―――時は少し遡り‥‥数日前の事。
リヴェルは分裂体達とある呪文について議論していた。
「ところでパルプンテだけどこいつをどう思う?」
「凄く‥‥やばいです」
「自分の名前の如く、流星が降り注ぐとかメテオだよな? ゲームから現実に置き換わった場合、規模次第だが世界の破滅だな」
本体のAとBとCがパルプンテについて意見を言い合う。
「どの時代のパルプンテかにもよる‥‥全シリーズごちゃまぜだと地獄だぞ?」
「この世界の法則の限界を知りたいから使ってみたい気持ちはある‥‥」
「もしこの先覚える魔法でマダンテ・ビッグバーン・ジゴスパークを覚えたとして、危険性はパルプンテと変わらないと思うんだよ‥‥」
「下手したら惑星破壊魔法って場合もありえるってことだろ? 宇宙の帝王もびっくりだよな‥‥」
「魔法はイメージ。ランダム性はあるだろうけど、ある程度の縛りはあると思うんだよな‥‥ヴェルダナーヴァの作った世界が俺の竜物語を制限してくれることを祈る‥‥祈りたい」
「「「で? 結論は」」」
三人は溜息を吐く‥‥。
試してみたいが安易に実行できないという当たり前の結論。
黙り込む中でポツリと誰かが呟いた。
「時間が逆行する‥‥」
「元の地球に戻れるかもな‥‥」
「悟を助けて自分も殺されないように? でもあの男は特殊な力を持っているぞ?」
「もしもの話だ、限りなく可能性の低い‥‥もしものな」
―――時間は戻る。
「日本に帰ってドラクエしたいと思った罰か‥‥」
「あ‥‥あ、、あぅ」
「おっ‥‥お逃げくださいリ‥‥ヴェル様」
「ひっ‥‥!」
余りの恐怖にハヤテは気絶し、ハンゾウは震えて動けない。葵は絶望した顔で尻もちを付いている。
どうやら俺は【とてつもなく恐ろしい存在】を呼びだしてしまったようだ‥‥
ドラクエシリーズで何度もみたことがある‥‥。
頭だけでもマンション5階くらいか?
じげんりゅうは両手で次元の穴を少し広げてから、首を伸ばして辺りを見回す。
「父よ、ここは何処ですか? 知らない世界ですね」
俺はビビりながらも三人を何とか背中に背負い、ジリジリと後退していた。
「ふえ?」
「いかがしたのですか? 父?」
「父? 俺が?」
「父は駄目でしたか? それではお父上と」
「嫌‥‥呼び方はどうでもいいけど」
俺が呼び出したから父親ってことか? 何にせよ攻撃されないのは助かった‥‥。
「それで私はこの世界の次元を管理すれば良いのでしょうか?」
「うん? いや、好きに生きていいと思うよ? お前生まれたばかりだろ? なにか俺の知ってるじげんりゅうと威厳が違うし‥‥」
「威厳‥‥うっ、精進します。今父上から生まれましたからね」
「俺から‥‥。まぁ〜特にやって欲しいこともないし、次元の狭間でのんびりしててくれ」
「次元の綻びがあちこちにあるから、私が修復してきますね! 父上、それでは行って来ます!」
顔を次元の中に戻し空間から完全に消えた息子? 娘? にポカーンとしていると背中で三人が動き始めた。
「流石はリヴェル様! あのような使い魔もいるのですね!」
「あ〜う〜あ〜♪」
「もうやだぁ〜おうちに帰るの〜〜!」
余りの恐怖に幼児化して泣き崩れる葵ちゃん‥‥。
「ほら、よしよし。まだお姉ちゃんを生き返らせてないから頑張ろうな〜」
泣きじゃくる葵の頭を撫でて慰める。
中学生くらいだもんな葵は‥‥年相応に精神が未熟だ。
「ふん! リヴェル様が竜なんて呼び出すからでしょ!」
「へいへい、悪うございました。魔法のせいすい飲んで再チャレンジだ!」
今度はちゃんと武器を置いて、俺と皆も赤姉が生き返りますようにと両手を合わせて祈った。
「パルプンテ!!」
「「「「‥‥‥‥」」」」
「何も起きないか‥‥」
「そんな‥‥姉様‥‥」
「‥‥無念」
「あーーーー! あああーーーーーー!!!」
大声で叫ぶハヤテが指を挿す。
「ん? 俺の後ろか?」
俺は後ろを振り向いた瞬間目にしたものは‥‥。
全裸の美女だった!
「何見てんのよ! 変態!!」
「あべし!!」
進化した葵に殴られて、俺は鼻血を出しながら勢いよく吹き飛んだ。
「お姉様!! 良かった! 本当に良かったようぅ〜うわーーーん!」
「私、なにゆえ裸なのでしょうか? そ、それに‥‥と、殿方に裸を見られてしまいましたわ!!!」
スライム風情に裸を見られたせいで、恥ずかしがって顔を両手で隠す姉。
その姉に抱き着き、姉の胸を隠してギャン泣きする葵というカオス。
しかし、なにかか予兆でもあったんだろうか? いきなり復活してたな? しかも全裸で‥‥おっと鼻血が。
「あっあっうーうー」
「わかってるよ、ハヤテ。今制作中だ」
「リヴェル様、何か赤姉様が着るものはないのでしょうか?」
「あるぞ! ほら今できたところだ。赤姉ちゃん皮のドレスだ、これを着な」
「あっ、ありがとうございます。その‥‥後ろを向いていて貰えますか?」
俺はハヤテにあっちを向けと、ぐいぐい顔を押されて赤姉を見ないようにした。
ハンゾウは最初から目を閉じ反対を向いている。コイツ‥‥できる。
「着替えました! もう良いですよ」
「ふむ‥‥ぱっつんぱっつんだな」
「す‥‥すみません」
胸を押さえて恥ずかしがる赤姉にSAで親指を立てる。
「ちょっと葵! いつまで抱き着いてるのですか!? ん? 貴方‥‥その姿」
葵の顔をペタペタさわり角を根元から‥‥ボキッ!
「ぎゃあああああああああーーーーー」
「これ私のですよ? 返しなさい」
地面に転がりながら激痛で泣き叫ぶ葵ちゃん。
あっ‥‥ビクンビクンして痙攣してる。
ベホイミ! 良かった新しい角が生えた‥‥しかも元の青色だね。
「これどうやって付けたらいいのでしょう? 困ったわ‥‥」
「葵ちゃんが言ってた非常識ってこういうことか‥‥左側だけに角あったのか?」
「はい‥‥そうなのです。今は御覧の通りで」
「それじゃ、角を元の場所に押し付けたままにしといて。うん、そそ」
名前は何にしようかな? 赤姉だから赤音? 風音と被るな‥‥葵だし茜でいいんじゃね?
「よし! 決めた。お前の名前はアカネだ! 字は茜と書く」
ふぇ? と可愛らしい声をだして赤姉は横に倒れて進化に入った。
「あっ‥‥やべ‥‥」
《肯定。MPの消費上限を超えました。体内の魔素をMPに変換して消費します。お休みなさいマスター》
俺は意識がなくなり気絶した。
「そう‥‥リヴェル様と言うのね。小さくなっても可愛い‥‥」
「うううう!!! 酷いです姉様! いきなり角を折るなんて!」
茜が生き返ったことにより、混ざった魂が抜けて正しい進化が葵にも起こった。
進化が終えた妹が、先に目覚めている姉にぐいぐいと詰め寄る。
「もう! 貴方が私から角を奪うからでしょ? 鬼は角が生命の源なんだから、返して貰わないと生き返ったのにすぐに死んじゃうわ」
茜の言葉に我に返り、ポロポロと涙を零す葵。
「ご‥‥ごめんなさい。ごめ、う~許して。痛かったよね? ごめんね? お姉ちゃん‥‥うわーーーーん」
茜は葵を優しく抱きしめて頭を撫でる。
「それに私の角が体内の魔力循環を阻害してたでしょ? リヴェル様に直して貰った今の方が体が楽じゃない?」
「グスン‥‥確かに体の異物感がなくなりました。目も良く見えるようになった気がします」
「別に気にしてないわ。あのときは自分の命で貴方が助かるならと、そう思っていたもの」
「でも‥‥お、姉ちゃん。意識あったのに。わた、わたし‥‥許して、ごめん、ごめんな、さい‥‥」
さらに強く茜は葵を抱きしめる。
「馬鹿ね‥‥姉は妹を守るものよ」
「‥‥」
慈愛に満ちた優しい瞳で、涙を流しながら葵を抱きしめる茜。
だが辺りに嫌な音が鳴り響く。
それに素早く反応したハンゾウが茜に告げる。
「茜姉様。葵姉様の首が折れてしまいます‥‥」
「あーーわーーあーあ」
「ふぇ!? ご、ごめんなさい葵! 進化して力の加減が!」
幸せそうに? 泡を吹いて倒れる葵ちゃんであった。
―――リムル・side―――
「わかった! 直ぐに向かう!」
ゴブタ達から緊急連絡が入った俺は急いで現場に駆け付けた。
数名が地面に倒れており、現在乱戦中のようだ。
「ふむ、随分と装備に助けられておるのう‥‥フッ」
年老いたオーガの連撃がゴブタを襲うが盾を構えて必死に凌ぐ。
「重っ! 爺の癖に何て斬撃っすか! 自慢の装備っすよ〜ハッ!」
もう片方では若いオーガの二体にリグルとゴブツが相対している。
今にもスクルトが破られそうだ加勢しないと危ういか?
良かった‥‥。地面に倒れているゴブリン達はどうやら寝ているだけのようだな‥‥。
「何だ? お前達は‥‥リグル状況を説明してくれ」
オーガから一度距離を取り俺の元に来るリグル。
「面目在りません‥‥強力な力を感じたので向かってみればオーガが相手だとは‥‥」
ゲームとは違い化け物じゃなく人間ぽいんだな‥‥。
「お兄様‥‥スライムです」
「あー母上が言ってた北に拠点を構えてる奴らか‥‥」
鬼の美少女が兄と何やら俺達の話をしているみたいだな。
「事情は分からんが戦闘は止めてくれ。俺達は争う気は無い」
「若様、こやつら中々の強さです。共に戦えましょう」
「まずは詫びよう。すまなかった‥‥俺達も気が立っていたのでな」
話が分かる奴らで良かったよ‥‥。
「ほら貴方。頭を下げて謝りなさい‥‥本当に申し訳ございませんでした」
「姫様!! スライム如きに謝らなくても良いじゃありませんか! あっ痛い! 翁まで痛っ!」
「別に俺の仲間も無事だし、そこまで謝らなくても別にいいぞ?」
「いえ‥‥貴方の仲間のスライムをこの者が斬って殺めてしまったのです‥‥」
「はあーーー!? 何だと!!」
『おい! リヴェル! お前オーガの里で死んだのか!』
『食料探しのときかな? ちょっとスラぼうが呼んでるから後にしてくれ』
何で黙ってたんだ…痛覚無効もない癖に! 死の感覚を共有してショック死したらどうするんだ!
「俺の兄弟を‥‥許さんぞ! お前ら!」
俺はSAを装備し身体装甲で覆って強化する。
「くっ!! 何と言う魔力だ‥‥」
「お許しを! 貴方様のように力をお示しにならなかったのです‥‥お許しを」
俺は翼を展開し、速度を乗せた一撃で若と言われたオーガの鎧を爪で薙ぎ吹き飛ばす。
続けざまに、リヴェルを殺した女を守るように立つオーガの男達を水刃との連撃で武器事破壊して裏拳を叩きこんだ。
邪魔者がいなくなったところで、女に手刀を叩きこむが翁に刀で防がれる。
「刀が持たぬか‥‥お主の怒り。ワシの首で勘弁してくれぬか?」
俺は全包囲を囲むようにしてファイヤーランスを素早く300展開した。
「駄目だ『あーこっちもオーガ助けたから。連れて帰るわ』はぁ!?」
『お前! オーガに殺されたんじゃないのか!? 何故助ける』
『ちょちょ! 何でそんなに怒ってるんだよ? 死んだのは分裂体だぞ?』
《告。リヴェルの旧分裂体は死んでも本体に影響は無く、精神に負荷はありません》
殺された件であいつは怒ってもないし、死んでも問題なかったってことかよ‥‥たくっ。
『旧分裂体だと痛みはないし、精神にも問題はないんだな!』
『あーすまん。そりゃお前は怒るわな‥‥VRゲームでMSに乗って死んだら現実に戻る感覚だよ』
「そこのお前、リヴェルにはちゃんと謝っておけよ? お前達も悪かったなフルポーションだ」
俺は倒れたオーガ達に回復薬をかけた。
力を俺が示した所為かオーガ達は従順になったので、一度町に戻ることにした。
そして今までの経緯を若様とやらに聞くことができた。
「オーガの里がオーク共に襲われ我ら以外は生き残りはいない‥‥。母上が貴方様と協力して事に当たれと遺言を残しました‥‥」
「リヴェルの方もオーガの生き残りを助けたみたいだぞ?」
「真ですか!」
桃色の髪をした子が俺の目の前まで押し寄せる。
「あ、ああ。子供のオーガ二人と姉妹の二人だな」
「あやつらも無事であったか‥‥」
「よがっだーよがったよー」
「感謝いたします‥‥」
「あの子も無事だったのですね」
爺さん、おっさん、イケメン、おっぱいが順番に話す。
「お前達は俺の配下になるってことで良いんだよな?」
「はっ! オーガは元より強さを誉とした種族です。何より貴方は力を示し、許しも与えてくれました。仕えるに値する主です!」
拳が震えているな‥‥己自身で敵が討てないのが悔しいのだろうな‥‥。
なら俺ができることはその力を与えてやる事だ!
6人のオーガが一斉に跪き頭を下げ俺に忠誠を誓った。
「よし! お前達全員に名を授けてやる!」
「お待ちください! リムル様 名付けとは本来危険が伴うもの! 安易に行うべきではありません!」
桃色ちゃんが止めるが大丈夫だ! 魔法のせいすいも7本あるし、ヴェルドラもいる大丈夫だ! 問題ない!
「大丈夫だって、それとも俺に名付けられるのは嫌か?」
「そういうわけでは‥‥」
「俺は異論はない。謹んで名を貰い受ける」
「ほれ、順番に並べ〜名付けていくぞ〜」
―――ベニマル、シュナ、シオン、ソウエイ、クロベエ、ハクロウ。
リムルが名付け終わり盛大に溶けた。