二度転生したらスラりんだった件   作:Kut-Ku

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61話 なんで、ワタシより目立っているのだぁ!!

「リヴェル殿でしたな? お初にお目にかかる、私は神官長のミッドレイと申します。我が民を助けていただき感謝いたします」

 

「いえいえ、困ったときはお互い様ですよ。助けたお礼に珍しい香辛料もいただきましたから」

 

 俺は自己紹介をしてから、皆を紹介する。

 

 こちらに来た経緯をミッドレイさんに軽く話した。

 

「それでリヴェル殿‥‥申し訳ないのですが我が国は報酬を支払うものが余りなくてですな」

 

 申し訳なさそうに片手で頭を押さえ、言いづらそうにするミッドレイさん。

 

「あっ、ミリム様から十分な報酬を支払っていただいておりますので大丈夫ですよ。我が国にミリム様が滞在してくださっていることで、強固な防衛になっておりますから」

 

 一瞬きょとんと硬直した後に、ミッドレイさんが大笑いしだした。

 

「ワッハハ!! そうでしたか! さすがはミリム様ですな」

 

 俺の肩に手を置き「そう言っていただけると助かります」と嬉しそうに自分の頭を撫でる。

 

 報酬も受け取らずに水不足と山崩れを解決したことで、ミッドレイさんからは深く感謝され、すっかり気に入られてしまった。

 

「さすがに感謝だけでは申し訳ない、せめて神殿で歓待を受けてくれませんかな」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 ミッドレイさんに神殿へ招待されることになったので、全員クモキチバスに乗り込み出発する。

 

「奇妙な傀儡ですな‥‥私も見た事がありません」

 

「どうぞ、ヘルメスさんも乗ってください」

 

「あっ、どうもっす」

 

 俺はバスの中で炭酸のレモンジュースとカステラをだすと、興味深そうに二人は食べていた。

 

「ですから、この国の特産をカレーにすればミリム様は喜ぶと思いますよ?」

 

「むむむ、しかしですな。自然の恵みを食べることで信仰を崇めてきた我々からすると‥‥」

 

「神に、ミリム様に喜んでいただくことこそが、信仰の証なのでは? なにも全てを調理しろとは言いませんよ」

 

 俺は壺に入ったマヨネーズを小皿に移し、ミッドレイさんに野菜と皿に入ったマヨネーズを渡した。

 

 野菜はカットもしていないキュウリとニンジンだ。

 

「なんですかなリヴェル殿? この液体は」

 

「マヨネーズです。生野菜につけて食べてみてください、これなら信仰的にも冒涜にはならんでしょ?」

 

「おおお、旨いですな! これは驚きましたぞ‥‥」

 

「お、俺もいいっすか? う、旨い! これならミリム様も喜んで食べますよ!」

 

 野菜に調味料を使うことで軽いジャブ。本命のカレーをこの国の特産に持ち込まないとな。

 

「自然の恵みを美味しく調理することも大切ですよ? 生では食べられない野菜なんて沢山あるんですから」

 

「な、な、な、なんですとーーーーーーー!! 本当なのですかリヴェル殿!?」

 

「はい、毒素を持つ野菜などは調理すると毒が消え去り、食べれるようになるものがあるんですよ。代表的なのがじゃがいもですね」

 

 ヘルメスさんが「それは芽の部分っすよね? 切り取れば」というが口を塞ぐ。

 

「良いんでしょうか? 神官長ともあろうお方が、耐性があるとはいえ毒の野菜をミリム様に生で提供するなんて‥‥」

 

「うぐぐぐ‥‥確かにある程度の調理は必要かもしれません。自然の恵みをそのままにいただくことこそが、ミリム様の感謝を捧げることだと思っておりましたが‥‥」

 

 しぶといなぁ‥‥このままじゃ蒸すか、湯がくだけで終わっちゃいそうだぞ。

 

 調理することで栄養価が高まり、吸収率も上がるためにビタミンを効率よく摂取‥‥いや理解できるのか?

 

「リ、リヴェル殿‥‥そのお姿はミリム様?」

 

「似ている‥‥雰囲気と髪の色は違いますけど‥‥」

 

「あっ‥‥しまったハンゾウのモシャスが切れちゃったか」

 

 まあいいや、この姿の方が説得しやすいだろ。

 

 俺はだいまどう帽子を外してミッドレイさんに言う。

 

「自然の恵みをそのままいただくことは、何も間違った考えではありません。ですが‥‥作った方の気持ちを忘れていますよミッドレイさん!」

 

「作った方ですか? いや、それよりそのお姿のことを聞きたいのですが‥‥」

 

「だまらっしゃい! 農家さんのことですよ! 死んだ魚のような目で食べられるミリム様も、農家も、野菜も、誰も幸せにはなりませんよ、ミッドレイさん! 皆に美味しいと、喜んで食べていただくことこそが大事なのです!」

 

「ぬうぅ‥‥」

 

 ぐうの音も出ないというように唸るミッドレイさん。

 

「教えは正しく導くことが大事です。凝り固まった考えでは駄目ですよ? 古い教えを守ることも大事ですが、新しい風を入れることも大切です。変化を嫌い、停滞するのは思考の放棄と変わりませんよ」

 

「長年そうしてきたのです! 神である竜は、自然の化身。その竜を崇める自然信仰こそが、我ら竜神教(ドラーム)の教えなのです!」

 

「本末転倒じゃないですか‥‥神であるミリム様が生野菜を嫌がっているのです! お優しいミリム様は竜の民の教義や信仰も理解してくださってることに、胡坐をかきすぎです! 神官達と話し合いましたか? あなた一人で考えてはいませんか? ミリム様も交えて一度皆で話し合ってください。ミリム様あっての竜の民でしょう?」

 

 俺は優しい声色で、ミッドレイさんの心に響くように訴えた。

 

 じっと俺を見つめたあとに俯いて沈黙するミッドレイさん。

 

 激しい葛藤の末、心が決まったのだろう。

 

 すべて吐き出すような、長いため息だった。

 

「ふぅーーーーーーーー‥‥私が間違っていたのかもしれませんな。自然の恵みを美味しく調理し、神に喜ばれてこそ野菜達もミリム様の糧になることを喜ぶでしょう」

 

「だから毎日生野菜とか駄目って言ったじゃないっすか」と勝ち誇った顔をするヘルメス君を軽く絞め落として、笑顔のミッドレイさんは俺に料理を教えて欲しいと頼んできた。

 

 ミッションコンプリート! 美味しいカレーの研究は竜の民にお願いしよう。

 

 

 

 神殿は古く、歴史を感じる建物だった。

 

 竜の彫像が所々にあるイメージだったのに‥‥ミリムの像すらないんだな? 

 

 俺はミッドレイさんの肩に乗せられたまま、神殿内を進んで行く。

 

 帽子を深くかぶっているので、周りには騒がれないだろう。

 

「ヘルメスさん、彫像とかはなにもないのですか? ミリム様の像があるものとばかり‥‥」

 

「あーーそれはっすね‥‥ミリム様の像が気に入らないと、ミリム様自身が壊してしまいまして」

 

「ワシの自信作だったのですがな‥‥ミリム様にも困ったものです」

 

 資材置き場に打ち捨てられている、ミッドレイ作の像を見せて貰うと下手糞すぎた。

 

 ミリムじゃなくてもこれはキレるな。

 

 俺は冥ちゃんを使って道具の中でミリムの画像を参考に、ブイサインをしているミリムの像と芋掘りのとったどぉー! の像を作る。

 

 神殿の入り口に空の台座が並んであったので、ミリムの像を道具からだして左右に置いた。

 

「おおお、ミリム様の像だ!」「素晴らしい! なんと神々しい!」「完成度たけーなオイ」

 

 あれ? 今、転移者まじってなかった?

 

「リヴェル殿! この像、凄く良いですよ!」

 

「む、むぅ‥‥ワシより少し上手いですな。で、ですがリヴェル殿。ミリム様に壊されてもお気を悪くしないで貰いたい」

 

 ヘルメス君がミッドレイさんの発言に耐え切れなくて盛大に噴き出すが、見えない速度の蹴りで壁に激突してしまう。

 

 俺が肩に乗っているはずなのに、僅かな振動すら感じなかった‥‥。

 

 一体、この人の体幹はどうなってるんだよ。

 

 さすがに可哀想になってベホマラーを唱えてあげる。

 

「痛っ‥‥痛くない? なんで蹴るんですか、ミッドレイ様! リヴェル殿ですよね? 回復ありがとうございました」

 

「すまんな、ヘルメス。つい足が滑ってしまったのだ」

 

 ヘルメス君は威圧を受けてしまい言葉に詰まる。

 

 ニコニコと「困った足ですね、ハハハ」と乾いた笑いを返すことしかできないでいた。

 

 ミッドレイさんがフンと鼻息荒く歩きだし、料理場へ向かう。

 

 後ろを振り返ると、中指を立てて口パクでハゲとブチ切れしていた。

 

『リヴェル! 我の像を目立つ場所に置くのだ! 竜の都のくせに我の像がないとはけしからん』

 

『えっ? あ〜俺の並列存在の視界を通してこっちを見てるのか。やめとけ、ミリムに壊されるのがオチだ』

 

 ヴェルドラが俺の地図機能を使い、辺りを調べてから中央の広場を指さした。

 

『兄の一粒種が我を慕っていないわけがなかろう? いいから、ここに早く置くのだ!』

 

『どっからくるの、その自信? 壊されても絶対にミリムと喧嘩するなよ?』

 

 道具袋からデフォルメした可愛いヴェルドラを作ると、却下だと怒られた。

 

 せっかく俺がミリムに壊されないように配慮してやったのに‥‥。

 

「すみません、ヴェルドラの像‥‥失礼、ごほん! ヴェルドラ様の像も置いて構いませんか?」

 

『おい、リヴェル。このクシャルダオラに似てると巷で噂されてる我を、正確に模して作るのだぞ?』

 

『グラビモスみたいな顔して何言ってんだ‥‥閃光で落として泣かすぞてめぇ』

 

 順調にオタクドラゴンになってしまった長兄を、リムルに見せるのが怖い。

 

『我はそんなに太ってないわ!』

 

『駄々こねて転がるところとかそっくりじゃん』

 

 喚いて煩くなったので、念話を遮った。

 

「ヴェ、ヴェルドラ様の像をですか? 本人に怒られませんかね‥‥」

 

「むう‥‥ヴェルドラ様の怒りを買うようなことは困りますぞ? リヴェル殿」

 

「えっと‥‥我が国でも長い歴史を持つ像でして! 数百年も森の守護者が守っていたのですが‥‥ははは。壊されて怒りを買うよりは、竜の都に置いておく方が安全かと思いまして」

 

 ヘルメスとミッドレイは真剣に話し合い、竜の民が祭って守る方が良いと結論が出たようだ。

 

「じゃー神殿の中央広場に置きますね」

 

 翼を大きく広げ、天へと咆哮する迫力のある姿に仕上げた。

 

 俺は巨大なサイズの青銅製ヴェルドラ像をドン! と置いた。

 

 記憶にあるヴェルドラを100倍くらいに美化してあるから、本人も文句はあるまい。

 

「「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」」

 

 竜の民は感嘆し、涙し、拝むものすら出てきた。

 

「凄いですけどぉ!? 年代物じゃないですよねぇ!! どうみても最近作りましたって感じじゃないっすか!?」

 

「見事‥‥これほどまでに精巧な作り込みは私も負けを認めるしかありませんな‥‥」

 

「そういう問題ではないですよミッドレイ様!」とヘルメス君の剣幕に押されてミッドレイさんは困り顔だ。

 

『完璧だな‥‥まさにウルトラ・パーフェクトな我そっくりであるな! ガハハ!』

 

『‥‥全然似てないの。翼もそんなに大きくないし、口ももっとまるっこいの~』

 

『煩いぞメル! 我の美しい口顎のままであろう!』

 

『‥‥違うの。美化しすぎて誰かわからないの~むぅ』

 

 俺を挟んで念話で喧嘩するんじゃない!

 

「リヴェル殿‥‥回収を」

 

「すみません、返品は受け付けておりませんので」

 

 項垂れるヘルメス君だが、民衆はミリム像とヴェルドラ像の追加が嬉しいようでお祭り騒ぎだ。

 

 料理場についたが、料理の途中で変身が解けるとまずいと思った俺はモシャスを重ね掛けした。

 

「男に戻られたのですか? 気配も完全に鬼人に変化できていますし‥‥元がスライムとは思えませぬな。擬態とは違うようですが」

 

「女性に変身するとミリム様のお姿に? 何故でしょうね?」

 

「ええ、まあ。あの姿でいるとこの国では誤解されてしまいますから。それではカレーを作りましょうか」

 

 ハンゾウは都にある市場の武器屋が気になるそうで、俺に手を振り駆け出していく。

 

 女性陣は絹や帯などアクセサリーも見たいそうなので、女官と一緒に市場へ繰り出した。

 

 ベルは茜に抱っこされて一緒に市場へ行くみたい。

 

 アピトやゼギオンへ、果物のお土産を見にいきたいそうで‥‥レインもたまには思い出してあげてください。

 

 なので料理場にはヘルメスさん、ミッドレイさん、俺の三人だ。

 

「定番のカレーでいいか。じゃがいも、にんじん、玉ねぎだけど‥‥ここのトマト美味しそうなんだよな」

 

「我が国の野菜はどれも自慢の一品ばかりですからな」

 

「リヴェル殿の野菜も美味しかったですね‥‥自国で栽培を?」

 

「我が国で作られる野菜は精霊の力を借りているので美味しいのですよ、ですが気候にあった野菜しか作れませんからね」

 

 国によって野菜の色も味もガラッと変わるから面白い、これなら輸出しても市場を変に乱すこともないかもな。

 

「肉はなにを使おうか‥‥牛、豚、鳥、そういや蛇もあったか? いや、この国の肉を使う方が良いな」

 

「ありませんぞ? 神殿に肉は寄進などでたまにおすそ分けされる程度ですからな」

 

「まあ、元からこの都では野菜中心の食生活というわけです。リヴェル殿‥‥すみません」

 

 ミリムも別に肉よりってわけじゃないけど、強制的にベジタリアンドラゴンにされてたらそりゃ家出するわな。

 

「肉は輸入しましょう。我が国には魔物の肉なら売るほどありますよ? 香辛料と野菜、それにかん水もありましたよね? 悟が‥‥いや、うちの国王が喜びますよ」

 

「ふむ、物々交換というわけですな。香辛料にかん水ですか?」

 

「あーミッドレイ様。我が民の外縁には多くの食文化があったのですよ‥‥美味しい料理が沢山眠ってそうです」

 

 ペルペの爺さんの店にかん水が置いてあったんだ、ゴブイチも麺作りに難航していたから助かったわ。

 

 ミッドレイは左手で顔を覆って項垂れる。

 

「確かに今まで教えだけを先行して、民の風習や文化を蔑ろにしていたな‥‥これも話し合わねばいかんな」

 

「ミッ、ミッドレイ様から頑固や偏屈が消えてる‥‥嘘だろ!?」

 

「ワシは元から柔和で温厚だ!」

 

 ミッドレイがヘルメスの頭を拳で軽く小突いた。

 

 力はまったく入っておらず、二人の顔には嬉しそうな笑みが浮かんでいる。

 

 魔道具コンロに大鍋を乗せ、油を敷いてから切った野菜とレッドブルの肉を入れて炒める。

 

 ご飯も炊いておくか、土鍋もあるし。

 

「ほう、リヴェル殿は高い料理スキルをお持ちのようだ」

 

「どうしてわかったんですか?」

 

「ハハハ、簡単ですよ。食材を切って鮮度が増してますし、色が鮮やかになりましたからな! ふむ、かなりの高レベルのようだ」

 

「料理だけが取り柄でして、ははは」

 

「絶対嘘ですよね?」とヘルメス君が言うけど、聞こえないふりをして無視をする。

 

 水を入れたら灰汁を取る。水も水精霊が作ったから美味いんだよね。

 

 おばちゃんの香辛料に小麦粉、水、調味料を足して練ったら投入する。

 

「あとは煮込むだけですね。簡単でしょ?」

 

「よし、ヘルメス任せたぞ」

 

「ミッドレイ様も少しは覚える努力をしてくださいっす!」

 

 あとはコトコトと弱火にして煮込むだけだ。

 

 甘口の奴も作っておくか‥‥らっきょとか福神漬けも帰ったら作らないとな。

 

 よい香りが辺りに充満してきたので、神官達がゾロゾロと集まり調理場を覗き込んでいる。

 

「人数が足りるかな? 余分に鍋を足して作っておくか」

 

《わらわもカレーが食いたいのじゃ。リュウ》

 

 こいつ‥‥直接脳内に。

 

 駄目だって、帰ったら作ってやるから。

 

《ハンゾウと忍者ごっこをして、ハクロウの盆栽を台無しにしたときのことじゃが‥‥》

 

 冥さんのおかげだけどさぁ。でも、貴方の姿はアウトっすよ。

 

《リュウが酔って壊したベルの宝物の貝殻‥‥あれを綺麗に修復したのは誰じゃ?》

 

 冥様にてございます。

 

 バレないように、ちゃんと変装してくださいよ?

 

 俺は次元門に腕を突っ込んで冥ちゃんを魔霊傀儡化する。

 

 中から麦わら帽子を被り、パーティーでよく使う鼻眼鏡をかけた人がでてきた。

 

「「‥‥‥‥誰」」

 

「気にしないでください‥‥カレーの精霊みたいなもんですよ」

 

「カレーの精霊じゃ。食べたら帰るから気にするでない」

 

「いや、気にしますよ! 部外者を簡単に転移させないでくださいよ‥‥」

 

 ミッドレイさんは静かに思案していたが、首を振り笑顔に戻る。

 

「リヴェル殿、結界をすり抜けて誰かを連れてくるのはこれっきりにお願いします」

 

「申し訳ございません‥‥あとで言い聞かしておきますのでご勘弁を」

 

 テーブルの席に優雅に足を組み、鼻歌を歌いながら我関せずなカレーの精霊さん。

 

 丁度買い物に行っていた子供達も帰って来たみたいだ。

 

「あっ! 母上もいるー! なんでこっちにきてるの?」

 

「ふっ‥‥わらわは母上ではない、カレーの精霊じゃ」

 

 なにそれーと楽しそうに笑い合う親子。

 

「美味しそうな匂いがするー! ブフゥーー! あはは! 冥ちゃん、なにその恰好!」

 

 冥ちゃんは眼鏡を動かして皆の笑いを取っている

 

「ふふふ、冥ちゃん。なんでそんな変な眼鏡付けてるんですか? 旦那様、これはカレーですか? 甘口のものがあると助かるのですが‥‥」

 

「ちゃんとあるから心配するな。それに今回は白米があるからな! 俺が好きなカレーだぞ!」

 

 ホッと安堵する茜とハンゾウ。

 

「シズ‥‥なに? その変な踊り」

 

「カレーの舞だよ。今覚えたの」

 

「恥ずかしいからやめてくれ‥‥ハヤテ」

 

 テーブルの席に皆が付いたのでカレーを配っていく。

 

 外でソワソワしていた大勢の神官達も広い食堂のはしで、スラぼうに配膳をされている。

 

「「いただきます!」」

 

 リヴェル家のいただきますの合唱に、ミッドレイさん達は不思議そうに首を傾げていた。

 

「おお! これは‥‥凄く美味しいですな 米によく合う」

 

「めっちゃくちゃ旨いっすよ! 辛さが食欲を刺激してスプーンが止まらない!」

 

 神官の人が慌ててこっちへやって来た。

 

「ミッドレイ様!? よいのですか? 野菜を‥‥こんな‥‥」

 

「良いのだ‥‥食事がすんだら皆で話し合いをするから集めよ、今後のことで相談したいこともあるのでな」

 

「ハッ!」

 

 俺がニコニコとミッドレイさんを見ていると、赤い顔で顔を逸らされた。

 

「おばさまのところではスープみたいな感じでしたが、ドロッとしてご飯によく合いますね」

 

「おばちゃんのやつは麺とかうどんとか入れたら、よくあって美味しいんだよ茜」

 

 ナンをちぎってスープに浸し、匙で食う感じだったからな。

 

「これが記憶にあったリュウが食いたいと言ってたカレーか? 味わい深いが‥‥未完成じゃな? じゃが美味い!」

 

「まーな。ここから香辛料を足して記憶の味に近づけていけたら良いんだが‥‥」

 

「こ、これより美味しくなるのリヴェル!」

 

「机を叩くのはやめなさい、ハヤテ。あと8種類くらいのスパイスで完成するけど、劇的に旨くなるわけじゃないからな?」

 

 シーフードカレーとか、エルさんが喜びそうだな! 茜さん‥‥痛たいです。

 

「他の女のことを考えていましたね‥‥だ、ん、な、さ、ま?」

 

「やだな〜リムルにカレーを教えたら、喜ぶだろうと思っただけですよ」

 

 怪訝な顔をした茜に頬をさらに抓られる。

 

「まったく‥‥」と俺の頬を抓っていた茜が、まだ辛そうにしていたのでラッシーを作ってやる。

 

 ヨーグルト、牛乳、はちみつを加えて、少しだけレモンを絞る。

 

「ほら、これを飲んだら口の中がさっぱりするぞ?」

 

「あっ! リヴェル様、僕にもください」

 

「父上~ベルも」

 

「あいよ」

 

 皆の食事がすんだので、おいとますることをミッドレイさんに伝えた。

 

「リヴェル殿、世話になりましたな。またいつでもいらっしゃってください」

 

「ありがとうございましたリヴェル殿。次に来るときは遺跡や古代遺物などを見て回るのも面白いですよ?」

 

「ぜひ! 凄く興味がありますので、そのときは案内をお願いします、ヘルメスさん」

 

 俺達は外に出て、皆でクモキチバスに乗り込む。

 

「クモキチ、時間は大丈夫そう? ペルペのじいさんところに寄りたいんだけど」

 

 クモキチは大丈夫だよと手を振って、移動を始めた。

 

「リヴェル様~テンペストにまだ帰らないの?」

 

「すまんな葵。取り寄せに時間が掛かるって言われててな」

 

「何をとりよせたんですかご主人様?」

 

「コーヒー豆だよ!! 見つけたときは発狂しかけたよ‥‥爺さんの手持ちがないから、仲間の商人から取り寄せてくれているんだ」

 

 ピリノは俺の圧に少し怯んだあとにポツリと呟く。

 

「そんなにご主人様が飲みたいなら美味しいのかな?」

 

「黒くて、苦くて、凄くまずい‥‥大人は何故か飲むんだよ。昔、お爺ちゃんも飲んでたし」

 

「ふっ‥‥お子ちゃまのハヤテには一生わからん味だ」

 

 ハヤテの擽り攻撃をかわしていると念話が飛び込んできた。

 

『緊急事態だ! ミリムが暴走した』

 

『普段は冥ちゃんやベルといて大人しいから忘れてた‥‥破壊の暴君でしたね』

 

『お前が何日も帰ってこないからだぞ! 馬鹿リヴェル!』

 

『いいのか? 俺にそんな暴言を吐いても? かん水を手に入れたんだけどなあ~』

 

 少しだけ間が開いてリムルの念話が再開した。

 

『リヴェルさん、疲れてるところすまないんですが、早く帰ってくれませんでしょうか?』

 

『そうそう、カレーも手に入れたぞ! 悪いんだがコーヒー豆を手に入れたいんだ、もう少しだけ待ってくれ』

 

『ダニィーーー!? まじかよ! あーでもリグルドがめっちゃ怒ってるんだよ‥‥「いいえ、怒ってませんよ。ははは」とか目を血走らせて言うんだぜ? 怖いんですけどぉ‥‥』

 

 そんなの聞いたら帰りたくなくなったんだが‥‥「ミリム様の担当はお二方でしたよね?」と俺はリグルから怒られる未来しか見えん。

 

 なんかリムルの担当はリグルドで、俺の説教はリグルが行うんだよな‥‥。

 

『被害が増えたら説教のしわ寄せがお前にいくだけだぞ? 壊した補修作業も俺とお前に丸投げだろうし、それにゲルド達は手伝えんぞ? 街道整備も終わってないんだからな』

 

『お前がミリムの相手をしてやれば、数日は大丈夫だと思ってたんだがな‥‥』

 

『友達と家族を比べるなよ、思いっきり「寂しいのだー!」と口にして暴れているんだからな。えっ!? 何で? 聞こえて‥‥バラして恥ずかしいのはわかるがやめろミリム!? 助けて星!!』

 

 途中からスライムのリムルを抱きしめて呻いていたらしいが、しっかりと念話を傍受していたようだ。

 

『ミリムにこっちに来いって説得してくれよ、意地悪して連れて行かなかったんじゃないんだからさ』

 

 緊急時のためにスラきちのパーティーに、リムルを入れているから念のために確認すると‥‥HPが赤色表示に!? ベホマラー! まだミリムにドラゴンナックルを作ってないのか? 

 

 これも帰ったら作らんとな‥‥でもヘナトスを覚えてないんだよな。

 

『た、助かったよ星。お前、魔法が復活したんだな! ミリムの説得は無理だ‥‥「あんなつまらん場所には帰らんのだ~」の一点張りでどうしようもない』

 

『ミッドレイさんに生野菜は駄目って説得できたと伝えて! インド‥‥竜の都のお米でチャーハンやチャパティも美味しいからこっちに来いミリム』

 

『うん、仕事終わらせたらすぐに行くね?』

 

『おめーじゃねーから! おめーの席はねぇーから!!』

 

 

 

 俺の言葉を聞くやいなや、ミリムは翼を広げて全力で飛び出していったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 






   
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