといけないのだ。旅先で悪人共は懲らしめて五日でブルムンドに辿り着いた。

 

「今日は此処で宿を取って明日にジュラの調査に向かいましょう。姫様、ブティ様」

 

「酒場で情報収集もしたいし、フードも面倒だよ。偽装薬を飲んでから一杯やりたいねぇ〜」

 

「私あれ苦いから嫌い。別にエルフだってばれても良いんじゃない?」

 

「駄目ですよ姫様。私達って極秘任務なんですから」

 

 鼻を詰まんで一気飲みするイリーナを伴って酒場に入る三人。

 

「ひゅ〜綺麗な姉ちゃん達じゃねーか! 俺達と一杯ど‥‥う…」

 

 カウンターから後ろを振り向き声を掛ける男達。

 

 最後に入ってきたマッチョ婆さんを見て「すみません、失礼しました」と、頭を下げて酒を呑み直す。

 

「全く…失礼な坊主達だね。私がもう少し若けりゃ鼻の下を伸ばしてたんだがねぇ〜」

 

「そういえばママが若い頃のブティは凄く可愛かったって言ってたわね」

 

「これだから男は‥‥死ねば良いのに」

 

 三人はテーブルに座り、ビールとリンゴジュースを二人分頼んだ。

 

「あんた達、見ない顔だね? 女三人で旅行かい?」

 

 料理を運んできた女将さんが訪ねてきた。

 

「親戚がドワルゴンにいるからねぇ〜長旅だよ」

 

「ねえ、おば様。最近何か変わった事とかなかった? 何でも良いから教えて欲しいの」

 

「あんた良い所のお嬢様かい? ん〜あるにはあるんだけどねぇ‥‥。」

 

「何々? 教えて!」

 

「うちの店に野菜を降ろしていた夫婦が居たんだけどね。随分と音沙汰が無いのよ‥‥」

 

「山賊に襲われたり?」

 

「此処から村までそんなに遠くは無いし、街道沿いなら兵隊さんも見回りしてるからね…」

 

「じゃー私が村に行って探してきてあげるわよ! 任せておば様」

 

「本当かい! そりゃ助かるよ。美味しい野菜が手に入らなくて困っていたんだ。二人の名前だけど妻はネヴァン。夫の名はネロだよ」

 

「ひ、お嬢。人助けは美徳だが、何でもかんでも引き受けるんじゃないよ」

 

「そうですよリーナ様。私達には目的があるのですから‥‥」

 

「いいじゃない! 困ってる人がいるんだから助けないと」

 

「あはは! 気持ちのいいお嬢ちゃんじゃないか! 依頼料としてご飯は私の奢りだよ」

 

 酒場は宿も備えているので三人はベッドに横になる。

 

「村に着いても少し探して居なかったら終わりだよ? 村人が居ないなら捜索願は領主が出すだろうしね」

 

「私だって無差別に助けたいって訳じゃないわ! 自分が出来る範囲で助けれるなら助けたいだけよ」

 

「困ってる人が居たら助ける。正義感が強くて優しい姫様が大好きです、よ〜ふぁ〜お休みなさい」

 

 寝つきが良すぎるクリパトを見て二人は笑いながら、お互いにベッドに潜り眠りに付く。

 

 そして朝を迎えた。

 

 早速、魔法で身体強化をしたイリーナと肩にクリパトを乗せたブティが疾走すると数十分で村に辿り着いた。

 

 三人は村に辿り着くと村の門番らしい青年がおずおずと尋ねてきた。

 

「ぼ、冒険者さんか? この村に何のようかでしょう?」

 

「敬語はいらないよ。坊や村長はいるかい? 都に住んでる宿のモニカさんに頼まれたんだよ」

 

「わかり、わかった。村長をよんでくる」

 

 暫くすると村長が杖を付きながら歩いてきた。

 

「モニカさんの知り合いでしたな。はて? この村に何の御用でしょうかのう」

 

「この村にネヴァンとネロという夫婦が居たそうじゃが?」

 

 ブティが問うが、村長は暗い顔をしてどうぞ此方へと村長宅へと招かれた。

 

「ねえおじいちゃん。ネヴァンさんとネロさんは賊かモンスターに襲われたの?」

 

「ネロは領主に捕まり殺されたんじゃよ‥‥」

 

「ネロさんは何か罪を犯しちゃったの?」

 

「嫌‥‥何も‥‥自分の妻が攫われるのを守っただけじゃよ」

 

「ひどい‥‥。だから人間は嫌い。死ね」

 

「お嬢ちゃんはエルフかい? わしらも知らなかったんだがネヴァンもエルフだったんじゃよ。だから領主のカザック子爵様に狙われたんじゃろうな。すまんのう…わしらも命が掛かっておるんじゃ」

 

「ネヴァンさんは!? 彼女は無事なの?」

 

「わからん‥‥ネロが命がけで抵抗してる間わしらはネヴァンを森に逃がしたんじゃが。領主の怒りに触れてネロは八つ裂きにされて亡くなったんじゃ。森から帰って来たネヴァンがネロの亡骸を抱きしめ長い事泣き叫んでおったよ‥‥折を見て皆でネヴァンを慰め村に墓を作ろうとしたんじゃが…急に馬に乗ってネロの亡骸を抱えたまま森に入って行ったんじゃ。もう、二日経つが森からまだ帰っておらん…」

 

「何で探さないの! そんな状態で一人にしちゃ駄目でしょ!」

 

「お嬢! 森は魔物が居る。無茶を言うな馬鹿垂れ」

 

「あっごめんなさい‥‥でも早くさがさなきゃ!」

 

「ひ、リーナ様。ジュラの森で暮らすエルフなら戦う術は持ってるはずです! 悪い事は考えず生まれた森に夫の墓を作りたいのかもしれませんし、冷静に行動してください」

 

「あのおてんば! パトの話も聞かず飛び出すんじゃないよ!」

 

「追いかけましょうブティ様! 村長、人間は嫌いですが貴方は嫌いじゃないです。同胞に良くしてくれてありがとうございます。でわ」

 

「待ってくれ嬢ちゃん。まずはありがとよ、これはネロの形見だネヴァンに渡してやってくれ」

 

 頷き二人の後を追いかけるパト。しかし待っていたものは‥‥。

 

 

 

 

「ごっめ〜〜ん! ほんとごめん! 探し人かと思って」

 

 ジュラの森に居た護衛のメイガスの女性隊員を抱きとめ捕獲し、反撃した仲間の二名を気絶させたイリーナが平謝りしていた。

 

 お姫様抱っこをイリーナ姫にされている隊員は幸せそうに顔を赤らめイヤーンしていた。

 

「なるほど‥‥そんな事が。わかりました捜索は私たちの方が得意ですし、エリューン様の護衛を代わりにお願いできますか?」

 

「ふっふっふ! 任せなさい! リュー姉を完璧に護衛してあげるわ」

 

 三人編成の部隊は連絡をした後にイリーナに礼をして捜索を開始した。

 

 両手に腰を当て踏ん反り返る姫様に二人は呆れた顔をする。

 

「この馬鹿姫! 極秘任務だってのにメイガスにばらした上に手伝ってもらうとか何考えてんだい!」

 

「そうですよ姫様! エラルド様の部隊を勝手に使ったら駄目ですよ!」

 

「もう、煩い! リューも危ない事してないか監視出来るし、ネヴァンも私達より早く探せるし一石二鳥じゃない! 黙って私の言う事聞きなさい」

 

 だがこの時のエレン達は洞窟調査が終わり、街に帰還途中なので特に危険も無く退屈な監視だった。

 

「暇ね‥‥この周辺に魔物はいないのパト?」

 

「メイガスが既に処理したのでしょう。辺りに魔物の反応はありませんよ姫様」

 

「リューが危ない場面で私が颯爽と駆け付け助ける予定なのに‥‥くっ」

 

「馬鹿言ってんじゃないよ‥‥あの子達から連絡が入ったよ。‥‥何だって!? 悪魔召喚! 本当かい!」

 

 クリパトは即座に魔法詠唱でメイガスに緊急連絡をしている。イリーナは静かに戦闘態勢に入りブティを見つめている。

 

「まったくとんだ厄日だよ‥‥悪魔はアークデーモンで受肉はしていない。眷属は青の系統。話は出来そうだけど古い悪魔だからねぇ‥‥こっちだ付いてきな」

 

 クリパトとイリーナは頷きブティを追いかけ森を走る。

 

 走りながら二人は問いかける。

 

「アークデーモンってどのぐらい強いの? 私とブティで倒せそう?」

 

「ブティ様。部隊は交戦中ですか? 現在私を中心にして援護を要請し続けています」

 

「戦ったら私だけでも勝てる‥‥けど悪魔って奴は打てる手は何でも使うし外道な手も平気で使う。先手必勝でぶちのめせなかったら、相手の土俵にずるずる引き込まれちまうから気負付けな姫様。既に死人が出てる‥‥精霊使いを早く呼んでおくれパト」

 

 死人が出た事に歯を食いしばり怒りを表すイリーナを軽く宥め、現場に辿り着いたブティはまずは様子を伺おうと木陰に静かにしゃがみ込み観察をする。

 

 だが、イリーナが一目散に飛び出した!

 

「あの馬鹿姫っ! パト、私も仕掛ける。ネヴァンの方を頼む」

 

「わかりました。ブティ様も気を付けて!」

 

 イリーナが間違って抱き抱えた隊員の子が、悪魔によって氷漬けになり目の前で砕かれたのを見て我慢が出来ず飛び出したのだ。

 

 どうやら捜索隊の三人は全員殺されたようだ。

 

「ハァ-ーーーーーーフン!! チェストーー!!」

 

 悪魔に不意打ちの回し蹴りをした後に踵落としをするが全てブロックされる。

 

「何だ貴様ら? こいつらの仲間か? 丁度いい俺の糧になるがいい」

 

「爆裂拳! はああああああああー!」

 

 悪魔がイリーナの連続攻撃を受け止めてる間に横腹にブティが正拳突きを放つ。

 

「脇がお留守だよ‥‥一撃必殺!」

 

「グハッ‥!!」

 

 ドゴオオーーン!!! バキベキベキメキメキ

 

 悪魔は真横に木を何本もへし折り吹っ飛び続ける。

 

「殺ったの?」

 

「いや、まださね。ギリギリでわき腹に障壁を貼りやがったよ」

 

「大変です姫様、ネヴァンさんが魔物と同化し始めています。それに魔法陣の周りに村の子供が生贄に‥‥まだ息のある子もいます!」

 

 イリーナが駆け寄るとネヴァンに意識がまだあり、問い詰めた。

 

「ネヴァンさん、ネロさんが死んで悲しいのは分かるけど! 子供達まで巻き込んで何してるのよ!」

 

「煩い! 煩い、煩い、煩い、煩い、全部壊れて消えればいいんだ! こんな世界要らない! あの人のいない世界なんて! でもあいつだけは、あいつだけは殺す! カザーーーーーーーーック!!」

 

 目の焦点が合わず、怒りの表情で痙攣を始めた。

 

「パト! 悪魔召喚で子供達は何故生きてるの?」

 

「恐らくですが呼び出す魂はネロさんのもので願いをかなえる対価はメイガス部隊の魂で補填したのかと‥‥」

 

 戻ってきた悪魔が、翼を広げて滑空し。両手の爪を猛スピードでブティに振りかざすが横薙ぎの手刀で払われる。

 

 魔法で強化してあるのかブティの拳には薄く魔力が貼ってある。

 

「貴様何者だ。数千年生きたこの俺と互角だとは‥‥」

 

「まだ800年しか生きてない小娘さね」

 

「戯言を‥‥そこの女は復讐する為に俺を召喚したのだ。契約は必ず遂行するのが俺のギアス。お前達は関係がないなら見逃せ。領主と領主一族の皆殺し以外は被害は無いぞ?」

 

 悪魔は静かな動作で小指で円を描くが‥‥

 

「まったく油断も隙も無い‥‥子供に仕掛けた自爆魔法を発動させたのかい?」

 

「クソッ何故爆破しない? お前悪魔ハンターか!?」

 

「違うよ? 長く生きてるだけさね。パトは解除が得意なんだよ‥‥それに時間稼ぎはこっちもさ」

 

 悪魔に四方八方から精霊魔法が炸裂する。

 

 メイガス部隊が到着したようだ。

 

 

 

 

 クリパトが大粒の汗を垂らしながら子供達の魔法の解除に成功する。

 

「姫様。子供たちに仕掛けられていた魔法も解除しました。後はネヴァンさんですが‥‥」

 

「わかってる‥‥ネヴァンは助からない。でもこれ禁術じゃないわよね?」

 

「古代の悪魔ですから精霊使いじゃないネヴァンさんでも使えるように魔法を施したんでしょう‥‥」

 

 イリーナは魔樹に同化し沈む前に楽にしてやろうと心臓に拳を当て魔力を増大していく。

 

「ネヴァン、ネロは命がけで貴方を守ったのよ? 生きなきゃ駄目じゃない‥‥子供達まで…」

 

「‥‥あの子達は別の村の子よ。子爵に親を殺され一人で生きていけなくなったから森に捨てられた。だから復讐と生贄になる事を自ら承諾したの…」

 

「わかったわ‥‥子供達の面倒は私が見る。今ネロの元に送って‥‥ネヴァン!!」

 

「‥‥?」

 

「貴方! お腹に子供がいるじゃない!」

 

「‥‥えっ?」

 

「えっじゃないわよ! ネロと貴方の子じゃない!!」

 

「嘘‥‥そんな‥‥嘘よ」

 

「私は武神流を極めているから生命探知が得意なのよ! 馬鹿! 赤ちゃんまで道連れにして‥‥」

 

「あの悪魔!? それを分かってるから腹部に魔法陣が‥‥この胎児で受肉する気なのね? ほんとクソ! 死ね!」

 

 ネヴァンは魔樹から出ようと必死に足掻くが力はもう無く、空しく沈むだけだ。

 

「嫌、助けてネロ! ネロ‥‥お願い。イリーナさん、この子だけでも‥‥お願い、し、ま‥‥」

 

「あーーもう!! ママ、パパ、パト、バティ、リュー、エル姉ごめん皆愛してる。私…死ぬかも」

 

 

 

 

 メイガスの精霊部隊が悪魔を取り囲み、他の部隊が牽制しながら弓と魔法で援護する。

 

「ええい! 鬱陶しい! 精霊が相手では流石に分が悪いか‥‥」

 

「精霊使いを前面に、決して油断するんじゃないよお前達! 遠距離で消耗させな! 近づくんじゃないよ」

 

 魔力を拳に一点集中し、ブティは弱った悪魔に重い一撃を仕掛ける準備をする。

 

「今回はお前達の勝ちだ! 褒美だ受け取れ!」

 

「ちっ! 往生際の悪いやつだね! ハッーーーーーーーー!」

 

 悪魔は数体の精霊に串刺しにされながら部隊の真ん中で大爆発した。

 

「痛たた‥‥お前達生きてるかい?」

 

「何とか‥‥ブティ様。助かりました」

 

 部隊の前に立ち地面に拳を叩き込んで衝撃波で皆を守ろうとしたが、ブティは直撃し大ダメージを受けた。

 

「一人やられました‥‥ほぼ全員が重体です」

 

「そうかい‥‥」

 

 

 

 

 イリーナは自分の身体をネヴァンに重ね二人の魂が重なってゆく。

 

「姫様!! お辞め下さい! 貴方が死んでしまいます!!! やめてーーー!!」

 

 やがて強烈な光に包まれてネヴァンと魔樹の融合が止まり。魔法陣が消滅するかという瞬間。

 

「その肉体貰うぞ! 馬鹿な娘だ自らを犠牲にして魂干渉を行うなど‥‥」

 

「姫様から出ていけーーーー!!」

 

 杖から魔法を放つが、悪魔の方が早くクリパトは横蹴りされ木に叩きつけられそうになるが‥‥。

 

「無茶すんじゃないよパト‥‥一度撤退するよ」

 

 木に当たる瞬間ブティが折れてない方の腕で受け止める。

 

「嫌です! 姫様が! 姫様が悪魔に!」

 

 怒りで肋骨の痛みも感じないのだろう。ブティは仕方なく気絶させる。急いでその場から離脱し、生き残りと共にその場を離れた。

 

「姫様が悪魔に乗っ取られたなんてどう話せばいいんだい‥‥恨むよ殿下」

 

 

 

 

 悪魔は既に興味も無いのか逃げるブティには目もくれず魔樹に魔法を再び施した。

 

「お前との契約は必ず果たすから安心して死ぬがいい。お前の子も必要なくなったしな! くっくっく」

 

「自爆したせいで力を大半失ってしまったな‥‥こいつが生み出す魔物を使って村々を襲い魂を集めるか? 失敗してもこいつが直接行けば復讐も出来るだろう」

 

『大丈夫よ‥‥ネロさん‥‥絶対助けるから』 

 

「こんな魂でまだ微かにでも抵抗するか女! だが悪くは無い‥‥最後まで足掻いて見せろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー続・エピローグ後の話ーーーー

 

 イリーナがネヴァンの手を取り話しだす。

 

「ネヴァンはこれからどうするの?」

 

「それが帰る場所が無くって‥‥」

 

 ネヴァンはジュラの森に住んでるエルフじゃなく、両親は各地で冒険者をしていたらしい。旅先でネロに出会い両親と別れて結婚したそうな。

 

「貴族の件もあるし、村にも帰れないわよね‥‥家に来る?」

 

「お願いします! 無事に出産出来たら直ぐにでも働きます!」

 

「私これでも姫だから! 子供達も貴方も養って上げるわよ」

 

「ひ! 姫様! そっそれは失礼しました!」

 

 慌てて跪き頭を下げるネヴァン。

 

「あっそういうのはいいから。ほら立って、一度国に帰るしかないわね‥‥」

 

 クリパトが大事そうに両手に何かを抱えてやってくる。

 

「姫様! 馬車の用意が出来てるそうです ネヴァンさんこれ村長さんからネロさんの形見だそうですよ」

 

「えっ!? ネッネロの! な‥‥何でしょうかこの木彫り?」

 

「まぁ不器用にもほどがありますけど、子宝祈願と出産祈願の象徴ストーク鳥だそうですよ。子供が授からないのを貴方が気にしていたそうですから、村長から木彫りを習って作っていたみたいです。」

 

「ふふっ‥‥下手糞ね。ありがとう‥‥ネロ‥‥」

 

 頬から次々と涙があふれ、優しく木彫りを抱きしめ頬ずりするネヴァン。

 

 その背後からネロが優しく抱きしめた幻影をイリーナは見た気がした‥‥。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから何で私も国に帰る事になるんですぅ!?」

 

「リューはお姉ちゃんなんだからエル姉から妹を守りなさいよね!」

 

「都合のいい時だけ妹になるな! 私も勝手に緊急転送と魔石砕いたからパパとエルちゃんに怒られるじゃないのよぅ! 今回はリーナが姉だから! リーナ姉ちゃん助けて帰りたくないの〜〜!!」

 

「は〜な〜せ!! 抱き着くな!」

 

 馬車の中で二人がじゃれ合うのを見て、子供達とネヴァンが楽しそうに笑うのであった。

 

 

 

 

 

 

 




精霊召喚とか、悪魔召喚とか、融合魔法とか早く欲しかったんや工藤。

断章はこれで終わりです。
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