リヴェル家の地下で精霊と鬼ごっこを始めるエルフ。
中級精霊と会話を試みようとするミラノさんだがおちょくられて遊ばれている‥‥あっコケた。
必死に追いかけて話しかけるが精霊達は風の様にすり抜ける。
「私と契約して召喚獣になってください〜」
ミラノさんは畜生のぬいぐるみかな?
「さっきは聞きそびれたけど。ミラノさんルートって何ですか?」
「へっ? あー外ではダークエルフとか言われてますね。白エルフがリーフで世界樹の葉を表し、黒エルフがルートで根と表現します。元は同じエルフでしたが、ある事が原因で呪われ各地に四散してしまいましたの。その原因を作った所為でハイヒューマンから狙われ迫害されたりしたものですから、エルフ達は身分を隠す為にお互いをそう呼ぶようになったという事ですわ」
「そっか人間も私人間ですとか言わないもんな普通。関西人と関東人みたいなもんか」
「エルフを迫害する人間はしまっちゃおうね〜」
「あっリムル。既に初代魔王様にハイヒューマンは国諸共しまわれちゃったよ」
「よくもまぁ〜そんな大昔の話をよく知っていますね、リヴェルさんは‥‥今は血も薄れハイヒューマンは途絶えましたけどね」
俺の作業机にとぼとぼと精霊に振られたミラノさんが歩いて行く。
「精霊も勝手に住んでるだけだし、違法性は無いでしょ? ミラノさん」
机の上に置いてある品を興味深そうに眺めた後に手に取り角度を変えて調べる。
現在、複数のSA失敗作を分解して悪魔版のぐれいとでーもんハンドくんを試作中だ。
「それはスピリットアームで略してSAって言うんだミラノさん。素材が無いからニコイチで‥‥あ〜それを解体し素材に利用するって事ね。そしてこいつは試作中だけど名前はまだなんだよなリヴェル? デビルアームで略してDAかな」
「またお前は勝手に‥‥せめてデーモンにしてくれよ」
ミラノさんは無言で構造を見て唸り、パーツに魔力を流して魔力で創造された爪やワイヤーが出るのを繰り返す。
「いや〜鬼も悪魔と同じで精霊と相性が最悪とか思わんだわ‥‥」
「強化するどころか弱体化だもんな。鬼と悪魔ねぇ…天使と精霊の三竦みだっけ?」
「そうそう。カテゴリー分けするなら天狗も天使になるんだろうな」
黙々と完成系の作業SAを手に取り、俺に動かしてと無言でミラノさんに差し出される。
「小精霊? 違う微精霊? 使用者の意志が反映されやすい様に、意志が希薄な子と契約して動かしてるのね。そんなの出力が足りないわ‥‥それに精霊魔導核は何処?」
「原初の魔法陣を組み込めば精霊を最高効率で動かせるじゃん。使用者の魔素だけで精霊に負担を掛けないし、ていうかSA自体が魔導核だよ?」
フラフラとミラノさんは後ろに下がり、泣き崩れた。
「スライムに‥‥私達の技術力が劣るなんて‥‥」
「おい! ミラノさんを泣かすんじゃねぇよリヴェル」
「俺の所為かよ‥‥原初の魔法は土の精霊王が教えてくれたし、後は大体本に書いてあるだろ」
スライムのぎじゅちゅりょくは世界一なんだぞ!
眼鏡を取ると一段と可愛らしいミラノさんが涙を拭いて告げる。
「弟子にしてくださいリヴェルさん‥‥いえリヴェル師匠!!」
「良いですと‥‥いや駄目だろ! 国のお抱えじゃないのミラノさん?」
「辞めてきます! ガゼル王に話を付けてまいりますので! 失礼します!」
言うや否や地下を駆けあがり、風魔法を駆使して森を駆け抜けていくミラノさんの後姿を俺とリムルは見送った。
「これ無職になったミラノさんにダメって言ったら泣かれる奴だよね?」
「あんな美人エロフを弟子にとか駄目に決まってるだろ! 俺が許さん! ずるいずるいずるいずるい! 俺も美人なエロフと一緒に住みたい!」
機織りの仕事を中断して、リムル家の昼食を作りに戻るシュナに全部聞かれていたリムルは、良い笑顔のシュナに顔を鷲掴みにされて連行されて行った。
「助けて!! リヴェ‥‥あっ」
「さて俺も昼飯の用意するか‥‥」
今日は休みなのでハンゾウも手伝ってくれている。
ご飯とサツマイモを釜で焚きながら、魚でダシを取ったお澄ましと卵焼きを作る。大豆は見つかったが味噌と醤油には時間が掛かりそうだ。
「「「ただいまーー!! あうぃあー!」」」
「「おかえり」」
4人がテーブルに着いたので昼食のサツマイモご飯を並べていく。
白米を見たハヤテのワクテカが止まらねぇ‥‥。
気持ちは痛いほど分かるがテーブルが悲鳴を上げているぞ。
「今日は何ですか? 麦じゃない? この白い粒は米ですか?」
「あれ? 鬼って米食べないの?」
「あああ! あああああぅ、あああぅーあう!」
「あー肉が主食で米は酒に変えてたのね。そりゃ麦飯好きのハヤテが怒るわ‥‥」
「「いただきます いああいう」」
芋ご飯を頬張りながら涙を流す俺とハヤテ。
不思議そうに眺める三人も美味しい、美味しいと食べすすめる。
浅漬けの大根の漬物を置いて俺は言う。
「知り合いの墓参りに行ってくるわ。トレイニーさんに場所を教えて貰ったんだ」
「誰うぇのおふか何ですか? リふぇる様?」
葵が食べながら俺に聞いて来る。
「帰りは遅くなるかもだから、夕飯はゴブイチの所かシュナに頼んでくれ。井沢静江さんって言うんだ」
ブフォーっとお澄ましをハヤテが俺の顔めがけて噴き出した。
激しく咳込むハヤテに茜が駆け寄る。
「急いで食うからだろハヤテ! お代わりもちゃんとあるからご飯はゆっくり食べなさい」
俺は顔を拭きながら、ハヤテを叱る。
「あああ! あう! あああいああ、あああ?」
「もうハヤテちゃん、お茶も零すわよ?」
茜が布巾でテーブルを拭いてくれているが、ハヤテは身を乗り出して俺に話しかける。
「ハヤテ‥‥すまんが何を言ってるかわからん。私のお墓ってどういう意味だよ?」
言葉も念話も喋れないハヤテだが魂の回廊で何となく理解はできるんだが‥‥。
「リヴェル様。私が付いて行きましょうか?」
「風音と一緒だから大丈夫だ。茜はクロベエ達の手伝いを続けてくれ。建築作業の手伝いには大活躍らしいじゃないか」
「うふふ、建築だけじゃなく何でもこなせますわよ?」
「そうだね。お姉ちゃんは解体とか壊すのも上手だもんね♪」
クスクスと笑う葵を睨みながら茜が呆然とするハヤテの口周りを優しく拭く。
「あっそうだ! 湿布作るの手伝ってよお姉ちゃん。ハク爺が欲しいんだって」
「リグルドさんも言ってましたわね‥‥アレ臭いから嫌ですわ‥‥」
ハンゾウが最後の漬物を茜に取られてため息交じりに言う。
「リヴェル様。漬物無くなったので切ってください」
「あいよ、夜には戻ると思うから」
「あうあうあああ!」
「ん? 一緒に行くのか?」
「あうぃ」
「つまらないぞ? 子供達と遊ばなくていいのか?」
ハヤテはしっかりと頷いた後、芋ご飯を美味しそうに食べ始める。
――――――数日前の回想
俺はオークロード討伐の報酬を貰いにトレイニーさんの元に訪れていた。
「いらっしゃいませ、リヴェル様。こちらのテーブルへどうぞ」
「報酬を貰いに来たよ。聞かせて貰えるかな?」
「フフ、もちろんですわ。私が知っている事は全てお話致します」
トライアが紅茶とポテトチップスを置きながら言う。
「お姉様! 頑張って!」
「早く向こうへ行きなさいっ!!」
顔を少し赤くして手を振って妹を追い払うトレイニーさん。
からかうと可愛らしい姉が見られるからか妹達にいじられてるな。
「まったく‥‥まずは魔王レオンの事から話しましょうか」
レオンはカザリームと戦い勝利した。暫くは此処の研究施設を利用していたのも同じ。
だが内容は興味深い者だった。
まずレオンは少女を治療しようとしていた。恐らくはクロエだろう‥‥。
シズさんはカザリームとの戦いで少女を守り切って大怪我を負った様だ。
トレイニーさんは魔王の戦いには干渉せず、遠くで見守るだけだったらしい。
「イフリートの力を解放して、何とか少女を守っていましたが瀕死の重体に‥‥その小さな少女騎士が確かシズエと呼ばれていましたわ。養生して復帰しているのを森で見かけましたが。城で何があったのか分かりませんが、配下が墓を作っていましたので恐らくは…私が知ってるシズエさんの情報は此処までですね」
結局、俺は静江さんを救えなかったか‥‥。
しかし、知りたい情報を手に入れても謎だけが増えていくな。
トレイニーさんはレオンが治療したい少女の名前を知らないのも困った。
クロエだと仮定しても病気になんて設定は無いはずだ‥‥。
人間の寿命で考えるとレオンと同じ寿命はおかしいぞ? 少女はクロエじゃ無いのか?
それに何故ユウキくんに召喚されていないんだ?
「ありがとうトレイニーさん。情報助かったよ」
「いえいえ、大した情報じゃなくて申し訳ありませんわ」
「もう! お姉様じれったい!」「そこは抱き着いて! 押し倒して!」
怒ったトレイニーさんと姉妹は仲良くじゃれてるし、俺はお暇する事にした。
――――――回想終了
ハヤテは俺を抱きしめながら風音に乗り、カザリームの居城跡に向かっている。
「静江さんと知り合いなのって? いや会った事は無いよ」
「ああう? あああいあーあ」
「夢で‥‥いや、同じ故郷に住んでいた人だからかな?」
「あう?」
「日本って言うんだ。遠い、遠い所だよ」
静江さんは純粋に故郷に帰りたかっただろうな‥‥。
ハヤテは静かに目を閉じて呟いた。
「あいあうあ?」
「そうだな‥‥帰りたくないって言えば嘘になるが、異世界に来るのが夢だったんだよ」
首を傾げて異世界って? と聞くハヤテ。
あはは! 異世界転生なんて言ってもハヤテにはわかんないよな。
「今はお前達もいるし、帰りたいとも思わないよ」
そういうとハヤテは嬉しそうに鼻歌を歌うが、それは遥か昔の日本の歌の様にも聞こえた。
「見えましたよ! 主様」
風音がそう言うと所々焦げ付き崩れた城壁が見えて来た。
中央の城はレオンが住んでいた筈だがボロボロに崩れている。
何故か西側の塔だけは無傷のようだ。
「古代の城って感じだな。コケも良い味出てるわ」
「‥‥」
無言で一点を見つめるハヤテが気には為るが、俺は風音から降りて壊れた城門を潜る。
「確か左奥の花壇がある場所だよな?」
「主様、念のために風の結界を周囲に展開しますね」
俺は風音に頷いてから花壇に近寄ると、日の当たる場所に墓標が二つ建てられていた。
「シズエ此処に眠るか。さて‥‥隣はクロエなのか?」
俺が隣の墓に移動しようとする所で、花を詰んできたハヤテが隣の墓前で手を合わせる。
「知り合いなのか? そんな訳ないか‥‥シズエさんの花は無いのかハヤテ?」
俺の声が聞こえてないのか静かに目を閉じてハヤテは何かを話している。
「花瓶はないから長細い壺でいいか。水を入れてっと、後で掃除もしないとな‥‥」
道具袋から色々な野花を取り出して紐で縛り壺に入れる。
「静江さん、助けてやれなくてごめんな。日本は戦争も終わり平和になったよ」
「ああぅああいあいあ?」
「本当はシズエさんとどういう関係だって? いや本当に会った事は無いんだって。何だよその顔は‥‥」
訝しげな顔をしたハヤテだが、直ぐに少し嬉しそうな顔をして風音の首元に抱き着きモフモフしてる。
ハヤテが退いてくれたので俺は隣の墓標の名を確かめる。
「ピリノ? 誰だ?」
俺は必死に思い出そうと頭を捻るがさっぱり出てこない。
「駄目だ‥‥わからん。そうだ! 塔の中に何か情報は残ってるかも?」
俺は静江さんのお墓にカステラを備えて中に入ろうとするが‥‥。
「何やってんの!! ハヤテ!! 3時におやつはあげるから供え物食べちゃ駄目でしょ! もう!」
俺は少し強めにハヤテの頭をこつんとSAで叩く。
「ああうあいああーあう」
「何が私の供え物だからだ! 反省しないならおやつは抜きだからな!」
泣きべそをかくハヤテに言い過ぎたか? と不安になるが風音が溜息を吐く。
「おやつが食べれなくて泣いてるだけですよ。主様はハヤテに甘すぎます」
風音はハヤテの頬から流れる涙を舐めて慰めている。
「お前も大概だろ‥‥俺は塔に入って調べるけどお前達はどうする?」
風音はハヤテを見るが不貞腐れて風音の尻尾をモフモフしてる。
「塔内部に気配も無いですし、結界も貼ってあるのでお一人でお願いします」
「あいよ」
俺は罠の類を大ちゃんに調べて貰いながら慎重に塔の中に入る。
「凄いホコリだな‥‥罠は無いんだな大ちゃん?」
《肯定。塔全体に罠の類は検知されませんでした。魔力反応がありますが、これは施設の運用に使用していた保存魔法、光源魔法です。魔石の魔力は空で現在効果を失っています。地下にも隠された空間が存在しますが罠はありません》
「了解。それじゃー分裂して手分けして探すか」
三階までだし三人でいいな。
「結局家具と寝室だけだけか?」
「そうみたい」
「寝室に日記があったぞ! これだ」
後は地下だけだし、俺達は合体して日記を読む。
◇日記◇
〇月×日
今日も訓練が厳しかった。レオン様の元で働くなら最低限の力は付けなきゃいけない。ジュラの森は魔物だらけで危険だからだ。
孤児で森に捨てられた私を拾ってくださったあの子の為にも役に立たなきゃ。今はこの塔で生活できてるけど、ある程度勉強や訓練が終われば少しのお金を貰って違う村に行かされちゃう。
〇月◇日
今日は森でレオン様の配下の女の子と出会った。名前はシズと言うらしい。最近まで怪我をして寝込んでいたみたい。私も訓練してレオン様の下で働くんだと言うと寂しそうな顔をしていた。お話していると仲良くなってシズエと友達になれた! やった。
〇月▽日
今日は森で怪我をした風狐の子を見つけた。酷く怯えていたが何故か私の言葉が分かるのか大人しく怪我を治療できた。暫くは動かせないし、この木のほらで面倒を見よう。
〇月〇日
シズにあっさりバレちゃった。風狐の名前はピズになった。シズと私の名前から一文字ずつ取ったんだって! 大きく成ったこの子をレオン様に見せたらもしかしてレオン様の配下になれるかもしれない! やったーー!
「あー隣りの墓の子の日記か? 此処で終わりだな‥‥ん?」
ああああーーー思い出した! じゃあこの子とピズはイフリートに‥‥マジで許さんぞイフリートの野郎!!
俺は炎の上位精霊に悪態を付きながら、地下の入り口を探すのだった。