二度転生したらスラりんだった件   作:Kut-Ku

57 / 59
52話 グラタンよ、私は帰って来た!

 街の中央に新しく建てられた議事堂で、幹部たちは会議を行っていた。

 

 俺たちがバカンスに行っている間に話し合ったが、意見がまとまらなかったようだ。

 

 リグルドから会議にぜひ参加してほしいと連絡が来たので、俺はリムルの頭に乗って議事堂へ向かうことにした。

 

 部屋の中ではリグル、リグルド、ルグルド、レグルド、ログルドが席から立ち上がり、俺たちに会釈した。

 

「よくお越しになられました、お二人共! さあこちらへお掛けください」

 

 リグルドとリグルが俺たちを席に案内する。

 

「ありがと、リグルド」

 

「ありがとな、リグル」

 

 着席したところでリムルが話す。

 

「皆の意見を聞きたい、国を作ることは確定だが‥‥俺も方針に少し悩んでいてな」

 

「そうですな……我々も、この特殊な位置にある国を大々的に公表するか、一部の国とだけ秘密裏に国交を開くかについては、結論が出ませんでした。結局、リムル様に決めていただいてから細部を詰めようという次第でして……申し訳ございません」

 

 ゴブリン達が一様に頭を下げた。

 

「リヴェル様がメリットやデメリットを書いてくれていますが、これは非常に難しい問題ですよ。大々的に公表する場合は人の往来が増え、犯罪や妨害工作を行われる可能性が出て来るということですよね?」

 

「うん、スパイ活動や破壊工作など魔物の国だからと人間国にやりたい放題される懸念もある」

 

 警察という軍とは違う治安部隊が必要だが時期尚早だ。

 

「リムル様が作った街の法も、国がなければ相手国を裁けない‥‥至極当然ですが、なるほど国は必要だと思い知らされましたな」

 

「そうだよな‥‥俺もリヴェルに国を作るメリットを聞かされて、確かになって思い知ったわ」

 

 しみじみとルグルドが答えた後にリムルが続いた。

 

「リヴェル様、少しお聞きしたいのですがよろしいでしょうか?」

 

「ごめんレグルド、報告書分かりにくかった?」

 

「いえ、非常に面白く‥‥その勉強になりました。公表することに関してなんですが」

 

「うん、どうぞ」

 

 眼鏡を親指でクイっと上げてからレグルドは話し始める。

 

「大々的に公表して、経済圏を作り周りの国を豊かにして味方を増やす。友好国に対して農業技術の提供や食料を援助して、他国が攻めて来た場合にも非難してもらえるようにするとのことなんですが。相手を増長させ損をする結果になるのではないかという懸念と、非難してもらえることが防衛につながるとは思えないのですが‥‥」

 

「援助は戦争をしている国や災害で被害を受けた友好国に対してだけだね。長期的に支援する可能性もないわけではないけど、援助は信頼も得られるし見返りもちゃんと貰うから大丈夫だよ! その為にも国を作って国同士の約束事にしないと駄目なんだけどね」

 

 ポーションもそうだが、世界は魔物のせいで食料自給率が低い。

 

 村や街に医者や治癒師がいるとも限らんし、回復薬は生命線のはずだ。

 

 我がリムル帝国の圧倒的な生産量の食料は強力な交渉カードになる。

 

 俺はレグルドが頷くのを見て話を続ける。

 

「次に公表せず友好国も極わずかという前提だけど、他国から侵略行為があって撃退したとする。それでも負けた側が『凶悪な魔物が国を興し、我が国が送った使節団を襲って皆殺しにしたんだ!』と好き放題に周辺国へ嘘をでっちあげて伝えられることもある。最悪の場合には連合を組まれて、討伐軍をけしかけられるなんてことにもなりかねないんだ。周りの国は常に見ているからね。大事だよ? 友好国から相手国に対して批難して貰えることって」

 

「私は助け合いも損得勘定が先にでてしまっていけませんね。援助を反故にされないためにも国が必要になるわけですか‥‥。しかし、私は公表しない派でしたが面白い。擁護されないと一方的に嘘で攻撃されるのですね」

 

 レグルドが眼鏡を親指で持ち上げて報告書を見直す。

 

 公表しない案である、ドワルゴンとブルムンドだけと国交を開く場合を再検討しだした。

 

「ですが皆さん‥‥まずは国の名前を早く決めましょうよ!」

 

 ログルドが皆を見回して言う。

 

「リムル王国にしようぜ!」

 

「却下だ‥‥」

 

 俺が間髪入れずにそう言うと、すげなくリムルに却下される。

 

「ですがリムル様、私もリムル王国が凄く好きですぞ! 何かこう‥‥リムル様万歳的な感じがいいですなあ〜」

 

 リグルドがそう言うと、皆が確かにと頷き合う。

 

「待て待て‥‥俺も真面目に考えるから」

 

「リムル大帝国! あべし!」

 

 リムルがリンゴを投げて来たので、体にめり込んだリンゴを切って食べる。

 

 腕を組んだまま椅子を揺らして考え込んでいたリムルが、思いついたのかポンと手を打つ。

 

「よし! ジュラ・テンペスト連邦国なんてどうだ? 結構いい名前だと思うんだが」

 

「おお! 良い名前ですな〜!」

 

 皆が良いですねと頷き合う。

 

「中央都市リムルにリムル王国! シンプルでわかりやすいし、よかったのにな〜」

 

「リヴェルだろ! 都市の名前を勝手に決めたのは!」

 

「リムル様、リヴェル様がお決めになったのではありませんぞ? 都市の名前はカイジン殿達が設計段階のときに決めてましたからな」

 

「えっ!? そうなの?」

 

 リグルドが企画書の段階で既にリムルと名前が記載されてましたよ? とリムルに言う。

 

「リムルって名前は覚えやすいし、よい名前じゃん。商業名に色々使う予定だから早めに諦めてくれよ」

 

「お前の名前も使えよ! 俺ばっかり恥ずかしいじゃん!」

 

「リムルプロジェクトは既に進行中なんだ‥‥すまない」

 

『何だよそのプロジェクトは!』と怒るリムル。

 

 リムル饅頭、リムル煎餅、リムル酒と既に続々ラインナップが追加されて手遅れだぞ友よ‥‥。

 

「リヴェルも同じく言いやすいし、覚えやすいだろうが!」

 

「‥‥すまない」

 

「何だよ急に‥‥すまないさんになるんじゃないよ!」

 

 シオンやシュナが『リムル様の偉大さを皆に宣伝するのです!』と俺に色々案を出させたんだ‥‥すまない。

 

「俺の名前が付いた水道橋とウイスキーもあるんだからそんなに気にすんなよな。クロヴェ! 面白い名前だろ? クロベエと一緒に作ったお酒だからな!」

 

「ハァ‥‥星は気楽でいいよな。それでお前は結局どっちがいいと思うんだ?」

 

 世界征服がしたい奴に聞いたら駄目だよリムル。

 

 一度魔物が世界を支配しないと、人間との調和なんてまず生まれないというのが俺の結論なのに。

 

「俺は戦略的に行くから隠れてコソコソだな。お前はみんな仲良く豊かになればいいだろ? なら周辺国から融和的に親書を送って、国伝いに宣伝して貰う方が良いと思うぞ?」

 

「でもお前が言ってた西方諸国だっけ? ロッゾ一族ってのが経済圏を牛耳ってるから、出る杭は打たれるってことになっちゃうんだろ?」

 

 ヴェルドラを封印したマリア・ロッゾについて、俺が大賢者姉妹を使って色々調べていたのでリムルもロッゾのことは知っている。

 

 使い方次第ではアンサー・トーカーにもなるので、最強のチートスキルだよな大賢者は‥‥。

 

「そっちは遅かれ早かれ衝突することは確定しているからな‥‥快適に暮らすための技術革新を止める気は無いんだろリムル?」

 

「うん、便利で快適な現代にまで生活水準を整えたい」

 

 そういや天使が文明を破壊しに来るうんぬんって今も機能しているのか? オベーラに聞かないとな。

 

「じゃ〜相手は人間国同士で連携して仕掛けてくるから、簡単に手出しできないようにドワルゴン、サリオンと三国同盟で対応して行くしかないんじゃないか? 俺の構想なんて中立国の立場を宣言して、アウターヘブンよろしく傭兵国家として各地に参戦し、大国を弱体化させるように動くことだ。そうして戦争で疲弊した小国を支援という形で順番に契約魔法で属国化にしていく感じだからな」

 

 コツはギィにバレないように裏でコソコソだ。

 

 俺に人殺しが出来るかって問題もあるが。

 

 シオンの料理の特訓に付き合うことで、何故か精神攻撃耐性にまで成長したから大丈夫だろ‥‥たぶん。

 

 まずはファルムスを弱体化させるように動いて先手を打ちたい。

 

 帝国が動くまでイヴァラージェが復活しないことが前提だけど‥‥世界が滅亡する危機に全人類が協力するシナリオってあるのかな?

 

「もう絶対お前に国の行く末は任せません! そんなことを考えてるから称号に悪魔なんてつくんだぞ、馬鹿リヴェル! それじゃ、周辺国に大々的に宣伝する方向で行くか! あ〜そういや、ミリムが建国を手伝ってやると言ってくれた件はどうしたものやら‥‥魔王様だからな」

 

 悪魔王の称号は絶対にレインとミソラのせいだろ! 悪魔が俺を悪魔扱いしたせいで変な称号が付いちゃったんだ!

 

 ベルに『優しい父上大好き!』と言われる俺が悪魔王なんて間違ってる! 慈父王の間違いだよな冥ちゃん? 

 

 姫様達に鑑定でバレたら印象最悪だから、消したいんだよなこの称号‥‥。

 

《肯定。マダオに称号を改変出来るか、現在姉さんと模索中ですのでお待ちください》

 

 またねーよっ!! まるで駄目な親父になるだろぉ! 許して下さい何でもしますから! 

 

「でも魔物が国を興す時に魔王が後ろ盾って普通じゃないか? 最古の魔王のネーミングはかなりのアドバンテージだぞ?」

 

「う〜~〜ん。それをすると人間との関係がプッツリ切れそうで怖いんだよな〜」

 

 俺たちが話す内容について、皆があれこれと意見を出し合うので騒々しくなる。

 

 だが、リグルドが大きくパンと手を打ち鳴らすと部屋に静寂が戻った。

 

 悩みは尽きませんなと苦笑を零し、リグルドが皆を代表して話す。

 

「何にせよ周囲の国々に喧伝していく方向で行きましょう。問題が出た場合にはミリム様にご助力を願うことをお伝えすればいいかと」

 

「そうだな! よし、その方向でみんなよろしく頼むな!」

 

 俺はいそいそと木のコップのブドウジュースをワイングラスに移し替える。

 

 それを持ち上げてニヒルに笑いながら、みんなに混ざって言い放つ。

 

「「「畏まりましたリムル様! 世界はテンペストのために!」」」

 

 ちょっとやってみたかったんです! 暴力反対! 

 

 

 

「今日来る予定の姫様を迎える準備は出来てるリグル?」

 

「はい、リヴェル様の提案の課外学習でしたっけ? あれで子供達を一時避難させましたし、会議する商館も姫様が寝泊まりする議事堂の客室も準備万端です」

 

 避難訓練にもなると思って、ガビルの配下とゲルドたちに子供たちの引率を頼んでいる。

 

 ベルが次元を繋いで直接シス湖まで移動し、キャンプや泳ぎの練習などで三日過ごして貰う。

 

 残りの日数はジュラの大森林でトレイニーさんたちと果物狩りを楽しんでから帰宅だな。

 

「子供たちに急にあっちに行ったら駄目とか、しばらく外出は控えなさいとか可哀そうだからな」

 

 姫様が滞在してる間は念のために、子供達には遊び感覚で避難していてもらう方が良いだろう。

 

「ふふふ、でも危険なことになるんですかね?」

 

「備えあれば憂いなしってね! 念のためだよ」

 

 ベル、レイン、ミソラ、オベーラ、ミリム、冥ちゃんたちには姫様が滞在中のあいだ、子供たちに混ざって遊んでもらうことにした。

 

 ミソラはレインに仕える形でベルのお世話をすることになったみたい。

 

 原初、始原、魔王、竜‥‥なんでこうなった!?

 

 いや! 家には可愛い娘とその姉代わりの少女。

 

 それに居候の美人なお姉さんが三人居るだけだな! よし、バレてもそれで押し通そう。

 

 冥ちゃんはバカンスの間、全ての時間を食事に当てたことが二人には不満だったらしい。

 

 だからもう一度シス湖に行って、一緒に遊ぶことを冥ちゃんは娘たちにやりなおしを要求されている。

 

 ダークエロフはミリムに怒られるのでルシアの形体を新しく作った。

 

 冥ちゃんからあれこれ身体の監修を受けて作り込んだソウル・ノアが完成する。

 

 試しに魔霊化してやると『実になじむ、なじむのじゃ!』と時間も少し伸びていた。

 

 遊びに来てるいのに朝、昼、晩と飯と酒を飲み食いするときだけ出現してたら、ベルとミリムに怒られて当然だろ‥‥。

 

 何が俺が魔素を寄越さなかったから仕方なくだ! おかげでノヴァられて死ぬ所だったんだぞ!

 

 そのせいで俺もガッツリ魔素を搾り取られて、娘達と遊ぶ時間にあてられたわけだが‥‥俺を言い訳に使った罰としてきわどい水着を堪能するがいいさ。

 

「それじゃー俺も姫さんをお出迎えに行きますか」

 

「お供しますリヴェル様! それでは少し失礼しますね」

 

 リグルが俺を抱き上げて、一緒に議事堂の出口に向けて歩く。

 

「ううぅわーーーん!! リヴェル様ーー!! 長かったよ! 辛かったよ! グラタン食べたい!」

 

「汚い! 鼻水付けるなソーニャ! なんで帰って来たんだよ!」

 

 門を出た所でソーニャがリグルから俺を奪って抱き寄せる。

 

「ひっ‥‥酷い!? 何日もリヴェル様の食事のことを思って耐えて来たのに!」

 

「あ〜この方は確か‥‥ミラノさんの助手でしたよね? ふふっ」

 

 残念美人過ぎるぞソーニャ‥‥。

 

 アホ毛になってるし、服と髪の毛にも葉っぱや木の枝がくっついたままじゃないか。

 

「いや、すまん。タイミングが少しな‥‥ん? 丁度いいのか? エルフの姫様を迎えるからお前も来てくれって汚いな‥‥風呂に入って身だしなみを整える時間が必要か。おっ! リリナいいところに、すまんがこいつの面倒を見てやってくれ! 着替えたら議事堂まで案内してくれると助かる」

 

「汚い、汚いって! うら若き女性にいう言葉じゃ無いですよぉ!」

 

 ソーニャは両手をブンブンと揺らして怒る。

 

 リリナは横目で髪の毛も服装もボロボロのソーニャを不思議そうに見ていたが、急にハッとして怒る。

 

「もう! リヴェル様に納豆の件で相談があって来たんですよ! 話を聞いてくれると言ったのに酷いですわ!」

 

「すまん! スラぼうが納豆の相談にはちゃんと乗るから! お願いリリナ」

 

 丁度良いのでソーニャにモシャスしてから、可愛くリリナに両手を合わせてお願いする。

 

「むむむ、今度リヴェル様を好きにお召し替えさせて頂きますからね!」

 

「姫様って何ですか? あっ! グラタン食べたい!」

 

「あいよ! じゃ〜お願いね! ほら、代わりにこれ食えソーニャ。それと‥‥よっと!」

 

 俺はエビとカニのクリームコロッケを皿に乗せソーニャに渡し、スラぼうをリリナの頭上に置いた。

 

 背後でグラタンじゃないのにグラタンだーー!! とアホな声が聞こえた。

 

「待たせてすまんなリグル。じゃー行こうか」

 

「相変わらず忙しいですね、リヴェル様は」

 

「まー好きでやってることが多いから問題無いよ」

 

 正門に辿り着くとリムルがランガとフリスビーをしていた。

 

「影移動は無しだからなランガ?」

 

「わかっていますよ主」

 

 リムルが軽く投げると、一瞬にして咥えて戻って来るランガ。

 

「違うそうじゃない‥‥投げるフリスビーと追走する感じでキャッチして欲しいんだが? あっ! うん、よくやったぞランガ!」

 

 褒めて貰えると思ったのに、何故か叱られて尻尾がへにょるランガ。

 

 リムルが慌ててランガを褒める。

 

「ハッ!? これはもしや我の力を制御する訓練では! 流石は我が主!」

 

「そうだね‥‥ゆったりたのむよランガくん」

 

「リムル様、御客人はまだ来ていないのですか?」

 

「そうなんだよリグル。トラブルではないと思うけど予定の時間をすぎてるんだよな」

 

 俺は地図機能を使うとカバルとギドが街の正門まで来るところだった。

 

「地図には表示はされているな。あと数分で来るみたいだから遊ぶのはその辺にしてくれリムル」

 

「へいへい、ランガ! ラストは思いっきり投げるから影移動使ってもいいぞ!」

 

「お任せください!」

 

 リムルが全力で投げると突風が吹き、斜め上に超高速で飛来していく。

 

 ランガは影移動で建物に移動しながら距離を詰めるが、なかなか追いつけずいい勝負だ。

 

「最初からこうすれば俺もランガも楽しめたのかよ‥‥」

 

「いや街中では迷惑だからやめろ馬鹿タレ‥‥」

 

 俺がリムルの頭を軽く叩くと馬の蹄の音が聞こえて来た。

 

 先頭に馬が二頭、カバルとギドが乗っている様だ。

 

「ようギド! 久しぶりだなカバル!」

 

「久しぶりだなお前達! 元気にしていたか?」

 

 俺とリムルが挨拶するが二人はポカーンとしている。

 

 カバルとギドは困惑しながらも、顔を見合わせて首を捻りながら話す。

 

「お嬢さん方は俺達を知っているので? リムルとリヴェルの奴に俺達が到着したことを伝えてくれないか?」

 

「ん? 何を言ってるんだカバル。俺がリムルだぞ?」

 

「あっ! リムル、俺とお前が人化出来るのそういや二人に言ってなかったわ」

 

「「リムルだとぉ!? じゃーこっちがリヴェルの旦那でやすかい!?」」

 

 二人が騒々しいので馬車からエレンが降りてきたが、何故か冒険者風ではなくメイド姿だった。

 

「もぅ! なにやってるのよ二人共、リーナが早く‥‥なによぅ! この可愛い娘達は!」

 

 エレンが俺に抱き着き猫吸いすると、今度はリムルに抱き着いて頬擦りする。

 

「ちょいエレン話が進まんから離せ、イリーナ姫を進ませて中央区まで行ってくれ」

 

「へっ? なんで私の名前を知ってるんですか? あっ! 貴方はエルフなんですね。痛い! なんで叩くのよぅ‥‥」

 

「カバル、ギド。話が進まんからこのまま直進してくれ! そこに姫様に止まって頂く議事堂があるから! エレンは俺とリヴェルが届けるから先に行ってくれ」

 

 二人は御者に頷くと、カバルとギドは先行して二台の馬車が議事堂へ向かって進んで行く。

 

「いつまで俺を抱きしめてるつもりだエレン! 俺はリヴェルだぞ? スライムに戻るにはまだ時間が掛かるんだよ」

 

「ボク、悪いスライムじゃないよ。なーんてな! ははは! 驚きすぎだろエレン」

 

 リムルはスライムに戻りエレンを驚かせている。

 

「なななな!? リムルさんだったの! じゃー本当にこの娘がリヴェルなの?」

 

「なんだよ‥‥俺とわかったら嫌そうに離れて。でも触りたいのね‥‥シャツを捲るな」

 

「エレンさん、お久しぶりです。お連れの方も向かいましたし我々も行きましょう」

 

「あっ! リグルさん凄く騎士らしい格好ですね! 似合ってますよぅ」

 

 リグルは照れながら、エレンをエスコートしていく。

 

 鋼の鎧装備に新調したら、ゴブリン部隊が騎士団になっちゃったんだよな。

 

 ゴブエモンは刀も手に入れたし、鎧は俺が武士風に変えてあげたら物凄く喜んでくれていた。

 

「お前、その姿で姫に合うの?」

 

「ん? あースライムで会う予定だったからな‥‥ソーニャにモシャスしたせいでシャツにホットパンツだな」

 

「ソーニャちゃん戻って来てたんだ!? 今は銭湯か‥‥フム」

 

「なにがふむだ! 俺達は議事堂へ向かうんだからな! リムル、なにか服だしてくれよ? お前みたいなドレスじゃなくてズボンがいい」

 

 リムルはピンクの可愛いドレスを出してきた。

 

「‥‥日頃の仕返しか?」

 

「いや、ズボンなんて普段から持ってないぞ? シュナがズボンを作ってくれないからな」

 

 俺は仕方なくドレスに着替える。

 

「ここで脱いで着替えるな! はしたない!」

 

「中身はおっさんなんだから勘弁してくれよ‥‥へんに女子力上げやがって!」

 

「うちはおか‥‥シュナが厳しいんだ」

 

 俺とリムルは議事堂へ歩き出す。

 

 髪型が気に入らないのかリムルが歩きながら、俺の髪をツインテールに結い直す。

 

「よし、お揃いだな! 似合っているぞリヴェル」

 

「そりゃどうも‥‥」

 

「せっかく可愛い女の子に変身してるのにもっとオシャレしろよ」

 

「リリナにゴブテとハルナそれに鬼娘達の玩具になってから言えよな」

 

 もう散々着替えたし、オシャレはうんざりだわ‥‥。

 

「すでに俺も玩具だが? 人数的にお前の方が酷そうだな‥‥どんまい」

 

 議事堂に戻るとリグルドが俺たちに告げる。

 

「御客人方が客室でお待ちですぞ」

 

 俺とリムルは扉を開けて客間に入る。

 

 俺達のあとに続けてベニマルとリグルが部屋に入り、俺たちの横に居並ぶ。

 

 部屋の中には姫様と御付きの従者2名、それにメイドが二人いる。

 

 うち一人はメイド姿のエレンなワケだが‥‥。

 

 俺は姫様にリムルがこの国の王ということを伝える。

 

 そして両隣で控えるリグル、ベニマルを順に紹介した。

 

 ベニマルとリグルは姫様に優麗にお辞儀する。

 

「私はリヴェルと申します、イリーナ様。遠路はるばるお越しいただき、感謝致します」

 

 俺は綺麗なカーテシーをして、ニコリとイリーナ姫に微笑む。

 

『どうリムル? 完璧だったでしょ?』

 

『ああ見事だ。さっきまでシャツ一枚で尻をかいてた奴とは思えないぞ』

 

 俺がリムルの足を踏むと、踏みかえされる。

 

 メイドの一人が噴き出すが、何事も無かったようにすまし顔で佇んでいた。

 

「よくお越しになられたイリーナ姫。ギドとカバルから聞いていると思うが、俺も国王という立場なんだ。その辺を考慮して貰えると嬉しい」

 

「私は命を救ってくれた恩人へお礼の訪問に来てますの。できれば国は関係なく無礼講でお願い致しますわ、お二人共」

 

 俺とリムルは安堵して少し緊張を解くと、イリーナが畏まって言った。

 

「リムル様、リヴェル様、私を助けていただき、心より感謝を申し上げます」

 

 そう言うとイリーナは深々と頭を下げた。

 

「うん、助けられて良かったよ」

 

「私も助けることが出来て嬉しく思います」

 

 リムルと俺が続けて返事を返す。

 

「よし! じゃー堅苦しいのはここまでね! あなたたち、スライムだったよね!? 何で人になってるのよ! 同じ髪型はややこしいわ‥‥えっと、こっちがリヴェルさんよね? エルフがスライムに化けていたの?」

 

 急に砕けた態度になったイリーナは、俺を抱き上げて首を傾げる。

 

「失礼ですよ! おやめください、姫様!」

 

「ヒエッ‥‥ごめんなさい、エルあ〜ゴホン! エル」

 

 何かを言いそうになったイリーナ姫を、メイドさんがキッと睨む。

 

 後ろに控えていた従者二人が俺たちの前にでて来て礼を言う。

 

「ワシからも礼を言わせとくれ。リムル殿、リヴェル殿。本当にありがとう」

 

「私からも心より感謝を‥‥リムル様、リヴェル様に大精霊の祝福があらんことを」

 

 ブティさんとクリパトさんがそう言って、俺たちに頭を下げた。

 

「こっちもブティさんに助けてもらえなかったら危なかったよ」

 

「パトさんにヒントをもらえたから、ネヴァンさんを助けられたんだありがとね」

 

 ネヴァンは妊娠中なので子供たちとサリオンに滞在しているらしい。

 

 俺たちに感謝していたとパトさんから告げられた。 

 

「私はリムルさんとリヴェルが絶対リーナを助けてくれるって信じてました!」

 

「そうだな‥‥水氷大魔散弾で蘇生の邪魔して来たもんな」

 

「魔石を砕いて大魔法の準備もしていたしな‥‥信じて貰えて嬉しいよ、エレンちゃん」

 

「えへへ、あれは違うんですよぅ〜」

 

 エレンは冷や汗をかきながら、俺とリムルに交互にヨイショしてごまかそうとする。

 

 姫と従者たちはエレンを見て楽しそうにクスクスと笑っているが‥‥。

 

 

 

 俺は何故かメイド姿の天帝様が気になって仕方が無かった‥‥。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。