大勢の魔物を放置して帰るわけにもいかず、テンペストに魔物達を連れて帰ったのだが‥‥。
「サボッチここならどう? 皆が住めそう?」
俺が頭上に両手でマルを作ると、サボッチは嬉しそうにピョンピョンと飛び跳ねる。
何度もベルに通訳してもらうと、賢いサボッチは言葉を学習していった。
「テンペストじゃ気候が合わないとかあるんだな‥‥」
リムルは干乾びて弱ってしまったマドハンドに水をかけている。
ゴーレム達は生まれた土地の石や土がないと生きられないようなんだ。
これはまずいと思った俺とリムルは、地図機能を使っていい場所がないかを探す。
そして探し当てた場所が‥‥ここ! 忘れられた竜の都の再南東だ。
ここなら巨大な魔物もいないし、人も住んでいないからうってつけだろ。
「ミリムにこの辺りの土地を貰えないか交渉しないとな‥‥」
正直、意思疎通ができない魔物をテンペストで大量に受け入れるのは不安だったから、これで良かったのかもしれない。
ベルの仲間になった子は環境には影響されないようだ。
仲間にできるのも種族につき一匹だけのようで安心したよ。
「サボッチは大丈夫? うんうん、ゴレムスは砂が欲しいの? 母上~砂って海岸で集めてきたらいいの?」
「別に海岸まで行く必要はないぞベル? 石を粉々にすれば砂になるのじゃ」
冥ちゃんは石を握ると砂に変えて、ベルの目の前にサーッと落としてゆく。
「おぉ〜母上凄い! ゴレムスは砂がご飯なんだって」
ベルは青銅のバケツを両手に持って、冥ちゃんが作った砂を入れていく。
「す、凄い握力っすね‥‥冥さん」
「違うわ馬鹿者! これは風魔法じゃ!」
痛い‥‥ほんとだ! 手の平に緑の小さい螺旋丸がある。
俺は叩かれた頭をさすりながらミリムに念話をした。
『ミリム、今大丈夫か?』
『大丈夫じゃないのだ! 辛いのだ!』
『えっ‥‥うん。竜の都の最南端に少しだけ土地が欲しいんだ。50人くらいの魔物が住んでも構わないか?』
『甘口のカレーがあることは知っておるのだぞ! 早く、甘口を作るのだ! 土地? 別に好きにすればいいであろう? そういえば、ヘルメスから聞いたぞ? 未開発地域の開拓と整備を父上が担当するそうだな? くっくっ‥‥辛!?』
ヘルメス君‥‥余計な事を! いやまてよ? 未開発地域を開拓した礼としてここを貰うことにするか?
『未開発地域の開拓が成功したらこの土地の所有権を貰うからな? あとで返せとか言わないでくれよ?』
『返すもなにも父上が国を運営すればよいではないか。ワタシはベルと母上と三人でダラダラすごすのだ!』
『まったく‥‥ミッドレイさんとはちゃんと話はできたのか? 我慢しないで言いたいことはちゃんと言うんだぞ?』
『‥‥生野菜も食べなくて良くなったのだ。あ、ありがとうなのだ! 父上!!』
ミリムから感謝を告げられてニマニマしていると、リムルにキモッ‥‥と呟かれて喧嘩になり、帰るのが少し遅れてしまった。
「もう! それでこんなにも遅くなったんですか旦那様? それにしても、ゴレムス君は大きいですねぇ〜」
「リヴェル様~準備できたよ! 後はお湯を入れるだけだから」
「トレント君達と一緒にポージングして仲良くなってたから、大森林で一緒に住む事になるんじゃないか? うちの庭じゃゴレムス君には狭いからな‥‥おっ! サンキューな葵」
庭で三角座りをしたゴレムス君は楽しそうに三人娘を眺めていた。
ベル、ハヤテ、ピリノがゴレムス君の膝を滑り台にして遊んでいるようだな。
俺はケトルでフィルターに入れた粉へ静かに湯を注ぎ、立ち上るコーヒーの香りを楽しむ。
「これだよな〜たまらん! でもローストが甘いな‥‥焙煎の機械を作らないと」
ミリムは仕事で、暫くは自国にいるようだ。
皆で話し合う事もあるし、民が色々料理を持って来るので味見に忙しいみたい。
俺は水源調査が解決した件を、ミッドレイさんに報告に行くことはしなかった‥‥。
あの信頼に満ちた笑顔で感謝されると、胃がキリキリと痛むことになるからだ。
本当の原因は伏せ、地中の固い岩盤が隆起した影響で水源が止められていたという理由にして、ミリムからミッドレイさんへ伝えてもらった。
「うわぁ〜ん! リヴェル! 私にもお土産を寄越しなさい!」
「はいはい‥‥ほらレイン。向こうの地酒だ、ヤギのミルクで作った酒みたいだぞ?」
目を輝かせて大事そうに地酒を抱え込んで喜ぶレイン様。
「フフン! ほら、見なさいピリノ! 私だってお土産貰えるんですぅ~! ふふっ、リヴェルは私の事がほんと好きね」
俺の頬を指先でウリウリと押し込んでくるので少しウザい。
「リヴェル様はレインさんに甘すぎます!」
「いえ、それはないです」
ピリノがプンスコと怒り、茜が冷静に突っ込む。
言えない‥‥どうせ誰からもお土産貰えないだろうと憐れんで買ったなんて‥‥。
結局ベルはアピト、ゼギオン、ハクロウにお土産を買ったようだ。
「レイン姉にもお土産のお菓子あげたじゃん!」
「あんなもの皆に配るやつでしょう。心が籠ってません‥‥葵!」
びしっと指先を葵に突き付けて「しかも1個って馬鹿にしてるんですか!」と吠える。
「え〜~10個入りなんだから皆でわけたら1個に決まってるじゃん!」
ミソラとオベーラには服や髪飾りなのにレインにはお菓子だけって‥‥ほらカレーパンも食いねぇ。
「なんですかこれ? ‥‥っ!? 美味しい! 少し辛いけどもっちりして味わい深い‥‥私も知らない香辛料ですね?」
「カレーパンだよ、遊びに行ったんじゃないんだからお土産で怒るんじゃないよ」
「あっ! 忘れるところでした。これ、魔界で手に入れた染料に使えそうな植物です。食材もありますよ?」
箱や壺を魔法陣から取り出して床に置いてゆくレイン。
「おお! ありがとうなレイン! 結局、なんの問題もなく無事に帰ってこられたんだな」
俺は出されたものを道具に仕舞いながら聞くと、レインは気まずそうに顔を逸らして呟く。
「えぇ‥‥まぁ」
「おい! 何があったかキリキリ吐きやがれ!」
最悪だ‥‥この青い悪魔‥‥四方に喧嘩を売りやがった。
原初達にも気付かれない、きえさりそうの効果もやばいけど‥‥。
本人は黒をボコボコにして帰ったと言い張ってるが‥‥。
水を自由に扱えるレインと聖水の相性は抜群だった。
霧にして範囲攻撃する極悪仕様に水や氷に聖水を混ぜる事で、黒は魔法を打ち消せずに終始感心していたようで「上から目線でほんと腹立つ!」と文句を言っている。
なんとか互角の勝負に持ち込めたが、決め手が無いのでレインは賭けにでたんだと。
きえさりそうを使って姿を隠し、大魔法で範囲攻撃して黒が回避してる間に帰還してきたと‥‥貴方尾行されてませんよね!?
俺は慌てて地図機能で黒を探すが見つからず安堵する。
自慢げに黒にザマァして愉悦するウマシカに、俺はナウでシカのような感じで言う。
「ギィ様の所へお帰り、この森はお前の世界じゃないのよ。ねえ、いい子だからこの森ではレインは生きられないの」
「何をわけのわからない事を言ってるのよ‥‥私はベル様の従者になったんだから帰らないって言ってるでしょ! この! この!」
攻撃色!? 駄目レインの暴走が止まらないわ! 痛い頬を引っ張るな!
「はみゃせ! 恨みを買うようなことをするなとあれ程言ったのに! 自分から煽りに行くとか何考えてんだこの馬鹿!」
「仕方ないじゃない! ブランの髪を三つ編みにしても気がつかれないなんて面白すぎでしょ! ヴィオレには少しやり過ぎたからいつか謝っておくわ‥‥」
きえさりそうって認識阻害もあるのか? それはぜひお風呂場で‥‥。
やだな〜茜さん、冗談に決まってるじゃないですか! 怖い顔で睨まないでくださいよ。
笑顔の葵も参加して、俺の道具袋からきえさりそうが全て没収された。
「マジで原初娘がこの街に突撃してくるような事だけは避けてくれよレイン?」
「大丈夫よ、ジョーヌの城にもギィ・クリムゾン参上! って書いといたから」
「いやジョーヌってお前みたいな馬鹿じゃないからな? いだだだだ」
「私が未だにギィの元にいると思ってるはずよ! 貴方も大概生意気よね‥‥アイテム禁止、踊り禁止で闘技場に来なさいな。格の違いを見せてあげるから」
さてはレインの奴、俺が魔法が使えるようになったのを知らないな?
サスケと一緒に分裂して、16体から回避不能のイオラオラオラオラオラ! オラって!
あ〜やめとこ‥‥勝ったら勝ったで不貞腐れたレインを相手する方がめんどくさいわ。
「ボコボコにされるから嫌だよ、素材ありがとなレイン」
「いいこと? リヴェル、あまり調子に乗らないように‥‥あと、お土産感謝します」
フンッと鼻を鳴らして、お土産を貰ったミソラに絡みに行くレイン。
俺はさっそく染料素材を研究所に持ち込んだ。
「宇佐田、この植物から色素を取りたいんだが頼めるか?」
「もう! ヒカルって呼んでください! なんですかこれ? 見たことがない植物ですね」
「面白い色ですな〜我輩にもみせてくだされ‥‥ほほぅ」
ガビルとヒカルがカラフルな植物を興味深そうに吟味している。
「お義兄様! これ魔界の植物じゃないですか‥‥いったい何処から持ち込んだのですか?」
「内緒だよ~こっちにばかりいて、おねーちゃんに怒られても知らないぞトライア?」
「お姉様も森の管理をサボっていましたから、暫くは忙しくてこっちにこれませんわ。フフフ」
ミラノは自分の研究をしているのでここにはいないみたいだな。
「魔界の‥‥はたしてここで育つのであろうか? あっ、リヴェル。頼まれていた調査が終ったのである! お主の見立てどうりであったぞ」
「おっ早いな。どれどれ‥‥やっぱり聖水を入れた水で育てた魔魚は通常個体のサイズになるみたいだな」
俺はガビルとハイタッチをして、ガビルが書いた調査報告書を読み込んだ。
この研究の始まりはウナギが食いたいリムルから始まった。
巨大すぎたんだ‥‥シス湖のウナギ自体が。
当初俺もガビルの資料とスケッチしか見てないので、大きさは無視してしまっていた。
「巨大な電気ウナギだもんな‥‥串は巨大になるしどうやって料理したらいいかわからん」
「嵐の日には我輩達も暴れるこいつに苦労しましたぞ‥‥」
リムルが腹いせに捕食した電気ウナギは、シエルさんの解析の結果‥‥なんと食用だったのだ。
聖水入りの稚魚を育てて結果を待つしかなかったが、成長が早い魔魚なので早い段階で確認できたようだ。
「海の魚もデカすぎるし、丁度良いからミリムの領土で港を作ろうかな? 養殖も試したい」
「おお! 海の魚! ぜひ我輩も食べたいぞリヴェル」
「まだ先の話だ、慌てるんじゃないガビル。ミリムの未開発地域を開拓したら褒美に土地を貰う予定だ」
「ならば我輩が未開発地域を切り開くのである! フハハハ! 任せて置け親友よ」
頼めるなら頼みたいが‥‥ガメラはSS級だし、今のガビルだと不安だな〜。
「ここでの研究も沢山あるし、長期でお前に抜けられると困るから駄目だ」
「ムムム‥‥確かにリヴェルが色々案を持ってくるせいで、我輩も大忙しであるな」
「えぇ‥‥ガビルさんって、リヴェル様のときは真面なのに私達のときだけふざけ過ぎるのやめてくださいよ!」
「ほんとですわ‥‥歌や踊りで邪魔したり、部下とどんちゃん騒ぎもです! メっです!」
宇佐田がガビルに染料の枝でバシバシと尻を叩き、トライアは人差し指を立てて怒る。
いや、俺のときもガビルはお構いなしにダンスするけどな‥‥俺も楽しいからまざるけど。
「痛いですぞヒカル殿! あれは養殖の魚が大きく育つように歌っただけでア〜~ル! リヴェルは歌やダンスも息抜きになるし、インスピレーション? とやらも湧くので構わないと言ってるのですぞ?」
「リヴェル様が甘やかすからじゃない!」「もう! リヴェル様のせいじゃないですか!」
ガビルってマイケル並みに上手いんだぜ? 教えたら完璧だしフォー!
「女性陣には不評みたいだし、俺達だけのときにしようぜガビル」
「身体が勝手に動くときもあるので、多少は許して欲しいですぞ。ヒカル殿、トライア殿」
「ハァ‥‥仕方ないな〜もう」
「急に大声で歌って驚かすのは止めてくださいね?」
壺や箱の中身を取り出して食材だけを回収する。
「それじゃー俺は自分の研究所に帰るわ。染料は頼んだぞ皆」
「任せておくのだ!」「はい!」「は~い」
俺は皆に別れを告げて、自分の研究所に戻ってきた。
「デーモンアームは頓挫しちゃったし‥‥焙煎機を先に作るか?」
「‥‥」
悪魔を召喚してDAに宿すと、ただの悪魔の腕を現世に呼ぶというアホな代物が出来た。
肉体を得た悪魔の腕が動くだけ‥‥強い悪魔なら腕から魂を吸収していき物質体の依り代を精製できるのかわからんけど、武器として鬼達に渡したい俺としては頭を悩ませてくれる問題だった。
そこで俺は発想を変える事にした。
「もう悪魔じゃなくて天使にするか?」
この世界の下級天使は自我が薄いし、AIのロボットみたいに使えないかな?
悪魔と天使は無機物にも受肉してしまう‥‥魂のコア的なモノを作るか。
自我が強い悪魔だと煩い武器になりそうだしな‥‥ひかりの石とオリハルコンで合金を作り、それでコアを作れば天使との相性は良さそうだ。
冥賢之王の力を使って天使の魂をクリスタルのコアに宿す。
これで某魔法少女みたいに‥‥おっ?
《起動‥‥》
俺は適当な武器にコアを埋め込んで巨大な大剣を空中で持ち上げる。
「へ〜精霊よりも出力は高いな! だが、シンクロ率が最悪だ‥‥ワンテンポ遅れる。命令のプログラムを入れないと、細かい動作や制御は厳しいか?」
「‥‥」
「使用時には多少魔素は必要だが、出力が高いから重火器を持たせるのも面白いかも。でも下位じゃなくて中位天使でいいかもしれん‥‥なにか色々タイプがあったよな? 下位じゃ自我が弱すぎる。しまった!? オベーラがこれを見てどう思うか考えてなかった‥‥」
「‥‥‥‥」
「ハァ‥‥なあ? いいかげん何か喋ってくれよ、もうお前が何者か聞かないからさ」
「‥‥貴方が敵か味方かわからない」
「その中にいても辛いだけだぞ? 目も見えない暗闇の中でずっといるきか?」
サマタマの中で魂の修復が完了したんだが、一向に警戒を解かずに素性を喋ってくれないんだ。
声からして女性だろうけど‥‥カザリームか? と聞くと「知らない」で終わる。
お前は何者で、どうしてあそこにいたと聞くと黙りこむ始末。
「お前は呪法で仮面に魂が張り付いている状況だったんだ。消えそうな脆い魂を、今お前がいるサマタマに入れて俺が治療した」
「‥‥」
「一応は命の恩人って事になるんだ‥‥信じて貰えないか?」
長い沈黙の後、ぽつぽつと女は語ってくれた。
「魔王が私達の国を破壊し尽くしたの。逃げ延びた後でアタイは姫様を探し回って‥‥あの恐ろしい
「
「‥‥仮面の事がよくわからない、そんな記憶はないよ。カザリームとかいう名前もアタイは知らないし」
「姫様の名前は? 言いたくないなら別に構わんが」
カザリームを知らない? 魂の修復過程で記憶が消えてしまったのか?
「姫の名は言えない‥‥ごめん。でも、アタイの名なら教えてあげる。セレスティア・フォン・クローバー、姫の侍女をしていたんだよ」
「セレスティアにだけ話をさせるのも不公平だな‥‥俺は元人間の転生者だ。今は魔物になってスライムをやってる」
「‥‥」
また黙り込んでしまった‥‥。
「あっすまん、また警戒モードに入らないでくれよ‥‥魔物と言ってもエルフとも一緒に暮らしてるぞ? ダークエルフとエルフの二人が住んでるんだ」
「ダークエルフ‥‥そう呼ばれているんだ。転生者なんて聞いた事がないんだけど? リヴェルは本当に魔物に生まれ変わったの?」
「ウソなんてついても仕方がないだろ? こことは別の世界から来たんだよ、セレスティア」
「ティアでいいよ、姫様にもそう呼ばれていたし。助けてくれたのにずっと黙っててごめんね‥‥あなたが悪い人じゃないのは観察してわかってたけど‥‥」
これなら肉体を作っても大丈夫か? 危害を加えない契約は入れさせてもらうけど。
「よし、じゃーティア。お前の肉体作ってやるよ」
「ソーマの技術だって肉体が残ってないと複製できないんだよ‥‥何を言ってるんだい」
「ふっふっふ‥‥スライムの技術力は世界一なのだ! すでに冥ちゃんが放棄した体がもうあるのだよ」
俺はソウルノアにダークエルフの身体をセットして、サマタマを人形の額に押し付けた。
「ちょっと! 待ってってば! 肉体が合わないと魂もろとも消し飛ぶ‥‥」
「ポチッとな! 俺を信じなさいって‥‥あっ!? やべっ‥‥あの格好のままだ」
蒸気が辺り一面にジュワーっと立ち上がり、カプセルの蓋が開いた。
「ゲホッゲホッ‥‥もう! アタイの話を聞きなさいよ! 失敗したらどうしてくれるのさ!」
「おぉ〜セクシーティアちゃんの登場だ! 写真いいっすか?」
俺がセクシーティアちゃんを脳裏に焼き付けていると、自分の姿を見たティアちゃんが悲鳴を上げる。
「キョエエーーーー!! な、な、なんて破廉恥な格好をさせるのさ! この変態! 変態! 馬鹿! 死ね!」
「ありがとうございま‥‥ぎゃーーああああ」
俺に危害を加えられないはずなのに‥‥殴る蹴るの暴行だと!?
《肯定。相手に悪意が無い場合は契約違反にはなりません》
そんな~ちょっとエロい目で見ただけで殴られるなんて‥‥契約違反じゃないか!
「えっ? 身体が縮んでいく‥‥だ、大丈夫なのこれ!? ちょっとリヴェル!」
「うん、本来の姿に自動調節されるから、元の貧相なティアちゃんの身体に戻るだけだから安心してよ。ダイナマイトボディーは今後の成長に期待という事で」
無言でグーで殴られた俺は、バスタオルをだしてビキニアーマーを回収する。
バスタオルで身体を抑えて隠すティアちゃんに、下着とメイド服を渡した。
機材の裏に隠れてゴソゴソと着替えるティアは、そのまま俺に話しかける。
「なんでリヴェルがメイド服を持ってるのさ‥‥でも、ありがと。これはアタイの正装だからね」
「いえいえ、どういたしまして。ピリノと同じサイズだったから、あーでも尻尾の部分は縫っとかないとな」
「あーこの切れ込みはそういうことなんだね。ていうか! あんたスライムじゃないじゃん!」
「まー俺は人に変身できるんだよ、こんなふうにモシャス!」
俺はダークエルフの少女になる。
「‥‥え? 完全に気配がエルフじゃん」
そういうと俺を色々触って確かめた後に持ち上げる。
「まーこれからよろしくなティア。これからどうするんだ?」
「何かどこかでみたような‥‥へっ? う~ん。どうしよっか?」
「いや、俺に聞かれてもな‥‥ティアの自由に生きて良いぞ? 何かやりたいことはないのか?」
俺がそう言うとティアはポロポロと涙を零して泣き喚く。
「姫様に会いたい‥‥会いたいよぉ〜~ぐすん」
会わせてやりたいけど、さすがに時が立ちすぎてるぞ‥‥。
シルッちならワンチャン? クローバー家を知っているかもな。
「あっ!? そういや封印されてた箱があったな‥‥」
俺はガサゴソと積み上げられたコンテナの中に腕を突っ込んで、目当ての品を探す。
何処に仕舞ったか‥‥おっ! あったハルナに貰った草カバン。
「ティア、ティア! これ、お前が封印されてた仮面の横にあった箱なんだよ」
ティアは泣き止むと不思議そうに箱を抱きしめる。
「何故か懐かしい気配がする‥‥」
懐かしぃ? 危険なモノじゃないなら封印を解くか? 今の俺ならこれぐらいの封印術を解除できるし。
「保険として結界は部屋に施すか‥‥じゃー解除するぞティア?」
ティアは静かに頷いたので、箱の封印を解く。
箱の中には黒い禍々しい玉があり、霧が吹き荒れティアに襲い掛かる。
「ダークエルフの娘! 悪く思うな! お前の身体をいただ‥‥ティア!?」
「へっ‥‥貴方は誰なんですか?」
「シャドーゲットだぜぇー!」
俺はサマタマにシャドーのような霧を封印する。
「クッ! 貴様! 何者だ‥‥目が見えん」
「お前こそ何者だ! いきなりティアちゃんに襲いかかりやがって!」
「やはり‥‥ティアなのか? レオンの奴に殺されたとばかり‥‥フン。慈悲のつもりかアイツ」
「ははぁ~ん‥‥さてはお前カザリームだな?」
あんな場所にいて身体を奪う術を持ち、レオンに悪態をつく奴なんて一人しかおらん!
「‥‥」
声が野太いおっさんだが状況的にカガリだろこれ? ていうことはだ‥‥。
「カザリーム? リヴェルが言ってた人だよね?」
「ティアちゃんって‥‥ティアドロップなのか!?」
「もう! アタイはセレスティア・フォン・クローバーって言ってるでしょ! こうみえても伯爵令嬢なんだからねリヴェル? 頭が高い、控えおろう~ってね!」
「ティア‥‥貴方記憶が! それに生前の姿のままだったわよね! どういうことだ! おい、答えろ俺を封印したモノよ!」
多少は驚いたけどカガリも色々可哀想な境遇だしな‥‥ふむ。
「ティア、姫さんの名前なんていうんだ?」
「教えないって言ったでしょ!」
「こいつがお前が探してる姫様だぞ? 超魔導大国ソーマの姫君だ」
「‥‥こいつ」「‥‥へっ?」
カザリームはティアと二人きりにしろと言ってきたので、離れて焙煎機を試作する。
生豆をペルペの爺さんから買わないとな‥‥ヒーターはリムルに頼むか。
攪拌は手動でコロコロ回す方が楽しいな、手間ひまかけた方が俺は好きだ。
「‥‥おい! 聞いているのかリヴェルとやら!」
「うおぉ! びっくりした! なんだよカザリーム」
「リヴェル! アンタが作業に没頭して姫様を無視するからでしょ!」
ゴホン! と咳ばらいをしたあとにカザリームは言う。
「私の身体を作る事を許す。光栄に思うが良い」
「やなこったでゴザル」
「「「‥‥‥‥」」」