二度転生したらスラりんだった件   作:Kut-Ku

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40話 流石は婿殿! お目が高い

 リヴェル家の地下二階の実験場に討ち捨てられた様に男が二人倒れている。

 

 上半身だけで下半身は無く、虚ろな眼差しは何を見つめているのだろうか‥‥。

 

「まるで肉便器だな‥‥」

 

「その言い方は止めろ‥‥」 

 

 俺とリムルは死んだ魚の様な目で呟く。

 

 エルフ製のホムンクルスはオリジナルと複製での遺伝子情報の適合で魂の移動が可能な技術だ。

 

 スライムの俺達が人間の頃の遺伝子情報を持っている訳が無いので別の方法を取る必要がある。

 

 まぁ〜それが失敗して上半身だけの悟と流星のおっさん二人は、現在精霊達の便器になってる訳だが‥‥。

 

 調整をしないと内臓も骨も生成されていない状態なので、今はリアルなマネキンと変わらない。

 

「精霊を無理矢理融合する事とは違うんだよなリヴェル?」

 

「そうだな‥‥ASは微精霊と融合させてから契約してる。これは精霊が天使や悪魔とは違い無機物には受肉しない特性を利用してるんだ。だがホムンクルスを無理矢理融合させると受肉してしまうかもしれん‥‥これだと魂が宿るから俺達が入れなくなる」

 

「俺のナイスガイの身体の何処が気に入らないんだ! この野郎!」

 

 何故か大人の俺や悟の肉体が気に入らない精霊達は入ろうともせず、俺達の人形に小便やフンをかましてくれてる訳だが‥‥綺麗だし精霊の涙も生成されそうだからこれはこれで‥‥。

 

 精霊の涙が色々使える素材だし、おっさんの俺達じゃないと排泄物をしない事からリムルがお怒りだ。

 

 素体が勿体無いしあそこ丸出しだと哀れだから上半身だけ残し肉便器にしてる。

 

 錬金スキルで素材に戻しても半分も回収できないから、精霊の涙回収機として利用しよう。

 

 おっさんじゃなく若い二十歳の頃の俺達ならどうだ? と試したが駄目。

 

 なら子供は? と試したがこれも駄目。

 

 女性はどうだとシズさんを作ったが駄目。

 

 その後も魔物やエルフ、ドワーフを作ったが駄目だった。

 

「精霊って生物を模したものに宿るのは嫌なのか? 受肉を嫌ってか?」

 

「あーそれはあるかもな‥‥犬や猫、イルカの精霊もいるし姿が変わり自分じゃ無くなる事を恐れて? とか?」

 

「精霊心核に宿ってくれない事にはどうにもならん‥‥」

 

「微精霊じゃダメなのか?」

 

「出力が足りないのと同じで中精霊や上位精霊じゃないと器が形成されない」

 

 精霊心核に俺とリムルの魂情報を入れてある。エルフの魂転移の技術の応用で精霊が宿るとパスが繋がり俺達の肉体に精霊が宿る事と同じ現象に為る。

 

 精霊が宿れば後は精霊心核に俺達の魂を転送し、本体は眠りに付く事に為るはずだ。

 

 リムルには別の方法もあるけどな‥‥。

 

「もうアンドロイドで作れないか? 味覚は‥‥諦めるしかないけど」

 

「こんな事もあろうかと‥‥」

 

 言葉が途切れ俺が黙り込んでしまった為に、言ってみたかっただけかよっ! とリムルに怒られるが。正直理屈や理由が分からんままだし、宿ってる精霊にも問題があってだな‥‥。

 

「こちらに既に完成されたモノを用意しています」

 

「料理番組のようなお手軽さで言ってきたな‥‥何でこんな事もあろうかとの後で悩んでいたんだ?」 

 

「だって男の方が良いんだろ?」

 

「俺がノンケじゃないみたいに言うんじゃない! という事は女なのか?」

 

「それだと意味がないだろ? だって俺もお前も大人のお店に行きたい訳じゃん?」

 

「馬鹿お前! シュナやシオンに感づかれたら俺が死ぬだろ!」

 

 俺は周りをキョロキョロと警戒するリムルにチッチッチと指を振るう。

 

「俺が茜と葵に何回説教されたと思っている? 風の精霊達に精霊水の賄賂を渡して、此処の侵入警報と防音対策はバッチリだぜ!」

 

「いや、うん…。異世界のそういうお店、凄く興味があるんですけどもっ! 今は飯の方が大事だ!! ほ‥‥本当だぞ!」

 

「ええー? ほんとにござるかぁ?」

 

 リムルが煩い! いいからさっさと宿ったホムンクルスを見せろ! と言うので俺は実験室の奥にある布を被せた黒い大きな箱を、台車を使ってリムルの目の前まで運んで来た。

 

「何で黒い布に黒い箱なの? 怖いんですけど‥‥」

 

「宿っているのが闇の上級精霊だからな。光が駄目で暗いと落ち着くみたいよ? 恥ずかしがり屋さんだから黒い箱を上から被せてる」

 

 えっ!? と驚愕した顔で見られても‥‥返品は困りますお客様。

 

 俺が布をバッサッと捲り取り、黒い箱を持ち上げて外すと三つ編みツインテールの美しい金髪の少女が現れた。

 

「やっぱ、俺の嫁って感じだよな‥‥懐かしい」

 

「ビアンカじゃねーかっ!!!」

 

「何だよ? リメイクでもずっとビアンカ一択のお前にはおあつらえ向きじゃないか」

 

「そういう事じゃねーよ! なんで幼少期のビアンカ何だ? フローラは無いのか?」

 

「どうせ選ばない癖に何言ってやがる。それともまさかっ! 婿殿‥‥私を選ぶと申すのか!? ポッ」

 

「黙れルドマン! お前は金と鎧だけをよこせば良いんだ!」

 

「煩い‥‥」

 

 ビアンカの中から闇の精霊が小声で抗議した。

 

「悪い、闇の精霊さん。何かこう色々と複雑な思いでな‥‥。リヴェル、何でビアンカを作ったのか。闇の精霊さんが何故、宿ったのか教えてくれよ」

 

「ビアンカの方は教えれるが精霊の方は俺にも分からんぞ? 交易で思い出のリボンとビアンカの服を購入したら錬金作成が追加されたんだ。あとはホムンクルスと素材を掛け合わせて幼少期のビアンカを錬金できたって訳」

 

「闇の精霊さんは何でこの人形に宿ったんだ?」

 

「‥‥キラキラしてて居心地がよさそうだから?」

 

「「‥‥」」

 

「恐らくだがルビスの加護が影響してるのと、ユニークスキル竜物語の関係があるキャラだからと推察してる」

 

「それしかないよな‥‥闇の精霊さんは俺達が入っても大丈夫か?」

 

「‥‥?」

 

「精霊心核に登録してあるのはお前のだけだぞ? たぶん理解できて無いのはそういう事だと思う」

 

「お前は肉体いらないのか? 俺達二人の登録してたよな?」

 

「うん。でも俺達、精神生命体になってないから一人用に書き換えた。肉体に紐づけされてるから色々齟齬が出るって解ったんだよ」

 

「精神生命体ってヴェルドラとか悪魔や天使みたいな奴らだよな?」

 

「そうだよ。魂が移るとスライムの肉体が残るけど、精神生命体なら抜け殻を捨てる感じだな。あと大事な事なんだが精神は肉体に引っ張られるって言うだろ? あれと同じでユニークスキルなどに制限が掛かってしまうんだ。本体のお前は眠る事に為るからな。でも精神生命体ならスキルも問題なく使用できるし、登録していればお前も俺も自由に乗り移れると思う」

 

「大賢者や暴食者が制限されるのは怖いな‥‥肉体も放置しないといけないんだろ?」

 

「まーそう言うよな。俺は本体をお前に捕食して貰い、胃袋の中に匿って貰うのが安全だと考えてたよ。‥‥でもお前にはもう一つの選択肢がある」

 

「何だ? もったいぶるなよ星」

 

「調整したビアンカを捕食するんだよ。これなら擬態の効果でスライムにも人型にもなれるし、スキルも制限を受けない。闇の精霊はお前にちゃんと宿る事に為ると思うけど」

 

「‥‥‥‥」

 

 ホムンクルスとはいえ調整されたらビアンカは生身の人間だしな‥‥よし!

 

「別に人間を喰う訳じゃない、人形だ。味覚を取り戻して美味いもん食うんだろ? それとも人間の死体を探してきて擬態するか?」

 

「うがぁ〜! もぅ! そんな気持ち悪い事できるかよ! 飯の為だ! やってやらー調節してくれリヴェル」

 

「待って‥‥この体食べないで‥‥」

 

「あーそうか捕食するなら別に闇の精霊さんいらないもんな‥‥正式に俺に宿るか?」

 

「いや精霊は意味があるぞ? 器を作り出し、受肉する為に精霊は必要不可欠なんだよ。だって俺達、遺伝子情報持ってないだろ?」

 

 まーエルフ産のホムンクルスを使い、誰かの遺伝子を持って来てクローンを食べさせれば精霊はいらんと思うけど。問題はクローンだと擬態できるのかという問題とビアンカを捕食して擬態できるかだよな‥‥。

 

「あっ‥‥そうか」

 

「要望がある‥‥」

 

「むむ‥‥聞きましょう」

 

「光のある所に出たい、明るい場所に行きたいの。後‥‥本を読んでみたい」

 

「へっ? それだけか? 別に構わないぞ、俺も本は好きだし」

 

「‥‥やった。契約だからね」

 

 リムルと闇の精霊のやり取りに俺はポツリと呟く。

 

「光に触れたいか‥‥闇の精霊ならではだな」

 

 俺は台車に何台も装置を繋げて置いて行く。

 

「でかいな‥‥」

 

「小型化したいが俺は其処まで賢く無いんだ、エルフと同じものしか作れん。リムルも早くそこに入ってくれ、魂移動するから」

 

「大賢者大丈夫かこれ? 何だよその溜息は!」

 

 大賢者姉妹が何度も試験運用を手伝って精査したのに聞くからだろ‥‥。

 

 精霊をカプセルに入れてリムルのカプセルに繋ぐ、まずは肉体を作らないと捕食し擬態も出来ない。精霊の受肉プロセスを利用してリムルが受肉し精霊が宿る事に為る。

 

 後は俺の魔力を送り起動させて‥‥時間が掛かるし用意しといてやるか。

 

 

 

 調整が終わり、終了のアラーム音が鳴り響く。

 

 カプセルがゆっくりと開き、ビアンカに為ったであろうリムルがカプセルから起き上がる。

 

「あ〜あ〜声が凄く可愛い‥‥リヴェルどうだ? 何か変な所は無いか?」

 

「変というか変態だな‥‥レディーなのに裸族でウロウロするんじゃないよ。ほれ服を作ってきてやったぞ、早く着ろ」

 

 裸で体を動かしたり、ジャンプしたり羞恥心を捨てた友人に嘆く。

 

「キャーー! リヴェルさんのエッチ! さんきゅ〜おっ! オレンジのワンピースに緑のケープか流石はリヴェル、分かってるな。下着もお前が作ったのか?」

 

「錬金でエッ! な下着は作れるからな防具扱いだから自由に変えて可愛いものを作ったぞ」

 

「うむ、流石ビアンカ可愛‥‥何で髪の毛が水色になってるんだ!!」

 

 リムルは鏡を出して服を試着し、体の操作が久々の所為で服の首元から頭が中々出ない。うん‥‥何この可愛い生き物。シズさんの時もそうだったし、そういうもんじゃね? 知らんけど。

 

「可愛いは正義だ! 水色のビアンカも新鮮で良いじゃないか!」

 

「確かに‥‥これはこれで」

 

「ほら早くテーブルに座れ、料理も一杯作って来てやったぞ」

 

 俺はテーブルの上にからあげ、親子丼、ハンバーグとシチューを並べる。

 

「おおおおおおおおおおおおーーーーー!! 星がすげー優しい!」

 

「ふっ俺はいつも優しい男だぜ! 特に美少女にはなっ!」

 

「だが男だっ! くぅ〜いただきますーーーー!!」

 

 リムルは涙を流して箸で親子丼をかき込む。

 

「うめーー! 何だこれ幸せかよ‥‥ぐすん。おいぢいよ〜やばいって‥‥おかしくね? 旨すぎない?」

 

「‥‥美味しい」

 

「黙っていたんだが隠し事が二つある‥‥結構前に料理スキル生えたの。今はエクストラスキルに昇華してる」

 

「何で黙ってたんだーーって俺の為か‥‥さんきゅーな星。でも味覚を取り戻したばかりの俺にスキルマシマシ料理は危険が危ないぞ! あぁ〜からあげマジでウマイ‥‥」

 

 俺のブレンド茶に舌鼓を打ちリムルと闇ちゃんは満足げだ。

 

「満足した所で悪いがリムル。次はもう一度カプセルに入ってスライムに戻るぞ」

 

「えーもう少し味わいたいんだが‥‥俺もシュークリーム食べたい」

 

「は・い・れ」

 

 ビアンカの顔で苦虫を噛みつぶした顔をするんじゃないよ‥‥まったく。

 

「おっ戻った。結構早いな」

 

「肉体を作るのに時間が掛かっただけだからな」

 

「‥‥大丈夫なの?」

 

「心配するな、リムルが食べても消えないよ」

 

 眠るビアンカを見つめるリムル。

 

「なあ星「駄目だ悟! 早く捕食しろ」ぐっ‥‥」

 

「本体は眠ったままだし、大賢者のサポートも限定的だろ? 暴食者なんて胃袋だけじゃんか使えるの」

 

 リムルはビアンカを暫く見つめた後、やがて決心したのかビアンカを捕食した。

 

「成功したのか?」

 

 リムルは未だにスライムのままだ。

 

「ふぅ‥‥ホムンクルスを人間と認識して擬態するのは結構無茶だったらしいぞ? だが‥‥」

 

 ジャンプしたリムルはビアンカに姿を変えた。

 

「おおおおお! やったなリムル! あはは!」

 

「グスン‥‥ありがとうな星。あっ! シュークリーム食べたい」

 

「台無しだよこの野郎‥‥」

 

 リムルが涙を流し、俺を抱き上げ礼を言う姿に貰い泣きしたのにコレだ‥‥。

 

「俺だけが体を得てすまんなリヴェ‥‥甘い! 美味しい〜」

 

「まったく‥‥食べ終わってから話せよ。隠し事二つ目! 俺にはお前の進化の恩恵で特技が貰えたんだ」

 

「そういや隠し事二つって言ってたな‥‥」

 

「それは‥‥何故か呪文じゃない特技のモシャス!」

 

「おおおおぉ! ‥‥お? たくっ‥‥お前、俺が人化に失敗したらずっと黙っているつもりだったろ? バ〜〜カ」

 

「うっせー俺はスライムのままでも問題無いんだよ。歯が無いから食事は飲み込むだけとか! 手が無いと料理をする時に熱や感覚が感じ取れない事が不便だとか! 息子が! 家出したりと! ‥‥うううぅっ」

 

「不満たらたらじゃねーか! 最後だけ悲壮感たっぷりだな‥‥」

 

「お前の体を頂くぞー! チェンジ! モシャス!」

 

 ボンと煙が上がり俺は‥‥。

 

「俺だな‥‥スライムの」

 

「何でやねん!」

 

 俺はリムルのスライム形態に変化した。

 

「スキルや能力も俺のままだな? ビアンカに変化は無理みたい」

 

《否定。変化中はその種族の固有能力が使用可能です。現在、スライムの自己再生が使用可能です。取得するにはコストを支払う必要があります》

 

 そういや俺に自己再生って無かったんだよな‥‥取得できそう?

 

《肯定。メラと猛毒の息のコストで習得可能です》

 

 じゃーそれでお願い。

 

「へー相手の固有能力を獲得出来るんだな。コストを支払うとはいえ便利じゃないか」

 

「予想外の効果で驚いたけど暫くは捨てるモノが無いからな‥‥」

 

「‥‥早く! 外に…行こう」

 

「あー悪い。お前の名前が無いと不便だな。そうだな‥‥お前の名はメルセデスだ!」

 

 リムルが光り輝き闇の上級精霊の名付けが出来たようだ。

 

「‥‥メルセデス。ふふ、良い名前」

 

「ぐううぅ〜半分も魔素を持っていかれた‥‥」

 

「メルセデスか良い名前だな。じゃーメルちゃん外を楽しんで来い」

 

「‥‥うん!」

 

 リムルがメルと楽しそうに外に行ったので、俺もテーブルや装置を片付ける。

 

「あっ…いた! リヴェル‥‥ん? リムル様? でもリヴェル様ですよね?」

 

「俺だ、間違ってないぞハンゾウ。すまんが使用すると1時間くらい? 変化が解けないんだ」

 

「また変な能力を手に入れたんですね‥‥あっ! 僕にも変化出来るんですか?」

 

「出来るぞ、変化の術! モシャス! どうだ?」

 

「何で僕より背が高いんですか! それに顔が全然違いますよ!」

 

 俺はリムルにそっくりに変化したので、ハンゾウの言葉に首を傾げる。

 

 そして道具から大きな鏡を出して自分を覗き込んだ。

 

「おおおお! 懐かしい顔だ! 幼少期の俺じゃん! 忍者装束に角生えてる‥‥おおぉ! お帰り我が息子よ‥‥」

 

「えっ! リヴェル様の幼少期ってスライムの姿じゃ無いんですか?」

 

「まー俺にも色々あるんだよ‥‥しかし10歳くらいの時かこれ?」

 

「僕より2歳も年下の癖にーーーーーー!! 何で皆背が高いんだよぉぉぉーー!!」

 

「あっ! まてハンゾウ! 何か用事があったんじゃ無いのかぁーー!」

 

 俺の言葉も聞かずに泣きながらハンゾウは外に飛び出してしまった‥‥。

 

「シークレットブーツでも開発してやった方が良いのか?」

 

《否定。その優しさは逆にハンゾウを傷つけると予測します。マスター》

 

 俺は鬼人の身体を得たので、ついでにリヴェル家の昼食を作ろうと台所に向かう。

 

 廊下を急いでいたらしい葵に曲がり角でぶつかる。

 

「きゃっ!」

 

「何を急いでいるんだ葵? 走ると危ないぞ?」

 

「痛った〜い! もぉ〜誰? だだだだだ誰でふかっ!?」

 

 廊下にへたり込み、顔を真っ赤にして後ずさる葵のおでこに手を当てる。

 

「熱は無いみたいだな。誰って俺だよ、昼飯のリクエスト何かあるか?」

 

「ちょ! 離れて! かっ顔が近いわよ!! 俺って‥‥嘘。リヴェル様‥‥なの?」

 

「俺以外に誰が‥‥あー今は鬼人に変化してるんだよ。時間制限があるからリクエストが無いなら適当に作るからな?」

 

「こんなの詐欺じゃない!! リヴェル様の男前ーー!」

 

 両手で顔を覆い来た道を逆走していく葵。

 

「おっおう‥‥最後は誉め言葉だよな? ハンゾウも葵も俺に話があるんじゃないのか?」

 

 俺は茜に作って貰った不器用なエプロンを付けて料理を始める。

 

「今日は中華の気分だな。炒飯と餃子にワンタンスープにしよう」

 

「おお! お前その姿! 懐かしぃな〜ガキの頃の星じゃん。今日の昼飯は炒飯か〜楽しみだ♪」

 

「本当ですね‥‥リヴェルが鬼人になってます。可愛い‥‥」

 

「おい‥‥リムルもシオンも自分の家で食べろよ。リムルはさっき食ったじゃねーか‥‥」

 

「「‥‥シュナがカステラに拘っちゃってさぁ〜。姫様が同じものしか作らないのです‥‥」」

 

 あれは朝食だ問題ない! と昼少し前に食べたリムルが暴食者を発揮する。

 

「ベニマルは甘いものだから平気だと‥‥いや味見が逃げたら怒られるとか?」

 

「そういう訳で申し訳ない、儂の分もお願いしますじゃリヴェル様。ほっほっほ」

 

 年寄りに三食甘いものは拷問ですじゃ‥‥とチベットスナギツネの顔をしたハクロウが項垂れている。

 

「ちょっと茜、葵、ハヤテ、ピリノ、ミラノ手伝ってくれよ‥‥」

 

 何故かテーブルに座りぼーっと俺を眺めている鬼娘三人と狐娘。

 

 ミラノは不思議そうに俺を眺めた後に、師匠ですからね‥‥とだけ言った。

 

「すみません師匠。私料理を作った事がありませんわ」

 

「ピリノに続いてお前もかミラノ‥‥おい! 茜聞いてるのか?」

 

「ひゃい! 旦那様の後姿が素敵だと思います! うふふ」

 

 俺は残念美人に成り下がってしまった茜を見捨てて他の娘を見渡すが‥‥。

 

「あれは反則よ!? スライムが王子様になるなんて‥‥」

 

「シズ! シズ! ご主人様‥‥凄く格好良くなってるよぉ〜」

 

「べ‥‥別に。ふ、普通じゃないかな?」

 

 葵は顔を赤らめて頭を抱えてるし、ハヤテとピリノも頬を赤く染めてチラチラこっちを見るだけで使い物にならん。

 

「鬼人はイケメンだらけなのに見慣れてるだろ? リムル! 野菜カットして手伝ってくれよ」

 

「あいよ」

 

「リヴェル! 何故おねーちゃんにも手伝ってと言わないのですか!」

 

「シオン! 誰がおねーちゃんですか誰が! 旦那様の手料理を台無しにした上に私達を殺す気ですか!」

 

「茜こそ何が旦那ですか! 子供相手に変な妄想は止めなさい!」

 

 俺とリムルは偶に物や人が飛んでくる賑やかな台所で、スキルを駆使して鬼娘の喧嘩を防ぎつつ久々に人間姿で料理を楽しんだ。

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