二度転生したらスラりんだった件   作:Kut-Ku

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57話 いやー探しましたよルージュさん

 

―――天翼国フルブロジア―――

 

 

 

*ヴェルザード・side

 

「ねえギィ? 次はどこへ行くの?」

 

 勢い任せに付いて来たけど‥‥新婚旅行みたいで悪くはないわね!

 

「私が聞きたいくらいよっ! あのスライム~〜! ほら泣き止みなさいな男の子でしょ?」

 

 私はプンスコ怒りながらも、泣いてるハーピーの子供にお菓子をあげてるギィを見て思い出す。

 

 スライムを探すために各地を回ることになった経緯を‥‥。

 

 

 

 ドワルゴンから帰って来たギィは荒れていた。

 

 お土産のドワルゴンクッキーが美味しくないと、文句を言える雰囲気ではなかったのだ‥‥。

 

 男の姿に戻ると玉座に座り顎に拳を当て苛立つギィ。

 

「俺をここまでコケにした奴はルドラの野郎ぐらいだぜ! キッチリと落とし前を付けてやる‥‥」

 

 そう言って私のお気に入りである氷の彫像、クマのゴンザレスちゃんを壊されたの!!

 

 私はお子ちゃまのギィより大人だから、カチンときても冷静だったわ‥‥少しだけ宮殿が崩壊しちゃったけど。

 

 配下に言葉を話すスライムを見つけて来いと命令しても、自分以外にそのスライムを見つけるのは不可能と思ったのでしょうね。

 

 自ら足を運んでスライムを攫って来ようとしたが、結果は散々だったのだ。

 

 ドワルゴンには知り合いの商人がいたという話だが、結局その足取りは見つからずじまいに終わった。

 

 スライムと仲の良かった狼の足では、そう遠くにはいけまいと踏んだのでしょうが‥‥。

 

 私がギィのガス抜きをしてあげたおかげなんだから! 感謝しなさいよねスライムさん!

 

「腹は立つが、あの時に首輪を付けなかった俺の落度か‥‥」

 

 一旦冷静に戻るとギィの行動は早かったわ。

 

 各国に飛ぶことになって、慌てて私もギィを追いかけたの。

 

 

 

「魔物が狼の足で行けそうな国は全て巡ったわよギィ? ドワルゴン、ジスターブ、竜の都、ユーラザニア、そして‥‥ここフルブロジアで最後」

 

「煩いわね‥‥ほら、このお店のフルーツのタルト美味しいわよ? 黙ってたべてなさいな、ヴェルザード」

 

 そこはアーンでしょ? もう! 気がきかないんだから。

 

 私は投げられたタルトを慌てて両手でキャッチする。

 

 あっ! これ、美味しいわね。持ち帰って食べましょう。

 

「ギィが男の姿なら私も、もっと楽しめたのに‥‥」

 

「私はこの姿じゃないと力が完全には抑えられないのっ! 知ってるでしょうに‥‥」

 

 まあ、女性姿ならぶっきらぼうで、話を聞かないギィも私に優しくしてくれるから好きだけど‥‥そういうことじゃないのよね~。

 

「おいおい、こんなところに人間の女が商売か? 綺麗な顔してやがるじゃねーか」

 

 梟の顔をした魔人が私とギィに絡んできた。凍らしてやろうかしら?

 

「邪魔! ほら、あっち行きなさい」

 

 ギィが指を鳴らすと暗示にかかったのか、フラフラと歩いて行く。

 

「うへへ、俺が可愛がってやるぜスズメちゃん」

 

 そう言って梟の魔人は、ガタイのよい見回りの鷹の魔人に絡んでいる。

 

「おい! やめろ馬鹿! 俺にそっちの趣味はねーよ! 助けて衛兵さん!」

 

「落ち着け! 俺達が衛兵だ! 馬鹿者」

 

 梟の魔人は取り押さえに来た、衛兵達の尻をまさぐって悲鳴を上げさせていた。

 

「えげつないことするわね‥‥」

 

「ふふ、忘れたの? 私は悪魔よ?」

 

 そういって人差し指を唇に当てながら可愛くウインクをするギィは、悪魔というよりサキュバスだった。

 

「それで、これからどうするか決めたの?」

 

「仕方ないわね‥‥疲れるからやりたくないけど女型だし丁度良いわね」

 

 ギィはジュラの森上空に自分を抱えたまま飛んで欲しいと言ってきた。

 

 魔法の繊細なコントロールが必要みたいで、自分で飛びながら使用するのは難しいようね。

 

 私は仕方なく、本当に仕方なく! ニコニコと笑顔で大人に変身し、ギィを後ろから抱きしめて飛ぶ。

 

「あっこら! 胸を揉むんじゃないわよ! ヴェルザードのエッチ!」

 

「ちちち、違うわよ!? エッチじゃないもん! これは‥‥そう、アレよ! ムラムラしただけじゃない!」

 

 ギィに睨まれて、少しだけ反省した私はジュラの上空に辿り着く。

 

「使用した魂も含めて利子を付けて返して貰うわよ! スライムさん!!」

 

「凄い‥‥女性だとこんなことも出来るのね、ギィ」

 

 魔法陣が世界全域に広がり、やがて縮小していくと直径50cmの球体に変化した。

 

 ギィはいつの間にか入手していたスライムの細胞を、その球体の中へと沈めていく。

 

 この世界を模したであろう立体地図に、やがて青い点滅が映る。

 

「あれ? この場所って‥‥白氷宮?」

 

「ヴェルザード! 飛んで!」

 

 興味が湧いた私も楽しくなって、全力で高速飛行する。

 

 あっという間に宮殿の庭へ下り立つと、表示された地点まで足を運んだ。

 

 魔法の維持で両手が塞がっているギィが、私に向かって小さく頷く。

 

 その合図を受け取り、私は石の裏へと回り込んだ……。

 

「あっ! いた! あなたスライムの癖にこんな極寒の地によく平気でいるわね」

 

 私はスライムをギィの前まで持っていく。

 

「ゴル、ゴル、ゴルゴ」

 

「ハズレね‥‥ただのスライムみたい。分裂するスライムじゃ厳しかった? 核を少し削ればよかったのかしら?」

 

「そんなことをしたらスライムさんは死んじゃうわよ! ってそうじゃない! ギィこれ見て!」

 

 私はギィがまだ両手に抱えた球体の画面を見て叫ぶ。

 

「やってくれるじゃない! あのスライムーーーーーーーーー!!」

 

 画面には世界中に青い点が、異常な速度で表示されていく。

 

 その総数は数万を優に超えていた。

 

「これ分裂? だとしたらかなりの力の持ち主じゃない! それに、このいかつい顔のスライム‥‥私が見た事がない耐性スキルの持ち主よギィ?」

 

「なるほどね‥‥」

 

「ひえぇ!?」

 

 恐ろしい声色でギィが呟いた‥‥。

 

 眼から光が失われたギィが、壊れたように「なるほどね‥‥」と呟くたびに私は恐ろしくて悲鳴をあげた。

 

 手から落としたスライムは背後を見せず、俺の背後に立つんじゃねーと言わんばかりに正面を向いて逃げて行く。

 

 私は雪の上に尻もちをついてしまったせいで服が汚れてしまった。

 

 白氷宮に戻って着替えるために、私も協力してあげるからと頑張ってギィを宥めて帰る。

 

 子供の姿に戻り、服を洗濯カゴに入れるとミザリーが首を傾げる。

 

「漏らしたのですか? ヴェルザード様?」

 

「怒るわよミザリー! 竜種が排泄なんてするわけないでしょ! じ、事故なのよ!」

 

 フフッと笑うミザリーの頭をポカポカと叩きながら、購入してきたタルトをお茶請けに二人で紅茶を楽しんだ。

 

「ギィに執着されて嫉妬すると思ったけど‥‥何故か楽しいという感情が先にくるのよね? まあ、いい暇つぶしになりそうだし問題無いわね」

 

「何がですか?」

 

「ふふ、少し面白いスライムを見つけただけよ」

 

 

 

*リヴェル・side

 

「貴様見ているな?」

 

「はいはい、見てるよ〜だからサボらずにやるぞーリヴェル」

 

 俺は誰かに見られる感覚に悪寒を感じたが、リムルにさらっと流される。

 

「紙の需要がこんなにも高いとは思わなかったよ! ちくしょう。なあリムル~もういいだろ? テンペストの特産は紙じゃねーんだぞ!」

 

「うちも木の板で書いてたし、この機会に全て紙に置き換えるぞ? リグルドやリリナにも喜ばれてんだからつべこべ言わずにやれ」

 

 ドワルゴンも紙不足で良質なうちの紙に目を付けられてしまった。

 

 もちろんイリーナ達、サリオンにもだ。

 

 俺が大きな正方形の紙を作り、リムルが取り込んでサイズをカットしていく。

 

 そんな単純作業が何時間も続けば、さすがに飽きる。

 

「こんなのブラック企業じゃないか! うちはホワイトだぞ! 労働基準法を守れ!」

 

「俺は睡眠も必要ないうえに疲れもしないのに、お前はスライムの癖に貧弱! 貧弱ゥ!」

 

「社畜に疲れない体を与えたら駄目な見本じゃねーか! 巻き込まれる身にもなりやがれ!

 

 こいつ国王になって責任を得た瞬間に、ワーカーホリックになりやがって‥‥。 

 

 言い争う途中でドアがノックされる。

 

「リムル様~、リヴェル様~、お茶が入りましたよ〜!」

 

「悪いなシュナ。おっ! どら焼きじゃん」

 

「さんきゅーシュナ。旨そうだな」

 

「それではこの紙貰っていきますね? 皆からもデザインが書きやすいと好評ですよ! ふふ」

 

 作れば持ってかれ、作れば持ってかれ、賽の河原かな?

 

「美味い、こしあんじゃん! それにしてもイリーナがアリーナ姫だったとはな‥‥。ほんの少し前なら冗談かと笑えたが、ドラクエの魔物がドワルゴンで出現してるもんな‥‥」

 

「ちなみにトルネコもいるぞ? 気になるのは予言のエスタークだよな? どう思う?」

 

 宿泊最後の宴にイリーナが酒を飲みながら話してくれたんだ。

 

 自分のこと、父親の予言のこと、それを調査しに来た経緯を。

 

 サントハイム、おてんば姫、闇の帝王、それでイリーナの名前でアレ? ってなった。

 

 クリパトもクリフトだし、ブティさんはどうみてもブライじゃないとおもうんだが‥‥。

 

「ああ~トルネゴってそういうことか‥‥。魔王とヴェルドラに蒼の父だっけ? 俺達水色だし気にしなくてもよくないか?」

 

「水色は蒼も含まれるからな? だが、解決策は簡単だ! 早い話が俺達が強くなって死ななきゃ良いだけだし、未来なんて行動次第で簡単に変えられる」

 

「予言も含めて数ある可能性の分岐の一つに過ぎないって奴だな。俺が魔王じゃなく勇者になるとか‥‥か?」

 

「それも一つの答えだが、人類を救済し続けたレオンですら魔王になったんだ。勇者で居続ける条件はなんだと思うリムル?」

 

 グランベルは妻を殺されても人類を見捨てなかった‥‥つまりレオンは人類を憎んでしまったせいで魔王になったということなのか?

 

「正しい行いをして人類を救済し、正義を貫く? でも正義なんてあやふやなものを勇者の条件にするか? 折れない心? 信念か?」

 

 なるほど‥‥闇落ちは心が折れたのか。

 

「でも両方になったら面白いと思わんかね? まおゆうとか」

 

「バ~カ‥‥俺の好きな作品を汚すんじゃねーよ。でも、名前はともかくまおゆうって人間と魔物両方にアピールできるんだよな〜」

 

「魔勇者リムルになるっきゃないね!」

 

 俺はリムルにスパーン! とハリセンで叩かれる。

 

《告。魔勇者になる条件をクリアするには、魔王ミリムとの死闘にて勇者に覚醒する必要があると思われます。そして魔王ですが、これはリヴェルに魂を集めさせているので魂が揃い次第可能です。唖》

 

 俺は一目散に逃げだそうとしたが、粘糸がスライムボディーをグルグル巻きにする。

 

「おい! 星! お前人間嫌いって言ってたが殺人までしていたのか! さすがに許さんぞ!」

 

 シエルさんがアッって言った!? もう! 何やってんのよ!

 

《否定。マスターが集めようとしたのではなく、姉さんが集めさせているの間違いです。リムル》

 

 リムルがシエルさんと喧嘩を始めちゃった‥‥。

 

 シエルさんも実験好きだからな〜冥ちゃんから魂の情報を貰って、魔王に進化する方法を知っちゃったんだよね。

 

「そもそもお前が大賢者の脅しにくっして、いいなりになるのが悪い! 大賢者! 脅迫や脅しを身内にするのはやめろ! 絶対駄目だぞ? ほんとに星は、スケベで変態紳士だな」

 

 俺がオベーラとミラノのブラを被って遊んでいた映像で、シエルさんに脅迫されている事実を知ってしまったか‥‥消さなきゃ。

 

《疑問。リムルが最初にシオンとハルナのブラを被っていたことが疑問だった姉さんに、マスターも同じことをしていると報告しただけで脅迫の意図はありません」

 

「悟のせいじゃねーか!!」

 

「違う! ホックが壊れたから修理を頼まれただけだ! 安全確認なんだ!」

 

 まったく‥‥リムルは、とんだ変態紳士だぜ。

 

「俺を魔王に進化させたかったらしい、すまんリヴェル。魂は結構集めたよな? お前に人殺しをさせてしまったのか? 精神に異常は? 安心しろ軽蔑したりしねーよ」

 

「あ〜大丈夫だよリムル。俺って甘ちゃんのマンモーニだったわ‥‥街道にいた盗賊も、泣いて命乞いしたら殺せなかったよ。精神耐性って殺したあとに作用するんだろうな」

 

 そりゃ俺みたいなヘタレが、ペッシみたいに急に覚醒して殺せるわけないよな。

 

 ファルムス方面の森をでた街道で盗賊をしていた奴らだ。

 

 食うに困って盗賊になり、殺害したのも悪徳領主の兵だけと言っていたから信じることにした。

 

 別に森に悪さしてる奴らじゃないし、俺から襲い掛かったわけだしな。

 

 取り合えず悪い噂が流れないように、食料だけ分けてやった。

 

「それじゃーどうやって魂をこんなに集めたんだ? スキル通信で5000は入ってるぞ?」

 

「世界中に俺の分裂がいて、そいつらに集めさせているんだよ。劣化分裂に魔素を与えるとスライムが生れるんだ。そいつに戦争、病死、飢餓など死ぬ間際の人の近くにいることで魂を確保してた」

 

 ベルに頼んで命を与えたスライム達を世界中にバラまいて、魂を集めさせる作戦だ。

 

「はあああぁ‥‥良かった~。まー人道的には助けろよって言いたいが、その方法なら俺も文句は無いよ」

 

 安堵したのかリムルはお茶を啜り、最後のどら焼きを手にする。

 

「ふっふっふ、あんたの魂いただくよ作戦だ! たまにレッサーデーモンが邪魔しに来るからウザイんだよな〜俺の分裂スライムって戦闘能力が皆無だからさ」

 

 集めるにも倒されまくって効率が悪いんだよな‥‥。

 

 バーーーーーン!!

 

 突然大きな音がして、執務室のドアが吹き飛んだ。

 

「わははは! ワタシが遊びに来てやったのだ! ふむ、リムルの姿が見当たらんぞ?」

 

「父上! 遊びに行こうよ! 足がいっぱいついてる虫さんみつけたの」

 

「うわ‥‥リムルが人型だったらどうするんだよ! ミリム、ドア! リムルはドアに潰されてる」

 

 吹き飛んだドアに巻き込まれてリムルはグチャグチャになった。

 

 ミリムとベルが俺が作った虫あみとカゴを持って部屋に入ってきた。

 

「今忙しいから、スラぼう頼む」

 

「よっこらしょ。ちゃんとそのカゴに入るサイズのやつだけだぞベル?」

 

「えー入らないよ。うちの家ぐらい大きいもん」

 

 ベルはスラぼうを頭に乗せ、ミリムは再生中のリムルを大きなカゴに詰め込んで持って行った。

 

 ゼギオンやアピトが気分を害するから止めなさいと言ったんだが、蟲魔族は魔物の虫や昆虫を捕まえても同族とは思わないので問題ないらしい。

 

「よっしゃ! 仕事が急になくなったぞ!」

 

『さぼるなよ、リヴェル? 俺は闇分身ですぐに戻るからな』

 

「よっしゃ! 仕事再開だ! ちくしょう!」 

 

 俺が紙を精製していると、リムルが俺の影から人型で飛び出してきた。

 

 壊れた扉や散らばった家具を、ため息まじりに修理していくリムル。

 

「また、リグルドに怒られる。シオンがドアを壊す回数が減ったと思ったらこれだ‥‥」

 

「シオンは自称リムルを困らせちゃう系女子だからな」

 

「なんだそれ? すっごい迷惑なんだが‥‥。守護結界を簡単に壊すなよな〜ミリムの奴」

 

 むしろ結界のせいでお前が強化ドアに押しつぶされたんだが‥‥。

 

 リムルは紙を全てカットし終えると言った。

 

「よし、ここまでにしようか。お疲れさん」

 

「おわっだあああああ~〜!」

 

「リヴェル少し真面目な話なんだがいいか? 二人きりで話したい」

 

「あいよ、じゃー風音とランガ、ソウエイも出てこい」

 

 風音は飛び出してこくりと頷きランガを引きずっていく。ランガはなんで気絶してるんだ?

 

「しかし、リムル様、リヴェル様。私は護衛を‥‥むむむむ」

 

 おれはソウエイにモシャスしてドアの外まで押していく。

 

「面白いな‥‥ソウエイのそんな顔初めて見たぞ」

 

「そうか? 砂糖醤油で作った煎餅の場合は、美味いが納得いかない時にこの顔をよくするぞ?」

 

 消音の魔道具を使い、二人きりになったのでリムルが話し始めた。

 

「真面目な話、お前は人間が嫌いになったのか?」

 

「うんにゃ? この世界の貴族は死ぬほど嫌いだが、人間は別に好きでも嫌いでもないかな」

 

「そこまで酷いのか‥‥貴族」

 

「俺が西側をさらっと調べただけで略奪、奴隷、薬物、誘拐とやりたい放題だ。良い貴族は一杯いるだろうけどな。うえが腐ってるから小領貴族達ではどうにもならん。ほれ見てみろ」

 

 国と教会から二重で税を吸い上げられ、魔物の被害で農地は荒れ果て食料不足。

 

 犯罪にでも手を染めなければやっていけないのが小国の惨状だ。

 

 人間達の現状と魔物の関係にうんざりするリムルは、少し考えてから話し出す。

 

「人間は別にどうでもいい‥‥その真意は無関心ってことでいいのか? 生殺与奪には興味が無い‥‥と」

 

「まてまて、俺はそこまで鬼畜じゃない。現に盗賊を生かして食料を分け与えているぞ! まあ、無理して仲良くしたいとは思わんな」

 

「本音は?」

 

「異世界に来てまで人間とイチャコラするより、ケモミミ、エルフ、サキュバスなんかとキャッキャうふふしたいです!」

 

 リムルは机に突っ伏して叫ぶ。

 

「くだらねー! 心配して損した‥‥でも心理だよなそれ。異世界にきて異種族と交流しない方がアホだわ」

 

 はい、解散! と叫ぶとリムルはドアを開けて風音、怒るランガ、ソウエイを中に入れる。

 

「聞いてください主! 我はあやまったのに妹の奴が怒りをおさめないのです!」

 

「修行だか何だか知らないけど! 兄さんが資材置き場を吹き飛ばしたせいで、私が皆に謝りに行く羽目になったんでしょう! 馬鹿!」

 

「ランガは影の中で修行するの禁止な‥‥」

 

「主------!!」

 

 修理したドアを壊しながらシオンが部屋に入って来た。

 

「あれ? なんか脆いですね、このドア。リヴェル、スライム伝達がきてます。エルという方とアンリさんからです~〜ってリムル様! 何か怒ってらっしゃいませんか!?」

 

 シオンはリムルに縛り上げられて宙に吊るされた。

 

「シオンは俺を困らせちゃう系女子じゃないよね?」

 

「何をおっしゃっているのですか! 私こそがリムル様を困らせちゃう系女子ナンバー1です!」

 

 笑顔のまま頬を引くつかせたリムルとシオンを置いて部屋から出た。

 

「天ぷらの次は寿司? 本当に海鮮が好きなんだなエルさん。アンリさんからは‥‥水洗トイレの設置依頼? やっぱり滞在中に気に入ってたのか。色々好条件が書いてあるけど‥‥おっ! これは助かる」

 

 リリナとミラノは連れて行くとして‥‥あとは誰が必要だ?

 

『リムル、アンリさんが水洗トイレの設置依頼引き受けたら貨幣くれるって』

 

『依頼なんだから当たり前だろ?』

 

『うちで目下問題になってる銀貨と銅貨の貨幣不足を解決できるぞ! 三種の貨幣でバランスよく支払ってくれるってさ。依頼を受けて良いよな?』

 

『おお、やったな! ぜひ頼む! どうしよう、リヴェル。シオンの奴‥‥反省どころか喜んでるんだ‥‥』

 

 俺はシオンの件はスルーして思念伝達を仲間に使う。

 

 呼び寄せたリリナ、ミラノ、シュナ、何故かついて来た茜の四人で、ドワルゴンの暗部である情報ギルドに次元門で移動してきた。

 

「アンリさんはいますか?」

 

「!? お、お待ちください! 今、呼んでまいりますので」

 

 スライム通信が置いてある場所が、アクセスポイントだと教えてはいたけど‥‥。

 

 アンリさんの仕事部屋に突然門が開いて、ぞろぞろ出てきたらそりゃ驚くか。

 

「じゃーミラノは越後屋に紙の納入と樽の商談をお願い、リリナとシュナは監視と護衛が付くけど自由に買いもの出来ると思うよ? 茜はなんでついて来たの?」

 

「お任せください、師匠! なるべくいい条件で終わらせてみせます。フフ、エチゴーヤですよ」

 

「リヴェル様、種子と肥料ですが好きに購入して良いんですか?」

 

「はい、ありがとうございます! なるべく新鮮で美味しい魚がないか見て回ってきますね」

 

「酷いですわ! リヴェル様が悪い女に騙されないか、心配でついて来たのに!」

 

 ミラノには損しなきゃいいよと告げ、みんなには仕事の合間に好きに食べ歩きをしてくるよう伝えた。

 

 リリナとシュナには金貨を10枚ずつ、茜とミラノには1枚ずつ手渡す。

 

「貝殻を焼いて砕いたり、魚の捨てちゃう部分を乾燥させて砕いたりすると、いい肥料になるんだ。もしドワルゴンで誰も肥料にしていないなら『ゴミを買い取ります』って名目で、リリナ。内緒で回収しておいてくれないか?」

 

 リリナは良い笑顔で、はいと返事を返す。

 

「シュナ、大きい魔魚しかなかったら連絡くれたら回収するよ」

 

 シュナはお願いしますね、リヴェル様と言う。

 

「全員が仕事できてるのに‥‥この娘は本当に‥‥ハァ」

 

 今回は俺の影にランガも風音もいるから護衛もいらんのだよ。

 

「最近扱いが雑ですわ! リヴェル様に愛されちゃう系女子なのに!」

 

 ドアが開いてアンリさんと部下が入って来る。

 

「早すぎです! 送った瞬間に来ないでください!」

 

「いや〜こちらも貨幣に悩まされていまして‥‥申し訳ない」

 

 アンリさんに皆の事を離すと部下を付けて貰える事になった。

 

 皆はアンリさんの部下と共に退出していく。

 

「下水と繋ぐところはそっちでやってもらえるんですよね?」

 

「撤去も手配もまだです‥‥今手に空いてる職人をかきあつめています! もう!」

 

「じゃー撤去は俺がやりますよ。場所はここのトイレだけでいいですか?」

 

「撤去もできるのですか? ここと王城、近衛騎士の兵舎もお願いできますか?」

 

 俺は頷くとここのトイレを全部回収していく。

 

 海水を使うと金属は腐食しちゃうもんな‥‥タンクと水の魔道具を設置してっと。

 

「魔石は交換しなきゃ駄目だけど、少ない魔力で水は補給されるよ。次に行こうか」

 

「もう終わったのですかリヴェル様!? なんてデタラメな‥‥ハァ。次はこっちです。付いて来てください」

 

 確認を終えたアンリさんが頭を押さえてため息を付く。

 

「はーい。茜? 別に俺に遠慮しないでリリナやシュナと食べ歩きしてくれば良いじゃん?」

 

「むーー! お邪魔ですか!」

 

「別に邪魔じゃないけどつまらんぞ? ドキ! 男だらけの近衛兵ふんどし祭り! に若い茜を向かわすのも忍びないと思っただけだ」

 

「いえ、設置する近衛兵舎は女性隊員のトイレだけです」

 

 予算に限りがありますので‥‥なにか? とアンリさんはしれっと答える。

 

「あっ! じゃー私も一緒について行きますね」

 

 俺は男の隊員の扱いに涙しながら、水洗トイレの設置を全て終える。

 

「ご苦労様でした。これが支払いの貨幣が入った袋です。袋に小分けして入れておりますのでご確認ください」

 

「ありがとうございました。それでは失礼します」

 

 アンリさんに報酬を貰って、みんなと買い食いしてから一緒にテンペストに帰った。

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