二度転生したらスラりんだった件   作:Kut-Ku

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53話 泳げないのではない‥‥浮かないのだ

「へぇ〜リヴェルたちは元々人間だったの? 魔物に生まれ変わるなんて難儀な人生ね‥‥」

 

 リムルと話し合った結果。

 

 元人間の転生者であるということは、伝える方がいいと判断した。

 

 魔物である俺たちが何故人間と仲良くしようとするのか? その理由付けが明確になるからだ。

 

「うん、そうなんだよイリーナ。でも、結構楽しく過ごせているよなリムル? あはは」

 

 イリーナ姫が俺とリムルは恩人なのだから、イリーナと気軽に呼んで欲しい。

 

 そう言ってくれたので、俺とリムルも呼び捨てで構わないと気軽に呼び合う仲になった。

 

「転生した当初は苦労したけどな‥‥リヴェルが居てくれたことには感謝してるよ」

 

「それはお互い様だろ? お前がいてくれなかったら、俺は一人でスライム人生送ってたと思うとゾッとするわ!」

 

 違いない! と俺はリムルと笑い合う。

 

「仲が良いわね、あんたたち‥‥。でも、その口調なんとかならないの? その顔だと違和感が凄いのよ‥‥」

 

「元が男なんだから仕方ないだろ? 俺は男にも変化出来るし」

 

「俺はこの姿だけだ。メルセデスが気に入ってるし、今のところ変える気もないな」

 

 男にもなれたんだ‥‥とサリオン一行が呟く。

 

「メルセデスって誰なのリムル?」

 

「でてこいよメルセデス? お呼びだぞ?」

 

 めんどくさそうな顔をしたメルちゃんが、本を片手にリムルの横に出現する。

 

「「「や‥‥闇の大精霊様。小さくて凄く可愛い!」」」

 

 メルちゃんはふよふよと浮きながら、リムルの頭にゆっくりと着地した。

 

「メルセデス様はリムルさんと契約しているんですか?」

 

「‥‥そうだよ。リムルは優しいし、本を一杯読ませてくれるから好き~」

 

 エレンが問いかけると、メルセデスはあくびをしながら答えた。

 

 メルセデス様可愛い! 凄い力ですね! とエルフたちがメルちゃんをチヤホヤする。

 

 エルフたちの態度に満足げなメルちゃんは、リムルの頭にアゴを乗せてムフーと喜ぶ。

 

「精霊に好かれてるならエルフの信頼を得たも同然よリムル? しかも闇の大精霊と契約なんて勇者以外ではリムルが初めてじゃない?」

 

「ゆっ‥‥勇者!? あはは、そんな大げさな‥‥」

 

「本当ですよリムルさん? 闇の精霊は気まぐれのうえに人見知りが激しいんですから!」

 

「‥‥私はすごいんだぞリムル。ムフ~」

 

 リムルは可愛すぎるメルセデスにデレデレしながら、「そうだねぇ〜」と頷いている。

 

 満足したのかメルちゃんは腰に両手を当てて、リムルの中に沈むように戻っていく。

 

 珍しいというのは本当だったようで、天帝様も驚いた顔でリムルとメルちゃんに釘付けになっていた。

 

 

 

 

「お主に名を授けたモノの名が気になるんじゃが‥‥」

 

「企業秘密です!」

 

「あのおかしな踊りについて知りたいです!」

 

「黙秘します!」

 

 俺はブティさんの肩に乗せられたまま、パトさんと二人掛で質問攻めにあっている。

 

 答えられない質問はのらりくらりとはぐらかした。

 

 だって禁則事項ですもん!

 

 エレン、謎のメイドさん、イリーナがエルフ姿の俺を構い倒すので、見かねたブティさんが俺を肩に乗せて避難させてくれたんだ。

 

「へえ〜エルフの習性なのか‥‥面白いな。子供たちの面倒は大人のエルフ全員でみるんだな」

 

「うん、だから周りの大人が親代わりで面倒見てくれるから寂しくなかったわ。普段忙しくて会えないから、うちのパパもママも忘れられないように必死に親アピールしてくるし! そりゃもうひどかったわよぅ‥‥」

 

 リムルとエレンがエルフ談義に花を咲かせている。

 

「俺はエルフじゃなくスライムだって言ってるじゃん‥‥」

 

「リヴェルの人化は性質そのものを変化させるからですよ。魔物が持つ本来の魔素では無く、今は精霊力に置き換わっている‥‥スキルが影響してるのかも? あるいは‥‥あ〜知りたい! 死ね!」

 

「スキルより加護の影響の方が大きい気がするなぁ〜」

 

「つ・ま・り! 今のあなたはエルフそのものに化けてるってことです! ちょっと待ちなさい! 加護ってなんですか!!」

 

 届かない俺を必死に掴もうとしてジャンプするパトだが、ブティさんには届かない。

 

 なるほどね‥‥。

 

 俺がベルやレインにモシャスしても、変化できなかったのは性質や因子を形成できないからか。

 

《肯定。エルフの因子は毛髪を取り込むことで得ていました。他の種族の因子を集める事でモシャスの能力も向上すると思われます》

 

 そういや、カバル、ギド、エレンから採取していたっけ?

 

 うちの街に住んで居る魔物たちの因子も、劣化分裂に毛や血を回収させていたからな。

 

 迷子探しや、警備、人口統計などシエルさんが必要と判断したので実行した。

 

 毛がない種族には針で少しだけ血をもらう形で回収してある。

 

 ベルの因子を貰っても、肝心の魔素が足りないからモシャスは無理だとわかった。

 

 だって謎のメイドさん‥‥ハイエルフにモシャスできないし。

 

「皆様方。ご歓談中、失礼しますぞ」

 

「お久しぶりです、お婆様。ご歓談中に失礼しますわ」

 

「こりゃ驚いた‥‥なんであんたがここに居るんだいミラノ?」

 

 ノックのあと扉をリグルドが開け、ミラノと女中姿のソーニャが入ってきた。

 

「皆様を昼食にお呼びするようにシュナさんから言付かっていますの。どうぞみなさまこちらへ‥‥ててて天!? はっ! 畏まりました!」

 

 謎のメイドさんが念話したのか? 顔を抑えて溜息を吐いている。

 

「ワシも丁度お腹が空いてきたところさね。ミラノ、案内を頼めるかい?」

 

 ブティがミラノの失態を誤魔化しながら、1階の宴会部屋へ案内されていく。

 

 俺はブティさんに降ろされたので、エレンに捕まった。

 

「食事会に参加される皆様はどうぞこちらへ。食事は1階にてご用意させて頂いております」

 

「おー凄い! ソーニャちゃんが仕事モードだ!」

 

「何故か懐かしさがこみあげるな‥‥よく似合ってるぞソーニャ!」

 

『お黙りになっていただけますか? お二人とも!』と顔を赤くしたソーニャが怒る。

 

 シュナの食事会に参加するメンバーはイリーナ、クリパト、ブティ、ミラノ、リムル。

 

 それともう一台の馬車に乗っていた、ドワルゴンの関係者3名のようだ。

 

 ペガサスが上空を通過していないし、陸路でドワルゴンからブルムンドへ移動したのだろう。

 

 表向きは、イリーナが中央都市リムルに建てる別荘の建設依頼を、ドワルゴンの商会にするというていだ。

 

 リムルの護衛はシオン、葵、茜が受け持つので大丈夫だろう。

 

「それじゃー俺たちはこっちだな」

 

 俺の髪の毛を弄っていたエレンが呟く。

 

「う〜リムルさんたちだけ御馳走なんてずるいですぅ」

 

 使用人たちは別の場所で食事をする手筈になっている。

 

 ゴブイチはシュナの応援に行ってるので、食堂を俺が借りて作ることにした。

 

「あはは、エレンさん。残念がることはありませんよ」

 

「そうだぞエレン。リヴェルの飯もシュナに負けず劣らずだからな」

 

 リグルとベニマルが、羨ましそうにイリーナを見送るエレンに話しかける。

 

「確かにあのときに食べた朝食は美味しかったですけどぅ」

 

 懐かしいな‥‥出会った当初の朝食の奴か。

 

 あの当時は料理スキルが生えてなかったからな‥‥よし、エレンに美味いもん食わせてやるか!

 

 それにしても‥‥使用人と偽って一緒について来るメイドさんの扱いに、凄くこまるんですけどぅ!?

 

「メイドさんも食堂で構いませんか? 部屋もご用意できますけど?」

 

「エルとお呼びくださって構いませんわ、リヴェル様。食堂で大丈夫です。エレンもこちらでいただくのでしょう? うふふ」

 

「そうだよぉ〜エルちゃん。楽しみだよね!」

 

 キャッキャウフフと楽しそうね‥‥お二人さん。

 

「俺に様はいらないよ、エルさん。リヴェルと呼び捨てでお願いします。あとエレンはなんでメイド姿なの?」

 

「わかったわ、リヴェルさん」

 

「似合ってますかリヴェル? エルちゃんが着たいって言うから、お揃いにしたんですよ〜♪」

 

「うん、二人ともすごく似合っているよ、仲の良い姉妹みたいだ」

 

「ご、ごめんなひゃい」

 

 余計なことを言うエレンのほっぺを抓りながら、姉妹と呼ばれて嬉しそうに微笑むエルちゃん。

 

 俺の料理に凄くワクワクしていらっしゃる天帝様に、内心ビクつきながらも平静を装う。

 

「おっ! 来たなエレン」

 

「あっしらは食堂みたいでやすね」

 

 カバルとギドは知っているのか? あっ! メイドさんを見て気まずそうにしてる‥‥いきなり知らされたパターンだな。

 

「リヴェル〜準備出来てるよ〜!」

 

「ご主人様? トングってこれで合ってますか?」

 

 ハヤテとピリノにも女中姿で給仕してもらっている。

 

 今回は日本食がテーマだからな。

 

「助かるハヤテ〜! それで合ってるぞピリノ。今回はバイキング形式だからな」

 

「凄く疲れたんだよ‥‥私も食べていいんだよねリヴェル?」

 

「あはは! おにぎりを300個は握ったのか? ご苦労様ハヤテ。ピリノもあとは俺がするから、ハヤテと一緒に食べて良いぞ」

 

 片腕を持ち上げながらウーンと背伸びするハヤテ。

 

 ピリノはトングが入った缶をカウンターに置いていく。

 

「わかりましたー! ねえねえ、シズ。お好み焼きの焼き方教えてよ〜」

 

「ドバっとしてジュってしたら、ギュギュってするんだよ!」

 

 ふざけてると思ったピリノがハヤテの頬を抓るが、至って真面目なハヤテは困惑顔で涙目だ。

 

 俺はトレイに数々の和食を並べていく。

 

 中央には長い鉄板を置いて、出来立ての焼きそばやお好み焼きを食べれるようにしてある。

 

「バイキングで通じるのか? ビュッフェだっけ? 食べたいものをトングで皿に乗せて食べてくれ!」

 

「おにぎりと一緒に食べると美味しいんだよ!」

 

「お味噌汁も色々ありますよ!」

 

 手本としてハヤテとピリノが皆に説明しながら、自分のお盆に食べたいものを入れている。

 

 エレンが先陣を切ってあれやこれやを詰め込んでるが、お残しは許しまへんでぇ?

 

「中央では俺がお好み焼き、もんじゃ焼き、焼きそばを作る。周りに好きな具材があるから選んでくれ! 肉が駄目な奴は先に行ってくれよ? 肉とキャベツは先に入ってるからな」

 

「私はもんじゃ焼きでしたか? それをお願いします。具材は、そうですね‥‥エビ、イカ、ホタテ、トマト、チーズでお願いします」

 

「海鮮もんじゃだねエルさん! よし! どうぞ、端から食べていって、ヘラで好きな焼き加減を楽しむんだ」 

 

「スキルで食材の品質と旨味があがってる? 美味しい‥‥。もちもち触感やカリッと感も自分で好きに楽しめるのがいいわね。それにしても‥‥かなり高いレベルの料理スキルだわ」

 

『欲しい‥‥』と恐ろしいことを小声で呟きながら、目を閉じて味わうエルさん。

 

 天帝様も満足できる味で良かった。

 

 リアクションが薄くて‥‥ヒヤッとしたぜ。

 

「エルちゃんずるい! 私にも一口ちょうだい!」

 

「だ〜~めっ! あぁ〜凄く美味しぃわ♪」

 

「交換しよ! ほら玉ねぎの天ぷらすご〜~く! 美味しいから! ね? ね?」

 

 エレンは皿一杯に具材が乗ったままの癖に、食いしん坊だな‥‥。

 

 天ぷらと焼きおにぎりを美味しぃ! と頬張るかたわら、エルさんのもんじゃの匂いに釣られたようだ。

 

 カバル、ギド、ベニマル、リグルは出汁巻き卵を平らげてハヤテに怒られていた。

 

「煮物に、焼き鳥、からあげ、天ぷら、よくわからん魚の味噌煮も美味しいぞ? 出汁巻き卵ばっかり食うんじゃねーよ」

 

 男連中は美味いと思ったら全力投球で、女性陣は色々皿に取って気に入ったものを再度とる感じだな。

 

「お酒は日本酒と焼酎置いとくぞ? ハヤテとピリノは冷たい麦茶か熱い緑茶どっちがいい?」

 

「「緑茶!!」」

 

「あいよ」

 

 俺は急須にお湯を注ぎ、蒸らしてからハヤテとピリノに持っていく。

 

「ありがとリヴェル。出汁巻き卵なくなったんだよ‥‥若って砂糖が入ると暴走しすぎだよ! もう!」

 

「ご主人様ありがとうございます。ふふ、ほら半分こしようよシズ」

 

「ベニマルのやつ、最近はメイプルシロップにご執心だったけどな?」

 

 隣ではスラぼうが魚介メインのお好み焼きをエルさんに焼いていた。

 

「エルさんって魚介類が好きなんですか?」

 

「ええ、好きよ。ていうかあなた‥‥並列存在よねこれ? 高位の存在でも扱うのが難しいのだけど?」

 

「たまたま使えるようになっただけですよ。スライムなんて分裂してなんぼでしょ?」

 

 冥ちゃんから、ブロック通知が山のように届く。

 

「エルさん、鑑定とか魅了使うのやめて貰えます?」

 

「あら? ごめんあそばせ」

 

 フフッと笑って誤魔化すが‥‥油断も隙も無いな。

 

 俺は高級酒を飲み慣れているエルさんに、自信作のクロヴェを評価して貰いたかったのでグラスに注ぐ。

 

 食事も味わってほしいから、飲みやすいように炭酸で割るか。

 

「どうぞ‥‥お嬢様。ウイスキーのクロヴェでございます」

 

「ハァ‥‥いただくわ。うまっ!? え? なにこれ‥‥」

 

 目を見開き、口に手を当て驚くエルさん。

 

 俺は嬉しくてガッツポーズをとる。

 

 天帝に認められた! これは売れるぞ! 数が少ないし量産体制に入らないと‥‥あと年代物も用意したい。

 

 それにちゃんとしたオーク樽も見つけないと駄目だな。

 

 オークだけにゲルドたちに探させるか? 確か寒い地域の筈なんだよな‥‥。

 

「こ、こ、これ誰が作ったの!!」

 

 俺は渾身のドヤ顔で親指をグイッと自分に向けた。

 

「予定変更ね‥‥拉致しなきゃ」

 

「あかんて! 共同開発なの! クロベエと作ったんですぅ! ちゃんと購入してください!?」

 

 日本酒の暴風竜殺しも冷で出すと「クゥ〜~! 旨い!」と面白い顔の天帝様が見れた。 

 

 飲んだら面白い人だ‥‥いやこのエルフ。

 

「私もヴェルドラ様ころしいただけますか? リヴェル様」

 

「あーいいぞって‥‥なんでトレイニーさんがここに!?」

 

 水着姿のイモ! 違った。ビキニ姿のドライアドたちがそこにいた。

 

「ひどいですリヴェル様! 私をのけ者にして! こんなごちそうとお酒まで楽しんで!」

 

「そうですよ! お義兄様!」

 

「私たちも呼んで欲しかったですお義兄様! あっ肉じゃが美味しぃですね」

 

 三角ビキニの長女、バンドゥビキニの次女、ビスチェ水着の三女が俺にビシッと指を挿す。

 

「おまえたちにも子供たちの引率頼んでただろ? 放り出してくるなよ‥‥」

 

 チッチッチと指を振るトレイニーさん。

 

「子供達はお昼寝タイムですから、問題ありませんわ! ふふっ、そ・れ・に! 実は冥さんが泳げなくて、面白いことになっていますのよ?」

 

「へぇ〜だからお酒と食事だけで済ましてたのか」

 

 日本酒を一口飲むとプハーッ! 旨い! と叫んだあと俺を睨む芋。

 

「まったく! お酒にこぉ~〜んな恐れ多い名前を付けれるなんて、リヴェル様くらいです! ヴェルドラ様に怒られても知りませんわよ?」

 

 うちの長兄様は『我の名が付いた酒か‥‥ふっ。倒せるものなら倒してみるがよい!』とか言って飲み倒す理由にするだけだろ。

 

「あなたねぇ〜ふぁ‥‥森の守護者にも認められていたのね〜ぇ。ひくっ‥‥おかわりいただけるぅ?」

 

「アルコール度数が高いハイボールを、ガバガバ飲んだら駄目だよエルさん」

 

 エレンが言うにはエルフはワインを好むらしく、ウイスキーは嗜む程度で日本酒は初めてみたい。

 

 このエルフ‥‥毒耐性切って楽しんでるな? 

 

 信頼してくれるのは嬉しいけど、問題が起きるとこっちは首が飛ぶんですけどぉ!?

 

 いや‥‥試されてるのか?

 

「すまんエレン。エルさんを部屋まで送ってくれよ」

 

「えーー! 私、まだもんじゃ焼き食べてないんですけどぅ? うっ、お腹が‥‥」

 

 お腹を押さえて、皿に乗った半分を恨めし気に見つめるエレン。

 

「食べ過ぎだって‥‥滞在中は俺が飯作ってやるから食いすぎるなよ?」

 

「まじか!? やったぜ! 毎日こんな旨い飯が食えるなんて‥‥リヴェル結婚しよう!」

 

「美味しぃ食事でやした‥‥お嬢さん。あっしの嫁にきやせんか?」

 

 べろんべろんに酔った二人が片膝を付いて俺にプロポーズする。

 

「おーい! ベニマル! この酔っ払いどもを焼き払ってくれ」

 

 ベニマルはストレートで焼酎を飲んでいたのか、リグルと仲良く爆睡していた。

 

「おまえら‥‥俺の護衛って立場忘れてないか? たくっ‥‥このロリコンどもめ! 成敗だっ!」

 

「「ぎゃああああああーーー!!」」

 

 ハヤテの神鳴りを借りても俺には使いこなせないが、スタンガン程度には威力はある。

 

「ピリノ、ハヤテ。すまんがこの二人を議事堂の部屋まで送ってくれないか?」

 

 俺は寝息を立て始めたエルさんと、口を押えているエレンを見て言う。

 

 ハヤテに焼いてもらった豚玉を、ピリノがちょうど食べ終わるところだったので頼むことにした。

 

「仕方がないな〜エレンは。ピリノはエルさんをお願い」

 

「シズ!? そんな乱暴にしたら、エレンさん吐きそうだよ!」

 

 エレン‥‥風音に続いて、ハヤテにまで困った子扱いされてるじゃねーか。

 

 俺の肩がバンバンと何度も手のひらで叩かれるので振り向く。

 

「り、リヴェル様!? こ、こ、コロッケのタレ‥‥なんですかコレッ!?」

 

「ん? あーソースだよ。ケチャップの方が良かったのか?」

 

「至高‥‥これは神が作りたもうた奇跡なのですね」

 

「ハァ‥‥ほれ、とんかつソースモドキも食べてみ」

 

 トレイニーさんは天使姿のラミリスに囲まれて天に昇って行った‥‥。 

 

「お義兄様、お好み焼き焼いてください! ドリスがもう一人のお義兄様を独占してるのです!」

 

「一緒に食べなさいよ‥‥ドリス。トライアにも分けてあげなさい」

 

「だってトライアねえさんが紅ショウガいっぱい入れて来るんだもん!」

 

 俺は仕方なくスラぼうの横に並んでお好み焼きを焼き始めたが‥‥。

 

『大変だリヴェル! 何故かドワルゴンの使者の護衛騎士が、どうみてもガゼル王なんだが? ミラノさんは知ってたみたいだな‥‥どうしたらいい?』

 

『あっ‥‥そういう。でも、おまえのスライム姿しか知らないんじゃないか? 誤魔化せば大丈夫なんじゃね? ミラノも言わないでくれるだろうし』

 

『めっちゃ見て来るんですけどぉ!? そういうってなに!?』

 

『ガゼル王も鑑定もってんじゃないの? そういうってのは極秘会談自体が極秘だったという‥‥つまり存在すら記録に残さず極秘に行うんだろ』

 

 俺も言ってて意味不明だけど‥‥ギドに詳しく聞いた方が良い気がするな。

 

「喧嘩すんなって‥‥ショウガも甘い奴だってあるぞドリス。これなら食えるだろ?」

 

『あー確かにそんな感じだったわ。明日の昼にドワルゴンの商人と商談する予定だってイリーナが言ってたな』

 

『まーなんにせよ首をつっこんだり、探りはみせない方がいい。知らぬ存ぜぬでイリーナの相手だけしてようぜ』

 

『お好み焼き食べたい‥‥えっ? なんでもんじゃもあるの? 聞いて無いんだけど?』

 

 唐突だな‥‥おい。

 

 どうせシエルさんにあいつらは何食べてるんだ? とか聞いたんだろ腹ペコ魔人めっ‥‥。

 

『無視すんじゃないよ! 俺も食べたいリヴェル! 豚玉お願いします!』

 

『じゃー俺も寿司食いたい! イカとサーモンとマグロとハマチみたいな奴。シュナにバレるなよ? 嫉妬が怖いから‥‥よし、送ったぞ』

 

 スキル通信でお好み焼きを送り、寿司が交換された。

 

 シュナが料理を出しているのに俺の料理を食べるとか、バレて酷い目にあっても知らんからな‥‥。

 

「あー旨い。シュナの握りは完璧だな‥‥これはだ~め! トレイニーさん、ほらこのタコ焼き食べてみ?」

 

 天に召されていったはずのうすしおさんが、いつの間にか戻って来たようだ。

 

 俺はトレイニーさんの伸ばす手をペシッと叩き、焼いてるタコ焼きを口に運んだ。

 

「あん! いけずなんですからリヴェル様は‥‥あっ、熱ッ!? はふはふ‥‥これもすごく美味しいですわ!」

 

 余ったご飯は、子供達の晩飯にも追加されるので道具に仕舞う。

 

 向こうで冥ちゃんが勝手に使うだろ。

 

 エレンが「あとで死んでも食べますから、残しといてください!」って言ってたな‥‥怖いから別で閉まっておくか」

 

 珍しく大あわてで起き上がり、なんども謝るリグルに水を渡してやる。

 

「たまにはいいだろ、焼酎旨かったか?」

 

「はい! のどに突き刺さる辛さがたまりませんでした」

 

 隣でのっそりと起きる鬼は、反省の色も無く大きく欠伸をする。

 

「ベニマルく~ん。俺は一滴も飲んでいないのに、酔いつぶれるまで飲むなんてずるいんじゃないか?」

 

 俺は笑顔でベニマルの口に、激辛麻婆豆腐の匙を突っ込む。

 

「あっ‥‥気絶しやがった」

 

「一体何をたべさせたんですかリヴェル様!?」

 

 俺は続けてカバルとギドの口にも、匙を突っ込んでいく。

 

 悲鳴を上げて気絶する二人。

 

「あ、悪魔だ‥‥。リヴェル様! そんな可愛らしい顔でなんてえげつないことを!」

 

「いや、これを食べたら目が覚めて起きるかなって‥‥」

 

 激辛好きのシオンの為に調整した辛さは、人類には早すぎたみたいだな。

 

 俺は近くに居たオークたちに手伝って貰い、三人を議事堂の客室まで運んでもらった。

 

 昼食が終わり、軽く歓談したあとは各自街の案内をする予定だ。

 

 ドワルゴン一行はカイジンたちが案内し、イリーナたちの案内をミラノとソーニャが担当する。

 

 天帝様が心配になったので部屋まで様子を見に行くことにした。

 

 エルさんはベッドで爆睡し、エレンは葵に胃薬を貰って復活していた。

 

 動くと色々危険らしく、仲良く二人で横になっている。

 

 起きたら一緒に見学に参加するから大丈夫と俺に手を振り、エルさんの頭を撫でて笑っていたので大丈夫だろ。

 

 明日はドワルゴンの商人と姫様たちだけで、西地区の商館で話し合うらしい。

 

 当初はイリーナの護衛として小間使いに扮装し、参加する予定だったけど。

 

 

 

 何故、大国の首脳会談になったか‥‥私、気になります。

 

 

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