二度転生したらスラりんだった件   作:Kut-Ku

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56話 俺たちは諦めない、夜にこそ蝶は輝くのだから

リムルが俺の名前を使うのは禁止! 悟も駄目だからな! と怒っていたんだが。

 

自由組合テンペストをリムルに変更して欲しいと要請してきたのはシエルさんなんだが‥‥黙っていた方が幸せなことってあるよね‥‥。

 

 国同士の話し合いになるために、イリーナ一行には商館を退出してもらった。

 

 イリーナたちの相手は引き続き、ミラノとソーニャがもてなしてくれている。

 

「ガゼル王、盟約の内容を決めましょう」

 

「おっ! そうであったな、お主が興味深いことばかり申すのであとにしておったわ」

 

「帝国に対しての軍事協力、国交、貿易関連か?」

 

 俺のあとに続いてガゼル王、リムルが話す。

 

「そうだな‥‥一つは国家の危機において互いが軍事協力する。二つ目は相互技術提供といったところか」

 

「二つ目は待って欲しいかな‥‥。技術に関してはサリオンの技術、ドワーフの技術をすでに超えちゃっているので、相互だとウチが困る形になっちゃうのですよ」

 

「そうなのリヴェル? あーサリオンの技術をおまえが持ってるから、相互にしちゃうとドワーフが盗んだみたいに思われちゃうのか‥‥」 

 

「まて! まてまて! 俺の国の技術を上回っただと? 何を根拠に‥‥カイジンとミラノか?」

 

 エセ商人が首を捻り、アンリエッタさんは鋭い目線で俺を見ている。

 

 そこへカイジンが、ガゼル王へ報告するためにやって来た。

 

「王よ、頼まれていたビールは東の空き地に運んでございます。迎えのペガサスに持ち運べる限界の量でございますからご注意を」

 

 ガゼル王は調印式に着る正装と、王の刻印をペガサス部隊に運ばせている最中だ。

 

「こらカイジン! 酒はまだ取引は駄目っていってるだろ? 国が出来たばかりで人員も施設も足りてないのに!」

 

「固いことをいうんじゃねえよ、リヴェルの旦那。大恩あるガゼル王へ、俺からの贈り物なんだ。見逃してくれよ」

 

「でかしたカイジン! ではない‥‥カイジンよ、テンペストが我が国より技術が優れているのは本当か?」

 

 カイジンはキョトンとしたあとに、気まずい顔をしながら話し出す。

 

「ガゼル王様、申し上げにくいのですが事実でございます。正確には軍事技術や武具開発に置いてですが。リムルの旦那やリヴェルの旦那の技術は未知の知識ばかり‥‥それにテンペストの技術革新の速度は異常です。オークやゴブリンは教えた技術をスポンジのように吸い上げ吸収し、驚かされることばかりでございます。また、鍛冶、土木、農学、魔工、精霊学など様々な分野で日々進歩しております」

 

「むううぅ‥‥」

 

「勘違いしないで頂きたいのは、技術面においてドワーフが世界最高峰なのは間違いないという事実です。技術をポンポン渡すより、雛型を渡して独自に研究・発展してもらいたいのですよ。それに俺たちの技術が凄いんじゃなくて、俺たちの世界の偉人、先人たちが長い年月をかけて生み出してきた知識の結晶です。おれたちの世界の技術の方が優れているだとか奢った考えではありません、そこは間違えないでくださいね? リムルのアホのせいで技術革新が止められないなら、流出を防ぐのが俺の仕事なんで」

 

 天魔大戦でドワーフやエルフの高度な技術は、何度かリセットされたのかもしれないな‥‥。

 

「アホっていうな! よくあるファンタジー世界の文明を滅ぼしたり、技術格差が生み出す弊害だろ? 魔法が使える世界の癖にトイレすら水洗じゃない方が悪いんだ!」

 

 アンリエッタさんが水洗トイレに露骨に反応していたけど、たぶん気のせいだろう‥‥。

 

「甘いぞリムル! 経済市場の混乱、戦争の拡大、格差の拡大、産業革命で起きた機械による雇用問題が良い例だ。おまえも「今の時代にハンコかよ!」って文句を言ってたが、印鑑を作るにも職人がいてそれは伝統工芸であり文化なんだぞ? 手作業による仕事はちゃんと雇用を生み出していたんだ。便利な世の中にするにも急激な変化はろくな結果を生まんよ」

 

「ぬううぅ‥‥」

 

 二人の王はぬーん、むーんと唸りあう。

 

「我が国も舐められたものです‥‥ではドワルゴンからは技術提供は必要ないと?」

 

「いやいや、誤解しないでくださいアンリエッタさん! 軍事関連の技術が高いだけで他は全然ですよ!? 相互協力だと全ての技術を提供し合うから駄目というだけで‥‥共同開発、技術提供をしたいと考えています。劣っている技術なら多々あります! 冶金技術、建築、食品の加工、レンガ、精霊炉の改良も‥‥あっ! 酒! ガゼル王! ウイスキーの樽! オーク樽みたいなウイスキーに合う樽ありませんか!!」

 

 アンリエッタさんがニコニコしながら威圧をかけて来るんだが? 痛いよ! 肌がピリピリする。

 

「アンリエッタの名をどこで知ったと問い詰めたいが‥‥あるぞ? クエルクスの木で作った樽だ。味わいと香りが実に良い。最高級なら黒樫霊樹だが‥‥今はちとな」

 

「売ってください!」

 

 王はチラッとエセ商人の方を見る。

 

 商人は身なりを整え、頭を下げて話だす。

 

「私はエチゴーヤと申します。王の御用商人をさせて頂いております。どうぞ、お見知り置きくだされば幸いです」

 

 俺とリムルは胡散臭そうな商人を見たあと、顔を見合わせて頷き合った。

 

「他に紹介いただける商人は?」

 

「わかります、すご~く。わかりますともリヴェル様」

 

「リヴェル様! アンリエッタ殿も心外ですよ! 私の商会はドワルゴンでも一二を争う商会なのですよ!」

 

「まあ、そう言ってやるな。色々各国から物を仕入れておるから便利な奴だぞ?」

 

 リムルが「お主も悪よの?」と言うので「お代官様ほどでもありません」と返しておいた。

 

「先に交易の話をしましょうか‥‥こちらがだせるのはポーション類と食料です。酒はまだ安定供給でだせるほどありませんから」

 

 そう言って俺は大好きな酒を守るために、カイジンを睨む。

 

 カイジンが小声で酒の温度管理や樽の製造、管理方法は俺が教えたんだぞ! と言う。

 

 麦汁のろ過フィルターに、簡略化の提案。蒸留の魔道具化は俺のおかげだぞと言い返す。

 

 酒に関してはミルドですら奪い合いに参加するので、酒の生産が少ないとドワーフたちと争奪戦が始まる。

 

 バチバチとカイジンと睨み合うが、二人ともリムルに頭を叩かれてあっさり終了した。

 

「気のせいか? リヴェルが小さいドワーフに見えるときがあるんだが‥‥」

 

「話が進まんからやめろ。ガゼル王、ポーションと食料どっちも足りないんだろ?」

 

「うむ、山岳地帯のうえに気候が悪いと作物はどうしてもな‥‥それゆえ食料は輸入にたよるしかない。近場で新鮮な食料が手に入るのは非常に助かるぞリムルよ。ポーションも戦争や紅玉のせいで足りぬからな」

 

「王!? いいのですか?」

 

 アンリエッタさんが焦った様子でガゼル王に問いかける。

 

「よいのだ、アンリよ。手紙に書いてあったのだ。リヴェルに相談しろと、解決せぬなら朕にも内容は伝わるし、返事も送れるとな」

 

 エルさん‥‥俺を伝言掲示板みたいに扱ってくれちゃってまー。

 

「紅玉ってなんだ? ドワルゴンの秘宝ってやつか?」

 

「違う‥‥突然廃坑に出現した、魔物を生む玉のことよ。帝国もそれが狙いみたいでな、対処に苦労しておる」

 

「魔物? エレンが言ってたな‥‥魔力が詰まった遺物って奴か? どんな魔物が生れるんだ?」

 

 アンリエッタさんがこほんと咳払いし、俺たちに伝える。

 

「それは‥‥溶岩魔人、炎の戦士、火喰い鳥、フレイム、爆弾岩という火属性の魔物です」

 

「「ブフゥッーーーーーーーーーーー!!!」」

 

 俺とリムルは盛大に吹き出してむせる。

 

 慌ててリムルを見ると、腕をクロスさせてバッテンを作っていた。

 

『私は無実だよ‥‥信じてリムル!』

 

 俺は可愛いオーラ全開で、目を潤ませながらリムルに訴える。

 

 リヴェルの攻撃! かいしんの一撃!

 

『グハッ!? だが男だ! 安心しろよ、リヴェル。牢の中って案外快適だったぞ?』

 

 ミス! リムルにはダメージが与えられない!

 

「裏切者ー!」

 

「どうみてもダウトだろ!」

 

 俺とリムルが取っ組み合いを始める瞬間に、シュナが素早く言い放つ。

 

「お二人共!! お客様のまえです‥‥恥ずかしくない振舞をお願いしますね?」

 

「「申し訳ございませんでした!!」」

 

「おまえたち‥‥さては紅玉について何か知っておるな?」

 

 俺は口笛を吹き、リムルはこいつが犯人ですと俺に指を挿す。

 

「初めに言っておきますが、俺は紅玉とは関係無いですからね? その魔物を知っているというだけです!」

 

「ウソはついていないようですね‥‥リヴェル様は本当に知らないようです」

 

 何やら発言の間、目を閉じていたアンリエッタさんがガゼル王へ報告する。

 

 ヒエ〜ッ! ウソ発見器みたいなものを持ってるんですか? アンリエッタさん!?

 

「魔物を知っていると言ったなリヴェル? その魔物はすべて異世界の魔物なんだがなぁ‥‥くっくっく。それならば、対処を任せるとするか! 盟約最初の仕事に協力してもらおうではないかリヴェルよ!」

 

「どうぞ、どうぞ! リヴェル頑張ってな〜」

 

「薄情者! 親友が困ってるのに見捨てるつもりか!」

 

「安心せい、リムルも一緒だ。勇者殿も知っているようだし協力して頂かねばな?」

 

 リムルはなんで勇者ってバレたんだと、辺りを見回すとカイジンが目を泳がせていた。

 

 カイジンは用は済んだとばかり、そそくさと退出していく。

 

「精霊の加護持ちと勇者か‥‥因果な巡りよの‥‥」

 

 俺のことまでバレテーラ。

 

「精霊の加護持ちと勇者に何かあるんですか?」

 

「なに、遠い昔にドワーフの若者が勇者の卵を‥‥その親友が精霊の加護を持っていたというだけよ‥‥」

 

「それはガゼル王自身のことですか?」

 

「違う、俺の爺さんの時代の話だ」

 

 そう言うと王は静かに目を閉じて黙った。

 

 ドワルゴンもゴタゴタの後始末があるし、紅玉の調査にも兵はいるので調査はもう少し待てとのことらしい。

 

 

 

「では一つ、互いの国の相互防衛条約。二つ、技術の部分的開示と共同開発。三つ、互いの国に領事館を置くことでよいな?」

 

「ああ、それで構わない」

 

「ではこれより武装国家ドワルゴンと、ジュラ・テンペスト連邦国の調印の議を始めたいと思います!」

 

 進行を務めるのはイリーナ・サントハイム。魔導王朝サリオン・十三王家のお姫様。

 

 魔法による制約が込められた紙にリムルとガゼル王はサインをしていく。

 

 ドワルゴンから出席したのは、バーン、ジェーン、ドルフ、アンリエッタさんたちだ。

 

 全員がきらびやかな服装で参列している。

 

 俺は大勢の配下たちに見守られながら、少し緊張した面持ちで調印式が終わるのを見守った。

 

「それでは余は国に帰る。追って連絡はするゆえ例の件は頼んだぞ? リムル、リヴェルよ」

 

「あっ少し待って下さい、ガゼル王。会わせたい人がいるんです‥‥おっ来た、ハクロウ~!」

 

 ハクロウは包みを小脇に抱え、王の前に立つと、不敵な笑みを浮かべて軽く一礼した。

 

「ほっほっほ、お久しぶりですな‥‥森で迷っていた小僧が立派になられましたのう」

 

『剣鬼殿!? 剣鬼殿ではございませんか! こちらにいらっしゃったとは‥‥あのときは世話になりました」

 

 ガゼル王はハクロウに満面の笑みで答えた。

 

 ハクロウはするりと包みを外し、中から現れた木箱を手渡そうとする。

 

 バーンが警戒するが、王が強い口調で「よい!」とだけ言った。

 

「リヴェル様から贈り物だそうですじゃ。ウイスキーのクロヴェと手作りベーコンですぞ」

 

「贈り物? これは忝い、有難く頂戴いたします」

 

「弟弟子たちから、兄弟子へ餞別の品じゃよ‥‥フフ」

 

 そういうと、ハクロウは俺とリムルを見て笑う。

 

「何だと!? クッ‥‥知っておったら腕を確かめていたものを‥‥」

 

 それが嫌だから内緒にしてたんだよ‥‥なあリムル?

 

 リムルの方を向くと、腕を組みウンウンと頷いていた。

 

 ガゼル王はハクロウに礼を言い、俺たちにも手をあげて挨拶したあとにペガサスに騎乗する。

 

 俺もガゼル王にお辞儀をして王の出立を見送った。

 

「俺からじゃなくて弟子に贈り物だと言えばよかったのに‥‥。すまんな、ハクロウ。ベルの護衛をしてるのに急に呼び出して」

 

「なに、構いませぬよ。懐かしい顔もみれたことですしのぉ。それに儂の護衛などなくともつわものぞろい、わしに護衛役が務まるか不安なくらいですじゃ」

 

「ハクロウにしか頼めないよ、強さじゃない信頼の問題だ。他の奴にはベルを任せられないよ」

 

「ほっほっほ、嬉しいことをおっしゃる‥‥これは儂もさらに精進を重ねんといけませぬな‥‥」

 

 何やら剣気というか鋭い刃が肌を指す感触が辺りに充満していく。

 

 これ以上研鑽をかさねてどうするのさ!? ゴブタと俺が死ぬからやめて!? 違うの言葉のままの意味なの!? レインとミリムにベルを任せられないの!!

 

「落ち着いてくれって! 妖気と剣気が迸ってるから!? ほれ暴風竜殺しと天ぷら、あいつらのお守りのお礼だよ」

 

「おお! 忝い! 今はソウエイが護衛を代わってくれておるし、そろそろ大森林に入るころあいですかな?」

 

「そっか、ありがとなハクロウ」

 

 ハクロウは酒と天ぷらを携えてクロベエの鍛冶屋に入っていく。

 

 食堂がドワーフたちと共有スペースなので広くて居心地がいいからだろう。

 

 でも、ハクロウが勝手につまみや酒を拝借してるから俺に苦情がきてるんだよな‥‥。

 

 リムルはリグルドたちと、ドワルゴンから大勢訪れてくるであろう来客の対処に追われてる。

 

 宿泊施設や露店の金銭管理、警備体制について会議をしている最中だ。

 

 まだ街道を整備中なのでドワルゴンまで開通をすませていない。

 

 訪れて来る客は一度ブルムンドを通り、テンペストに訪れるルートになる。

 

 なのでドワーフ、人間、エルフに絞られてしまう。

 

 魔物も来れるように手はうってあるが報告待ちだ。

 

「そろそろ開通できそうだとは思うんだけどな〜」

 

「なんの話? リヴェル」

 

「おっ 来たかイリーナ。まだナイショ! ここからは俺が案内するよ」

 

「会議お疲れさまでした、師匠。姫には水道橋、学校、病院を案内しましたわ」

 

 家の地下は駄目ってミラノに言われてるし、家の畑とリリナの畑かな? 面白そうなのって。

 

「教えなさいよ! えい、えい」

 

 イリーナが俺のほっぺを指でグリグリしてくる。

 

「リヴェル~ 私はアイスが食べたいわよぅ〜 まだ夏じゃないのに暑すぎない?」

 

「そうなのか? 俺には耐性があるし、うちの娘たちも快適に暮らしているからな」

 

 なんせ地下の水精霊が、家の温度管理してるからクーラも必要ない。

 

 水のはごろもがあるんだが、店で買った奴なのでスケスケなんだよね。

 

 不敬罪とか言われないだろうか? だが水着の上から着れば‥‥いやしかし‥‥。

 

「リヴェル様が、なにやらだらしない顔をしてますね?」

 

 ソーニャに言われて俺はハッと正気に戻り、イリーナ、エレン、ミラノ、ソーニャの四人にアイスを慌てて配る。

 

「パトさん、ブティさん、カバルにギドはいないのか?」

 

「ブドウのアイス!? 味が洗練されて‥‥し、進化してる! 美味しぃ~〜なにこれ!?」

 

「このアイス! 凄く美味しいわ! パトとブティは温泉が気に入ったみたいで動かないのよ‥‥。カバルとギドはリヴェルがいるのに護衛はいらないだろ? って言ってゴブイチさんの食堂にいるわよ」

 

 エルさんがいなくても、エレンとイリーナがいるのに‥‥エラルドにばれて怒られても知らんからな。

 

 ミラノは上品に食べては、耳をピコピコ嬉しそうに動いていた。

 

 ソーニャはガツガツと食べては頭を押さえ、食べてはを繰り返している。

 

「ミラノに頼みたいことがあるんだけど、いいか?」

 

「何ですか師匠?」

 

「ドワルゴンから胡散臭い商人のエチゴーヤという男が、樽を売りに来るんだが対応を頼めないか?」

 

「ふふふ、エチゴーヤさん、よく見た目で誤解されますけど。真面目で仁義にも熱い、良い人なんですよ?」

 

 へ〜エチゴーヤって人間とドワーフのハーフなんだな。

 

 黒い噂が無いのは、ガゼル王がもみ消しているからか? 俺はガゼル王に山吹色のお菓子を持参し、二人で笑い合う姿を脳裏に思い浮かべる。

 

「知り合いなのミラノ? ならお願いするよ。色々買わされるとまたリグルドに怒られるからな」

 

「師匠‥‥その顔は信じていませんね? エチゴーヤさんの件はわかりましたわ。面白いものとか、欲しいものがあったら手あたり次第買い漁りますものね師匠は」

 

 俺は5人でリリナの畑に来た。

 

 色々な種類の水精霊たちが用水路で遊んでいるし、木の精霊が日光浴でうとうとしていて可愛い。

 

 エルフたちには精霊動物園みたいで楽しめるだろう。

 

「きゃっ!? 冷たい! なにこの‥‥亀? 水の精霊じゃない! うわっぷ」

 

 エレンが気に入られたようでハイドロポンプで遊ばれていた。

 

 水の形の蛇がイリーナに巻き付いてじゃれている。

 

「ふふ、うちのお母様が契約してる子に似てるわねあなた? あはは、くすぐったいわ」

 

 水の循環とろ過もしてくれるから、精霊たちには随分と助けられている。

 

「リリナは研究小屋かな? 納豆の邪魔しちゃ悪いし野菜を取って帰るか‥‥うまそうなナスだな」

 

 ナスか‥‥玉ねぎ、じゃがいも、トマトでいいか。

 

「エレン、イリーナ。このハサミで収穫するか? 持ち帰ったらピザにする予定だ」

 

「「やるに決まってるわよぅ!! 面白そうね!」」

 

 なぜか慣れた手つきで素早くナスを収穫するエレンと、ぎこちなくハサミを両手で持ってしまうイリーナ。

 

 ミラノがイリーナにトマトの収穫方法を教えている。

 

「リヴェル様! 私も食べたい! ピザ!」

 

「おまえはスナック樹羅の内装の仕事があるだろ? 終わってないなら駄目だ」

 

 ミラノの助手の仕事がないときは、樹羅で働くらしい。

 

 本来は夜の蝶二号店になる予定だったのだが‥‥。

 

 リムルが気合を入れてこだわった家具を作り、俺は看板とテーブルクロス、酒のメニューも考えてリムルと和気あいあいと店舗を改築していたのだが‥‥それは一夜にして崩壊した。

 

 ニコニコした茜、シュナ、トレイニーさんが結託して「スナック樹羅に変更します! いいですね?」と脅してきたのだ。

 

 もちろんおれたちは言い返したさ! 「「いいですとも!」」ってね?

 

 看板は粉砕され、ゴージャスな装飾は全て撤去されていた。

 

「や、やだな〜ちゃんと終わっていますよ‥‥ふふふ」

 

「おっとりした優しいお姉さんだから大丈夫。とか思ってたら痛い目に会うぞ? あのイモ、結構容赦ないからな?」

 

「‥‥焼けたら届けて貰えますか? リヴェル様」

 

 俺はウルウルと泣きながら懇願するソーニャに頷いた。

 

「家に帰ろか、ミラノ、イリーナ、エレン。庭の畑にイチゴもあるからヨーグルトに蜂蜜かけて一緒に食べると美味しいぞ?」

 

「早く帰ろうリーナちゃん! 行くわよリヴェル」

 

「ビショビショじゃないリュー姉‥‥着替えなさいよね」

 

「リヴェル様!! いちご食べてから仕事に!「駄目だ!」そんな~」

 

 家に戻るとエレンがイリーナから服を借りて、少しお嬢様っぽく変身していた。

 

 まあ、中身がエレンなのでたぶんばれないだろ‥‥。

 

「涼しい!? リヴェルの家の中ってこんなに涼しいの? 議事堂は氷が置いてあったよね? 家にも置いてるのかな?」

 

「あああ~生き返るわ〜ご飯できたら起こしてリヴェル~はっ!? いちごを忘れていたわよぅ!」

 

「議事堂はミラノが来客に整えていたからな、氷のインテリアと思っていたのに暑さ対策だったのか‥‥」

 

 クラゲ、クラゲ、スライムの俺とリムルという独創的な氷の彫像だった。

 

 俺は汗もかかないし、寒くも熱くも無いから気にしてなかったな。

 

 今後は、娘たちの体調に気を配らないと‥‥迂闊だったわ。

 

 イリーナとエレンは庭にイチゴを取りに行き、ミラノはヨーグルトを用意してくれるようだ。

 

「マジックハンドくんの使い道がピザ回しとか、早く自分の手で生地を回したいわ」

 

 自分の手を使い包丁で玉ねぎを切りながら、SAでピザを回す。

 

 ナスをオリーブに付けて、鶏肉をスライスしていく。

 

 外に出て、ピザ窯に火を入れていると従者たちがぞろぞろと家にやって来た。

 

 カバルとギドは俺に軽く挨拶して縁側に腰掛けると、風呂上がりのブティさんにビールを奪われていた。

 

「リヴェルの美味い飯で一杯やるために貰ってきたのに‥‥勘弁してくださいよブティ様」

 

「固いことを言うんじゃないよ、私らが食事会で酒も飲めないのにガバガバ飲んでたらしいじゃないか? そうだろカバル? ギド~?」

 

 カバルは目に手を当て項垂れ、ギドは潔く冷えたビールをパトさんに差し出した。

 

「どうもですギド。はあ‥‥美味しぃ。お風呂上りに飲むビールは最高ですね」

 

 突然にピザ釜の隣の空間が開いて、顔を覗かせるベルがいた。

 

「どったのベル? 向こうの夕飯はハンバーグだろ?」

 

「ちがうの父上‥‥母上がすねちゃって助けて欲しいの」

 

 突然空間が開いて子供が顔を覗かせているので皆びっくりしたが、力が感じられないので可愛いベルに微笑んでいる。

 

「朝食の「父上! ワタシはドーナツ」もう! ねーねは来ちゃ駄目! めっ!」

 

 変な魔王が約束を破ってこっちに来ようとしたが、賢いベルに防がれた。

 

 一瞬ブティさんが反応したが、気のせいかとビールを飲み直している。

 

 話を聞くと、朝食を作った冥ちゃんがドヤ顔で「わらわが腕によりをかけて作ったホットケーキじゃ! 美味いぞ!」と娘たちに食べさせたのだが‥‥言ってはいけないことを二人が言ったようだ。

 

「「父上の方が美味しいのだ‥‥。パパの方がふわふわして美味しかった‥‥。」」

 

 ハァ‥‥やめてあげて。冥ちゃんのライフはもう0よ。

 

「ごめんねって、ベルがりょうりを作って母上をなぐさめてあげたいの!」

 

「ベルはやさしいね〜でも簡単にできるのがホットケーキなんだよね‥‥」

 

 美味しぃホットケーキなんて持っていったらオーバーキルになりかねんぞ‥‥。

 

「ピザ一緒に作るか? ピザで文字も書けるし、ごめんねおかーさんって書けば冥ちゃんはすぐに許してくれるから心配するな!」

 

「うん! ピザ作る~」

 

 小さい女の子が台の上でピザを作る姿が可愛らしいのか、イリーナとエレンが苺を食べながらキャーキャー煩く騒いでいた。

 

「できた? 焼けた?」

 

「うん、綺麗に焼けたぞベル!」

 

「やったー! うわ〜良い匂い」

 

「俺も一緒に行くわ面白‥‥可哀そうな冥ちゃんを慰めにな」

 

 頷いたベルが次元を開いて、俺とベルは大森林のキャンプ地にでる。

 

 そこには真っ白に燃え尽きた、ボクサーのような冥ちゃんが酒を飲んでいた。

 

「なんじゃ‥‥リュウか? 笑いたければ、笑うが良い‥‥」

 

「あははははは! 痛ったぁ~! おまえが笑えって言ったんじゃん!」

 

 ベンチから立ち上がりグーで殴って来る冥ちゃん。

 

「すごい父上! 母上うんともすんとも言わなくなってたのに‥‥あのね母上これ! ごはん作ってくれたのにごめんなさい! お詫びにピザ焼いたの‥‥ベルが焼いたんだよ!」

 

「むうぅ‥‥良い匂いじゃの」

 

 テーブルに皿を置くとごめなさいははうへと書かれた文字があった。

 

「ううぅベル~優しいのぉ〜それに比べてミリムは‥‥リュウ、はよう切り分けてくれ」

 

「ほいほい、あれミリムは?」

 

 冥ちゃんが指を上に向けるので、頭上を見てみる。

 

 そこには布でグルグル巻きにされ、口にも喋れないように封がされているミリムがいた。

 

「母上おいしいね!」

 

「うむ、ウマウマなのじゃ。さすがはベルじゃな! 料理の天才か? わはは」

 

 親子仲良く、頭を撫でたり、頬をスリスリしたり楽しそうだが‥‥頭上で魔素が荒れ狂ってるんだが?

 

「ミリムを許してやれよ、ほれビール」

 

「落ち込んでるわらわに「母上はガサツだし料理は向かんのであろう? 料理が下手でも母親失格にはならんから安心するがよい母上! わっははは」と言いよったんじゃ‥‥」

 

 じゃーミリムが悪いわ‥‥俺を睨むんじゃないよ。

 

「ん? 食べ残してるのかホットケーキ? 冷めてるけど美味しいじゃん」

 

「そ、それはわらわの‥‥ぶんじゃ。う、うまいかリュウ?」 

 

「ん? ああ十分美味いぞ?」

 

「フム‥‥ふふっ! 仕方ない、ミリムも許してやるので一緒に食べるが良い」

 

 解放されたミリムがなぜか俺に噛みつきウガーと怒る。

 

「父上が遅いせいでワタシが酷い目にあったのだー!」

 

「手加減していても犬歯が痛いぞミリム! ほれドーナツだ! 噛むのを止めろ!」

 

 親子四人で仲良くピザを食べたあと、家に戻るとピザを早く焼けと皆に怒られた。 




6000文字くらいで終わらせたいのに伸びてしまう‥‥時間が全然足りない。

 
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リムルに喰われる悪魔に転生してしまった……(作者:てきとーでいこう)(原作:転生したらスライムだった件)

原作知識を持っている主人公(前世は男)は転スラの世界に悪魔として転生した。▼死の間際に手に入れたスキルを検証として利用すると自身がリムルに喰われてエネルギーにされてしまう役割の悪魔であると知る。▼転スラ好き(もちろんリムルも好き)な原作知識を持った悪魔はこの状況でどうするのか。


総合評価:4617/評価:8.28/連載:22話/更新日時:2026年04月16日(木) 23:30 小説情報


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