昨日の夕食から、シルビアさんにずっと質問攻めにあって参ったわ。
エレンが引き取ってくれなかったら、シルビアさんは我が家まで付いて来ただろう。
朝起きて、洗面所でハンゾウにモシャスを唱えた俺は、朝食を作りに台所に入る。
茜お手製のエプロンを装着し、三角巾で髪を素早くまとめる。
「騒がしい娘達がいないと少し寂しいな……」
三日間はミラノ、ベル、オベーラ、ミリムがいないのでテーブルが少し広く感じる。
広めの台所も相まって、空白の席が物寂しい。
「おはよう、リヴェル」
「おはようございま~す。ご主人様」
「おはよう、二人共。手伝い頼むな」
キッチンスペースでハヤテが豆腐を切り、ピリノが味噌汁を味見しているようだ。
俺は卵焼き、キンピラごぼう、ほうれんそうのお浸しを並べ終わると、最後に沢庵を切って皿に移す。
「納豆はリリナの報告待ちだが早く食べたいな」
「だよね~日本人なら納豆は外せないんだよ!」
「腐った豆なんていらないかな……ネバネバなんでしょ? うぇ……」
顔をしかめるピリノに、ハヤテは美味しいと力説する。
「こればっかりは好みの問題だからな」
俺はご飯をよそいながらベルやミリムの朝食が心配になった……。
レイン、ミソラ、オベーラが料理を作れるので子供達のご飯は心配はしていないが、冥ちゃんが自分で料理をしたいと言いだしたことが気がかりだ……。
朝から魔力をチャージして、ベルとミリムに朝ご飯を食べさせてやるのじゃと出かけて行った。
持って行った材料から察するにホットケーキだとは思うが。
俺が作ったのを覚えているから作れるのか? 冥ちゃんは、シオンみたいなメシマズタイプじゃないだろうな? あぁ~~ベルが心配だ。
「おはよう、リヴェっち! 今日も可愛いわね」
そういうと俺を抱きかかえて席に座るシルビアさん。
「朝食を食べにきたの? 朝はシュナが料理を作ってくれるから、議事堂で食べればいいのに」
「おにぎりとうどんだったかしら? 具材がたっぷりで美味しかったわよ。シュナちゃんも料理が上手ね」
向こうで食べたのに、まだ食べるのかな?
「シルっちも朝ごはん食べる? 娘達のお弁当用に作ったから大目にあるよ?」
「味噌汁だけ貰える? 味見をしたいの。へ〜味噌のスープが美味しいわ……豆腐とやらの食感も面白いね」
それ俺の味噌汁なんだが? こ、これは! 関節キッ!? あっ、ハヤテさん……箸ドーモデス。
ピリノが見事な連携で俺に新しい味噌汁を置くと、二人は何事もなかったように食事を再開する。
「ぐぬぬ……エルフも味噌があるんだし、色々作ってるんじゃないの?」
「あー確かに味噌はあるけど辛くて黒い味噌なの。エルフは時間感覚が曖昧で結構ズボラなのよねぇ~数年放置とかザラにあるわ」
うわぁ〜それは長寿のエルフらしいな。
味噌の風味や発酵を促す天地返しとか、概念すらなさそう。
カビは魔法で防ぐのか? なるほど……熟成させるワインと相性がいいわけだ。
「そこのメイド! 私の旦那様を離しなさい! なんですか膝に乗せて羨ましい!」
「はい、あーん」
俺は煩い茜の口に卵焼きを運ぶ。
頬を赤らめて嬉しそうにアーンと口を開けて、もぐもぐと咀嚼して黙る。
「リヴェルちゃんが男にもなれるとは思わなかったわ……息子ができて嬉しいわね!」
「まだあきらめてなかったのかシルっち……。すまん、ハンゾウ。醤油取って」
ハンゾウは見事なお辞儀をして、俺にショーユを渡す。
醤油はエルフ産醤油をシルビアに少し分けてもらったんだ。
「ドーモ、リヴェル様。醤油です」
「すまんな、本当にすまん」
ハヤテがハンゾウの真似をしていると、ピリノに「真似しちゃいけません」と怒られてた。
「リヴェっちのところは賑やかだね」
「メイドさん家はそうじゃないの?」
葵が沢庵を齧りながらメイドさんに聞く。
「ん~そーねぇ〜最近娘が冷たくて悲しいかな」
「娘さんがいるんだね。大丈夫だよ! 娘はおかーさんが大好きなんだから!」
「ふふ、君は良い子だね。ありがと」
シルビアは葵の頭に手を伸ばして、優しく撫でる。
「えへへ」
『リヴェっち! 葵ちゃんをくれないか!?』
『駄目だけど?』
念話のときは素に戻るのか、言葉遣いが面白いんだよなシルっち。
なんか自称美食ハンターらしく、美味しい料理を求めて各地を旅しているようだ。
色々な国の食材や料理の話を聞いてる間に仲良くなって、シルっち、リヴェっちと呼ぶ間柄になった。
気になったのは魔王達の国についての話だ。
カリオンの国にカカオと南国フルーツ。
フレイの国にコーヒーとナッツ系。
クレイマンの国には紅茶、シナモン、バニラがあるらしい。
ハァ~~特産品がある国を侵略したいでゲソ……。
「な〜シルっち。ユーラザニアって交易してるの? フレイのフルブロジアも教えて」
「ユーラザニアは一国で全てが賄えてるからね……魔王の国とだけ物々交換してる感じかな? あの鳥女、生意気にもうちを狙っているのよね! 交易は色々しているみたいよ? 宝石とか光るものを集めるのが大好きだからね」
魔王同士で交易しているのか? 食い物で釣れば、リムルが魔王になってくれねーかな?
「食事中失礼します、リヴェル様」
「なにかあったのソウエイ?」
影移動でソウエイが現れた瞬間、ハヤテが席を立つ。
「はい、ソウエイ叔父さん。アーン」
「ハヤテ……そのマイペースなところ、姉上にそっくりだぞ? 美味いな」
「でしょ? 私が作った豆腐なんだよ!」
ゴホンと咳ばらいをして、ソウエイが告げる。
「ガゼル王が身分を明かしました。リムル様とイリーナ姫を交えて話がしたいと、リヴェル様にもお声がかかっております」
「俺にも? 酒の話でもカイジンがしちゃったのかな?」
「では、失礼致します。ハンゾウ、ほうれん草を残すなよ?」
「うぐっ……インガオホー! 苦い……」
ソウエイが陰に潜って去ったあとに、俺はシルっちを見つめる。
『なんだい? 照れるじゃないか、私には夫がいるから駄目だよ』
『エルさんに代わらなくていいの? それとも内緒のまま?』
『エルちゃんからお怒りの念話が凄くてね……早く帰ってこいと正直、心が折れそうだよ。私の存在は秘密にしておきたい、ガゼル君にはバレちゃうしね。あと無視しないでおくれよ! つれないな君は』
スルースキルは会社時代に身に付いてるからな。
エルさんのホムンクルスを置いて帰るわけにもいかず、親子とは言え違う器だと長くは入ってられないようだ。
『急ぎで帰りたいのか? シルっちの髪の毛を少し貰えたら送ってやれるけど?』
俺を抱き上げて、苦虫を噛みつぶしたような顔をするシルビア。
『そんな趣味があったのかい? どんびきだよ……』
『ホムンクルスの髪の毛からエルさんの因子を取り込めば、位置を特定できる。あとは次元門で座標を打ち込めばシルっちをサリオンまで送れるって寸法だよ。別に少量の血液でもいけるよ?』
『次元門? なにやら興味深い名前だね……面白そうだし、やって見せてくれるかい?』
シルビアはオリハルコンのナイフを使い、後ろ髪を数本だけ切り取って渡してくる。
俺は劣化分裂のスライムに、シルビアの髪の毛を口に突っ込んでから同化した。
「茜~! 食器の片づけお願いしていい? シルっちと俺の部屋で実験するから」
「はーい! ってその女と二人きりは駄目です!!」
「このメイドさん人妻だぞ? 変なことを言うんじゃないよ……」
「そうなんですか? ならいいです。でもリヴェル様を信用できないので、洗い終わったら部屋に行きますね」
俺とシルビアは部屋に向かう。
「愛されてるわね。リヴェっち」
「愛が重いのと、信用がないのが辛いけどな」
俺は部屋の空いてるスペースに門を出現させて、手をかざす。
「へー高次元の物質ね。空間を捻じ曲げて繋げてるのかしら? 時空魔法は難しいのよね……」
「サリオンって結界みたいなの張りすぎじゃない? 面倒だな……少し壊すか」
「ちょっ!? 止めなさいよ敵対行為になるじゃない!」
「よし、繋げたぞ」
門を開くと着替え中のエルちゃんが、顔を真っ赤にして睨んでいた。
「痛いわ!? 誤解よエルちゃん! 悪いのはリヴェっちよ!」
「お母様以外にこんなでたらめなことが、できるわけないでしょう!!」
逃げる俺をあっさり捕まえて犯人はこいつですと、エルさんの目の前に連れて行かれる。
だが、俺は命の危機に咄嗟にモシャスをエルさんに唱え、両手で顔を覆って泣きまねをする。
「このメイドさんに無理矢理……私は何も知りません」
俺はシルッちにだけ見えるように、可愛くてへぺろをする。
「謀ったわねリヴェル! えっ? あなたハイエルフになってるじゃない!? きゃーーー! 可愛いだだだだ!」
「更に可愛くなったわね……。でもなぜ急に進化したのかしら?」
エルさんがシルビアの両頬を引っ張りながら、首を傾げる。
「でわ……荷物はお届けしましたので失礼します」
「あっ! 待ちなさいリヴェっち!」「えっ!? 貴方がこの門を使ってたの!」
俺は不敬罪で処刑される前に扉を閉じた。
「あら? メイドがいませんね? む~〜また女性になったのですか?」
襖を開けた茜が、素早く俺を抱き上げる。
「メイドなんていなかった……いいね?」
茜は悪態をつきながらも、俺を抱きしめて幸せそうに笑う。
――――エルメシアの寝室――――
「だからあれはリヴェっちがやったのよ! エルちゃんからホムンクルスを奪うように仕向けたのも、全部、ぜーーんぶ! リヴェっちよ!」
「そんなわけないでしょ! そ・れ・よ・り! リヴェルさんから私宛にワインを送って貰えたでしょ? 早くだしてお母様!」
シルビアはとてつもなく美味かったワインを思い出して冷や汗をかく。
「ワインなんて貰ってないわ……シルビア知らない」
プイッと可愛らしく顔を背ける。
「ほーーん。家族で飲むために用意して貰った特別なワインだったんだけど? 持ち帰ってお母様と一緒に飲もうかと思って……知らないんだ? ほおおぉぉぉーーーーん」
「一人で飲んじゃいました! 許して下さい!! なんでもしますから!!」
一通りシルビアに色々お仕置きをしたあと、エルメシアはソファーにもたれて深い溜息を付く。
「お母様の所為でガゼル坊との約束をすっぽかすし、滞在中のご飯は食べれないしで散々よ……まったく」
「足が痺れてきたわ……もういいでしょエルちゃん? ご飯なら大丈夫よ! ほら、これリヴェっちの分身。これに手紙を入れると連絡ができるから」
「まだダ~〜メ! しっかりと反省して頂戴、お母様」
クッ……思い出したら顔からサラマンダーだわ!
落ち着け朕。我は天帝! 多少のことでは動じぬわ! 大ジョブ、大丈夫、は、裸を見られたけどまだ子供だし問題無いわね……殿方に見られたあぁ~〜ふええぇぇぇん。
恥ずかしさから、広いソファーの上でゴロゴロと転がる。
「顔が真っ赤よエルちゃん? お酒の飲み過ぎじゃない? 痛~〜っ!? あ、足は駄目よ! 今痺れて!? インドラーーーーーーー!」
よし、お母様を虐めて落ち着いたわ。
ワインが飲みたいっと……えっ? 駄目? 数年待ってくれですって? もう!
じゃーエレンが食べてた天ぷらだったかしら? よし、届けてくれるみたいね。
代金は金貨でいいのかしら?
急に扉がノックされる。
「緊急です! エルメシア様」
「入るがよい、エラルド」
扉がバーン! と開かれてエラルドが入って来る。
「やはりシルビア様でしたか! また、結界を破壊しましたね? ふむ……すでに仕置きされていましたか」
「あら、ほんとね? 第五障壁まで貫通してるじゃない……追加でお仕置きね」
「もう怒った! エルちゃんは私を信じてくれないのね! エラルドも酷いわ、リヴェっちが悪いのに! 家出してやるんだから~〜!!」
「いつものことじゃない……」「いつもしてますよね?」
俺とリムルはシュナ、シオンを引き連れて商業エリアに向かう。
「王へ謁見するのに、Tシャツとジーパン姿でいいのかリムル?」
「ガゼル王もラフな格好だし、いいんじゃね?」
ズボンが欲しいとシュナにいちご大福とチーズケーキを渡すと色々と作ってくれた。
リムルは俺のズボンを勝手に持って行って着ている、
「リヴェル様、洗髪剤ありがとうございます! 髪もツヤツヤで香りも良く、とっても気に入りました!」
「リヴェル、なにか物凄く可愛くなってませんか貴方?」
シュナが俺に礼をいい、シオンが俺を抱き上げてマジマジと見てふむと頷く。
「好きな花の匂のシャンプー&リンスが欲しいなら、トライアのところにいってくれシュナ」
俺はシオンに髪をいじられ、お揃いのポニーテールにされたあとに抱きかかえられる。
「そういえばリヴェル、カレーとやらはできましたか?」
「難航している……俺が食べたカレーってスパイスが20~30も種類があってな。レシピが分かっても素材が見つからないとどうにもならん。でも麻婆豆腐はできたぞシオン?」
「あの辛いものですか? シオンは美味しそうに食べていましたわね……」
豆板醤、豆豉を作った。あとは既存の調味料を足せば色々代用して中華料理に使える。
「本当ですかリヴェル!? 嬉しいです! 料理の研鑽に付き合わせていますし、カレーは私が手伝ってあげます」
「カレー食いたいな。香辛料の種とかトレイニーさんに頼めないのか?」
「植物の種を作って貰うにしてもトライアは花、ドリスは果物、トレイニーさんは芋とドライアドにも分野に分かれているんだ。米って魔国米が近くにあっただろ? 現物を見つけて渡さないと無理らしい」
トレイニーさんは実際は野菜、果物、花と姉としての威厳は保っている。
でもエキスパートじゃ無いので生み出せる種子の数は少ない。
商館の前に辿り着くとベニマル、茜、葵が外で待機し、反対側にエレン、カバル、ギドが守っていた。
ソウエイ達と、ゴブタ達は周囲を警戒するために建物を巡回している。
当初はお忍びだったが、国賓として扱うので厳戒態勢で備える事になった。
「ではリムル様、リヴェル様。私はお茶と和菓子を入れてきますので」
「うん、お願い」
「よろしくね〜シュナ」
俺とリムルはシオンを引き連れて、広い会議室のような場所に入った。
四方に囲むようにテーブルが配置されており、奥の席に俺達は座る。
部屋の中には、ガゼル王、綺麗な女性、うさんくさい商人風の男が右側に座って居た。
左側にはイリーナ、クリパト、ブティさんの三人が座って居る。
「まさか付き添いの騎士が王とは思いませんでしたよ、ガゼル王」
リムルがガゼル王の方を向いて、ニコリと笑い言う。
「お主も人が悪い。余は裁判でお主と顔を合せたと思ったがスライム違いであったか?」
ガゼル王はフッと笑う。
リムルは目が点になり、オロオロとする。
「すみません。リムルには裁判沙汰になったことで王への印象が悪くなると思い、私が知らないふりをしろと言ったのです。申し訳ございません」
「お主が、リヴェルか? 別に構わん、あの裁判は茶番だ……むしろ余が助かったくらいであったわ」
「あと、口頭を写した手紙で申し訳ないのですが、随行していたメイドさんから王当てにです」
俺は手紙をドワーフの女性に手渡す。
手紙を軽く調べたあとに、封を開いて王へ手渡した。
暫く手紙を一読したあとに、王が話す。
「ふ~〜っ。リヴェルとエルメシア殿の関係が気にはなるが……。単刀直入に聞こう。リムルよ、余と盟約を結ばぬか?」
リムル、イリーナ達、ガゼルの配下も驚いた表情で固まる。
後ろに控えて動じないシオンだけが、俺の髪にリボンを結んでいた。
「失礼ですがガゼル王。お主を見定めるには剣にて打ち合うが手っ取り早いとか、言葉は不要! 余の剣の錆になった時点で、お主は邪悪な魔物として余が成敗するのだからな! クックック……的なことは言わないのですか?」
「本当に失礼だなお主……余がそんな物騒なことをするわけがなかろう?」
「しますね……」「していますな……」「するとおもうわ……」
ガゼル王は配下とイリーナを一睨みして話を続ける。
「それでリムルよ、返答は?」
「こちらとしても願ったり叶ったりだ。だが、良いのか? 魔物の国と盟約なんて交わしても?」
「リヴェル、お主がその理由を知っていそうだがな?」
ガゼル王が俺を眼光鋭く見つめる。
俺はタメを作り、ニヤリと笑う。
「……酒ですね?」
「……ち、違うわ馬鹿者!」
「間があったわね……」「王よ……欲にまみれてはいけませぬ」
ごほんと咳払して、ガゼル王は少し怒気を込めて言う。
「真面目に答えんか馬鹿もん!」
「帝国への捨て石にされるのだけは御免ですよ? お互い最終防衛ラインなんですから」
愉快そうにガゼル王は笑い、話を続けろと顎で指す。
「ガゼル王もいざ帝国と戦争になると、人間国は頼りにならぬとお考えなのでしょう。帝国との戦に備えるにしても、ジュラの森までカバーするのは兵の分散を招くだけ。我が国と盟約を交わすことでジュラの森側に兵を配置しなくて済むのが狙いでしょう?」
「頼りにならんのは確かだな、西が一致団結して帝国に立ち向かうとは到底思えぬ」
「森側を手薄にはできません! 貴国を信用していても魔物による被害は減らないのですから」
あっ! この人たぶん、アンリエッタさんだ! 覆面じゃないからわからなかったわ。
魔物の討伐にも兵はいるか……なら提案がある。
「そこで提案があるのですが……」
「ふむ……言ってみよ」
「俺達を、魔人を人として扱うように布告して欲しいのです。今は人間と敵対する種族を称して魔族と定義して呼んでいる……それでは困るんです」
「それは難しいのではないか? 実際に魔王が魔族を引き連れて人類に敵対しているのだから」
それを分けて欲しいんだよな……良い人間、悪い人間みたいに。
「魔王に従い、全ての人類と敵対するのが魔族と決めつけられると困るんですよ。知恵ある魔物や魔獣と無差別に人を襲う魔物をまずは分けないと」
「なにが言いたいのじゃ? リヴェルよ」
「そうですよリヴェルさん、勿体ぶらないでください!」
腕を組みながら首を傾げるブティさんと怒るパト。
「イリーナ、ガゼル王、力を貸して下さい。俺は魔物と人間が共存するには冒険者ギルドに魔物も参加できる仕組みが必要だと思っています」
会議室が静まり返る中、リムルだけが「おい、星! ほうれんそう! ホウレンソウ! お願いだから!」と連呼する。
「リヴェル……力は貸してあげたいけど魔物は魔物と切り捨てられるだけよ」
「知恵ある魔物を魔族と定義して、冒険者にか……一理はあるのだがな」
「魔物は自然発生で増え続け、こちらは死ねば強力な魔物になる。私は欲しいわ……知恵ある魔物の冒険者でもね」
「西方聖教が許しませんぞ? 魔族の定義を曖昧にするなぞ、教義が揺らぎますからな」
イリーナ、ガゼル、アンリエッタ、エセ商人が順に発言する。
「ドワルゴン、サリオンも教会とは関係が最悪でしょ? ルミナス教の教えがある国で活動何てしませんよ? 同盟関係のある国だけでの冒険者活動に留めます。どうせ人間側から魔物が魔物を討伐しろとか言い出すに決まってるんだから」
「人間が魔物を冒険者にすることに納得などするのか?」
「想像以上に人間国って不味い状況なんですよ。西の評議会で資金を集め、冒険者ギルドを運営していますが成果が出ていません。無い袖は振れないので冒険者は減少してるし、教会は腐敗し始めている」
ユウキ君が自由組合いを上手く運営していたんだろう……。
大賢者姉妹に冒険者関連で調べてて分かったんだが、イングラシアに自由組合が無かった。
ユウキ君が帝国にいる可能性も考えたが三巨頭もない……どんな秘密結社でも名前くらいは表に流れているはずだからな。
ユウキ君が無名なんて考えられない、この世界に来てない事が確定してしまった。
「ハァ……リヴェル。その情報のでどころは問わんが、安易に他国に話すでない。わかった、我が国でも協議はしよう。だが限定的だ、お主の国……リムルよ、お主の国はなんと呼ぶのだ?」
「リムル王国です「ジュラ・テンペスト連邦国だ!」だそうです……痛い! 王の前だぞ? 控えおろう! やめろって!」
美少女二人が頭を叩き合う。
「不敬ですよ? リヴェル殿」
「えっ俺? しゅ、しゅみません」
俺はアンリエッタさんに注意されて、項垂れる。
「か……可愛い」
ガゼル王は呆れた顔をしたあとに、キリッと表情を変えてリムルに言う。
「リムルよ! 我が国ドワルゴンと、お主のジュラ・テンペストの盟約を結ぶこと
「謹んでお受けする! 冒険者の件は俺も初めて聞かされた……リヴェルを問い詰めてから貴国と協議したい」
「よし、即断即決こそ王の真髄よ! もう無礼講で良いわ、俺も腹をわって話しがしたい」
そう言い終わるとイリーナが席を立って俺の隣に座る。
「私もお父様に相談してみるけど、自治権が認められてるとはいえ厳しいと思うわ」
「俺は正直、人間なんてどうでもいいんだ。守りたいのはドワーフやエルフ達だ。人間が「精霊交じりは魔物と変わらない」と奴隷扱いしているのは知っているんだぞ? ……まずは同盟国に魔族制度を導入させ、冒険者ギルドに魔物を、警察機構に犯罪を対処させたい」
「確かに亜人と評さず、私達を魔物と呼ぶ人間国もあるけど……ドワルゴンもサリオンも人間が一緒に住んで暮らしているのよ? 魔族を認めたら関係が崩れちゃうわ……。それに警察って何よ?」
イリーナに捕えられた奴隷を救出したり、犯罪に対処する為の治安部隊だと説明する。
「我が国には結界があり、魔法師団もいて魔物の被害も少ない。じゃが神樹を起点に張った結界は国土の半分も覆っておらん……漏れる部分での民の不満は大きいんじゃ」
「早い話が我がサントハイム領も、結界が届かず冒険者が欲しいということです。国が許可証を発行した魔族だけが、登録をできる仕組みを作ればいいんじゃないですか? テンペストが責任を持つ形で……ですけど」
ブティの会話のあとに、パトが続けて話す。
ガゼル王とリムルは、シュナにお茶と和菓子を貰いながら俺達の話し合いに耳を傾けている。
「ガゼル王はあいつの話をどうみてるんだ?」
「机上の空論とまでは言わんが無謀だな。教会の横やりは入るし、魔物に殺された者が魔物を受け入れるとは思えん……我ら亜人も人に受け入れられるまで苦労したのだ」
「俺が人間との共存を考えてるから、リヴェルがそれをくんで考えてくれたんだと思う。こら! 馬鹿リヴェル! 人間はどうでもいいって、共存の話はどこにいったんだ!」
「俺もお前も人間に殺されてこっちに来たんだが? それに俺個人としては共存なんてしたくないもんね〜」
人間の行きつく種族の頂点が
ハイヒューマンで聖人にまで進化できたルドラはやっぱすげーわ。
上を目指す過程がジャヒル製造機なら真祖……こいつはくせぇ! ゲロ以下の匂いがプンプンするぜ! と言わざるを得ない。
人間の支配階級にはその血を守り続けて、色濃く残ってるんだよリムルくん。
早い話が人類馬鹿ばっか、ルリちゃん無双だな。
バカばっか、みーんなバカ。
ヴェルダ「人類馬鹿すぎて滅びちゃうよ!」からのルドラ「じゃけん馬鹿を統一して平和にしましょうね」のあとにグランベル「俺が馬鹿を管理しなきゃ人類滅びちゃうよ!」に繋がると……。
「うぐっ……でも、最初から人間と仲良くなれないと切り捨てて考えるのは駄目だろ!」
リムルは転生の話をガゼル王からどういうことだ? とか、俺とリムルの見た目に付いても色々問い詰められてしどろもどろに答えている。
この世界の人間は地球から人間を拉致して、兵器にしているとかリムルに教えていいモノか……。
転移者も度重なる召喚でこじ開けた、時空の歪みによる被害者だとベルが教えてくれたしな。
「やっぱり魔族は厳しいかな? 当初の予定通り、亜人として人型の魔物を定着させていくしかないのかな……」
「最初からその案でいけ馬鹿もん! 人間に近い見た目なら尚更受け入れやすい」
「亜人と魔物の間で差別が起きそうで嫌なんですよ、魔族と一括りにしたいんです」
「実際問題、人型でも人間を殺すぞ? 同じ魔物として対処できるのか?」
「そのための法でしょ? テンペストの法で魔物を守り、テンペストの法で魔物を裁きます」
「ふむ、しっかりと考えてはいるようだな。警察機構とやらを俺にも詳しく教えろ」
まずはゴブリンとオーガを亜人とよばせるとこからだな。
「エルフもドワーフも魔族になって欲しいんですけどね。人間は教会に守らせ、魔族は独自の組織……自由組合リムルとかで自衛するのが俺の考えでして……」
「「駄目に決まってるだろ!」」
「馬鹿もんが!」
「バカ野郎!」