会議の緊迫した空気が一気に弛緩し、皆が脱力した。
「はっはっは! 流石は守護者様ですな! 頼もしいですぞ」
リグルドが盛大に大声で笑い、更に部屋の空気が明るくなった。
「あははは‥‥はぁ〜」
リムルが苦笑いを浮かべて呆れのため息を付く。
「嫌ですわ‥‥私が知っていますよね? という話をリヴェル様がしないから白けただけです」
皆の視線が俺に突き刺さる。
「俺が知ってる事は全て喋ってるぞ?」
何の話なんだ? オークロードに進化してる話も皆にしたんだが?
「はぁ〜〜もういいです。皆様、このジュラの森で何かを企んでるものが居ます」
「続けてくれ」
トレイニーさんが少し呆れた後に語りだし、リムルが話の先を促す。
「その何者かはジュラの森に住んでいる魔物達に名付けをして回りました」
「私の長男がそうですな‥‥」
「リザードマンのガビルとかいう奴もそうだろう」
「そして俺の親父に名を与えるから配下に為れと言ってきたな‥‥」
リグルド、ソウエイ、ベニマルが続けて話す。
「私も当初は強い配下を集めるだけかと思っていましたが‥‥オークに名付けをしてその様子が一変しましたの‥‥」
「オークがオーガを下し、リザードマンを攻め始めた‥‥その明確な答えをトレイニーさんは持っているんですね?」
リムルがトレイニーさんに問う。
まるで蟲毒の壺だな。最強の存在を生み出すって事に置いてだが‥‥。
「何ですか? その蟲毒の壺って?」
「えっ? 俺声に出し‥‥ATフィールド!!」
これだから半精神生命体は‥‥。ヴェルドラにお前はMPの殻で守られているから精神攻撃を受けにくい、その反面魔素を常に身体に張り巡らせていないから精神生命体相手には心の声が駄々洩れだ。特に精神生命体(姉達には)注意しろって言われてたけどさ。
「呆れましたわ‥‥。わざと声を漏らして挑発されていると思っていましたのに素でしたのね」
「いや〜すみません。馬鹿にしたり、挑発する気も無いですよ」
「ストーカーだの! 太りますよだの! ええ‥‥ええっ! 攻撃じゃ無・い・と!」
リムルが大賢者さんに訳を聞いて爆笑してるし。
俺は静かに怒るトレイニーさんに、ショウガに似た奴をすりおろしてポテチに混ぜた奴を慌てて空の皿に盛る。
「怒ってると美人が台無しですよ? これ新作です」
「また! そうやってごまか‥‥ぱりぱりぱり」
何でリムルには心の声が漏れて無いんだ? 大賢者にかかればATフィールド無しの俺の感情や思考なんて丸見えだろうに‥‥悟がやらないだけか?
《肯定。私が常に防衛しています。そうしないと姉が常に貴方に解析鑑定を実行しますので》
《‥‥ぷい》
何がぷいだよシエルさん! 姉妹で会話する事でAIが進化するみたいに為って無いか? 感情が芽生えるのが早すぎだろ。
「あの〜すみませんリヴェル様。蟲毒の壺とは一体?」
リムルは笑い転げるし、守護者様は皿を抱きかかえて無言になるしで困り果てたリグルドが俺に問う。
「ああ、呪術的な意味では‥‥これはいいか。壺の中に様々な毒を持つ生き物を入れて最後に残った奴が最強の毒を持ってるって意味だよ。ジュラの森で行われてる行為が酷似してるって思っただけ」
「なるほど‥‥差し詰めジュラの森が毒壺で中に入れられたのが我々だという事ですな」
「毒を魔素として考えると最強の魔物だよな? 種として最強って事は魔王種でも作ろうとしてるって事か?」
流石だなワトソン君! もうそこに辿り着くとは‥‥。
「‥‥ぱり そうです! オークロードはジュラの森で力ある魔物を食らい進化するつもりでしょう」
最初からそう言いなさいよね! と言いたそうに口周りにポテチの欠片を付けたまま俺に指を挿す守護者様。
「じゃー暴走うんぬんはリヴェルのでまかせって事か?」
「異議あり! 証拠として葵を提出します。」
葵は提出されました! と言ってリムルを抱きかかえてリムルの椅子に着席する。
「リムル様。私達の里を襲ったオークは全てが強化されていました」
「つまり?」
「1000人位だったと思います。その全てが強化されていました‥‥これは異常です。現在進行中の20万全てのオークがオークロードによって強化されてるとしたら?」
「既に魔王級の能力だよな‥‥それが本当なら暴走して引き起こしている力だという事か葵?」
「私と似た力なら十中八九そうだと思います。食べれば食べるほど力が増しますから‥‥。暴走した私が断言しますが器を超えて力を手にするのは想像を絶する痛みですよ? 器が壊れて精神が何時崩壊してもおかしく無いです」
「俺も食べる系何だが‥‥。そういや痛覚無効だったな」
「お前のスキルはアレだから大丈夫」
何が大丈夫なの!? アレって何!! と言いよるリムルを宥めているとシュナが俺に問う。
「オークロードが食べて配下に力を与える事は分かりましたがリヴェル様。貴方が我が里を訪れた時には亡骸は見当たらなかったのですよね?」
「ああ‥‥綺麗さっぱり”どちらの死体”もな」
「‥‥やはりそういう事ですか」
「私も調査してきましたが輜重部隊が存在しません。奴らは兵站を無視して直進を続けています」
「20万もの軍勢の食料をどうやって賄うか疑問だったんだがな‥‥正に暴走って奴だな」
「このまま食らい続けるしか無いのなら‥‥どの道、行きつく先は破滅じゃろうに」
ソウエイ、ベニマル、ハクロウがシュナに続く。
「死体を食らうってマジかよ‥‥」
顔を引きつらせるリムルに静かにトレイニーさんが告げる。
「ユニークスキル
「その能力は?」
「食べた魔物の性質を取り込む、貴方の捕食者と似ていますが一度で能力が得られる貴方とは違い、回数を重ねる事で能力を得られます」
「飢餓者か‥‥ユニークスキルは願望であり心の形だったか? 飢餓に苦しんだとか? 俺の捕食者もどうて‥‥げふんげふん。一部おかしいユニークスキルの奴もいるけどな」
「ふふっ‥‥ユニークだろう?」
イラっとしたリムルに水鉄砲をされるがキングな俺はビクともしない。
「あまり乗り気じゃありませんわね? 今回の件は数名の魔人が関与しています。背後には魔王がいる事でしょうね」
「何だかその魔王の掌で踊らされてる感じがしてどうもな‥‥ベニマル達には悪いが結局どの種族も魔王の犠牲って事じゃないか?」
情報があれば本質を見抜く力が凄いなリムルは‥‥。
濡れた顔を嬉しそうに拭いてくれている茜に礼をしたいがそれは雑巾だぞ‥‥。
「ふぇ? もっ申し訳ございません!!」
可愛いから許す! あと揺れる良いものを見れたから尚許す!!
リムルをシュナに預けた葵に理不尽に折檻されているとトレイニーさんから突然念話が来た。
『リヴェル様。リムル様にオークロードの対処を迅速にする様にお願いします。20万もの大群が森を進行で荒らすのです』
『うおーびっくりした! リムルも俺も対処はするつもりですよ?』
『魔王レオンとイザワ・シズエに付いて聞きたくありませんか?』
『‥‥‥‥そういえばジュラの大森林にカザリームの居城ありましたね』
今度は口を開けてトレイニーさんが驚いた。
『ふふっ、何でも知ってるは俺も専売特許なんですよ。その情報の為に頑張らせて頂きますよ』
「リムルよく聞け‥‥。その魔王は味噌と味醂と醤油と日本酒を消した悪魔だ!!」
「殺るか‥‥味覚があったら憤死する所だったぜ」
何とも言えない面妖な顔をした後に、一度頭を振り冷静なキリッっとした表情でトレイニーさんが話しだす。
「改めてオークロードの迅速な討伐の対処をお願い致しますリムル様。暴風龍の加護を受け牙狼族、鬼人を庇護下に置く貴方様なら必ずや成し遂げられるでしょう」
「リムル様なら当然です!」
シュナからリムルを奪い頬ずりするシオンが嬉しそうに言う。
「よし! この件は俺達が引き受けた。早速だがリザードマンに使者を送りたいと思う」
「あの者達に使者をですか‥‥?」
「そう言うなシオン‥‥。数は力だ。それに協力体制を築かないとリザードマンが減れば減るほど向こうは強化されるだけだぞ?」
「使者は私が行って参りますリムル様。リザードマンの党首に直接協力を要請してきます」
「ソウエイ頼んだぞ」
「はっ!」
「叔父上! 私もお供してよろしいですか!」
「お前はまだ駄目だ‥‥修行を詰めハンゾウ。ではリムル様、行って参ります」
下唇を噛みながら悔しがるハンゾウを置き去りにして、ソウエイは煙となって消えた。
シオンがハンゾウの頭を撫でハクロウが静かに呟く。
「大事にしすぎるのも問題なんじゃがな‥‥。察してやれと言うには告な齢じゃな。お前が出来る事は強く成る事じゃハンゾウ」
ハンゾウは静かに頷くと俺の前に戻ってきた。
「力が欲しいか小「や・め・ろ!」
「お前! マジで小学生相手に魔改造するのは止めろよ!? 心の成長にも大事な時期なんだからな!」
ハンゾウは突然口論を始める二人に困惑顔だ。
俺は舌打ちをして急に割り込んだリムルに反論する。
「別に変な事は考えてねーよ。ハンゾウにも忍者的なSAを作ってやろうと思っただけだ‥‥」
「今は背伸びしないでゆっくりと地力をつけて良きゃいいんだよ! ただでさえ鬼人になって力はあるんだぞ!」
シュナが耐え切れなくなって笑う。珍しく大笑いだ。
「あはははは! ウフフ! リムル様とリヴェル様! あはは! 子育て中の夫婦みたいですよ! うふふ」
俺達はバツが悪くなってお互い顔を背けた。
周りの皆も次々に笑い出し俺とリムルは更に居心地が悪くなる。
「悪かったよ。ハンゾウの実力もまだ見て無かったな‥‥今度修行してる所見に行くわ」
シュナに釣られてハンゾウも笑って笑顔を取り戻していたので良しとしよう。
「はい! 頑張って修行します」
皆が戦準備で部屋を後にした所でスライム達が呟く。
「お前は悪ふざけがすぎる。でも中二病全開か‥‥楽しいだろうな」
「羨ましいよな‥‥子供時代に自分で色々開発できたらさぞ楽しかったろうな‥‥」
子供時代を思い出し、二人はトラウマと羞恥で床を転がった。
「そういや加護って何なんだ?」
「先にお前に聞きたい事が在るんだが?」
「ん? 何だ」
「ワールドディストラクション級のエネルギーを、お前から検知しましたと大賢者から報告があったんだけど?」
俺は大量の汗をかいて口笛を吹こうとするが。物凄い笑顔の圧で青筋を立てた悟がにじり寄る。
「で? 星さんよ‥‥これの発生理由と再発について一緒に検討しようじゃないか? あ〜〜ん?」
「私と致しましても、善処する方向で進めている立場でありまして。真に遺憾でありますが‥‥」
俺はシオンの料理を少しずつ口に入れられる拷問に耐え切れずあっさりゲロった。
「もうそれ絶対やるなよ? パル‥‥あー口にもしたくねえ、事情があるにしたって正気かお前? 蘇生呪文を覚えなくても世界樹の葉があるかもしれんだろ? この世界の魔法もあるんだぞ?」
「もう誰かが泣くのは見たくなかったんだよ‥‥それに呪文の規模や影響確認しとかなきゃ余計に危ないだろ? ちなみに大ちゃんに封印してもらったし、使用許可は大賢者さんにも取らないと使用不可にしてる」
「過ぎた事は仕方ないが‥‥世界崩壊する事を望んだりして無いよな星?」
「それは絶対無い。俺は今この世界に来て凄く楽しいんだ! それに次に俺が進化したらお前にパルなんとかさんの呪文を覚えるかもしれないぞ♪」
「や・め・ろ! お前もう進化禁止な? 絶対だぞ?」
俺は爆笑して焦るリムルに言う。
「あはは! あ〜まだ口の中が気持ち悪いぜ‥‥んで加護について教えてくれよリムル」
「あー中二病卒業した今ならいいか‥‥精霊ルビスの加護だよ」
「まじ? ルシアの加護じゃなくて?」
「ルシア? ルビスだぞ? 効果は精霊に懐かれやすいだ」
「えっそれだけ? 他には? 魔力が上がったりとか」
「リムル様ー! いつまでリヴェルと話してるんですか?」
シオンがリムルを迎えに来たから此処までだな。
精霊工学が楽に勧めれるのも加護のお陰か‥‥でもトレイニーさんに効果が無いような?
「それだけだぞ? 今後隠し事は止めろよ? 大賢者が解析鑑定をお前に頻繁にするのもその所為だからな」
「姉妹で情報はほぼ筒抜けだぞ? でもまー相談はガンガンするよガンガンな!」
凄く嫌そうな顔をしたリムルを笑顔のシオンが抱きかかえて持っていく。
「「リヴェル様--!! お話終わりました? 終わった?」」
茜と葵が出迎えに来て、葵が俺の背中に乗り込む。
それを羨ましそうに見る茜ちゃん。
「悪い悪い。んじゃ俺と茜は回復薬の用意と葵は札作成を頼むな」
小屋に帰ろうとした所でハヤテをおんぶしたクロベエと鉢合わせた‥‥。
「ううう〜〜〜ああああああーーーー!!!」
「すまん。忘れてたわけじゃ無いんだ! 今迎えに行こうと」
クロベエの背中から飛び降りたハヤテが、俺の背に乗り葵と一緒に為って暴れる。
「でもリヴェル様? そっちは鍛冶屋じゃなく小屋ですよね?」
「茜‥‥お前は俺の事が嫌いなのか?」
えっ!? すきでしゅと小声で呟き、顔を赤らめる茜に反して激しさを増すハヤテと葵。
「リヴェル様も大変だべな‥‥ハヤテの武器は四日で仕上げるべ。成長に合わせて武器も成長する方向だべよ」
「おお! そいつは凄いな。作ってくれるって事はハヤテに才能はあるって事か」
「うん、だべ‥‥正直困惑する強さだどもハヤテちゃんだしな‥‥」
俺はクロベエに礼を言い、固まる茜を背に乗せて皆で小屋に戻った。