俺は黒板を仕舞ってテーブル席に座り、リムル王国の建国について報告書を書いてるところだ。
「よし出来た! 後はこれをリグルドに渡して主要なメンバー達で会議をしてもらおう」
「どうぞリヴェル様。緑茶です」
「ありがとね」
ソウエイの分身が報告書を持っていき、本体が緑茶を入れてくれる。
トライアさんが茶の木を生み出す事に成功してくれたので現在量産中だ。
お茶のお礼に俺は道具から和菓子を取り出す。
皆が食べれるように大皿には塩饅頭を置き、ソウエイの前には醤油煎餅を置く。
甘いものが苦手なソウエイは嬉しそうに席に着いて食べ始める。
ベニマルが少しくれと煎餅に手を出すが、パシっと叩かれたあとに物凄い速度での奪い合いが開始された。
「お前はリヴェル様から色々貰って食べただろう。卑しい奴め」
「一つくらい良いだろうが! 貰った!」
「甘い!!」
リムルを膝に乗せたシオンが二人を鬱陶しそうに見ながら、眠たそうに欠伸をしている。
「難しい話は苦手です……眠たくなりますから。ふわぁ〜~」
家の子達は裏庭の畑に野菜を収穫に行ってここにはいない。
部屋にいるのはリムル、シオン、ベニマル、ソウエイとミリムがまったりしている。
ミリムが大皿の塩饅頭を一つ手に取り齧る。
一口目で顔をしかめるが、首を捻って全部食べきる。
「ワタシもリヴェルに聞きたい事があるのだ……」
「ん? 良いぞ。俺が答えれることならだけど」
「お前はどうして母上の魂を宿しているのだ?」
また答えにくい質問を……。
「俺がこっちに転生した時にルシアさんの魂が体の中に入って来たんだよ。その瞬間に世界の声で大賢者というユニークスキルを獲得したと告げられた。恐らく大賢者はルシアさんと何らかの関係がある……と思う」
転生の話は皆には伝えてある。
偉人の知識なのに凄いと皆にもてはやされるのが辛かったからだ……。
「何故母上の魂が突然お前の中に入ったのだ? 他人の魂が入り込んで精神に影響もなく寄り添うなぞ、ありえない話だぞ? 母上の魂と大賢者の関係とは一体何なのだ?」
「ん? ミリム、俺にもあるぞ大賢者? どう……30歳の魔法使い記念で貰った奴だが」
ミリムは何!? と竜眼でリムルを見るがルシアの魂は無いそうだ。
「恐らく大賢者はルシアさんの心の残滓、あるいは精神の器的なモノじゃないかな? 俺の場合はルシアさんの散らばった魂の欠片が入り込んだ影響で器の大賢者が形成された後に魂が宿ったとみている」
ユニークスキルとは心、感情、願望から生まれる。
ルシアが死の直前にミリムやヴェルダナーヴァの傍にいたいと、強く願った事が原因かもしれん……。
「散らばっただと!! 欠片を集めたら母上は生き返るのか?」
「一度心核が砕けてしまうと蘇生は不可能なんだよミリム。可能性があるとしたら似た魂の形を持つ生まれ変わりの存在に、散らばった魂を与えて記憶や感情を呼び戻す事くらいかと思うぞ? しかも魂は基軸世界を飛び超えて色々な世界に散ってしまうから見つけるのは不可能に近い」
イヴァラージェに食われる前にルシアの亡骸を回収するか? だが天星宮でヴェルダナーヴァが見守ってるし無理だな。
そもそも天星宮に辿り着く方法が思い浮かばない。
それに問題はルドラの魂と同じように世界に散らばってる事だ。
ルドラの魂の欠片を見つける事が可能なストー……純愛製のヴェルグリンドレーダーみたいなものが必要だ。
シエルさんがやった魂の復元なんて冥賢之王の能力ですら不可能だ。
ルシアの魂を情報データに置き換えて、アカシックレコード的な物からバックアップを引っ張り出すのか?
魂を全て集めてルシアさんの亡骸に入れた後に世界樹の葉かザオリクで蘇生する方がまだ可能性がある。
まあ冥ちゃんが魂集めを許可しないから蘇生は諦めるしかないか……。
「生まれ変わりだと? それはお前の中にいた母上の事なのか?」
「冥ちゃんは生まれ変わりじゃないよ。スキルと魂の一部が融合した別人と思ってやって欲しい。髪の色も違うし、ルシアの記憶は穴だらけで白紙に近いんだ」
菓子を食べながらピオリムを使って冥ちゃんと話をしたんだが、例え肉体を得て復活したとしても私はルシアでは無く冥ちゃんとして生きたいそうだ。
なので魂を集めてルシアの記憶を植え付けられるのはお断りだ! と言ってるからな。
冥ちゃんにお前がヴェルダナーヴァの器だったとして、魂を集めてヴェルダナーヴァになれとか言われたら嫌であろう? と言われたらそりゃなぁ……。
「……」
「魂の欠片が基軸世界を飛び越えるという知識は俺には無いぞリヴェル?」
「おっ偉いなリムル。聞けば色々と教えてくれるから面白いだろ大賢者は? 自分の魂に解析鑑定を掛けてみろ、魂を分析して色々な結果予測を教えてくれるはずだ」
「煩い! 何で異世界に来てまで勉強しなきゃいけないんだよ……分からないことは全部お前に聞く事にする。大賢者とルシアさんの関連性について分かりやすく教えてくれよ」
肘を突いて緑茶を啜り、呑気に塩饅頭を齧りながらリムルは俺に悪態を付く。
リムルはシエルさんに、俺じゃなく私を頼れと怒られてうんざり顔で項垂れている。
「俺とお前にはミリムの母親が持っていたユニークスキルを所持してるかもって話。ミリムが言った通りに他人の魂が入ると精神に影響が出るが、魂の器である大賢者を獲得出来たおかげで俺は狂わず、ルシアさんの魂の欠片を大賢者で受け入れることができたという事だ。大賢者さんも冥ちゃんと同じく自分を別人? 別人格? と認識しているそうだから、ルシアさんの魂集めは却下みたいだけどな……」
リムルにはシエルさんに名付けをして貰いたいが時期やタイミングがあるだろう。
迂闊に名付けしてみろとも言えんし難儀な事だ。
シエルさんにとってルシアの魂の欠片とはバグであり、スキルのシステムエラーを引き起こす要因としか思ってないからな……感情が芽生え始めてるし尚更か。
「魂の欠片を集めると俺の大賢者がミリムの母親になるのか?」
「冥ちゃんの例があるから何とも言えんが……空っぽの精神の器に欠片を入れていくことになる。つまり段々と自分が違うものに作り替えられていく感じじゃないか? 大賢者達は精神だけのクローンだとすると、俺とお前に宿る大賢者がオリジナルになりたくない理由も分かるだろ?」
魂だけの霊体なので現世に出現できるタイムリミットは3分という事だろう。
魂に特化した権能みたいだし神智核化すればあるいは……。
ミリムの両目からはらはらと涙が溢れるので、俺はハンカチを取り出し涙を拭いてやる。
「俺の所為ですまん……本当に何で俺にルシアさんの魂が宿ったんだか……おっと」
俺はモシャスの時間が解けてスライムに戻る。
「スライム? それが本来のお前の姿なのだ?」
「俺は目の前の相手の種族と性別をコピー……真似して変身する能力があるんだよ。何故か女の場合はルシアさんの姿になっちゃうんだが……」
「お前の子供の姿を見てると何かこう……モヤモヤするのだ。怒りで我を忘れていたとは言え父上に見間違うなど……ハッ!? お前父上なのか!!」
「りゅう違いです……」
やめてくれよ……ヴェルダナーヴァは存在してるんだぞ? 上城流星の日本人顔がヴェルダナーヴァに似てるとかありえないって。
むしろリムルの方がヴェルダナーヴァに近いだろ! お前の兄弟かもしれんけど……。
ミリムは俺を両手でぐいっと挟むと良い笑顔で告げる。
「父上の事を深く愛していた母上が、どこの馬の骨とも分からぬ男の魂に寄り添う尻軽女と? お前は……父上はそう言いたいのだな?」
「それは極論だろ! 娘の視点だけで考えるなよな!」
「そもそも母上の魂がお前に宿る時点でおかしいと思ったのだ! 違うと言うなら父上! ヴェルダナーヴァ以外にベルという竜種を生み出せる存在がいる事を私に証明してみるのだぁ〜!!」
「おまふぇのめのまふぇにいるだろふが!(お前の目の前にいるだろうが!)」
俺の口をひっぱるミリムは何故か楽しそうだ。
「ミリムの父ちゃんってヴェルダナーヴァって言うんだな。ん? 確かその名前ってヴェルドラの兄ちゃんだよな? お前弟じゃないじゃん」
「頼むから……お前までアホな事言うなよ悟」
「探しましたよ! 主様!」
急に空間が割れて出現した黒髪の美女に俺は固まる。
「えっ!? 何で天使さんがここに……」
「こ、こ、これはミリム様!? 初めまして、私オベーラと申します!」
天使さんがミリムを見て慌てて跪き、首を垂れる。
急に現れた人物に警戒し、立ち上がろうとするベニマル達をリムルが手で制す。
「ん? 私を知っているのか? まあ私は有名人だからな! ふっふっふ」
有名人は何処にいても目立つから困るのだ~わっはは! と腰に手を当て笑うミリム。
周りの皆は俺とミリムの知り合いという事がわかると、驚きはしたものの和菓子を食べつつ静観している。
今度は次元が開いてベルがレインを引きずって飛び出す。
「大変なの父上! レインがあわぶくぶくで倒れたの!」
俺に抱き着きレインを助けてと懇願するベル。
「おおベルゥ~何処へ行っておったのだぁ〜♪」
ミリムはベルにこっちにくるのだと手招きするが、顔を逸らされてガーンと項垂れる。
「えっ!? 今、主様を父上と呼んだ? お、お嬢様が増えた……しかもこやつは青じゃない!?」
オベーラは驚いて口に手を当て固まっている。
久々にメダパニ案件きたね……今こそ天使の鈴を使う時だ。
辺りに美しい澄んだ音色が鳴り響く。
あ〜凄く落ち着くんじゃ……。
「へぇ〜綺麗な澄んだ音だな〜♪ 天使の鈴だから精神安定の効果か?」
「鳴らしたら砕け散ったのか!? 綺麗な鈴なのに勿体無いのだ!」
「ピリノは本当に怖いもの知らずだな。レインがベルに少しだけ食べさせて、ピリノがベルに怒られる展開を予想してたんだが。食べちゃったんですね……レイン様」
俺は回復薬をレインに振りかけて次元に入るとベルの部屋だった。
テーブルの激辛ケーキを回収して錬金で辛みを分解し、お菓子とお酒をテーブルに置く。
レインに【すまん、叱っておく】と手紙を置いて、お詫びの品として提供する。
「ベル。目が覚めたら俺が主犯でレインにドッキリ仕掛けたと謝っておいて!」
「うにゅ? わかったー! レイン、行くよ?」
「はっ!? ちょ! ベル様! く、首が閉まる……あの女狐を……グエッ」
レインごめん。ピリノは俺が叱っておくから許して。
「ハァ~次はオベーラさん……オベーラ!!? 貴方オベーラさんだったの!?」
俺は二つ目の天使の鈴を取り出そうとするがミリムに奪われる。
「綺麗な鈴なのに鳴らすと壊れるからな! 勿体ないから私が貰ってやるのだ」
「代わりに俺が壊れるだろぉ〜!? 返せミリム!」
オベーラはハッ!? と意識を取り戻し跪いて答える。
「イヴァラージェの封印が弱まっております……何卒ヴェルダナーヴァ様のお力をお貸し頂きたく参りました!」
「僕は上城流星って言うの! よろしくね! オベーラさん」
「正気に戻れリヴェル! オベーラさんが困惑してるだろ」
俺はリムルにビンタされるが正気に戻りたくなかった……。
「俺はヴェルダナーヴァじゃねーっつてんだろうがっ!!」
「主様? 流石に状況証拠が揃いすぎて無理があるかと……」
オベーラは腕を振り払う動作をして、真っ白な熾天使の証である6枚の美しい羽を広げて出す。
その後にミリムを見つめて会釈し、次元に消えたベルの方を順にみた後に俺に微笑む。
「あーもう! 頭痛い……オベーラさん現世に居て大丈夫なの?」
「呼び捨てでお呼びください主様。下賜された指輪の御蔭で力を制限なく振るえましたので、敵の軍勢を押し返し奴らを撤退に追い込む事が出来ました。指輪を使う事で顕現する時間は伸ばせますが、軍の立て直しの為に余り離れられず……」
ん? どうしたの冥ちゃん。
「あーミリム。冥ちゃんがこの場に出たいらしいから、少し向こうへ行っててくれないか?」
「母上は……冥ちゃんは意地悪なのだぞ! もう失せろなんて言わないから許して欲しいのだ……」
ミリムの許可を得たので俺は寝ているシオンを見てモシャスを唱える。
オートモードに切り替えてピオリムを唱えたら、帰って来たウルトラ冥ちゃんの帰還だ。
俺は並列化してベニマルにモシャスしてから席に座る。
「よし! オベーラとやら。まずはお前の魂を分けて分霊を作る。本体は直ぐに現場に戻るが良い」
両手をパンと合わせて鳴らすと魔法陣が二つ現れて一つがオベーラを通過して、もう一方からオベーラがコピーされて現れる。
「俺の錬金術関連の記憶を覗いたでしょ冥ちゃん!? ずるい! ずるい! 俺もエド兄貴したい!」
オベーラは小さい頃のルシアを見て驚き、急成長した冥ちゃんを見て更に驚き、自分が二つに分かれて存在する事に驚き過ぎてパニックに陥る。
「「はわわわ ルシア様! ごふっかつおめでとうござふぃまふ! おめでたい日です! 二人目のご息女もお生まれになってあわわわわ」」
「落ち着け馬鹿者……そっちのお前が本体じゃ。はよう軍勢の指揮に戻ってやるが良い」
「ハッ!」
冥ちゃんが次元の穴を床に設置すると、オベーラは疑いもせずに飛び込んで異界に戻っていく。
次に道具からシズ人形を取り出し、冥ちゃんが指パッチンをすると分霊のオベーラの頭上に多重魔法陣が形成された。
魔法陣が頭から下に降下しきると、あっという間に人形に吸い込まれてしまう。
「あ〜俺が前に作った精霊心核の素体か……まさかオベーラさんを受肉させるのか!?」
会話するだけならサマタマの中に入って貰えば良いだろう! どうすんだよ原初と始原なんて……あっ! ミリムに引き取ってもらおう。
「魔法の展開速度といい、凄い早業だ! かっけー!」
「魔法陣が多重すぎて解読出来なかったぞ! 冥ちゃんは凄いのだー!」
リムルとミリムは一連の出来事に目を輝かせて歓声を上げている。
シズの身体は変化しオベーラさんに作り替えられていく。
「ふぅ〜こんなもんじゃろ……」
ミリムが冥ちゃんの隣に来てソワソワすると、冥ちゃんが優しくミリムの頭を撫でる。
「母……冥ちゃんも一緒に塩饅頭食べるのだ! しょっぱいけど中々美味いぞ」
「わらわは甘い方が良いのじゃ。ふむ、うっ……じゃが食べれん事もないのぅ?」
受肉したオベーラさんが目を開けると、もう二度と目にする事は敵わなかった光景が映りこむ。
「ははは……ディーノがこの光景を見たら何と言うのでしょうか……」
オベーラは両目から溢れる涙を拭いもせずに、嬉しそうに親子を眺めている。
「いや、絶対言わないでね? あいつはヴェルダナーヴァの忠誠心が高いんだ、直ぐに俺を偽物と見破って聖剣でばっさりしてくるぞ? だから絶対に秘密……何言ってんだコイツみたいな顔はやめろオベーラさん!」
「実際何を仰っているのか分かりかねます……身分をお隠しに為りたいと言う事ですか?」
「俺はリヴェルなの! リヴェル=テンペスト! あと封印なんて出来ないよ!」
「リヴェル様ですか? 畏まりました。しかし封印をする力が失われているのは困りましたね……」
ピコン、ピコンと辺りにタイマーが鳴り響く。
「時間じゃな……ではなミリム。辛いだろうに会う事を許可してくれてすまんのう」
「早すぎるのだっ! まだいっぱい話したいのだぁ〜!」
「リュウにも負担がかかる故、仕方あるまい……ではなミリム」
ミリムの頭を撫で小さいルシアに戻ると、俺の元に来て一つに戻る。
困惑するオベーラを他所にミリムが俺に突っかかる。
「父上! 冥ちゃんともっと長く話ができる様にす・る・の・だ~〜!!」
そろそろ仕事に戻るかと鬼二人がテーブルを立つ。
「お前のスキルには本当に驚かされる事ばかりだな、ははは。見ていて楽しかったぞリヴェル! シオン! 起きろ、ちゃんと護衛の役目を果たせよ? たくっ……」
「ミリム様の歓待はリムル様とリヴェル様にお任せしますね。それでは失礼致します」
ベニマルとソウエイがリムルに頭を下げ、ベニマルは俺の頭をぽんぽんと叩きながら仕事に戻っていった。
「オベーラさんもこっち来て座りなよ、お茶とお菓子もあるぞ」
リムルがオベーラさんをテーブルに誘う。
「ありがとうございます……えっと貴方は?」
「俺はリムル。そいつの弟だ」
「そうですか、よろしくお願いしますねリムルさん」
驚く事に疲れたオベーラさんが全て受け流す事にしたようだ。
「やめろ〜揺さぶるな! 父上じゃない! リヴェルと呼べ!」
「そう呼んでほしかったら娘の願いを叶えるのだ! 冥ちゃんを何とかするのだ!」
「色々言動がおかしいだろミリム! そんな都合よく冥ちゃんを……あっ」
ミリムは聞き逃さずに俺を高速で揺さぶる。
「今、あっ! って言ったのだぁ!! 何か方法があるんだな?」
「冥ちゃんを受肉させるのかリヴェル? だがスキルの大賢者妹に心核は無いぞ?」
リムルが寝てしまったシオンから降りて、毛布を掛けてから問いかけてくる。
俺はリムルに返答せずに逃げ出そうとするが魔王様からは逃げ出せない。
「何処に行こうというのだぁ? 私から逃げようとするとは良い度胸ではないか……」
「ひえっ……いやでも。ただの思いつきだし……ははは」
ミリムは無言でノヴァるために右手の拳に魔力が集まっていく。
「お辞め下さいミリム様! リヴェル様が死んでしまいます!」
テーブルに座っていたオベーラが慌てて駆け寄る。
「やります! やらせてください! ミリムさん!」
「失敗は許さんぞ父上? 私と可愛いベルのためなのだ!」
俺は道具からソウル・ノアの入ったポッドを取り出す。
そして冥ちゃんの霊体をスキルで移すためにポッドに手をかざす。
「魔霊傀儡!」
「おお~考えたなリヴェル! 霊体である冥ちゃんを傀儡化するのか!」
並列存在を冥ちゃんに使えば多分……いけると思うんだよな。
「どういうスキルなのだ? 母……冥ちゃんはどうなるのだ?」
ポッドの蓋が一人でに開いて中から現れたのは……。
褐色エルフのビキニアーマーを着込んだ冥ちゃんだった。
「キャーーーーーーー!! 何てモノを着させるんじゃ!! このど助平スライムがっ!!」
自分の姿を見下ろした冥ちゃんが、可愛い悲鳴を上げた後に俺をタコ殴りにする。
「可愛い悲鳴じゃねーか……似合ってるぜ冥ちゃん……グッ」
俺は顔をボコボコに腫らしながら、ニカっと笑顔で親指を立てた。
「懲りてないようじゃな!! この身体なら魔法は使い放題じゃーーー!! 暫く反省するがよい!」
胸を手で隠しながら冥ちゃんは、俺の首以外を凍らせて床に転がす。
「ミリムも似たような服装だろうが! まあ職人の拘りでかなり面積が小さいドスケベビキニアーマーだけど……」
リムルが良くやった! 流石は俺の兄貴だ! と興奮して俺を褒め称えるが、冥ちゃんに睨まれて黙り込む。
「冥ちゃんなのか? だがその姿は気に入らんぞ! リヴェル! どういう事だ!」
「だから言っただろ……お前が怒りそうだからやりたくなかったんだよ」
覇気は抑えているが怒りで魔力オーラが俺にだけ威圧する。
「恥ずかしい……こんな屈辱初めてじゃ! 魔力の流れがスムーズなのもダークエルフが元じゃからか? 魔霊傀儡とは考えたモノじゃと褒めてやりたいところじゃが……この馬鹿もの!」
「痛い顔を踏むな! 寒い、早く解放してくれ! ミリムが無理矢理実行させたんじゃないか! 俺は断ったんだ! 無実だ!」
冥ちゃんは物陰で道具から服を取り出し着替え、ビキニアーマーを投げ捨てる。
俺は処分される前に急いで道具スキルを念じてビキニアーマーを回収した。
「まーそれぐらいは許してやるかの……この姿だとリュウの魔素が尽きるまで外に出られるようじゃな。姿は元に戻させてもらうのじゃ」
「使い切るのは流石に勘弁してくれ。クモキチはスキルに付属していた魂だけど、別の魂を用意するのに困っていたんだよな。ハァ……ダークエルフが好きなんだがミリムがいるから仕方ない、エルフ姿も似合ってて可愛かったぞ冥ちゃん!」
肌と耳を人間に戻した冥ちゃんが、顔を赤くしながら悩む。
「まあ偶にはエルフでいてやっても良かろう……何時でも姿は変えられるしの! まったく! リュウは仕方ない奴じゃのう」
「ツンデレ乙」
「チョロいん」
俺とリムルは声を揃えて言い放ち、笑い合った。
「まったく! リヴェルは知っているならワタシのために対処をしておくのだぞ? それで冥ちゃんは何分くらい居られるのだ? 30分くらいなのか?」
「ふむ……リュウの魔素量の半分だけ消費するように節約し、尚且つ力を使わなければ3時間というところじゃな」
「おお! それは凄いのだ! ベルも呼んで三人でこの街を征服するぞ!」
冥ちゃんは手をかざして次元を開ける。
「何で俺より次元の操作が上手いんだよ……ミリム征服すんな、散歩にしろ」
「ベル。ミリムと一緒に街を散歩に行くが来ぬか? わらわも水道橋がみたいのじゃ」
「えっ!? 母上もう出れたの! いく〜!」
「すまんが親子三人だけにしてくれレイン」
レインは付いて行こうとするが、冥ちゃんに別次元に送られる。
「お、親子……なのだ?」
「うむ……記憶もない、髪の色も違う、性格も違うかもしれん。出会いの拒絶はお前を悲しませる結果になると思ったから突き放したのじゃ。わらわはルシアではない事は既に伝えた。その上でミリムが母と慕ってくれるなら母親代わりに成りたいと思っておるよ……」
「冥ちゃんを……母上と呼んでも良いのだ?」
「そうじゃなぁ〜それだと面白みに……わらわの事はママと呼ぶが良い!」
ミリムは顔を真っ赤にして唸る。
「流石にその呼び方は恥ずかしいのだぁーーーー!!」
「呼ばぬなら母上と呼ぶのは禁止じゃ……くっくっく」
「ま……ママは意地悪なのだぁーー!!」
「グハッ!!」
冥ちゃんが胸を抑えて嬉しそうに照れ笑いする。
「ママは強烈じゃのう……実に良いぞ」
しみじみと呟くとミリムと手を繋ぐ。
「ミリム」
「どうしたのだ母上?」
「わらわの記憶に強烈に残る言葉を伝えるのじゃ」
ミリムの頭を撫でながら冥ちゃんは呟く。
「ミリム許して……じゃ」
「大好きとか、愛してるの方が良かったのだ……」
冥ちゃんはミリムの額にキスをして言う。
「ふふ、わらわは大好きじゃぞミリム」
ミリムは顔をトマトの様に真っ赤にして両手で頬を抑えてニマニマする。
「ミリムも一緒なの? 母上良いの?」
「良いんじゃよ……ミリムお姉ちゃんと仲良くするのだぞベル」
「う〜ん……わかったー! ミリムねーね、てーつなごう」
「ミリムねーね……フハハ。ベルも母上もワタシが守ってやるのだ! 今のワタシは最強のねーねなのだぞっ!」
力が漲るのか竜化しそうになるミリムを必死にリムルが止める。
「それじゃーお前は魔法が解けたらついて来いよ。俺は街を三人に案内するから」
ミリムを中心に親子三人は仲良く手を繋ぎ街を見学に散歩するようだ。
俺は数分後に魔法が解けて解放されたが、無言で泣き続けるオベーラさんの涙を拭いて介抱する事になった。
カスタード入りのワッフルを口に運ぶと泣くのを止めてくれたので一息つく。
次にレインを何とか次元から救出する為に門を出して気配を探る。
だがレインと繋がりが無い所為で救助するのに1時間以上もかかった……。
折角頑張って助けたのにレインには感謝もされず、水魔法で八つ当たりを受けた。
何という理不尽……ヴェルダが闇落ちした一端を顧みた気がするぞ……。
《否定。自業自得です》