二度転生したらスラりんだった件   作:Kut-Ku

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36話 死んでしまうとは何事だ

 塔の地下に降りる階段は見つかったが、真っ暗で何も見えない。

 

 確か魔石に魔力が無いから光源魔法が使えないとか大ちゃんが言ってたな。

 

「何処かにある魔石に魔力を補充したら地下のライトが付くかも?」

 

《肯定。地下にも光源魔法は使用されています。一階の左奥に動力源の魔石があり、触れるだけで充電される様です》

 

「ありがと、大ちゃん」

 

 松明で降りても良いけど墓参りもあるし、施設は使えるようにしておいた方が良いだろう。

 

 魔石を満タンに補充した俺は、地下の階段にあるレバースイッチを下げた。

 

 すると薄暗い地下へ続く螺旋階段の壁沿いに、順に灯りが照らされていく。

 

 俺は冒険心を擽られ、意気揚々と階段を降りていくのだった。

 

「大ちゃん、此処って研究施設だと思う?」

 

《否定。何かを研究するには空間が狭すぎます。構造や鉄格子を用いた施設の該当は‥‥監獄、または牢屋と推察します》

 

「ゲッ‥‥研究施設かと思ってワクワクしてたんだがな」

 

 あっという間に最下層に辿り着いたが、牢屋が4つしかない小さな部屋だった。

 

 牢屋の中には何も無く、随分と長い間使用された形跡が無かった。

 

「監獄から死体や血の匂いを連想してビクビクしていたが拍子抜けだ」

 

 カガリもレオンも拷問したりするような奴じゃないもんな。盗みや悪さをした奴を閉じ込めて置くためだけに使用されていたのかも。

 

「隠し部屋はここの壁か‥‥」

 

 牢屋の奥にある行き止まりの壁の奥に部屋が在るらしい。

 

 仕掛けが無いか辺りをくまなく探すが見つからず、壁を叩いても空洞の音もしない。

 

《肯定。土魔法でこの空間に隙間なく壁を設置したようです》

 

「じゃー壊すしかないか」

 

 俺はベギラマを壁に当てながら細く圧縮していく。

 

 熱線を正方形に動かして切り取り、倒れる壁を道具に収納した。

 

 出て来た通路は光源が無く真っ暗だ。

 

 試しにメラを飛ばすが直ぐに壁に当たり、火の明りで小さい鉄の箱に寄り添う様に置かれた仮面が見えた。

 

「罠は無いって言ってたし、大丈夫だろ」

 

 地下には他に何も無いので、鉄の箱と仮面を持って螺旋階段を上がり一階に戻る。

 

 大ちゃん、解析鑑定お願い。

 

《肯定。箱は封印されていますが、解除は可能です。仮面には魂が宿っていますが、物質体(マテリアル・ボディー)の役割を果たせていません。仮面に宿る魂が消滅しない様に、箱による呪詛の効果で仮面ごと魂を縛ってる様です》

 

「ん? 良くわからん‥‥。とりあえず封印されてるし、箱は置いておこう。つまり仮面には魂が入ってるけど無機物だから魂が出ていくみたいな事だよね。大ちゃん?」

 

《肯定。魂だけでは世界の繋がりが保てず消滅します。宿る肉体が無い場合は肉体を補う魂の器が必要で、この仮面には器の機能がありません。鉄の箱からの魔力放出も途絶えそうです。数分でこの魂は消滅するでしょう》

 

 また緊急かよ! 大ちゃんとりあえず3分だけ思考加速して!

 

 封印されてる箱の中身は何だ? 呪詛が発動してる時点で呪物じゃないのか?

 

 呪物に縛られた仮面‥‥どうみてもアウトですわ。

 

 仮面で連想されるのはやっぱカザリームと中庸道化連だよな?

 

 でも悪魔や妖魔も仮面の奴なんていくらでも居るだろう‥‥。

 

 問題は強い悪魔やカザリーム本人だった場合に俺が殺される危険性だ。

 

 そうだ! ほうれんそうだ!「隠し事はするな、困ったら何でも俺に言えよな! キリッ!」 とか言ってたし、リムルにガンガン頼りまくるぞ!

 

『ボスケテリムル!』

 

《告。只今マスターは留守にしております。ぴーという発信音の後にメッセージをどうぞ。ぴー》

 

『バルス!! お望み通り何でも言ってやるよバァ〜カ! この青饅頭ハゲッ! リムルのうんこタレー!』

 

「何が相談しろよな〜だ! あーもう! 知らん! グレて悪堕ちしてやる! 覚えた呪文もアイテムも勝手に使うからなリムルの阿保ー!」

 

 精霊魔核を研究し、複製を試みて何度も失敗して出来た疑似魂。

 

 その名は、さまようたましいくんだ! とりあえず仮面の魂はさま魂に入れとこう。

 

 俺は魔力を流して仮面に押し付け消える魂を捕獲する。

 

 取り合えずこれで助けなかった事を後で後悔しないで済むな。

 

「主様、何か見つかりましたか?」

 

「風音。我は友に裏切られ、悲しみから闇に墜ちてしまった。悪逆非道な主になるが‥‥許せ」

 

 俺は風音にダークサイドに落ちた事をキメ顔で報告した。

 

「ボアをシメる時も「可哀そうで無理っ!」とか泣いてた主様が何を言ってるんですか‥‥」

 

 きもい魔物とか狂暴系ならシメれるけど、可愛いモンスターは誰でも無理じゃね?

 

「ごほん‥‥まー日記とか色々見つかったぞ。あれ? さまたまは仕方ないが箱も生き物かよ‥‥道具にしまえないじゃん」

 

 そういや昔にハルナから貰った草カバンあったな? あれに入れとこ。

 

 スライムボディーに草カバンを巻き付けて風音と一緒に外に出る。

 

「それより主様。身体がホコリまみれですよ?」

 

「うわっ! 気が付かなかった‥‥上空に水セットして洗い流すか」

 

 サッパリした俺に風音が暖かい風を送風してくれる。

 

 風音に礼を言い、ハヤテを探すと墓の近くで掃除をしている様だ。

 

「お待たせハヤテ。俺も手伝うわ」

 

「あぃ」

 

 風音がやったのか分からないが。墓の周りの草が綺麗に円状に刈り取られていた。

 

 ハヤテはピリノの墓標を磨いている。

 

 隣で盛大にお腹の音が鳴ったので、俺はカステラと笹茶をテーブルに置いてやる。

 

「少し休憩してろハヤテ」

 

「フフフ。主様は悪逆非道に為ったのでは?」

 

「あれはリムル限定だ‥‥」

 

 風音の分も出してやり、俺は墓を磨き始める。

 

 恥ずかしそうにしているハヤテは、おやつのカステラを葉に乗せてピリノの墓に備えていた。

 

「人の事は言えんけど、知らない子なのにハヤテは一生懸命だな」

 

「あう? あいあいあう」

 

「友達? あー静江さんの友達だから綺麗にしてくれてるのか、ハヤテは優しいな」

 

 俺を残念そうな子を見る様に見たハヤテは、軽く溜息を吐いてカステラを食べる。

 

 

 

 綺麗になったし、最後に線香炊いてお別れしたら帰るか。

 

 しかし、もっと明確で詳しい情報が欲しい。

 

 静江さんを生き返らせるか? でもな〜。

 

「あうあうあ?」

 

「ん? 蘇生魔法を覚えたから悩んでるんだよ」

 

「あいあう! ああいああ!」

 

「静江さんを生き返らせても、この世界が嫌いだし恨んでいるから‥‥いや、何でもない」

 

 何故か怒ったハヤテが俺を問い詰めようと接近するが、急に停止し深く考え込んでしまう。

 

 そんなハヤテを不思議そうに横目で見ながら風音が問う。

 

「凄いですね主様! 神聖魔法を魔物が覚えるなんて!」 

 

「あー聖魔法じゃ無いんだよ。あっちの魔法は肉体と魂が居るけど、ザオラルは結局どうなんだろ? 魔物は魔晶を砕くと生き返らなかったし、人型魔物であるオーク達で検証したかったが亡骸は既に埋葬しちゃったんだよな‥‥」

 

 ハヤテは深く考えだしたので、俺も一緒になって思案に拭ける。

 

 ブルー様のお陰で覚えた呪文はザオラルとザラキ。

 

 リムルには既に伝えてある。

 

 ザオラルを覚えたと言うと凄く喜んで、ザラキも覚えたと言うと素早く距離を置かれた。

 

 俺も異世界で友人と冒険中に蘇生覚えた! と友人が言うと喜んで。

 

 即死魔法覚えたって言われると気まずいし、距離を取るのも分かるからリムルにはマジですまんと思う。

 

 対策として平時は大ちゃんに封印してもらっている。

 

 切り札として有効だから身の安全の為にもリムルには緊急時のみ使用許可が出ている。

 

 何故許可が出たのか? それは大賢者姉妹が解析と分析をモンスターや植物などで、繰り返し実験した結果分かった事だが。

 

 もしザラキを俺がリムルに対して使用する場合に俺とヴェルドラにも即死魔法が襲い掛かる仕様なので、リヴェルが安易にマスターに使う事はまず無いでしょうとシエルさんが説明していた。

 

 この世界の事象とは別法則の魔法なので謎は多いが、姉妹に徹底的に検証して貰った結果だから間違いないはずだ。

 

 グループ攻撃では無く、正確には家族や血族を対象にしている。

 

 血統まで遡らないがテンペスト家は即死魔法の有効範囲みたいよザラキ‥‥。

 

 だからヴェルドラに使えば俺達はもちろんの事、ヴェルザードやヴェルグリンド、ミリムは親戚だからセーフという感じになるんじゃないかな? 竜種は耐性や運が良いから簡単にレジストしてくれそうだが。

 

 怖いのは操られたり洗脳された場合だが、俺には全状態異常無効があるから大丈夫だとは思う。

 

 即死無効も統合されてるから俺だけがもし生き残った場合は、リムルやヴェルドラにザオラルを使えば良い。

 

 当然欠点もある。

 

 ザラキの成功確率が大体25%の上に相手の運に左右される事。

 

 そもそも耳が無い魔物には効果が無い事。

 

 耳栓などで呪文を聞かなければ簡単に防げる事だ。

 

 リムルには保険として命の石を錬金か交易で早く入手して! と急かされている。

 

 ザオラルはモンスターにしか試して無いんだよな‥‥。

 

 魂も無い、肉体も無い。おまけにこの世を恨んでいる人だ‥‥あーーーもう!!

 

 情報が欲しいだけなんて言い訳だろ? 俺が静江さんに会いたいんだ! そうだよ、俺の我儘だ! 別に嫌われたって良いじゃないか!

 

「やっぱり俺は静江さんを生き返らせたい。この世界を嫌いなままなんて悲しいだろ!」

 

 俺は道具袋から完成済みのホムンクルスを取り出して、液体の中にある人形に魔力を流し思念で形を変えていく。

 

 結局、未完成品は遺伝子情報を取り込んで複製させる機能を再現できなかったのでエルフ製のホムンクルスは技術的に完成出来なかった。

 

 だが雛形があるので一から作るのは簡単だ。思念を伝達し魔素で形を作る方法だが魂が遺伝子情報の代わりになるので、魂が定着すると死ぬまでこのホムンクルスからは出れない。エルフの方は知らんが‥‥。

 

「あーー! あうーーーあいあうあい!」

 

「えっ? 裸は仕方ないじゃん‥‥痛っ! 大人? 俺の知ってる静江さんは大人の姿なんだよ」

 

 ホムンクルスの変化が終わり、何度も夢で見た静江さんの姿に為った。

 

 俺のホムンクルスは声や身体が創造者の理想に近くなる事だな‥‥うん、ナイスオッパイ!

 

「あいあうあ、あいああう!」

 

「黙っていたが‥‥実は俺の嫁(二次的な意味)なんだ」

 

 俺がそう言うや否や、ハヤテは顔を真っ赤にしながら全体重を乗せたキレの良い拳で俺を殴った。

 

 風音は飛んでくる俺を華麗に避け、毛袋から風呂敷を取り出しホムンクルスの胸元部分を隠す為にさっと被せる。

 

 俺はデカく腫れた頬を摩りながら、よろよろとガラスケース前に立ってから尊大に言う。

 

「おお! 静江よ! 死んでしまうとは情けない。痛っ! ごめん、でも形式美なんだって。ちょハヤテ…やめ…」

 

 成功確率を高めようと王様の真似をしたんだが、ハヤテが早くしろとお怒りなので呪文を唱える。

 

「ザオラル! ん、失敗。ザオラル‥‥ザオラル! よし成功! 頼む生き返ってくれ静江さん!」

 

 ホムンクルスに魂が入った形跡はない‥‥失敗だ。

 

「クソ‥‥イフリートに全部灰にされたから肉体はホムンクルスしか無いんだよな。どうにかして魂を呼び出す事は出来ないのか?」

 

「あいあ‥‥あういああ。あい?」

 

「ん? あーホムンクルスに魔力とイメージを流し込むだけで良いんだよ。魂が入らないと肉体が生成されないから人形に戻るんだ」

 

 ハヤテがホムンクルスに近寄り手をかざすと、可愛らしい少女が形成された。

 

「誰だ? この子」

 

「あうあいあ」

 

 ハヤテが俺に抱き着いて生き返らせてと言うが‥‥結果は多分同じだろう。

 

「魂が無いし、ホムンクルスじゃダメかもしれないぞ? 失敗しても許してくれよ?」

 

 ハヤテがコクコクと頷いた。

 

「ザオラル! よし、一発で成功だ!」

 

 両手を組んで祈るハヤテの胸から光があふれる。

 

 その光はハヤテから抜け出してホムンクルスに移り強く光り輝く。

 

「ど、どういう事だ!? ハヤテは無事か!? 魂が抜けたりして無いよな!?」

 

 俺は慌ててハヤテに駆け寄り、目の前で手を振ったり意識を確認する。

 

「あいあ、あう」

 

「ほっ‥‥驚かせるなよ‥‥」

 

 ホムンクルスの身体に液体が絡みつき肉体を生成していく。

 

 やがて生成は終わり、ガラスの蓋がゆっくりと開く。

 

「久しぶりだね‥‥シズ‥‥」

 

 ハヤテは涙をポロポロと零しながら少女に駆け寄り抱きしめる。

 

「ご、あ、め、ん、ね」

 

「許さない!」

 

 ハヤテはビクッと小さく振るえる。

 

「何て言うと思った? ずーっとシズの中で見てたんだよ。今はハヤテだっけ? 頑張ったねシズ」

 

「ううぅ~〜~ああぁピリノッ!! ごめん! ごめんね‥‥痛かったよね? 熱かったよね? 私の所為で本当にごめんなさい。ずっと…ずっと! 謝りたかったの!!」 

 

「私もごめんね。ピズとシズには辛い思いさせちゃったね‥‥」

 

「ずっと恨まれて嫌われてると思ってた‥‥あんな酷い事をしたから‥‥」

 

「苦しまずに一瞬で死んじゃったからね‥‥あはは」

 

 ハヤテは何度も泣きながら必死に謝るがピリノにチョップされる。

 

「あぅ‥‥」

 

「今もシズの事は大好きだし、友達だよ? そ・れ・に! 私、生きてるし!」

 

「でも‥‥でも! 私の所為でピズもピリノも‥‥」

 

「私はシズを許します! だからシズも私の事を許してね? ほら! これでおあいこでしょ?」 

 

「うん‥‥うん、うん! えへへ。ピリノ大好き!」 

 

 二人はお互いを抱きしめ涙を流し再会を喜び会う。

 

「ハヤテ‥‥お前声が!? 良かった…良かったなぁ〜ハヤテ! おっといかん! 少し待ってくれ‥‥」

 

 二人は俺の言葉に涙目のまま、きょとんと同時に首を傾げる。

 

「ハヤテの服の予備が確か‥‥あ〜色々サイズが小さくて合わないな」

 

 俺の視線が自分にあると分かったピリノは、自分が生まれたままの姿と気が付き悲鳴を上げた。

 

 サイズの件でハヤテが怒り、恥ずかしさでピリノは怒りながら二人は強烈なダブルビンタを俺にお見舞いする。

 

「ハァ‥‥主様も懲りないですね」

 

「風音さんや‥‥俺は紳士的な対応だし、悪く無いよね? 泣いていい?」

 

 ピリノは風音の風呂敷を体に撒いて、ハヤテと一緒に塔の中に入って行った。

 

 俺が色々とドワルゴンで買った物やシュナが作った服を出してあげると、二人は楽しそうに服を選んで会話を弾ませていた。

 

「しかし驚いたな‥‥シズエさんがハヤテに転生していたとは‥‥」

 

 この世界で死んでも元の世界に帰れないのは苦痛だったろうな‥‥あ〜モヤモヤする!

 

 ハヤテの人生では俺が面白おかしく過ごせるように、沢山美味しいものを食べさせて! 楽しい事を体験させて! この世界を大好きになって貰えるようにしたら良いだけだ!

 

 ハヤテとピリノの姿に何か違和感が‥‥。

 

 あれ? ピリノって獣人だっけ? なんで耳と尻尾が生えてるんだ?

 

 

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