二度転生したらスラりんだった件   作:Kut-Ku

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46話 甘党はこれだから困る‥‥

 リムル家の調理場で小さな鬼の娘が台を使って大根をカツラむきしていた。

 

 大鍋には昆布と干しキノコに小魚の干物を入れて出汁を取る。

 

「まったく‥‥リヴェル様はお兄ちゃんなのですからリムル様を懲らしめる為とは言え、嘘をつくのは感心しませんよ?」

 

 北の海でシュナのお仕置きが怖くて、咄嗟にモシャスを唱えて鬼娘になると全て許された。

 

 今は俺の後ろから抱きしめて説教している。

 

「以後気を付けます‥‥」

 

《否定。マスターは嘘を付いていません。録音メッセージを再生します。「なあ、この素材はブラに使えないかリヴェル? ん? いや、ブラジャーが必要なのはシオンの方だろ? シュナには我慢して‥‥」これが証拠です》

 

「‥‥」

 

「冥ちゃん。俺を助ける為かもしれんけど‥‥リムルのプライバシーがあるから今後は録音は止めてくれ」

 

 納得がいかない冥ちゃんに、頼むと真剣に言うと考慮してくれる様だ。

 

「そんな事は言ってないと嘘を付いたリムル様は後で追加のお仕置きです‥‥。でもリヴェル様もそういう話題を出すのは控えるようにお願いしますね?」

 

「ごめんなさい‥‥」

 

 大きく溜息を付いたシュナが、優しく俺の頭を撫でてくれた。

 

「でもシュナって子供に甘いよね‥‥痛っ!」

 

「まったく‥‥」

 

 俺とシュナは顔を見合わせ、互いに笑い合った。

 

「家の鬼娘もゴブテも欲しいそうだから量産を検討してみるよ、シュナも見本を渡すから作れないか試してくれないか?」

 

「畏まりました。服飾部門の皆と研究してみます」

 

 俺は出汁を小皿に取り、シュナにも渡して二人で味見をする。

 

「これと卵を合わせて作るのが茶碗蒸しという料理だ」

 

「これが昆布や小魚で取る出汁ですか‥‥味わい深い。これは面白いですね! 鰹節の方も非常に気になります」

 

 出汁を取るから茶碗蒸しが食いたくなったんだよな‥‥。

 

「リムルのおかげで火加減が凄く楽だわ‥‥文明は偉大だぜ」

 

「コンロと言うのですよね? 料理にかかる時間も短縮できますし、リムル様には感謝しておりますわ! ふふふ」

 

 薪だと火加減が難しいとリムルに言うと、3時間でトーチの生活魔法を駆使して刻印コンロを開発しやがった。

 

 食べ物に関しては一切の妥協が無いからな悟。

 

 ‥‥だが尊い犠牲もあった。

 

 コンロを見たミラノが狂喜乱舞してリムルを抱きしめた後に、頬にキスをした所為でシュナとシオンがブチ切れて止めるのに俺の並列存在とベニマルが死にかけた。

 

「この辺では見ない魚ですね? ハクロウが釣って来たんですか?」

 

「いや釣っては無いよ。北の海で狩ってきたんだよ」

 

 北の海で俺達と一緒に次元から出て来た、ハクロウ爺ちゃんと孫役のベルが釣りをするのを楽しみにしていたんだが‥‥あまりの極寒に二人して震えながら諦めて帰ったんだよな。

 

 約束したし、ベルを釣りにも連れて行ってやらんとな‥‥。

 

 釣りはしてないが、北の海で小船に突進してきた魚を調理してる。

 

 角が6本に目が三つあるけど多分ブリだと思う。

 

 名前はガトリングティオと言うらしく、襲ってきたので返り討ちにした。

 

 これを照り焼きにして、もう一品は大根を使ってガトリングティオダイコンの完成だ。

 

 隣でシュナが椀に具材を入れて卵液を流し込む。

 

「これを蒸せば良いのですよね、リヴェル様。時間はどれぐらいですか?」

 

「4番の砂時計だ、沸騰したら弱火にして12分くらいかな‥‥ちょっとこれ味見して」

 

「ああ任せろ! ふむ、もう少し砂糖を入れた方が良いな」

 

 照り焼きをシュナに渡そうとしたのに、横から皿を奪い取って旨そうに食べるベニマルにパンチをするが躱される。

 

「お前はあっちいってろ! 毎回適当に砂糖を足しやがって!」

 

 女の姿だとベニマルは反撃をしないので叩き放題だ。簡単に防がれるけど‥‥。

 

「おっと、そんな拳は俺には効かん。ヒッ!? シュナ包丁を向けるな! もう邪魔しないって」

 

「お砂糖は貴重なんですよ! お兄様は塩でも舐めてなさい!」

 

 逃げるベニマルにほらよっと、ガトブリ大根とふろふき大根の皿が乗ったお盆を渡す。

 

 すまんなと俺に礼を言って家の中に逃げ込むお兄様。

 

 まったくもう! と怒るシュナに会席料理で出す品を何にするか聞く。

 

「サリオンから姫様が来るらしいけど、もてなしの料理ってどうするんだシュナ?」

 

「えっ!? リヴェル様が作るんじゃないんですか?」

 

「俺の料理ってスキル効果が色々付くじゃん? 相手さんに良く思われない気がしてな‥‥」

 

 俺の食道楽人には調理設計、薬膳の二つがあって薬膳が使う食材によって効果が色々出ちゃうんだよな。

 

「美容効果もありましたよね? 喜ぶと思いますが‥‥」

 

「食材によっては便秘解消や解毒効果とか出ちゃうから‥‥お偉いさんって絶対鑑定するだろ? 料理に効果が表示されるのはまずい気がするんだよ」

 

「うーん。サリオンという大国のマナーによりますね‥‥そういう事なら、わかりました! 私が作りますね」

 

「お願いね。和食なら珍しいからサリオン一行も楽しんでくれるはずだよ。レシピは食材次第だけど教えるから」

 

 ミラノさんの所に連絡があったみたいで、姫様達がお礼に来るらしい‥‥もうお礼の品は頂いたんだけどな?

 

 手ぶらで来るとは思えないので、俺とリムルも盛大に迎える為に準備をしている。

 

 リムルは客間の調度品や家具などを作成している。

 

 俺とシュナはサリオン一行に振舞う料理を試作中だ。

 

 ゴブイチはリムルに頼まれてラーメンを試作しているので此処にはいない。

 

「おねがいだぁ〜リヴェル様! はよう刺身用意して欲しいだべ! リムル様が刺身はまだかと魔素が漏れて、チクチク痛くてかなわんべ」

 

 クロベエが慌てて調理場に入り、刺身が見当たらなくてゲンナリする。

 

「昼間っから酒を飲むんじゃないよ‥‥ほれ豆腐とガトブリの照り焼き持っていけ」

 

 俺は三人分の料理をお盆に乗せてクロベエに渡す。

 

「うほほお。こいつは美味しそうだべ、恩に着るだぁ〜リヴェル様」

 

 俺はクロベエに貰った刺身包丁でガトブリを切り分けていく。

 

「リヴェル様も大概リムル様に甘いですよね‥‥」

 

「そうか? まー美味そうに食ってくれるし、誰かに食わせるのが好きだからな俺は‥‥よし! じゃーこれ持っていくわ、茶碗蒸しお願いね」

 

「はーーい」

 

 リムル家の裏でシートを広げて酒盛りをしている三人の元に行く。

 

「はいよ、お待ちかねのガトリングティオの刺身とあらで作った味噌汁だ」

 

「待ってました! おおお美味そうだな」

 

 醤油と味噌はソウエイが作っているが、あと数カ月はかかるだろう。白みそは俺が即席で作ったが、やはり熟成させたい。

 

 今ある醤油はエルフ産醤油。ミラノさんが取り寄せてくれたものだ。

 

「リヴェル様、爺の膝へ来て一緒に食べませんかな? ほほう‥‥これが照り焼きという料理ですかの? 甘辛いタレが凄く美味しいですなぁ〜酒が進みますわい」

 

「いや〜豆腐も酒に合うべ‥‥その姿のリヴェル様はほんに、めんこいべな〜ぷは! 刺身も旨そうだべ」

 

「家の子達に料理を届けるからまた今度なハクロウ。あと魚は歓迎に使うから、酒の肴にする料理はこれで終わり!」

 

 三人がえーーっと子供みたいに駄々をこね始める。

 

「あっ! お前に言ってなかったな。こんな事もあろうかと‥‥色々魚を捕まえて置いたのさ!」

 

 巨大なガラスケースを取り出して海水を注いだ後に、魚を次々と手から放出するリムル。

 

 あっという間に、その場に巨大な生簀を作り出した。

 

「いつの間に‥‥」

 

「お前が巨大タコと戦ってた時だな」

 

「あーあの時か‥‥俺を助けずに魚集めしてたのかよ! 薄情者めっ!」

 

「10本足を魔素で作ってイカvsタコしてた奴なんて助けなくて良いだろ」

 

 海での活動も酸素を大量に体内に取り込んでから潜れるから数時間でも平気だ。

 

 キングスライムのサイズ変更や啓蒙効果も、リムルの進化時に貰った肉体操作の固有スキルのおかげだな。

 

 本当にありがとなゲルド王‥‥。

 

 雲の上で親指を立てて、にかっと笑うゲルド王の幻影が見えた気がした。

 

「そういや〜あのタコ食えるのか?」

 

「アンモニア臭いと思ってたけど焼いたら結構美味かったぞ。ほれ甘辛焼きだ」

 

 クロベエもハクロウもリムルの皿から奪おうとして争奪戦になった。

 

「ほどほどにしろよ‥‥」

 

 俺は道具袋に生簀事仕舞ってシュナの所に戻った。

 

 シュナに新しい魚の天ぷらや煮魚のレシピを渡し、大きめのガラスに食材の魚を入れてシュナに別れを告げる。

 

 完成した茶碗蒸しと料理を道具に仕舞い、家の娘達に届けに行く為に渡り廊下を歩く。

 

「リヴェル様をお持ち帰りですわ〜! 私と同じ髪の色も綺麗ですぅーーハァ」

 

「こら茜! 持ち上げるんじゃないよ!」

 

「女の子のリヴェル様も凄く綺麗で可愛いよね‥‥何かずるいぞぉ! ほぉ〜れ! うりうり」

 

 当初は嫌だったが女の姿だと皆にチヤホヤされるので癖になりそうだ‥‥。

 

 昼食時に帰って来た葵と茜に玩具にされながら、何とかリヴェル家の食卓に辿り着く。

 

 既に席にリヴェル家一同は座っていた。

 

「ご主人様。ご飯炊けましたよー!」

 

「ありがとピリノ。今日のご飯ってタコの炊き込みご飯だから、苦手な奴は白米もあるからな。ハヤテ! 漫画を仕舞いなさい!」

 

「待って! 今、リー君がピンチなの‥‥」

 

「没収だ! たくっ!」

 

「あああーーー!! 酷いよリヴェル! 良い所まで読まして!」

 

 ぷりぷり怒っていたハヤテだが、目の前に魚料理があると気付き目を輝かせて箸を取る。

 

「食事中に漫画読んだら飯抜きだからな! 続きも読ませません!」

 

 葵、ハヤテ、ミラノが口々に横暴だと叫ぶ。

 

 茜、ハンゾウ、ピリノ、ベルは食事を優先できるので困った奴だなと三人を見ている。

 

「私達は娯楽に飢えているのに、師匠があんな面白い書物を見せるから悪いのです! あっ! タコ美味しい‥‥。見た目が気持ち悪いのに、これなら食べられますわ」

 

「本の数が少ないから読める時に読まないと、続きを誰かが借りてて読めないんだよぉー! 茶碗に入ったスープ美味しぃ〜中に具が沢山だ! 私これ大好き!」

 

「ううぅ〜照り焼き美味しいよ。ふっくらと味わい深い、油も乗って最高ね。こ…これは豆腐! はう絹ごし! 美味しぃ〜!」

 

 ミラノ、葵が文句を言いながらも旨い美味いと箸が進む。ハヤテは泣きながら豆腐の食レポをしてる。

 

 ハンゾウと茜も気に入ったのか無言でタコ飯を掻き込んでいる。

 

「そこの粘液野郎‥‥何故、私の食事は無いのです?」

 

「今は鬼娘だもんね〜! 自分で用意しろよメイドだろ?」

 

「人型にも為れたのですね。少し驚きです」

 

 ベルの背後で控えてる瀟洒なメイドは茶碗蒸しを凝視している。

 

「飼い主はベルだからな。俺は面倒を見ないぞレイン? 人化は制限時間付きだけどな」

 

 レインはベルを見つめて訴えているが、我関せずと俺が口に運ぶ茶碗蒸しをハフハフと美味しそうに食べている。

 

 皆が美味しい、美味しい! と口々に賛美する食事が羨ましくて、我慢が出来なくなったレインは俺に顔を寄せて懇願する。

 

「お嬢様の父親なら私の父親も同然! 私の面倒も見なさいリヴェル! 私も御嬢様が食してるモノが食べたいです!」

 

「どんな暴論だよ‥‥メイドしてたんだから自分で作れば良いじゃないか。食材は好きに使って良いぞ?」

 

 堪忍袋の緒が切れたピリノが、バンと机を叩いてレインに怒る。

 

「もう! レインさんがメイドの仕事手伝わないで、ベルちゃんとずっと遊んでるからご飯を抜かれて当然でしょ!」

 

「ピリノと言いましたね? 私は虫取りに、石探し、木登りと毎日忙しい日々なのですよ?」

 

 ピリノが青筋を立てて、レインに叫ぶ。

 

「それを遊んでると言うんです! 掃除に洗濯、花壇の水やり、荷物整理、料理の手伝いと分担する仕事は沢山あるんです! サボらないで仕事してください! お酒も勝手に持ち出して!」

 

 レインにビシッと指を突き付けて怒る狐っ娘。

 

 それに続けて皆がレインに言う。

 

「もぐもぐ‥‥レインはクビだね」

 

「クビね‥‥」

 

「解雇ですわ」

 

「流石に働かないのは駄目ですよレインさん」

 

「さよならレインさん」

 

「レイン可哀そう‥‥綺麗なトンボの羽あげるね。バイバイ」

 

 ハヤテ、葵、ミラノ、ハンゾウ、茜、ベルがレインにさよならを告げる。

 

「お嬢様! 少しは庇ってください! リヴェル代わりなさい! 私が御嬢様にお食事をさせるから!」

 

「やー父上が良いの。それにレインはベルのご飯を勝手に食べるから駄目!」

 

「酷いベル様! 毒見で半分食べただけじゃないですか‥‥」

 

 ウソ泣きで顔を両手で覆うレイン。チラチラと指の間から俺を見るのを止めて貰えます?

 

「別に悪魔って飯食わなくても腹減らないんじゃなかったか? 睡眠も必要ないはずだ」

 

「じゅ、受肉したから‥‥お腹は減るし、睡眠も居るんです!」

 

「残念! 悪魔も天使も食事や睡眠は趣味の範囲って知ってるんだよな〜これが」

 

「減るんですぅ〜! 心のお腹がペコペコになるんですから! お酒を飲まないと喉も乾くんですぅ〜!」

 

 ミザリーおねーちゃん早くレインを何とかしてくれ!

 

「あーもう煩い! わったよ! でもテーブルは家族で満員だ。レインは自室で食べてくれよ? あと酒は夜だけだからな!」

 

 満面の笑みで勝ち誇るレイン。

 

「ご主人様! レインにメイド仕事させてください!」

 

「いや〜サリオン一行が帰るまでベルと遊んでてもらわないと困るんだよ色々。その後にちゃんと仕事させるから‥‥すまんピリノ。あとレインは感情を喰う生き物だから、お前をワザと怒らせて楽しんでるんだよ」

 

 口に手を当てクスクスとピリノを笑うレインの頭を叩く。

 

 何とも騒がしい昼食を終えた。

 

 

 

「まったく原初の私の頭を気安く叩くなど万死に値します!」

 

「ベル。レインがお仕置きされたいそうだぞ?」

 

 ヴェルベルは首を傾げて、右手を龍化させてレインに言う。

 

「レインは悪い子?」

 

「ふふふ‥‥御嬢様。レインはいつも良い子でございますよ」

 

 キングスラリンの背に乗ったベルが飛び降りて、レインを躾けようと拳を握る。

 

 青い顔をしたレインに貴方何とかして! と肘を何度もガンガン顔に当てられる。

 

「俺の言う事はきちんと聞く事! わかったかレイン?」

 

「ぐぬぬぬぬ! 調子に乗って! お嬢様! ストップ! リヴェルの言う事を聞いてやらない事も無いわ‥‥聞きますから〜!!」

 

 俺はベルにありがとなと言い、次元を開けてもらう。

 

「それじゃーね父上! 呼んでくれたらすぐ迎えに行くよ」

 

「うん、ベルも気を付けて遊べよ? レイン、ベルの事頼んだぞ?」

 

「任せておきなさい。夜はピザだったかしら? あれが食べたいわ」

 

 太るぞと言おうとしたら、言わせねーよとレインに次元の向こうに蹴られた。

 

 

 

 次元操作の訓練で次元空間に来たが、少し一人で考え事もしたかった。

 

「ベルも生まれ変わって随分と子供らしくなったな‥‥。MPのおかげで竜種と言う存在もバレずに済んでるし、レインも力を極小まで抑えてくれているから何とか誤魔化せるだろ」

 

 三角、四角、丸と形を変えてみるが結果は同じ。

 

 次元の穴を開けるがやはり反対側が見えるだけの穴だな。

 

「はっ! ほっ! とりゃ! 駄目か‥‥」

 

 考え事は色々あるが、まずはトレイニーさんの頼み事である妖精女王ラミリスだ。

 

 地図機能で確認しながら探せばいつかは辿り着けるだろう。

 

「別に連れて来いって言われてないし、トレイニーさんに場所を教えるだけで良くないか?」

 

 何故お前は場所を知ってるんだ? とリムルに問い詰められそう‥‥あーもう! しくじったな。

 

 夜の蝶で占い師のねーちゃんに場所を聞いときゃ良かったぜ。

 

 もう一つはイングラシアに行ってユウキ君の存在を確かめたいんだよな‥‥。

 

 ユウキ君がいないと帝国の裏組織も、自由組合も、ロッゾの関りも、召喚された子供達すらどうなってるのか心配だぞ‥‥。

 

「その為にはルーラより便利な次元移動を早く会得したいんだけどな〜ほい! たりらららん! とおりぬけフ~プ~! 駄目か‥‥次だ次。どこでもドア~!」

 

 ボトッ‥‥。

 

 ドアの形をした穴から何かが落ちて来た。

 

「ううぅ‥‥が‥‥グウ‥‥」

 

 人の形をしたような‥‥変な翼を生やした生き物が呻いていた。

 

 呪いか? 瘴気が立ち上ってジュッ~! と焦げる嫌な音がする。

 

「次元操作って一人でやるもんじゃねーな‥‥幻獣や悪魔の存在を忘れてたわ」

 

 警戒するが相手は瀕死の状態だ。少し様子を見よう‥‥。

 

《否定。種族は妖天です。邪気や瘴気の核を体に直接埋め込まれています、除去しない限り苦しみ続けると思われます》

 

「あー侵略種族(アグレッサー)と戦ってる天使さんか‥‥助けた方が良いな。せいすいと魔よけの鈴でどうにかできないか?」

 

 俺は妖天さんの身体にせいすいをぶっかけると大量の黒い煙が立ち上り、やがて白い煙に変わる。

 

「ぐぐああああーーーーーー!!」

 

「すまん、耐えてくれ」

 

 続けて魔よけの鈴を鳴らすと背中に刺さった無数の黒い破片が砕け散り灰に為った。

 

 後は特ポーションを振りかけて‥‥これで大丈夫じゃね?

 

「ハァ‥‥ぐっ! 魔物が!? 私を助けたの? ぐううぅ。呪い…が消え…てる…ありえない」

 

「霊力も空だし、暫くは安静に寝ていろ」

 

「魔物は滅する‥‥けど。私を助けた行為に免じて見逃します。早く此処を去りなさい」

 

 侵略を食い止めてくれてるんだから協力はしますよお嬢さん。

 

「確か色々あったよな? えーと‥‥これとこれに、これも使えるな」

 

 俺は仰向けで寝ている妖天さんの指にいのりのゆびわを嵌める。

 

「な‥‥何だこれは」

 

「その指輪を両手で包み込んで神に祈れば霊力が回復するぞ」

 

 馬鹿にしたように笑うと、試すだけなら良いかと祈るお姉さん。

 

「ヴェルダナーヴァ様。どうか我々を導きください」

 

 全身が光り輝き、驚きの間々大きく口を開けて固まる妖天さん。

 

「あとこれに着替えて、カールの法衣って言うんだけど邪気とか呪いとか跳ねのけるから」

 

「‥‥待って! 待ちなさいスライム! 貴方一体何者なんです!!」

 

 これも実験できるな! いや〜使い所が無くて困ってたから助かるわ〜!

 

 人助けも? 天使助けも出来て一石二鳥だわ。効果を色々試すぞ♪ くくく。

 

「これ使いたかったんだよなぁ〜〜八咫鏡! 効果が同じなのかな?」

 

 俺が妖天さんを八咫鏡で映すとパリンと鏡が砕け散った。

 

「えっ‥‥すみません。壊しましたか?」

 

「いや、何個も作れるから大丈夫だよ。効果もわかったしサンキュー天使さん」

 

「私は既に妖天に変異して‥‥」

 

『父上ー! 準備出来たよ!』

 

 いけね‥‥ベルが呼んでる。

 

「じゃーな。幻獣族(クリプテッド)と戦ってくれてありがとうな!」

 

「えっ!? まっ‥‥」

 

 俺はどこでもドアを出して天使のおねーさんを元の場所に送り返す。

 

『おう! ベル送ってくれ』

 

 俺がベルに念話でそういうと、次元の穴から並列存在のエルフ娘と鬼娘が現れた。

 

 究極能力を獲得したことにより並列存在を増やす事が出来たから、色々試行錯誤する事にした。

 

「上手くいくと良いんですけど‥‥」

 

「まずは順番にですよね?」

 

「まあ失敗しても別の手立てを考えるわ」

 

 俺はスラぼうとスラきちにそう言うと、融合して一つに為る。

 

「此処までは試してるんだよな‥‥」

 

 スライム形態と人化が融合すると人化の姿になる。

 

 俺の目標は最終的にはスライム姿で自由に人化できる様にする事。

 

 戦闘中にモシャス相手が常に傍にいる訳でもないし、自由に人化できるようにしたい。

 

 スライム形態でも戦えるが、人型だとドラクエ装備が使えるからな。

 

「よし、スラきち。次はこのまま人型同士で融合だ」

 

「フュージョンやります?」

 

 俺は人差し指を両手で立てるスラきちの頭を叩いて融合する。

 

 変化した状態で更に融合するとどうなるんだ? という実験だ。

 

「エルフから鬼に変わり、時間が延長するならそれはそれで良い」

 

 俺はモシャスが解ける間、ハクロウに教わった朧流剣術の訓練をする。

 

「フッ! フッ! お‥‥解けた。でもスライムに戻ってしまったな」

 

《報告。体内に変化個体が温存されています。使用しますか?》

 

「まじで!? する! する!」

 

 俺はボンと煙を上げると鬼娘に変化した。

 

「おおおお! やったーー! でも何が原因だ?」

 

《回答。茜のユニークスキル、別腹の効果を受肉の効力により一部借りる事が可能になったからです。更に能力の解析が進んだ事により、固有スキルの肉体操作が擬態と統合して万能変化に進化しました》

 

「別腹って魔素を貯蔵しとけるスキルだよな? お礼にあいつが好きな苺のお菓子を作ってやらんとな‥‥さんきゅー茜!」

 

 しかも捕食がないと無意味な擬態さんが大活躍してるだと!?

 

 もう俺、ゲルド王に足向けて寝れないわ‥‥。

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