「何で自分のスキルに翻弄されなきゃいけないんだ‥‥ちくしょう」
「父上ー! あはは、なめまわし~」
俺はベルに頬をペロッと舐められただけで、すくみあがって動けない。
「やめてくれベル。俺は嘘をついていないんだから‥‥ゾワゾワする」
職業がごちゃまぜすぎる。
全員ドラクエ3の職業だと思ってたのに、ハヤテの踊り子を見逃していた。
「そもそも、見習いにレベルがあるっておかしいだろ!」
転職したときに称号覧は確認していたのに‥‥なんで違和感に気づけなかったんだ俺!
戦闘回数じゃなく、レベルってことは大魔道士まで40なのか? 99じゃないよな?
クソッ! 最初の称号で騙された! 魔法好きじゃなかったから6だとか、単純に考えたら駄目なやつだ‥‥。
全てのシリーズごちゃまぜって自分でリムルに言ってたじゃん‥‥決めつけてたら頭がおかしくなる。
昔に遊んだゲームのシリーズがバグだらけとかデバッグ仕事しろ!
軽い気持ちでレベル上げに来たのに、パルなんとかさんゲットして帰ったらリムルに怒られるぞ‥‥。
「旦那様、戦闘中に考え込むのは危険ですよ?」
「あー悪い。究極スキルからユニークに戻った影響で壊れてしまったのかと思ってな‥‥」
茜は心配そうに俺の顔を覗き込んでいたが、ハッとしたように顔をあげると葵に指をさして文句を言いだした。
「葵だけドラクエ魔法が使えるのはずるいです! 私は気合いためもできませんのに」
「たぶん葵は俺の劣化分裂を食べてる影響でMPがあるからだろ。でも、葵はユニークスキルの件があるから魔法を使うのは禁止な? なんのために食べてるかわからんだろ」
「えーー! 魔法のせいすい飲むからいいでしょリヴェル様?」
これも問題だよな? 消費MPがあるせいで、覚えても使えないってのは‥‥。
ハヤテ達にもせっかく覚えたのに使えない! と絶対文句を言われるぞ。
ベルはMPを俺以上に持ってるから、問題なく使えているんだよね。
顔を向けると倒木のうえに腰掛けて、足をぶらぶらさせていた。
鼻歌でやすらぎの歌? を使って楽しそうだ。
「うっ‥‥旦那様を食べるのはいやですわ」
茜は口を押えて気持ち悪そうにする。
「失礼だよ、お姉ちゃん。ゲテモノみたいに言わないで! 最近は味が色々増えてるし、見た目も良くなってるんだからね」
「そうだぞ、茜。失礼な! 目とか口も消してるからスライムゼリーとかわらないもんね」
俺がイチゴ味の赤いスライムゼリーをだすと、恐る恐るかぶりつく茜。
「食べた瞬間果汁が!? なにこれ! 葵だけずるい! こんなのデザートじゃない!」
「私はいいの! 味のない頃から食べてたんだからご褒美だもんね〜」
葵は味のバリエーションの豊富さを語って、茜が悔しがる。
「すぐにMPになるわけじゃないし、葵だって何日も食べ続けてやっとMP9だもんな。葵のユニークスキルの影響でMPが付いたかもしれないし、不思議な木の実を手に入れる方法がないものか‥‥」
「父上! 近くでムカデさんが仲間になりたそうだよ!」
「やめなさい! 倒さなくても仲間にできるとか反則だろ‥‥倒して起き上がったら、それはゾンビだけどもさ」
むーとベルは頬を膨らますが、アピトやゼギオンがいるから配下は十分でしょ。
スラぼうのところも上手くやってるみたいで、ピリノとハヤテが大活躍だ。
ハンゾウ‥‥魔法を手に入れたから安心しろ! 兄の威厳は俺が守ってやるからな。
イオをクナイに魔術刻印して、爆破クナイを作ってやるぞ。
「大きなムカデがゾロゾロきましたよ! 旦那様ルカナンをお願いします」
ムカデ達は巨木の幹に長大な身体を螺旋状に這わせながら、滑り降りてくる。
「あいよ! ルカナン、スカラ!」
ボミオスやリレミトには養分になって貰い、ルカニをルカナンに強化した。
ドラクエでは使い道が少ないルカナンも数十体でも効果が効くし、は甲殻を持つ魔物には効果抜群だ。
ルカナンで相手の守備力を下げれば茜は鋼の槍で、葵は薙刀で甲殻を貫いてサクサク倒せる。
「よっこらーせい!」
ベルは命中率が恐ろしく低い、巨大ブーメランを楽しそうに投げている。
誰かに当たりそうになると次元の穴に仕舞い込んで、失敗をごまかしていた。
ベルが投げると戻ってこない‥‥地面に深く突き刺さるか獲物に当たって砕け散るかだ。
「ひぃ~!? べ、ベルちゃんは歌と応援でいいからね? うぅ‥‥ベルちゃんがこんなに強かったなんて」
「いつもニコニコと楽しそうに遊んでいたから忘れてた‥‥そういや、元はあの大っきな竜だったよベルちゃん‥‥」
すぐ近くにある木とムカデが、まとめて薙ぎ倒されていく様子に涙目の茜。
スカラがあるとはいえ、味方にあたると怖いので刃のブーメランはベルに使わせていない。
「おまえ達も十分強くなってるから安心しろ。ちなみに茜は今のステータスならハクロウと並んでるぞ?」
「本当ですか!? でもハク爺に勝てるイメージが湧きませんわ‥‥」
「あはは、だよね~」
覚えた特技や魔法が使えなくてもステータスだけで十分なんだけどな。
「それにしても、この辺りの気候は蒸し暑くて困ります。喉が渇きますわ」
「ムシムシするよね。リヴェル様、何か飲み物下さい」
「父上、私も冷たいもの飲みたい~」
「アマゾンって感じの密林だからな‥‥ほい、ヒャド。やかんに氷入れた麦茶置いとくから好きに飲め」
俺は耐性お化けだけど、ベルは竜種なのに熱がったり、寒がったりするよな?
《肯定。敏感期において、子供の感受性が高い時期に様々な経験を得ることで感情、五感、能力を向上させることができ‥‥》
あーはいはい! わかったよ、冥ちゃん! 俺の酒みたいに耐性をわざと切ってるんだね。
まだ喋り足りないのか説明してくるが、さすが冥ちゃんだと褒めると静かになった。
岩に座りながら姉妹とベルは美味しそうに、冷たい麦茶をごきゅごきゅ飲んでいる。
「ハクロウに鍛えて貰っても侍か武士の技術だけだよな‥‥なにか戦士の訓練がいるのか?」
「戦士なんて広くは戦えるものという意味ですから、魔法使いも戦士と言えますよね? 旦那様が覚えてないのは変ですよ」
「父上は魔法ばっかり使ってるからなのかも?」
「リヴェル様も前線でベルちゃんのブーメランを味わうと良いよ!!」
確かに魔法しか使ってないな‥‥訓練だけで剣を振るっても戦にはでていない。
なら俺も前線で剣を振って、いっぱしの戦士になるか。
「モシャス! よし、これで効果時間を延長したし、剣を使うぞ」
俺は身内判定になるまえに、レインから巻き上げた金で入手した
「あーもう! 旦那様がリヴェル様に‥‥ハンゾウはなんでいないのですか!」
「確かに‥‥恰好いいリヴェル様が見られないのは、ちょっと残念かも」
「魔法使いの格好に剣を持ってるとダクソしてる気分になるな‥‥べたつくなにかが欲しくなる」
三人がべたつくなにか? と左側に首をかしげているので、ケフィアのことだと言うと今度は右に首をかしげた。
「戦いたいが周辺の魔物がいなくなってしまったな‥‥岩の目印が見える場所から離れられんし、どうしたものか」
《肯定。私に魔物を呼び寄せることが可能ですので、ピオリムを実行します》
俺の身体を冥ちゃんが使い、くちぶえを吹いた。
「おい、そこの遊び人ーーーー!! 自分もスキルが使いたかっただけだろ! 俺の許可をちゃんと取れ!」
いやな地響きが鳴り響き、怒涛の如く魔物が押し寄せて来た。
「なに!? なんなんですの!?」
「母上、めっ! だよ」
「結構な数が集まってきちゃってるよ〜リヴェル様!」
《否定。マスターの要望に応えただけです。現在くちぶえによる効果で辺り一帯の魔物が誘因されています。想定を上回る脅威と判断いたしましたので、呪文ルーラによる戦域からの即時離脱を推奨します》
「ポンコツ賢者! 誰の所為だよ! だれの!! おまえ達飛ぶぞ! ルーラ!」
「何やってるのよリヴェル! 危ないことしちゃ駄目でしょ」
「ご主人様、岩の上で戦うにしても、すぐに崩されちゃいますよ?」
「撤退しますか? 魔物次第ですが‥‥閃光玉もありますよリヴェル様」
スラぼうに伝わっているのですぐに皆と合流できた。
俺が原因じゃないことを知ってるスラぼうは、ハヤテに膝カックンをして懲らしめた。
ハヤテが前のめりに倒れて、顔を真っ赤にしてポカポカと叩いて怒っている。
「なんでも俺が悪いと決めつける癖を治しなさいよ」
「シズは悪くないもん! ご主人様の日頃の行いが悪いの!」
栗みたいな口で反論しやがって、アホ毛狐め。
「緊急脱出のために次元門は開けておくから、危なくなったら皆は直ぐに逃げろよ? ベル、魔法が暴発して危なくなったら瞬時に俺を街に連れて帰れる?」
「できるよ〜暴発って合体魔法? 危ないことしちゃだめだよ、もう!」
じゃーギリギリまで粘るか‥‥念のためにイオをイオラにしたいからギラ、メラミさん‥‥すまない。
「ぶっつけ本番で悪いがスラぼう‥‥合体魔法を使うぞ!」
「ついにアレをやるんですね! 俺達なら合成は楽にできそうですからね。葵、全面の岩に結界を頼む」
「はーい!」
茜、ハンゾウ、ハヤテ、ピリノは離脱するために待機している。
ベルは俺とスラぼうの服を両手で左右に掴んだ。
「初手に合体魔法を唱える! 生き残った魔物にイオラを唱えるが、爆風が凄いから視界は悪くなる。魔物の数を地図で確認して退避を判断してくれ!」
岩場の荒野周辺に森から出て来た魔物が見えた。
虫型、爬虫類、植物系に竜までいる‥‥。
「センスのねえ奴には一生できねぇ! メラ」
「すべての物質を消滅させる究極魔法! ヒャド」
「極大消滅呪文! メドローア!!」
「痛い、痛い! 俺自身が消滅しちゃってるぅ〜!」
「弓の形にならないんですけどぉ!?」
メラとヒャドの合成は冥ちゃんもいるから簡単だが、暴れまくる対消滅エネルギーを弓に変えるとか不可能に近い。
「「助けてベルエモン!!」」
「もう! 本当にパパはしかたがないの!」
魔物の中心に一つの小さな太陽が落ちた。
一瞬、目の前の視界が真っ白に染まり、次の瞬間に轟音が鳴り響くと同時に衝撃波が辺りに駆け巡った。
「‥‥やったか?」
「おい、馬鹿やめろ」
俺はスラぼうの頭を叩きながら、綺麗さっぱり地面ごと掻き消えたクレータを見る。
こいつの言う通りに合体魔法はすんなりと成功した。
合成、制御、形成も並列存在ならシンクロ率100%でロスもなく実行できるからだ。
でも形成が上手くいかなかった‥‥二人で弓と矢に分担したせいか?
二人でやるなら連携技みたいにぶっ放した方が良いな。
これを一人でやっちゃうんだから、ポップ師匠はすげーよ。
「なにやりきった顔してるの! 魔法に失敗してベルちゃんに向こうへ捨てて貰っただけだよ馬鹿!」
「す‥‥すごいよリヴェル様」
「地形が変わっちゃいましたね‥‥」
地図には魔物表示が消えて全滅していた。
ハヤテはプンプンと危ないことばっかりしてと俺達の尻を叩いて怒り。
葵とハンゾウが呆れ顔で呟く。
「私は心配してませんでしたけどね〜旦那様」
「もう、お仕置き中だよ! 離れなさい茜ちゃん」
「そうですよご主人様を放して下さい!」
茜はスラぼうを抱き上げて嬉しそうに頬ずりしている。
「ハンゾウ、あれよりは威力が落ちるがイオラを刻印したクナイはいるか? 当初はイオを残したかったんだが‥‥」
「えぇ‥‥そんな物騒なのいりませんよ」
「スラぼうの言葉は無視しろハンゾウ。ヒャドやメラでも十分だ、あとで属性クナイをやるよ」
「は、はい。本当に大丈夫なのかなぁ〜?」
俺は茜に抱きしめられているスラぼうを吸収するが、経験が入らなくて顔をしかめる。
魔法使いのレベルがあがってマホカンタを手に入れた。
イオラはすでにあるのでポイントに変換される。
称号は魔術師まで一気にあがっているので、細かいことは気にしないことにしよう。
だが基礎のキングスラリンの経験値は加算されるようでレベルが25になった。
覚えた魔法はトヘロス、ベホマラー、マホキテ、マホカトール‥‥ベルを助けるときにマホカトールみたいなことをした所為かな?
特技の方はアゲアゲダンス‥‥だ。 もう読めたぞ! 次はハッスルだろ!?
ザオリクとフバーハが欲しいから賢者にもなりたいな。
前は20で進化したけど次は30なのか?
「もう、リヴェル様! 早くハンゾウにモシャスしてください」
「リヴェル、踊り子の星が埋まっちゃったよ?」
「ご主人様、私も武闘家これ以上はあがらないみたいです」
俺とベルだけがカンストしていない‥‥。
皆はレベル20で星がカンストしたようだ。
茜を無視していたら旦那様成分が‥‥とわけのわからないことを言って苦しみだした。
「じゃーそろそろ帰るか! ほれこれで補充しとけ茜。スライムゼリーメロン味だ」
「うう意地悪です‥‥あむあむ」
二次職の魔法剣士になりたいが‥‥あるのか怪しいよな?
リヴェル家の転職状況は全員が多くて3個、ベルみたいに1個しかない子もいる。
普通ダーマの転職は全ての職業になれるはずだよな?
ルビスの加護があるのに転職できないってことは、マスタードラゴンの力がいるのか? あっ! ダーマの神像!!
帰ったらカジノの建築メニューにないか探さないとな‥‥交易で神像って売られてたかな?
「待て、お前達! ここをミリム様の領地と知っての狼藉か」
「あれ? ヘルメス君じゃん」
ミリムが探知に引っかからない場所とは言ってたけど、あれだけの爆発があったら竜眼で見なくてもわかるわな‥‥。
「‥‥俺を知ってるのか?」
「ミリム‥‥あ〜ミリム様がミッドレイさんが来るから帰らないって言ってましたから、本人が来るとばかり」
「ああ、ミッドレイ様は少し問題が起きて手が離せなくてな。それよりミリム様が御帰りにならない原因を知っているのか?」
ヘルメスさんの威圧が収まったので、俺はミリムに未開発地区の整備を頼まれたと嘘を付いて誤魔化した。
「ねーねをさまで呼ぶとか、へんな父上~あはは!」
「旦那様のそういうところ‥‥尊敬したらダメなのでしょうけど凄いですわよね」
「交渉術というより詐欺師だよね?」
「うるさいぞ葵‥‥ヘルメスさんこれも食べる? ハンバーガーっていうんだけど」
無言でうなずきフライドチキン、ハンバーガとコーラを凄い勢いで飲み食いする。
「はあ‥‥ウメェ~まじでこんなの食ってたらミリム様が帰るわけがねえっすよ」
「そういうわけでミリム様にはお帰り願いたいのだが‥‥なにかいい方法はないですか?」
「無茶言わないでくださいよ‥‥頑固なミッドレイ様が野菜を調理できるわけがないじゃないですか」
「帰ろうと思っていたけど、ついでです。ミッドレイさんが何か困ってるなら手伝いますよ?」
腕を組んで考えるヘルメスさんが、真剣な表情で問う。
「何を企んでいるんです?」
「いや、単純にミッドレイさんと仲良くなりたいのと、こっちに滞在して痺れを切らしたミリム様が帰らないかなーと」
テーブルに突っ伏して、ヘルメスは俺の考え過ぎかと‥‥「すみません、疑っちゃいました」と頭を下げて謝罪する。
今の見た目が鬼人の小さな男の子だからな‥‥自分で言うのもなんだが俺なら絶対警戒しないわ。
「悪意があるかないかなんて目を見たらわかるでしょ? ヘルメスさん」
「ご主人様は顔にですぎてますからね。うふふ」
ハヤテがリヴェルはすっごいお人好しなのよ! と言い、ピリノは悪いことを考えてるときの顔は酷いですからねといらんことを言う。
「ハァ‥‥悪かったっすよ。井戸の水が枯渇していて民が困っているんです。運の悪いことに山崩れもあって‥‥人手が全く足りてないんですよ」
「水なら道具袋からすぐに取り出せる‥‥けど井戸が枯れた原因の方が先だな」
「恐らく地中の魔物の仕業です。
「じゃーミッドレイさんはモグラ退治ですか?」
「あの人なら退治できそうだけど、倒したところで水脈は戻らないですからね。新しい水脈を探して井戸を掘っているところっす」
モグラは攻撃的な魔物ではなく、畑の土を耕したり、水脈を繋いでくれたりと悪い面ばかりではないそうだ。
未開発地域の密林に水源は豊富そうだよな‥‥あそこから引っ張ってこれたら良いんだが。
さすがに他国のインフラ整備に介入する訳にはいかんしな。
「うちでも使ってる鉄のタンク‥‥水をためるものがあるので水に困ってる町や集落に配置しますよ」
「助かります。事情はミッドレイさんに伝えました「客人に失礼のないように、丁重にもてなせとのことです」山崩れの場所の付近が丁度水不足なのでそこへ向かいます。リヴェル殿達は飛べませんよね?」
俺はクモキチバスを出して皆で乗り込むと、案内お願いねヘルメスさんと笑いかける。
ヘルメスは顎が外れるほど驚いていたが、頭を振って「こっちです」と飛んでいく。
燃費は悪いが風魔法のブースターを吹かせて、ヘルメスさんを追い越すとさらに呆れられた。
「それだけ色々おかしかったらミリム様に気に入られるわけだよ‥‥リヴェル殿」
「気に入られてるのはベルの方なんだけどね?」
現場に辿り着くと、大きな岩が民家や道路を押しつぶしたり、農地や家畜にも被害が出ていた。
山崩れに巻き込まれて怪我人多数で使者0って竜人すげーな。
色々な種族と竜人が混ざってるのか? 魚人みたいな種族もいるようだ。
血は薄れているが過酷な環境でも、強靭な竜の血がのおかげで暮らしていけるんだな。
「ここに水を置いてくれ、リヴェル殿」
「ヘルメスさん怪我人を集めて貰える? 全員治療するから」
「そんなこともできるのか‥‥わかった!」
敬語は要らないからフランクに話してと、ヘルメスさんにお願いした。
俺は広場に集まった怪我人達にベホマラーを唱える。
「おお、ありがとな坊主」
「ほんに小さいのに凄いちからだや」
「瓦礫も回収するよ、集めたら何処に置いたらいいの?」
「ほんまけ? ほな、集めたらこっちにおいてけろ」
俺はテキパキと民家の瓦礫や岩を全て道具で回収した。
「リヴェルちゃんは精霊様だべか? 凄すぎて何がなんやらだべよ」
「復興作業が早くて助かるが‥‥俺達の仕事がなくなったぞ? リヴェル殿」
あっという間に瓦礫を撤去した俺を呆れた顔で見ていたが、民が喜ぶ姿を見てヘルメスさんは嬉しそうだ。
瓦礫は使える資材がまだあるので村の端へ運び、岩と石は道の舗装に使うので鍛冶屋に運ぶ。
「一家に一台リヴェルよね~」
「あはは、なにそれシズ」
鱗が少しだけ付いたおばちゃんが、お礼にご飯を御馳走してくれるので呼ばれることになった。
「野菜と岩猪の肉で煮込んだカリーとチャパティだよ! たんとお食べ」
「こ‥‥この匂いは!? か、か、か、カレーじゃねーか!!」
「‥‥」
「ちょっとシズ‥‥無言で泣きながら食べないで怖いから」
「少し辛いですけど‥‥美味しいですわね」
「か‥‥辛いよ。おねーちゃん」
「うぅ~口がピリピリするよ父上!」
葵は急いで飲み物をのみ、ベルは涙目でなんとかしてと抗議する。
俺はミルクの中にすりおろしたリンゴと蜂蜜を混ぜて少し煮る。
「ほら、ベル。これで甘くておいしいだろ?」
「うん! 甘くて美味しぃの!」
「私にもお願い、リヴェル様」
葵のカレーにも入れてやると、後ろに茜やピリノがニコニコしながら並んでいた。
ハヤテは辛口でもいけるのか、大人びた表情で俺に食レポをしてきて少しうざい。
「チャパティってナンだったのか、やわらかくてフワフワだな。うん、カレーによく合う」
「カレーじゃなくて、カリーだよリヴェルちゃん」
「おばちゃん香辛料売ってください。あと香辛料の植物の種も欲しいなぁ〜」
「別にかまわねえけども、育てるのは難しいぞ? 種はベルペの爺さんとこに行きな」
俺はお金を渡そうとしたが、使えないのでいらないと言われる。
この辺は物々交換が主流だったので、肉と魚を置いていくとおばちゃんに大変喜ばれた。
カリーが作れる色々な香辛料が入った瓶を手に入れたぞ!!
「しかし、こんな旨いモノが我が国にあったとは‥‥」
「ヘルメスさんも知らなかったの?」
「ヘルメス様、そりゃしかたねーべ。中央に行けば行くほど、血が濃いお方が住まれるからねえ。儂らみたいに血が薄まったモノは色々な文化があるけーの‥‥自然の恵みを外に行けば行くほど調理してしまうべよ」
ヘルメスは頑固なミッドレイを思い浮かべたのか項垂れていた。
「自然の恵みをそのままいただくってのは、なにも間違った教えじゃないからな‥‥難しいよな」
俺は種を貰いに爺さんのところへ向う。
ペルペの爺さんはワニ顔の獣人で声も若かった。
「おお! ワシらの救世主様じゃねーか。香辛料の種? 好きなだけ持っていけ、だが気候が逢わんと育たんぞ?」
物々交換として食料が足りないそうなので、米と麦を代わりに置いていくとこれまた喜ばれた。
店をでるとニコニコと笑顔のミッドレイさんが、俺達に丁寧にお辞儀をしてきたのだった。