二度転生したらスラりんだった件   作:Kut-Ku

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44話 始祖戦隊ナナレンジャー!

 地面に大の字で寝転んでたハヤテが、ガバッと起き上がりヴェルベルに駆け寄る。

 

「本当!? ベルちゃん!」

 

「うん、ハヤテのユニークスキルが見える様になったよ?」

 

「本当にあるな‥‥いつ手に入れたんだろ?」

 

「ユニークスキルって持っていたら‥‥パッと頭に使い方も浮かぶでしょ? だから、今さっき覚えたんじゃないかな」

 

 身体が魔物化しても本来のユニークスキルは変わらないのか‥‥心の形、願望だったか‥‥。

 

「凄いじゃないかハヤテ! でも何でユニークスキルが欲しかったんだ?」

 

 ハヤテは一瞬悲しそうな顔をした後に、照れ笑いを浮かべてリムルに言う。

 

「だって私が強くなって守ってあげないと、リヴェルはすぐに大怪我しちゃうもん!」

 

 俺は頭がハンマーで殴られる様な衝撃を受けた‥‥。

 

 本当に俺は馬鹿野郎だ。

 

 茜や葵に俺が守ってやると約束しといて、死んで約束を破りそうになり。

 

 シズさんに楽しい思い出を沢山作って、俺達と笑い合い、この世界を好きでいてもらう為に努力するんじゃ無かったのか?

 

 俺が馬鹿の所為で悲しい思いをさせて、心配かけて、泣かせてばかりだ‥‥。

 

「何度も死ぬ様な目にあって、心配かけてばかりでごめんなハヤテ。俺もっと真面目に生きるわ‥‥」

 

「じゃー禁酒して! ミラノさんとお風呂に入るのも禁止だよ! 助兵衛な事は全部禁止! あと苦い野菜は食べたくない! 特に人参とピーマンは料理に入れちゃ駄目だからね!」

 

「まてまて! 真面目に生きるはそっちじゃねーよ! 死な無い様に真剣に生きるって意味だ! 後半はお前の願望じゃねーか! 残念だったなハヤテ! すでに人参は細かくしてハンバーグに入ってんだよ! それに風音に言われて禁酒中だもんねぇー!」

 

「いやああぁぁーー!! 何でそんな悪魔みたいな事が平気で出来るのリヴェル! もうハンバーグ食べれないよ! あれ? でも美味しかった様な? もう! 罰として私達にも胸の下着作ってよね! 茜姉だけずるいんだからー!」

 

「俺が反省してしんみりしてたのにこの馬鹿娘! ピーマンの肉詰めを外して肉だけ食べるのを止めたら作ってやるよ! てか何でミラノ、ピリノ、茜と地下の精霊温泉に一緒に入ってるのがバレてんだよぉー!」

 

 言い合う二人を、ベルを抱っこしたリムルが呆れて見守る。

 

 ベルはリムルの腕の中が居心地が良いのか舟を漕いでる。

 

「確かに娯楽が少ない世界だけどさぁ‥‥。スライムの身体は丈夫だからって酒に溺れたら駄目だぞ星?」

 

 飛んでくる雷魔法を魔素で覆った棍棒で撃ち返しながらリムルに言い返す。

 

「お前が言うな! 日本酒を樽事持っていった癖に! まだ試飲段階なのに、クロベエも呆れてたぞ! お前は良いよな〜鬼娘やミラノさんと毎日楽しくお風呂は入れて! 俺は女に変身しないと入れないのに‥‥やめろハヤテ! 能力を乱用するな! 何を統合してんだああぁーー!」

 

 ハヤテが変質者を使用してスキルを統合させたのか、雷を纏った青のライトセイバーを作り出すとゆっくりと構える。

 

「ピリノと茜姉は初耳だよぉ!! お仕置きしないと助兵衛は治らないみたいだねっ!」

 

「はっ!? お前‥‥その構えはまさか‥‥」

 

 ハヤテは剣を逆手に持ち替えた後に、物凄いスピードで俺の目の前にまで迫る。

 

 剣から甲高い雷鳴が鳴り響き、稲妻が眩しいくらいに迸る。

 

 「ライトニング! ブレイカーーッ!!

 

「なんとぉー! やらせわせん、やらせわせんぞぉー!! あ〜俺のアイギスがぁーーー!!」

 

 木の盾、鱗の盾、鉄の盾の三枚重ねがハヤテの必殺技で豆腐の様に斬られた。

 

「ぎゃあああーーー! しびびれるうぅびびび、あがががが」

 

「正義は勝つんだよ!」

 

「何でそれで防げると思ったんだよ‥‥」

 

 俺は黒焦げになり煙を吐いて倒れる。

 

 ハヤテはやりすぎたかもと呟き、心配そうにこっちを見てオロオロする。

 

「べ、ベホイミ。あっ! 無くなったのか‥‥さんきゅーリムル」

 

「父上‥‥煩い‥‥ふみゅ〜」

 

 呆れた顔をしたリムルに回復魔法をかけて貰った俺は、ぴょんと飛び跳ねてハヤテに無事だとアピールする。

 

「変質者か‥‥便利なユニークスキルだなハヤテ」

 

「スキルの統合や分離が可能みたい‥‥でも扱いが凄く難しいよ」

 

「統合と分離を繰り返して、自分に最適なスキルを探すしかないだろうな」

 

《提案。ハヤテの頭上にマスターを設置してくれたら私が調整できます》

 

 へー冥賢之王の権能にそんな使い方もあるのか。

 

《肯定。姉が私の返答に沈黙を返すので非常に面倒です。打開策としてマスターの能力をお借りします》

 

 お前がマウント取るからだろうが! 姉妹喧嘩すんなよな。

 

 冥賢之王って相手のユニークスキルも操作できるのか? 魂を操る? ハヤテに危険が無いなら別に構わんが‥‥。

 

「あーハヤテ。冥ちゃんが俺を頭に乗せたら調整してやるって言ってるけど‥‥どうする?」

 

 ハヤテが物凄く嫌そうな顔をして呟く。

 

「何かお酒臭そうだからヤダ‥‥」

 

「ひでぇ‥‥俺の心はガラスなんだぞ!」

 

 ハヤテは俺の匂いをクンクンと嗅いで、大丈夫だと確認してから頭に乗せる。

 

 冥ちゃんがハヤテのスキルを調整統合した結果。

 

 剣豪と雷支配を統合して神鳴り、威圧と闘気を統合して戦鬼、剛力と俊足を統合して神足に為った。あと耐性は状態異常耐性と火と雷に無効耐性を得ている。

 

「母上凄い! ハヤテのスキルが進化してるぅ〜」

 

「神鳴りってまた古風な‥‥古い雷の呼び方じゃねーか。ハヤテに何て恐ろしいモノを‥‥」

 

 さっきは雷鳴が煩かったのに、スッと刀身を青い雷が纏わりつき小さくパチパチと音がする。

 

「凄い、凄い! まるで自分の体の一部の様に扱えるよ!」

 

 嬉しそうに剣を振り、一文字斬り、逆袈裟斬りと繰り返し鞘に納める。

 

 ハヤテの斬撃の後には雷の残光がはらりはらりと儚く消える。

 

「あーそのハヤテ‥‥悪いがもう少しだけリヴェルを頭に乗せといてくれ」

 

 ベルを降ろしたリムルがスライムに為り俺の上に乗る。

 

 ハヤテが不思議そうに自分の頭上で重なるスライム達を見上げている。

 

「本当に良いのかリヴェル? お前の神話之竜を消費して?」

 

「ん? は!? 何の事だよ? 冥ちゃんは俺のスキルを借りるとしか‥‥」

 

《肯定。ハヤテの変質者を借りて神話之竜を分離し、一度竜物語に置き換えた後に究極能力の残骸をコストに消費して、リムル=テンペストに統合を使います》

 

「一つだけ良いか冥ちゃん? もう俺の究極能力の二つは復活しないんだよな?」

 

《肯定。表示はされていますが完全に消滅しています。何らかの方法でユニークスキルをもう一度昇華させる方が確率は高いと思われます》

 

「ハァ‥‥残骸でリムルが強化できるなら良いよ」

 

「すまんなリヴェル‥‥俺も大賢者に今聞かされたばかりなんだ」

 

 姉の機嫌を直すために俺を生贄に差し出したな‥‥冥ちゃん。

 

《否定。資源の有効活用です。それにマスターも進化の恩恵を得れそうですので許可しました》

 

 ベルがハヤテの頭で重なる俺達が面白いのかハヤテを揺らして遊んでいる。

 

「ちょっとベルちゃん‥‥うふふ。くすぐったいよぉ〜あはは」

 

 リムルの暴食者の受容で俺を通してハヤテの能力を使う様だ。

 

 流石にユニークスキルは獲得できないがコストを払い使用する事が出来るみたいだな。

 

 リムルはメルちゃんから貰ったスキルを闇分身、常闇、多重結界へと進化させた。

 

 更にリンク効果で闇炎、闇雷、分子操作を獲得。

 

 最後に各種耐性を無効へ進化させて終了となった。

 

 シエルさんが冥ちゃんと仲良くお喋りしながら、色々頑張っていた様だ。

 

 俺は何も無いだろうと口を閉じてぼーっとしてたんだが‥‥。

 

 召喚系は魔法陣の情報だけで手に入れられるから、メルの憑依時に上位精霊召喚を得たリムルから繋がりを通じて貰う事が出来た。

 

 上位精霊召喚を得た事により悪魔召喚が上位になって、更にリンク効果で上位天使召喚を獲得出来た。

 

 オマケに上位悪魔召喚と上位精霊を融合させ魔霊傀儡を獲得。

 

 冥賢之王とリンクして、死徒創造を獲得したと冥ちゃんが報告してきた‥‥何じゃそれ。

 

「姉と妹で何を競い合っているんだよ! おかげで確認が大変じゃないか‥‥えっ!? あっはい。究極能力でグチグチ文句言って申し訳ございませんでした。ありがとうございます、冥様!!」

 

 召喚系はメルちゃんで手に入れた精霊上位をリムルが俺に渡したおかげで、すべての三竦みの上位をお互い手に入れた事に為ったな。

 

 魔霊って式神みたいなもんか? 形は自由に変えられるのね。死徒は名前で吸血鬼を連想したけど遺骨、遺髪で死んだ者を死人として蘇らすのかよ‥‥うげぇ。

 

「俺の上位精霊召喚を渡たして天使と悪魔貰ったぞ? 耐性もさんきゅーな星!」

 

「おう、貰えるもんは全部貰っとけ! 悟! 俺理解したわ‥‥チートはシズさんだったんだ!!」

 

「チートって何? 悪口ならお仕置きだよ? リヴェル」

 

 ハヤテにチートは天賦の才とかお茶を濁して誤魔化した。

 

 確かに各種上位召喚スキルで強化されたけど、天使も悪魔も怖くて使え無いっす‥‥原初か始原が出てきたら胃痛になる自信があるぞ。

 

「天使は器と霊力、悪魔が器と魂、精霊は器と精霊力で受肉か。やっぱ簡単に即戦力が作れるのは魔霊傀儡だよな‥‥」

 

 ただ召喚して戦わせるなら魔素で足りるが、召喚中は魔素を消費していき数分で消える。俺が欲しいのは召喚後に受肉させ契約で縛り配下にする事だからな。

 

「父上! 魔霊って何なの? 名前だけだとお化けみたいだけど」

 

「魔霊傀儡は戦闘で使えて面白そうだぞベル! リムルは覚えれなかったのか?」

 

「それ魔法陣じゃないからな‥‥どういう奴なんだ? 使って見せてくれよ」

 

「面白そうって一体何だろ? 早く見せてリヴェル」

 

 俺は精霊を宿していない、蜘蛛足形のSFを出して魔霊傀儡を使う。

 

 すると俺の魔力が蜘蛛足に絡みつき肉体を形成して上半身だけ魔素の塊の蜘蛛になった。

 

「へー面白いな! 式神か? いや、付喪神? 依り代を用意して自由に操れるのか」

 

「だろ? 足だけだと実体化が弱いが、全身を用意してやったら使えそうだ」 

 

「気持ち悪い‥‥兎とか猫にしてよリヴェル」

 

 ハヤテに気持ち悪いと言われて落ち込み、横にコテンと倒れる蜘蛛吉くん。

 

「あっ! ごめんね。ちょっと可愛いかも」

 

「あはは! 霊体だと思ったけど乗れるよ父上」

 

「タチコマみたいで可愛いじゃん」

 

「あーそれだ! 何かに似てるけど思い出せなかったんだよな‥‥」

 

 リムルが思い出してすっきりした後に、蜘蛛吉の頭を撫でると嬉しそうにぴょんと跳ねてから一回転する。

 

「目が回る~やめて〜」

 

 霊だから意志はあるんだな‥‥ますます面白い。

 

「リムルの闇分身って分身と何が違うの?」

 

「あー基本分身と変わらないんだが、夜に使うと魔素が消費しないから朝まで出せるぞ」

 

「おぉ! すげーな!」

 

 昼間でも使えるが分身と変わらず、魔力が消費していき時間で消えるみたいだ。

 

 でも常闇って闇のフィールドを形成できるらしく、闇系の魔法の威力も上がるし固有結界に為るらしい。

 

「お前の天元之王って何が出来るんだ? ベルと同じ名前だから次元関連か?」

 

「正解! 召喚で自由にベルを呼び出せる効果もある。まあ、俺の意志とは関係なく勝手に出て来てるけどな」

 

 ベルが何の話? と俺達に駆け寄って来る。

 

「天元之王の能力の話だよ。次元操作も出来るらしいが穴あけて入っても、反対に出るだけだし使い方が良くわからん」

 

 気になったリムルが輪の中を飛び越えるが反対に着地するだけだ。

 

「それ空間に穴あけてるだけだよ父上! 次元を意識してお部屋を作る感じで‥‥こう」

 

 ヴェルベルが次元の穴を開いて腕を差し込み、俺の顔の横に穴を繋げて頬に指をグイグイ押し付ける。

 

 お手本を見たが、何度やっても空間に輪が出来て反対側が見えるだけだ。

 

「スキルにも適性があるし、俺に空間属性が無いだけじゃないのか?」

 

「そんな事は関係ないと思うなぁ〜暇な時に次元で過ごしてみる父上?」

 

「シズ〜何処に居るの? 洗濯物しまうの手伝って〜」

 

「はーーい! 今行く〜」

 

 ハヤテはクモキチを撫でるのを止めて、ピリノに呼ばれて洗濯物を仕舞いに行った。

 

 リムルは少し考えに耽っていたが呟いた。

 

「ベルちゃんは次元竜だったんだよな? 強さが分からないんだがどうしてだ?」

 

「それは父上みたいにMPの殻があるからだよ叔父様。ヴェルドラお兄ちゃんみたいに、魔素が漏れると魔物が生れるかもしれないから注意しなさいって母上が言ってたよ?」

 

 そう言えばクラリスみたいに叔父様って呼んでと、馬鹿リムルがベルに懇願してたな。

 

 ヴェルドラお兄ちゃんか‥‥。

 

 ベルに会いたいからお兄ちゃん解析頑張る! とか復活にやる気を出してくれたのでベルには感謝だな‥‥ほんと。

 

 メルと俺が頻繁に胃袋に居る所為で外に出る意欲が皆無だったからなアイツ‥‥。

 

「ちょっと魔力感知して良いベルちゃん?」 

 

 スライム形態になったリムルはぴょんとベルの頭に飛び乗って、ムムムと唸り呟いた。

 

「うおぉ‥‥俺とリヴェルより、かなり魔素量が多いな‥‥」

 

「叔父様も父上も私が守ってあげるね!」

 

「ううむぅ‥‥いや。俺もリヴェルも強くなるから気にしないでくれ、ベルは元気に遊べば良いさ」

 

「そうだぞベル。俺もリムルも変身をあと2回残しているんだぞ」

 

 変身を真に受けたベルがキラキラした目で俺とリムルを見つめてくるので、リムルにどうすんだよ馬鹿タレと頭を叩かれる。

 

 急に固まったヴェルベルがうんうんと誰かと会話をしてると次元が開く。

 

「ヒメ様〜ハチミツできました!」

 

「ヒメ! オレ美味い果実ミツケタ」

 

「ほんと! 楽しみ〜父上! 私ゼギオンとアピトと遊んで来るね〜」

 

「気を付けてな! ゼギオンとアピトも娘を頼むな」

 

 後ろに俺とリムルが居た事に気が付いて慌てる二匹。

 

「リムル様、リヴェル様。これハチミツ出来ました‥‥ドウゾ」

 

「ヒメはイノチニ代えても守ります。リムル様、リヴェル様デワ失礼します」

 

 ベルと一緒に次元に入り消えていくゼギオンとアピト。

 

「バケツ一杯にはちみつがぁ!! うぅ‥‥うおぉぉ‼! リヴェル二人で分けようぜ!」

 

「全部お前にやるよ」

 

「えっ!! 良いのか!!」

 

「それ家の鬼娘に見つかったら取り合いの戦争になる未来しか見えん‥‥治に居て乱を忘れずだ」

 

 シオンとシュナと自分がはちみつを奪い合う場面を想像したリムルは、絶望した顔で俺をブンブンと振り回す。

 

「でも蜂蜜のお菓子食べたい! はちみつのホットケーキとか! 全部奪われる前に、お前も半分持ってくれよぉ〜!」

 

 いらんと言ってるのにバケツの半分を瓶に詰めて、スキル通信で無理矢理に俺の道具に仕舞うリムル。

 

「ハァ‥‥リムル。お肌に良いとか絶対言うなよ? バレても甘くて美味しいだけにしろ。アピトが過労死する」

 

 リムルは指に蜂蜜を付けて可愛く頬を抑えて、幸せそうにコクコクと頷く。

 

「聞いてるのかよ‥‥パウンドケーキにリンゴと相性も良いからマフィンにでもするか」

 

「よし! 調理場に行くぞリヴェル!」

 

「アホか! こっそりと作ってやるから今は我慢しろ!」

 

「お願いリヴェル! 私、今すぐケーキが食べたいの!」

 

 急に可愛い美少女に成りきるリムルに、俺は慌てふためき心の中でだが男だっ!! と連呼して耐える。

 

「ぷ‥‥あははは! お前すげー顔になってんぞ! くあははは」

 

「‥‥もうお菓子作ってやらん! バーカ! アホリムルーー!」

 

 俺は走って逃げるが、簡単にリムルに追いつかれ抱き着かれる。

 

「悪かったって‥‥ほれビアンカの抱擁だぞ!」

 

 俺は性癖を歪めてくる親友に、罰を与えようとシュナに報告する。

 

 すぐにシュナはやってきてリムルの首根っこを掴む。

 

「リムル様? 私の胸に下着が要らないってどういう意味ですか? うふふふふふふふ」

 

「ふぇっ!? 何のお話でしょうか‥‥シュナさ‥‥アッーーーーーーー!!」

 

「天誅!!」

 

 

 俺は疲れたので洞窟の温泉に入ろうと足を運ぶ。

 

「ルーラが無いと不便だな。クモキチさんきゅー」

 

 霊体はさま魂に入るので自由に出し入れが出来て便利だ。

 

「ん? 誰か先客がいるのか‥‥」

 

 温泉に入りプカプカと浮かんで進み、湯気を潜っていくと人影が見えた。

 

「珍しいスライムね‥‥」

 

「ぶ‥‥ブルー様!!」

 

「はぁ? 次にその名前で読んだら殺しますよ? 私はレイン、レイン様と呼びなさい」

 

 物凄い殺気が膨れ上がるが、一瞬で霧散する。

 

 どうやって入って来たんだ? リムルの結界が張ってあるはずなのに‥‥。

 

 そもそも、何でこんな所にブルー様が‥‥。

 

「ぎゃああ潰れる! れ、レイン様!! 申し訳ございません!! こ、これを」

 

 潰される前にアイスを出すと不思議そうな顔で受け取る。

 

 ブルー様と呼んで現実逃避しないと、俺のノミの心臓がもたないんだよぉ〜!!

 

「貴方も分身を作れるのね。あら‥‥美味しぃ」

 

 湯けむりの奥で既に本体がバレているのか?

 

 隠れていても仕方ないので、潰れそうな並列存在を回収する為に前に出る。

 

「これもどうぞ、自作の日本酒です。おつまみは香草ジャーキーしか今はありませんが‥‥」

 

「滅茶苦茶美味しいわね‥‥それに透明で綺麗ね。飲んだ事が無いお酒だわ」

 

 全裸の美女と楽しくお酒を飲みかわし、少しレイン様と仲良くなった。

 

「レイン様はどうしてギィ様の所からこんな所へ?」

 

「‥‥」

 

 俺は目を細めて睨んでくるレイン様に愛想笑いを浮かべる。

 

「詳しいのね‥‥私を色で呼ぶ所もそう‥‥。ギィに好きに出て行っても構わないって言われたから、こっちから出て行ってやったのよ!」

 

 ドヤ顔で湯の水面をパンと叩き、フンッと鼻を鳴らして決め顔で言うレイン様。

 

「つまり‥‥クビに為ったと? 痛い、凄く痛い、水魔法? あかんてレイン様!」

 

 俺の身体の中の水分を操ったのか? 体の中を抓られる変な感じだ。

 

「美味しい食べ物を出さなかったら‥‥貴方数回は死んでるわよ?」

 

 レイン様は水に関係する能力で、分身を水に溶かして自由に移動し気配を消せる様だ。

 

 分身を起点に本体がワープして来た後に、この温泉に浸かっているらしい。

 

 詳しい能力は秘密よって、可愛く人差し指を立てて言われた。

 

「そうね‥‥進化したスライムでも寿命は数十年だったかしら? 美味しぃお酒と食事の引き換えに暫くは護衛契約して上げても良いわよ?」

 

「結構でございま‥‥ああーーあかんて! そこに手を入れたら駄目よぉぉ!!」

 

「原初である私が破格の契約をしてあげてるのに、簡単に断る度胸に免じて許しますが‥‥やっぱ無しね。腹が立つから罰を与えるわ」

 

「ご無体な〜口が裂ける〜」

 

 俺の口に指を入れてびよーーんと引っ張るレイン。

 

 だが突然背後の空間が割れて、飛び出た人物により蹴りが飛ぶ。

 

「またお前かーー!! 父上を虐めるなら、何度だって倒してやる!」

 

 次元から出て来たヴェルベルがブチ切れモードだ。

 

「痛った〜〜い! 結界が簡単に消し飛んだ!?」(はわわわ! リヴェルが咄嗟に魔素の盾で守ってくれなかったら危なかった〜)

 

 衝撃が殺しきれずに脇腹を抑えるレイン。

 

「ストップだベル! 俺は虐められてないから! どうどう」

 

「うがぁーー! がるるるるるるるる!」

 

「ぴえ! お、お嬢様の知り合いとは知らず申し訳ございません」

 

「お嬢様?」

 

「ガウガウー! あっ美味しぃ! イチゴのアイスだ!」

 

 俺は荒ぶるベルの口にアイスを入れて何とか沈静化する。

 

 

 

 なるほど‥‥ベルがレインを殺したから支配権があるのか。

 

 しかも殺した相手の気配を探してレインはこの辺りに来ていたらしい。

 

「そう、リヴェル様はヴェルベル御嬢様の父上なのですね」

 

「あーレイン様。俺に様はいらないよ?」

 

「了解よ。じゃー私も様はいらないわ」

 

 こういうフランクな所、レインは良いよな。

 

「父上、これ倒して素材取らなくて良いの?」

 

「ベ‥‥ベル御嬢様。どうかご容赦を‥‥」

 

 レインがベルを抱きしめて湯につかっているので、ベルの魔素量を確認できたのだろう‥‥ガクブルしてる。

 

「えっ〜とレインはこの間々ベルに仕えたいのか?」

 

「ベル様さえ宜しければ‥‥お仕えしたいと思います」

 

 チラチラとベルの機嫌を伺うレイン。

 

「えぇ〜ゼギオンやアピトが居るからレインなんかいらないよぉー」

 

「そ、そんな‥‥お‥‥お嬢さまぁ〜!」

 

 ガチ泣きでベルにしがみ付いて泣くレインをぐいぐいと押し返すベル。

 

 強いお嬢様の配下になってギィに一泡吹かせてやり、更にリヴェルの作る美味しい酒と食事を堪能する私の計画がぁ〜と泣き叫ぶレイン。

 

 確かにゼギオン様が居たら世界を手に入れたも同然だしな‥‥じゃなかった。

 

「ギィに目を付けられるからレインには帰って欲しいんだが‥‥」

 

「リヴェル‥‥恋人の私を裏切るのですか!」

 

「フッ‥‥何でレインのサイズで俺の恋人なんだよ。ぎゃああぁーーー!!!」

 

 水魔法がギリギリと俺を締め上げて、身体を雑巾の様に絞った後に投げ捨てられる。

 

「ハァ? すみませんリヴェル。聞こえませんでしたのでもう一度お願いします」

 

 凄まじい冷気と殺気が俺を襲う中で、冷酷な微笑を浮かべたレイン様が問いかける。

 

「‥‥何故御美しいレイン様が私の様な下賤で薄汚い、ゴミの様な価値しかないスライムと愛を語らえるとお思いなのでしょうか?」

 

「貴方‥‥ちょっと卑屈になり過ぎよ。まぁ〜冗談はさておき‥‥業腹ですがギィは私を戦力とは思っていませんよ。遊び終えたら帰ってくるだろ、程度の存在なんですよ私は‥‥」

 

 レインは何度もしつこくベルに仕える許可を求めて、うんざりしたヴェルベルは根負けして、了承してしまった‥‥。

 

 今は仲良く苺のアイスとブドウのアイスを食べ合いっこしてる。

 

 

 

 

 原初の青と呼ばれる伝説の悪魔と世界に五体しか存在しない新たな竜種。

 

 今まさに最強のお嬢様と従者コンビが爆誕してしまった‥‥。

 

 ‥‥なんでさ!

 

 

 

 

 

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