*ガゼル・side
「久しいなカイジン。息災であったか?」
「ハッ! 王もお変わりなきようで、なによりでございます」
カイジンを手放すのは苦渋の決断であった。
だが、このまま国に置いてもこやつの腕が腐るだけよと思い、手放したのだが‥‥。
我が国に居るときよりずいぶんと楽しそうではないか‥‥こ奴め!
日々の鍛冶仕事が充実しているのか、若い頃の勝気な面が戻っておるわ。
よい目をするようになったではないか‥‥カイジン。
背後には同じように跪く、ガルム、ドルド、ミルド三兄弟が居た。
兄弟たちにも話しかけるが、ミルドは相変わらず声が小さいのぉ。
「して王よ、何故そのような恰好で? お忍びで来られたのですか?」
俺は少し気まずくなってアンリエッタに目線をやる。
溜息を吐いたアンリエッタが話し始めた。
「当初の予定では、私がサリオンに会談の打診に行く予定だったのですが‥‥王の親友の娘が手紙を出してきたのです。ジュラの森の中に魔物が作った町ができたこと、そこに別荘を建てて欲しい旨が書かれておりました」
「この街に別荘を? 王の親友の娘でございますか?」
「アルダスの娘だ、カイジン」
「ああ、王がいたく気に入っておられたあの娘ですか‥‥」
俺には娘がおらんのだから仕方あるまい。
父より王位を受け継ぐ前に、アルダスとパーティーを組んで各地を冒険した日々は‥‥一生の宝ものよ。
アルダスの娘だから自分の娘のように可愛がることにしたが、イリーナとは趣味嗜好が俺と似ていて気が合うのだ。
親子で訪ねて来たときは、よく一緒に狩りを競ったものよ。
「まあ、そういうわけだ。イリーナが近くに来ると聞いたゆえ、魔物の町の下見も兼ねて余自ら赴いたが‥‥軽率であったのは確かだな。そう睨むでない、アンリよ‥‥」
「私一人で王の護衛をせねばならんのです! こんなAランク魔物がごろごろといる! な・か・で・ですっ!」
「出来れば私も守って頂きたいのですが‥‥ひっ!?」
商談に付いてきた、商人のエチゴーヤを睨むアンリエッタ。
「儲け話に飛びついて、王のお忍びに勝手に付いてきたのはあなたでしょ? 自業自得じゃない!」
エチゴーヤは俺がお忍びをするときに、何度も手を貸してくれた信頼のおける商人だ。
今回も二人で城を抜け出し、ブルムンドに入る瞬間―――
満面の笑みで仁王立ちするアンリエッタが、そこに待ち構えていた。
その後はイリーナと合流し、依頼を引き受けて帰る予定だったのだが‥‥。
「ここに来る道中の路面も綺麗に舗装されていた。町の配置も増築を見越して作られておる‥‥すでに町とはいえん規模だな」
「技術力もかなりのものでございましたな。生活用水をあのようにして送るとは面白い発想でございます。水を運ぶ橋は美しく、景観も見事なものでございましたよ!」
「密偵が一度情報を持ちかえりましたが‥‥脅威度も記入されておらず、街の美味しい食べものが延々と詳しく書かれていました。その所為で温厚な魔物たちが市場を作ったとばかり‥‥騙されたわ! あの娘~!」
ミラノと二人で結託していたのではないか? おまえが無理に連れ戻そうとするからだぞ‥‥アンリよ。
怒るアンリエッタにビクビクしながらも、エチゴーヤは部屋に置かれた魔道具へ歩いて行く。
お茶の入れ方が描かれた図を興味深そうに見て、急須にお湯を注いで驚いている。
魔道具のポットが珍しいのか、興奮して何度もお茶を入れておるが‥‥それは、お主が全部飲むのだぞ?
「だが、ブティ殿もおられるから心配はあるまい。それに何故かあの御仁もな‥‥話は聞いてもらえそうでよかったわ。旨いお茶だな? どこの産地だ?」
「何を悠長なことをおっしゃられているのですか王よ! 我が国の隣に、強大な力を持つ国が生れるかもしれないのですよ!!」
イリーナが後ろ盾になるということは、つまり魔導王朝サリオンが認めた国であるということを意味する。
ゆえに、相手がどのような人物か見極めるべく、天帝自ら赴いたのであろう‥‥。
エチゴーヤはドワーフたちを席に座らせ、お茶の処分を手伝ってもらいたいようだな。
チラチラとこちらに合図を送るでないわ‥‥愚か者。
「カイジン。おまえたち三人も構わん、席に座るが良い」
「「「「ハッ! 失礼致します」」」」
エチゴーヤは手際よくカイジンたちの前にお茶を置いて、静かに下がる。
「少し聞きたい。カイジンよ‥‥あの者、リムルをお主はどうみておる?」
「真っすぐな性格で温厚。誠実で仲間思いな人物かと」
「権力は良くも悪くも人を変えるぞ?」
「心配には及びませぬよ。なんせリムル王には、リヴェル殿が付いておりますから」
たしか王の兄だったか? そやつが支えている間は暴君にはならぬと?
「だが、何故兄であるリヴェルは王座を譲ったのだ?」
「わははは!? いや〜なんででしょうな〜はっはっは! で、ですが王よ! 食事の席でだされた料理はすべてリヴェル殿が考案したものでございます! もちろん酒もリヴェル殿でございますよ!」
なぜ笑って誤魔化したのだカイジン? 気になるでは無いか‥‥。
確か和食であったか? 俺はガトリングティオの味噌煮が美味で気に入ったわ。
悔しいが、酒も我が国よりうえであったな。
「酒も旨かった‥‥。この国の飯は本当に美味い。リムルとは仲良くしてゆきたいものだな」
「寿司‥‥魚料理があんなに美味しいなんて思いませんでした。天ぷら、かきあげ‥‥ああ、本当に美味しかったわ〜!」
アンリエッタは喜びの表情から一転。
急に真顔に戻り「体重計に乗りたくない‥‥いっそ壊してしまえば?」とブツブツ呟いている。
「いずれにせよ、王が案ずるほどのことはございますまい」
「何ゆえそう言い切れるのだ、カイジン?」
「リムルの旦那は勇者の卵を! リヴェルの旦那は精霊の加護を持っております! それゆえに私は‥‥私どもは心配などしておりませぬ」
カイジンは三兄弟を見て笑い、兄弟たちも頷いて笑い合っていた。
俺とアンリエッタはその言葉に驚愕し、そして納得した。
*シルビア・side
まったく‥‥仮にも王家の娘である者が、腹を出して寝るんじゃないの!
お腹を押さえて苦しそうに眠るエレンに呆れる。
エルメシアを通して霊体になり、私は少し街を探る事にした。
アルダスの未来視を軽視したわけじゃないのだけど‥‥どうにもね。
昔から私とエルメシアを一目で見分けるところとか、少し苦手なのよねあの子。
今回も私の気を引こうとして言った可能性も考慮はしていたんだけど‥‥。
「大いなる蒼き父君、半身を
自身の命の危機に予知夢を見たあと、一節が記憶に残るだったかしら?
そもそも、世界なんてアイツの所為で何度も滅びかけたわよ‥‥ハァ。
神樹が無事であるかぎり気にしすぎない方が良いわね‥‥。
ジュラの森と特定したのは、暴風竜が蒼き父の半身だったからかしら?
「ちょっとリヴェル! まだ食べるっていってるでしょ!」
ピヨ!? ね、寝言? こらエレン! びっくりするでしょ!
「ひえ! ごめんなさいシルビア様! ‥‥あれ? エルちゃん寝たままだよね? ふふ、酔いつぶれるなんて珍しいね」
危ない、危ない‥‥。エレンにバレたらあの子にも伝わるところだったわ。
コンコンと優しく、扉がノックされる。
「葵だよ〜! お薬持ってきたよエレン姉〜起きてる?」
「あっ! は〜い! ありがとね、葵ちゃん」
エレンはベッドから起き上がると、お腹を摩りながらドアを開ける。
何やら葵という鬼人から薬を貰っていた。
鬼人とは珍しい‥‥この街の魔物って何故か異様に強い個体が多いわね。
鼻を摘まんで苦い薬を飲んでいたエレンは、少し楽になったのかベッドに寝転ぶ。
「エレンいるか? お見舞いに来たぞ?」
また誰か部屋に入ってきそうね? 声からして子供みたいだけど。
「へっ!? あっ‥‥いるよ。少し待ってねリヴェル」
エレンは慌てて自分の服装が乱れていないか鏡の前でチェックすると、服と髪を急いで手直ししていた。
「どうぞ~お見舞いに来てくれて、ありがとうね。リヴェル」
「お腹の具合はどう?」
ドアを開けて入って来たのは幼いエルフだった。
「葵ちゃんにお薬貰ったからもう大丈夫ですよ!」
「はいこれ、保存魔法もかかっているから好きに食べろ」
「やったーーーー!! さすがリヴェル! ちゃんと残してくれたんですね」
リヴェルとかいうエルフの娘はテーブルに板を敷いて、料理を並べていた。
ジュラの森に住むエルフかしら? ふふ、小さくて可愛らしいわね。
「じゃーな。エルさんが起きたらこれ渡しておいて、ワインも飲みたいって言ってたから。あっ! イリーナたちは街を案内されてるから、合流するならミラノに伝えて置くけど?」
「うん、おねがいするね。私たちは、少し休んでから合流するよぅ」
「あいよ、お大事に~」
エレンがエルメシアの頭を優しく撫でながら、リヴェルに手を振り見送っていた。
私は少し気になったので、テーブルの料理を鑑定した。
すると、そこに表示されていたのは料理ランクSという文字!!
【エリューンの食べ残し:料理ランクS 食べ残しなので価値は少し下がる】
我慢が出来なくなった私は、あの子が寝ている隙にホムンクルスを借りてテーブルに走る。
「美味しそうな匂いね‥‥この板は保温機能の刻印かしら? もぐもぐ、米を固めてタレを付けて焼いてるのね!? なにこれ! 癖になる味ね! この鳥肉を焼いたもの美味しいわ。むむ、赤がいいのだけど‥‥ワインも少しいただきましょう。ファッ!?」
「ちょっ!? エルちゃん! 早っ!! 消えたと思ったら! それ私のご飯なんですけどぉ!? あっ! その食べ方‥‥シルビア様ですよね! お願いします! 焼き鳥全部食べないでー! いやーーー! 天ぷらのエビまだ食べて無いのにーーー!!」
「しまった! エレンに簡単にバレるなんて‥‥。食べ方でバレた? クッ! マイフォークとナイフが仇となるなんて‥‥」
それどころじゃない! エルメシア‥‥あなたこんな美味しい料理を食べていたの! しかも、三日も滞在なんてずるいわっ!!
美食ハンターの私を差し置いて! あっ‥‥ワインのお代わりが欲しいわね。
「ちょっと‥‥悪かったから泣かないで頂戴、エレン」
「嫌い! シルビア様なんて大っ嫌いですぅ! 結局私が最後に齧ったカボチャ以外全部食べるなんて!! うえええーーーん!」
食べ過ぎて苦しんでいたから、私が代わりに食べてあげたのに‥‥面倒な娘ね。
私としたことが‥‥霊体のまま少し探ろうとしたのに、巧妙な
目が覚めたら自室だったなんてあの子‥‥絶対に大激怒するじゃない。
ハァ‥‥でもまずはこの娘の対処ね。
「エレン‥‥大丈夫よ。お腹を空かせていれば夜ご飯は美味しく感じるわ」
枕に顔を埋めて泣いていた、エレンの耳が少しだけぴくぴくと反応する。
「それに合流すれば、街で食べ物屋がみつかるかもしれないわよ?」
がバッと起き上がりエレンが言う。
「‥‥シルビア様のおごりですよね?」
「ハァ‥‥なんでも好きなだけ食べなさいな」
その後、エレンからヴェルドラのことを色々訪ねた。
突然消えたあとに、封印された洞窟内を調査したようね。
ても魔物がおらず、もぬけの殻だったと‥‥変ね? 多少なりとも死後は魔素が散って魔物が増えるはずなんだけど?
竜種は不死身。死んでも復活はするけど、三人が同時に死ぬことがトリガーなのかしら?
半身は伴侶の意味? それとも肉親かあるいわ兄弟か‥‥ヴェルドラの姉弟で蒼と言えばヴェルグリンドよね?
「もう! ヴェルグリンドなら母でしょ! 魔王で半身なんてありえないじゃないの! やっぱりアルダスの未来視はあてにならないわ‥‥」
リヴェル家の地下にある精霊温泉に、リムルと俺は精霊たちと一緒に湯に浸かっている。
離れにある露天風呂は客人に貸し切りにしてあるからな。
イリーナたちが滞在している間、家のものたちにはここか市民浴場に行って貰う手筈だ。
「シュナに蜂蜜を一口「はい、アーン」で許してもらえると思ったんだが‥‥」
「シュナはそんなにチョロくないぞ‥‥一瓶ならいけたんじゃね?」
お好み焼きを小分けにして隠れて食べていたが、匂いでシュナにバレたようだ。
お客様が居る間は、即座にシュナのお叱りは無かったが‥‥。
料理を配膳する間も、ふつふつと怒りゲージをため込むシュナちゃん。
リムルはあれこれ必死で手を尽くして宥めていたらしい。
だが、食事が終わるまでに怒りゲージを減らせず爆発したようだ。
シュナに無表情で「私の料理がお気に召されない様子ですので‥‥白米だけ食べればよろしいかと」と言われたらしい。
「しばらくは卵かけご飯の生活になりそうだ‥‥」
仕方ない助け舟を出すか‥‥お好み焼きともんじゃを黙っていたのは俺だからな。
「ほれ‥‥こいつをシュナに持っていけ。シャンプーとリンスだ」
「これは奥の手にとっておくべきでは?」
「パッチテストが終わったから、うちの娘たちが使い始めるぞ? 黙っていたと思われて、悲惨な目にあうのは勝手だがな‥‥」
「ありがたく貰っておきますよっと」
そう言うとリムルは手をかざして、シャンプーとリンスを仕舞い込む。
洗髪剤は俺、ガビル、ミラノ、トライアと四人で研究開発して作った。
液体石けん、蜂蜜、ハーブ、ココナッツオイルにバラの香りを入れて作った天然シャンプーとリンスだ。
ココナッツは正直モンスター素材なので不安だが、香りはトライアが抽出できるので助かっている。
研究所の場所はヴェルドラの封印洞窟内の養殖場と並行して作った。
ヒポクテ草の栽培方法は知っているんだが‥‥薬草の方がヒポクテ草より純度が高い。
しかも雑草とMPを消費するだけで薬草に錬金できるから、公表するか迷っているんだよな‥‥。
リムルが回復魔法を使えるので、絆創膏に回復魔法を刻印した。
効果は下がるが、絆創膏は返却させることで繰り返し使えるので軽傷ならこれだけで済む。
葵薬局の横に病院を作る提案をすると、ハルナやゴブリナたちが賛同してくれた。
現在、多くのゴブリナが看護服で働いている。
ハルナや葵の活躍もあって、うちではポーションが減るどころか増える一方になった。
供給過多で在庫処分したいくらいあり余っている現状だ。
市場が壊れない程度にドワルゴンと交渉したいな。
俺が女姿で湯舟を出た後に頭のタオルを取ってパシンと体を叩くと、「やめろ!」と言ってリムルに怒られる。
俺もビアンカ姿で尻をかいたり、鼻をほじるなとリムルに注意するのでルールを決めた。
お互い姿が女のときは女らしくしようとなったが‥‥これがおっさんには難しいのだ。
モシャスが成長した所為なのか変身時間が伸びた所為で、解除時間も伸びてしまったから結構きつい。
リムルだけでなくシュナや茜にも注意されるし、冥ちゃんにもわらわの姿で屁をするなと怒られる始末‥‥。
でも、男でいると貞操が危ないんだよな‥‥おもに茜と茜さんと茜ちゃんの所為でっ!
「なあリヴェル? この機会にガゼル王や天帝だっけ? 二人に同盟と国交の打診をした方が良く無いか?」
俺は頭を洗いながらリムルに返事を返す。
「ああ、実はイリーナ一人でも十分なんだよ。魔導王朝サリオンの下に十三王家ってのがあって、イリーナがその王家の一人娘だ。一つひとつが国家みたいな権力を持っていると考えていい。その十三王家全てを束ねているのが天帝様だ」
「つまり天帝様に同盟を打診するのは無謀ってことか?」
「そういうことじゃないよリムル。ぽっとでの魔物の国が、樹立当初から天帝とドワルゴンの両国から同盟を結べたとする‥‥そんな国が突如できたら、周りの国はどう思うかってこと!」
感触としてはサリオンと国交できそうだと思う。ただ窓口が天帝はまずい。
ドワルゴンはサーニャの件で警戒しているから厳しいんじゃないか? イリーナのおかげで討伐対象にはならんとは思うが。
「めっちゃ警戒するだろうな‥‥帝国と西側諸国、それに魔王たちにも影響がでそうか?」
「帝国は巨大すぎて、どう反応するのか正直わからん。天帝は自信を神の末裔とし公表してるから西側でも有名人なんだ。もし同盟が成立すれば、テンペストはかなりの注目を集めるだろうな」
「帝国ならドワルゴンとサリオンの共闘ぐらい想定済みか‥‥神の末裔って長く生きるエルフらしいな」
「魔王の件はミリムにテンペストは手出し無用! 我のなわばりなのだー! とか、ジュラの魔物が寄せ集まって小さい国が出来たことだけ伝えてもらえば、意外と誤魔化せそうな気がするな‥‥」
髪を洗い流し、髪をぐるぐる巻いてからタオルで纏める。
長い髪は面倒だ‥‥よっこいせっと! 俺は湯に浸かり直す。
「それならミリムの手伝わせろ! っていう脅迫‥‥もといお願いを叶えられそうだな!」
「ふぃ〜ああ気持ちいい~! ドワルゴンは元から魔物と交易も盛んだし、食糧難で小国とも取引が多いから警戒もされない。ドワルゴンだけなら同盟を結んでもいいとおもうよ。問題はイリーナの別荘を他国がどうとらえるかなんだよね〜」
「両方と同盟を結んでも、帝国に備えてドワルゴンとサリオンがジュラの森で何かを企んでいるとしか思われんじゃろ? テンペストが注目されるとは思わんがな‥‥ぷはっー旨い!」
背後を振り向くと大胆なビキニ姿の冥ちゃんが、リムルの日本酒を奪って飲んでいた。
驚いたおれたちは見事に固まる。
「どうじゃ? 似合うじゃろ?」
「「‥‥‥‥」」
水着姿の冥ちゃんがセクシーなポーズをとるが、頬を赤らめて目を逸らす俺とリムル。
「気の利かん男どもじゃな‥‥こういうときは女の美麗を褒めるモノじゃぞ? まったく、これだから童貞は‥‥」
「「どどどど童貞ちゃうわ!!」」
俺とリムルは暫く見つめ合ったあと、ハンドシェイクを繰り返して友情を確かめ合った。
「何をやっておるんじゃお主しら‥‥」
「その水着‥‥怒られるかと思ったんだが気に入ってるのか?」
「最初は恥ずかしく思うたが‥‥ミソラやトレイニーがわらわ以上に破廉恥であったからな。最初に着たアレよりはマシじゃ! バカリュウ」
ガルムの生涯最高の力作なんだ許してやってくれ‥‥仕方ない次はドルド! 君に決めた。
見た目が凄く好きなんよな‥‥女戦士の鎧。
自分で作るとバレたときに人のせいにできないからな‥‥ハヤテ、ピリノ、ベルに変態扱いされたらガラスのハートが耐えられそうにない!
「手遅れじゃろ?」
「心を読むんじゃないよ!」
「大賢者妹はなんで戻ってきたの? 魔素切れか?」
リムルが冥ちゃんに戻ってきた理由を聞くと、頬をかいて恥ずかしがった。
「それもあるがの‥‥。まーあれじゃ! 浮き輪助かったのじゃ! 褒めてつかわす、リュウよ! フン‥‥」
「そりゃどうも。浮き輪は大人も使うんだぜ? 恥ずかしがらなくても良いじゃん」
「そうなのかっ!?」
「うん、リヴェルの言葉は嘘じゃないぞ? ファッションとしても使われる。子供のためだけじゃ無いよ」
「おのれレイン! わらわをたばかりよったな!」
それ、絶対に異空間に閉じ込められた仕返しだって。許してやりなよ‥‥。
「小さい子が泳ぐときに、溺れないように使うモノって認識は間違いじゃ無いよ?」
「子供や太った人が使うモノだとレインは笑ってきたのじゃ! わらわは‥‥沈むからの」
「「ぷっ! くくっ」」
俺たち二人は見えない魔力でボコボコに殴られる。
「「ずびばせんでしだ!!」」
「許す! だが次は無いのじゃ」
そう言うと冥ちゃんは電池が切れたように倒れ込む。
「魔力の残りが無いのに暴れるからだぞ‥‥ぐっ重い! 痛だっ!」
俺は頭上に桶を落とされながらも、冥ちゃん人形を受け止めて道具に収納する。
「連続稼働は出来ないのか?」
「うん、クモキチは3時間のインターバルだけど冥ちゃんは6時間なんだよ」
「不便だな‥‥」
「クモキチも冥ちゃんもそう思ってないけどね。それに冥ちゃんは、ベルといつでもお話しできるみたいだしな」
明日の会談が終わればドワルゴンは解散、イリーナは三日滞在して帰る予定だ。
「シュナとちゃんと仲直りしろよ?」
「いざとなったら蜂蜜一瓶使うわ‥‥サンキューなリヴェル」
夕食になると母親の方にワインをねだられた。
あれは天帝様の機嫌を取るために用意した特別な1本なんだ。
沢山の時の精霊に強請られながら作った奴なんです‥‥許して下さい。
小樽で仕込んだ奴だが、残りの二本は俺とリムルが建国記念で飲む予定だから絶対だめです!
エレンたちと鍋をつついていると、シルビアさんが突然言い出した。
「リヴェルちゃん。うちの子にならない?」
「ならんでござる」
『ねえ、リヴェルちゃん。私が別人ってどうしてわかったの?』
『‥‥』
『もしかして最初から正体も知っていたり?』
『自分‥‥不器用ですから』
黙って日本酒をコップに注いで渡すと、嬉しそうに飲み干すメイド。
何故か天帝から雷帝にかわっている、この意味不明な状態を誰か説明してくれ!
俺はすき焼きに砂糖と醤油を足しながら、無表情で鍋奉行になった。
《報告。コモンスキル鉄仮面を獲得しました。常時発動します》
ありがてぇ‥‥。