「貴様らはリヴェル様の礎となれるのだ、泣いて感謝するがよい!」
大勢の村人を目の前にして、威風堂々と緑色の髪をした女性が言い放つ。
「邪魔するなら帰ってくれる? コルヌ」
「なっ!? 何故ですか! この者共に主の偉大さを! 痛いです……リヴェル様」
「護衛の仕事だけしてなさい、お座り」
「わふ!」
コルヌに肉体を与えると、早速とばかりにお役に立ちますと護衛に付いてきた。
モフモフ成分が欲しいので、人狼をベースにソウル・ノアで作ったんだが……。
「耳だけで尻尾がないとか駄犬めっ……」
「酷いです~リヴェル様! ベースがどうあれ熾天使の肉体に作り替えられるんですから、仕方ないじゃないですかぁ!」
「何がわふよ……尻尾もないし、狼の耳飾りを付けただけじゃない。私達の真似をしないで頂戴、偽狼」
「貴様のような魔獣と同じにするな! 私は熾天使だ!」
風音とコルヌは言い争って煩いので静寂の玉を使った。
二人は口をパクパクとさせて抗議するが、アップルパイを皿に置くと仲良く食べ始める。
あっけにとられている村人に俺は咳ばらいをしてから話す。
「村長さんはこちらにいますか? 私はヨウムさんに協力をしている商人のリヴェルと申します」
「わ、私です。父さんが亡くなりましたので……」
15歳くらいの少女が代理で村長をやっているようだ。
名前はエマさん、村長さんの跡取りがエマさんしかいないからかな?
「見た目は子供ですが安心してください、頭脳は大人の名探偵なんで」
「は、はぁ……」
ヨウムと眼鏡君には置いてきた仲間を呼び寄せてもらっている最中なのでここにはいない。
「エマさん、皆さんにお伝えください。選択肢は3つあります! 一つはヨウムさんに協力して革命軍に加わる。二つ目はイングラシアとファルムスの国境近くにある商館で働く。三つ目はジュラの森で暫く暮らす事です」
「あ、あの! 革命軍には戦えないものでも参加できますか!」
「失礼ですが……もしかして、親父さんを貴族に殺されちゃったり? なんて……」
静かに頷くとポロポロと涙を零すエマ。
周りの村人達も次々に言い放つ。
「ワシも戦うぞ!」「革命軍に参加するわ!」「とーちゃんの仇をうつんだ!」
年寄、女子供が大半だがやる気満々だ。
革命軍に参加する者としないものに左右に分かれて移動してもらう。
「予想外の展開が来ちゃったな……革命軍に参加しない人は老人、幼い子供、赤ん坊を抱いた女性だけじゃん」
エマさんから事情を聞くと、村に男爵の使いが来て戦争に兄と父を徴兵していったらしい。
食糧もろくに食べられなかった兄と父親をだ。
自分の所の私兵の損耗を押さえる為か知らんけど、働き手が亡くなったら税収が減るだけだろ……村事切り捨てられたのか?
案の定、戦争から父と兄は帰ってこず。
他の村人達も報酬は貰えず、ただただ夫や息子を失うだけの結果に終わる。
「その所為で母親は心身の疲労から寝たきりになってしまったと……他の人達も似たり寄ったりの境遇か」
「村には戦えるものがわずかしかおりません……魔物に襲われて食われるか、飢え死ぬかのどちらかでした。そんな時にヨウムさんが来てくれたんです! それに! ヨウムさんから聞きました、食糧を分けてくれたのはリヴェルさんですよね? ありがとうございました! 本当に感謝しています」
エマさんは深く頭を下げて俺に礼を言う。
俺のスライムも腹の足しにされたから、詳しく調べられなかったんだよな。
魔物は丸ごと食えるが、俺やリムルは体液を抜かれて干したあとに皮が食えるらしい。
「いえ、こちらにも利があるのでヨウムさんに協力しているのです。お気になさらず」
怒っていた村人達も俺の方を向いて、頭を下げ、口々に感謝を告げる。
《報告。ヨウムの準備ができたようです。次元門を繋げます》
「ん? 誰だこのちびっ子は?」
「この次元門は戦争の常識をぶち壊しちゃいますよ……えーっと?」
次元門の中からヨウム、眼鏡、配下と村人がおっかなびっくりと順番に出てくる。
「俺だよヨウム、リヴェルだよ。ヨウムが背中向けて次元門を去る時に姿を借りるスキルを使って人間になってるんだ」
「お前チビ助かっ! 変身しても、身長はかわんねーんだな! ワハハッ」
「うるせーな鬼太郎! ちゃんちゃんこか下駄はけよ!」
ヨウムが俺の頭をペシペシと叩いて笑うので、仕返しにヨウムのブーツを下駄に変える。
「俺のブーツを返しやがれ! アン? だがすげー足が楽だな」
「ほれ、あとはちゃんちゃんこと目玉の親父だな。眼鏡君をねずみ男に変えるべきか?」
また、わけのわからん事を言いやがってとブーツを受け取るヨウムくん。
「眼鏡君……確かにこの男の子はリヴェルさんのようですね。しかし、完全に人間に化けていますね……」
軽く二人に現状を話すと連れてきた人達を集めてもらう。
俺はエマさんの村人達と同じように900人ほどの村人に同じ事を聞く。
「ジュラの森に住むといっても避難するだけで、いつの日かわからないけど元の村には帰れるよ? 商館の方で働くのも同じだね、永久にってわけじゃない」
俺が皆に向かってそう言うが決意は固いらしく、革命軍で戦う人が大勢いた。
女子供も併せたら2000人か? 500人が正規の兵として1500人が女子供の民兵か……。
ジュラの森に人間を入れなくて済むのは助かるけど、商館で働く従業員も確保したかったんだけどなぁ~。
60名ほどが商館の地下で生活するが25人が年寄で、子供28人に残りが女性という。
言葉は悪いが老人ホームじゃん……まー年寄りや子供達も元居た村に帰りたい人ばかりだけど。
ヨウムの元居た私兵団150名だけ残し、傭兵くずれと盗賊、山賊数百名は楽しいブートキャンプに送った。
優しい鬼と兎の教官にしごかれてくれたまえ。
俺はヨウムにゴロツキ共を更生する件を伝える。
「まじか……えげつねーなお前」
「安心しろ、お前達150人にも師匠を用意してあるから」
そんな、父さん妖怪です! みたいな顔してもハクロウからは逃げられんよ。
少しヨウム達と話し合いをするために、エマさんの実家にお邪魔している。
「皆、頭に来てるんだよ。西方諸国評議会が魔物に備えてかは知らないが、各国から資金を集め出して冒険者ギルドを運営する支援をしろと要請してきたんだ。そっからだ……貴族同士の小競り合いが増え、私腹を肥やす事だけを考える貴族連中が増えておかしくなったのは!」
「ファルムス王が貴族達に金を出させて、その皺寄せが民に来てるって事ですよね? 資金繰りが厳しい小領の貴族が小競り合いを理由に支払いを渋ったり?」
「いや、派閥争いが激化してるんだと思う。大方資金を拠出させる額で大貴族達が色々ともめているんだろ」
すでに冒険者ギルドへの支援は打ち切り、大した成果も出ずに金だけ出させた感じか……どの国の貴族も荒れるだろうな。
西方諸国評議会は意図的に大国同士の戦争を避ける仕組みだが、それが逆に自国の派閥争いの原因になってると……ラーゼンが制御の効かない貴族を一掃するために仕掛けてるとか? それか単に自国のガス抜きなのかも?
俺が思案していると、眼鏡君が派閥争いの言葉に驚きつつも溜息を零す。
「リヴェルさんってエルフじゃなくて魔物なんですよね? その人間に対する知識や擬態能力といい、少し怖いのですが……」
「……」
二人が神妙な顔で俺をじっと見てくる。
「ん? 言ってなかったか? 俺は転生者で元人間だぞ?」
「なにぃ!? 初耳だぞ、チビ助!」
「あ~それで合点がいきました! 私はてっきり魔人が我が国で戦争を企てているのかとヒヤヒヤしてましたよ、ハハハ」
心底安心したように何度も頷きを返す眼鏡。
「や、やだなぁ~眼鏡君! 善良で心優しい俺に向かって酷いじゃないか! そんなこと企むわけないじゃん……ワハハ」
二人がジットリと見つめてくるので、お茶とお菓子を置いて誤魔化す。
「チビ助は要注意だな」
「誤魔化しましたよね? ヤレヤレ……」
イングラシアとファルムスはライバル関係で結構バチバチなんだよね。
冥ちゃんに調べてもらって分かった事だが、数10年前にも領土の位置が変わったりしている。
火種はそこら中に転がっていた、特に国境沿いなんて面白いのよ。
しかし、転生の話はすんなり受け入れたな? まあ、俺の人徳のなせる業か……フッ。
《否定。悪魔王の称号持ちのマスターが人徳を持ち出すのはナンセンスです》
スルースキル発動! 冥ちゃんの小言を墓地へ。
「まーなんにせよ、女子供の民兵は後回しだ! まずは英雄ヨウムを爆誕させようぜ」
「英雄ねぇ~勇者にはガキの頃には憧れたが、ピンとこねーよな。しかも俺自身が英雄とかなんの冗談だって話だぜ」
「ははは、勇者でも英雄でもやってやれば良いじゃないですか。旗頭として、今それができる人はヨウムさんしかいないんですから……おや? 周りにオークロードの侵攻を知らせて回っていた人が帰ってきたようです」
外から大声で眼鏡君に帰ってきましたと報告が聞こえてくる。
『ゲルド準備できてる?』
『リヴェル様……この衣装は少し派手過ぎませんか?』
『えーいいじゃん魔王みたいで』
『いえ、オレには似合わなすぎて……うるさい! 笑うなお前達! あっ、すみません』
刃の鎧に漆黒のマントと鋼の兜をロト風に変えた奴をゲルドが装着している。
『似合ってるから大丈夫だって、じゃーゆっくり歩いてきてよ。丁度いいタイミングで斥候の騎士が偵察に来るから』
『わかりました』
よし、村人1500人は商館へ移動させよう。
商館を買い取ると従業員の寝泊まりする施設や倉庫も付いてきたから1500人は余裕だろ。
「イングラシアで土地を買ってあるから、そこが革命軍の拠点な?」
「もう好きにしてくれ。リムルの姐さんや、お前にも逆らう気はねえよ……怖すぎるわ」
「そろそろ、そちらの見返りぐらい教えてくれませんか? リヴェルさん」
「テンペストに侵攻してきそうだからな、お前の国。被害が出る前に先手を打ちたい、以上!」
眼鏡君が眼鏡をはずして眉間をもみ始める。
えっ!? ロンメルが消えた……。
「どこまで確証を得てるんですか? 我が国が建国したての魔物の国を襲うなどと……」
「意地が悪いな~眼鏡君は? 聖水の件とブルムンド、ドワルゴンの商人の流通規模で8割方予見しただろうに」
苦虫を嚙み潰した顔で俺を睨む眼鏡。
「2割もありませんよ、ファルムス大司教が動くかもと思っただけで……流石に憶測が過ぎますよ、リヴェルさん」
「流れからしても起こる可能性があるのに聖水の件は商人にも知られている。今頃、耳の早い教会連中は顔真っ赤だと思うけど? おまけにドワルゴンの交易ルートを見事にぶっ壊したからな。でも壊したのはガゼル兄貴自身なんだけど……ファルムス王嫌われすぎだろ」
「あーもう! そういう話はあとだあと! 村を壊すぞ、偵察の早馬が来ちまう」
村人を移動させようと外へ出ると、風音とコルヌが喧嘩をして村を破壊していた……。
「あのさぁ……」
「仕事が早いこって……誰だあのつえー姉さんは」
「狼の方は確か風音さんという名前ですね。はて? あの女性は存じ上げませんね」
俺は頭痛を押さえながら、緑同士は相性がいいと勘違いした己を恥じる。
「すみません、皆さん! 思い出のある家を……壊す予定でしたけども」
「い、いえ。話には聞いてましたから大丈夫ですリヴェルさん! 凄いですね! あの女性」
キラキラした目でコルヌを見つめるエマさんは、頬を紅葉させて嬉しそうに語る。
喧嘩は終わってないし、早く非難させよう。
向こうではエチゴーヤとミラノが仕切ってくれている。
イングラシアの土地を買えたのもエチゴーヤのおかげだ。
酒の契約と紙の販売にミラノの魔道具契約と、色々関わってるから素直に協力してくれている。
食料の生産や多少の訓練など、革命軍での仕事なんて腐るほどあるからな。
「皆さん移動をお願いします! こちらの門を潜れば革命軍の拠点に出ますので! 担当のミラノ、エチゴーヤの支持に従ってください!」
俺が治療した母親をおんぶし、軽く頭を下げて次元門を潜っていくエマさんを見送る。
言い争う二人は言動を察するに、アップルパイの取り合いで喧嘩をしているようだ。
「コラ! お前ら! 喧嘩を今すぐやめないと一生おやつはゴブテのビスケットだぞ!!」
二人はピタリと霊気と魔力を収め、ダッシュで俺の前までくる。
「いやですね~主様。私と珍獣は仲良しですよ? なあ、珍獣?」
「そうです! この駄天使と仲良く遊んでいただけです主様!」
「誰が堕天使だこの駄犬!」「珍獣って貴方の方がよっぽど珍獣じゃない!」
「そうか、そんなにゴブテのおやつが好きか……俺は一生お前達におやつは作らんからな?」
顔を青くした二人は土下座と伏せをする。
「それだけはご勘弁を!!」「お許しください主様!!」
「仲直りしろ! 早く!」
「すまんな風音、少し大きめのアップルパイを取っただけで怒るような短気とは思わなくてな」
「いえいえ、こちらこそごめんなさい。私の分まで手を付けるほど卑しい女とは普通思わないじゃないですか」
仲良く? 見えない速度で背中を叩き合うが時間がないのでこれでよしとするか……。
天使は自我が薄く、感情に乏しい所為か心が揺さぶられるような旨い食事に目がない。
まあ、それを言ったらオベーラも大概で、ワッフルでよくティアに威圧するからな……。
「次喧嘩したらシオンの料理フルコースな?」
「わふぅ……」「クゥ~ン」
解体時に保存してあった魔物の血をヨウム達は辺りにまき散らしていく。
「うぐっ! 臭! こりゃーあと片付けが大変ですぜヨウムさん」
「口じゃなく手を動かせカジル! 片付けはチビ助がやってくれるんだと!」
「簡易な防壁を瓦礫で作りました! 皆さんこちらへ」
ゲルドと斥候がもうすぐここにたどり着きそうだ。
メラで辺りに火を付けるが、ゲルドの仲間が暴れる時についでに火を消してくれる手はずだ。
「打合せ通りに! もうすぐゲルドが来るよ!」
俺はコルヌの法術で姿を隠し、木の上から観察する。
ファルムスの貴族の斥候が大量の汗をかいて見守っており、腕を組んで祈る兵もいた。
口上を告げた後、ゲルドとヨウムの戦闘が始まった。
『り、リヴェル様! ヨウムの小僧……弱すぎます! 手加減しても吹き飛ばせば大惨事になりかねません!』
『マジ? ちょっとヨウムにスカラ張るわ』
俺は急いでヨウムにスカラを張る。
『ヨウム、結界を張ったが衝撃は残る! 歯を食いしばって耐えろ、気絶したらカッコが付かないぞ!』
『はぁ、はぁ……ゲルドの旦那出鱈目すぎだぞ! クソッ!』
すでにヨウムは受けたダメージを跳ね返す効果のある、刃の鎧で満身創痍だ。
ダメージ1を甘く見ていたか? 演出にはもってこいだと思ったんだが……。
ゲルドの剣の腹がヨウムを捉える瞬間にベホマラーを合わせる。
吹き飛ぶヨウムを部下や眼鏡が身を挺して受け止めるが、威力が殺せず仲良く倒れる。
『おい、鬼太郎! 早く起きるんじゃ』
『だ、誰が……鬼太郎だチビ助。あぁ、全身が痛てぇ……たくっ』
剣を支えに、フラフラと起き上がるヨウムにゲルドは告げる。
「多少は見どころがあるな……小僧。オレも今はジュラの平定に忙しい身だ、俺を倒したければ精々強くなって足掻いて見せるのだな! ガーーハハハハ! い、行くぞオマエら!」
「「ハッ!! ゲルド様!!」」
ゲルドが言い終わる前にヨウムの剣がポキッと折れ、前のめりに倒れる。
少しだけオロオロとするが、何事もなかったように森に帰るゲルド達。
あれ? 貴族の斥候がヨウムを助け起こす事もせずに一目散に逃げ帰ったな……。
ヨウムの覚醒シーンが台無しじゃないか!
打倒オークロードを吠える瞬間に、俺が上空で聖水を撒いて地面の血だまりを消す演出が……チクショウ。
『ご苦労様、ゲルド。これ皆で飲んでよ』
『ありがとうございます。皆も喜びます』
俺は森へ帰る途中のゲルド達の前に酒樽をドガドガっと置いていく。
「うーん、このまま血を消すと夢か幻と思われても困るんだが……でも鑑定で魔物の血とバレるとまずいよな」
「大丈夫じゃないですか? ゲルドさんの妖気を受けて、怯えきった斥候全員が同じ証言をするんですから」
それもそうかと、聖水を撒いて血を浄化していく。
家や畑の残骸をすべて回収して更地に変える。
「回復助かったぜ、チビ助! ハア~俺も結構強さには自信があったんだがな……」
「ククク……次は修行編だな! ハクロウには伝えてあるし、英雄に相応しい強さは身に付けて来いよヨウム」
俺は待てと言うヨウムを無視して、背中を押して次元門へ放り込む。
「今回で自分達の実力を思い知りましたよ……暫くお世話になります、リヴェルさん」
「うん、強くならないと国を変えるなんて夢物語だぜ? 眼鏡君」
「ロンメルです! 強くなったら名前でちゃんと呼んでもらいますからね?」
強さで名前を呼ばないんじゃないんだよ……眼鏡君。
ヨウムの配下150人もとりあえず全員更生施設に送る。
軍として鍛えるなら連携が大事だし、ハクロウにも次元門で師事をするために移動をしてもらえばいいだろう。
「さて俺もイングラシアで一仕事しようかな?」
「ガルルー!」「ガウガウ」
「……」
煩いので後ろを振り向くと、ニコニコと仲良く風音はコルヌに撫でられている。
「このコンビは不安だな……おっと」
「主様!」「主!?」
「助けて! お義兄様!」
上空から落ちてきたドリスを俺は慌てて受け止める。
「どうし……なんだ!? この巨大な魔素は!!」
「ゴホッ……これは
風の渦が巻きあがると、ボロボロになったトライアが姿を現した。
「はぁ!? カリュブディスだと!? フォビオは送ったはずだぞ! おい、大丈夫かトライア!? しっかりしろ! ベホマラー!」
突然真横に崩れ落ちるトライアに、俺は急いで駆け寄るとベホマラーを唱える。
「無茶しやがって、精霊力がカツカツじゃねーか……一体、何があったドリス? おい、ドリス!」
ピタリと停止し、動かなくなったドリスを見て慌てる。
「主様、この精霊は支配を受けているようです。抵抗していますが時間の問題かと……この精霊の本体を直接みないと駄目だな」
コルヌがそういうとドリスの額に手を当て精神干渉をするが効果はない。
「お義兄様! 時間がありません私達姉妹の大木にカリュブディスが宿りました! 姉さんが私達を切り離してくれましたが、ドリスも浸食を受けているようです……私もいつまで持つかわかりません」
『リムル! まずい事になった! 急いでテンペストに戻ってくれ!』
『こっちも手を借りたいんだ! シュナが重症で回復してる余裕がないっ! クソッ!! 次元門で送るぞ!』
俺は家にいるスラぼうに急いでシュナを回復させる。
「あーもう! ベニマルがブチキレだし、手が付けられん! 思考加速!!」
大賢者さん、そっちの状況を教えてくれ!
《告。レッドオーブから炎の精霊が誕生しました。ドラクエの精霊とマスターが即座に判断し、会話を試みるも勇者の試練と称して相手から攻撃をしてきました》
炎の精霊? ドラクエ7の四精霊か? 勘弁しろよ……。
スラぼうには急いでオベーラとベニマルを連れてリムルの救援に向かうための準備をさせる。
回復したシュナが私も付いていくと言い出し、ベニマルと揉めるが時間がない。
お前が死んでもシュナを守れと一喝して、次元門で四人で向かった。
『全員聞け!! ジュラの盟主代行として命令する! 緊急事態だ!
『ゲルドは防衛と迎撃、ハクロウはゲルドの補佐と遊撃、相手は魔力妨害で魔法が通じにくい。物理主体のお前達がメインだ! ソウエイ達は連携して陽動を頼む、光線を飛ばしてくるので一か所に固まるな! あと……トレイニー三姉妹の本体である大木が取り込まれている、それは俺がなんとかするから街の被害を最小限にする方向で動いてくれ!』
ミリムはベル、ハヤテ、ピリノと竜の都だし、ベルには頼りたくないな……。
『ゴブタ、ゴブエモン。お前達に頼みたいことがある』
『おいら忘れられてると思ったっすよ!』『なんなりとご命令を』
『バカ野郎! お前達は最強の盾であり矛だ。危険だが俺に付いてきてもらうぞ』
『了解っす!』『承知!』
嬉しそうな二人の声が返ってくるが、問題はその方法だよな?
『レイン、ちょっと協力してくれよ』
『チーズケーキワンホールで手を打ちましょう』
『はいはい、お酒も付けてやるよ。魔法妨害がある奴の体内に次元門で入るにはどうしたらいいと思う?』
『貴方の次元門は究極能力だから魔法妨害の影響は受けないけど……結界込みの魔法や口から直接取り込ませないと体内で魔法やスキルを発動させると魔素を吸収されて終わるわよ?』
あー魔物の体内で魔法爆発とかできないのか? でもドラクエの魔法は別じゃないか? 次元門はこの世界の法則で動いてるから吸収されちゃうか。
《肯定。巨大生物の体内に次元門を作るのは干渉されて不可能です。相手の支配領域では強固な魔力領域がスキルの展開を霧散させます》
『相手の口内に直接次元門をぶん投げて入れるしかないって事だよな?』
『馬鹿ね、私を誰だと思ってるのよ?』
『マダオ? すみません、なんでもないです。時間がないので手短にお願いします、聡明で御美しいレイン様』
マダオはやめろと言ったでしょ! と憤慨する青の原初様。
罰として温泉の後にマッサージをしろと言われるが、俺も色々揉みまくってやりたいが茜とミソラが妨害してくるから不可能なんですよ、レイン様。
『ハァ……まったく。私の霧で相手を包めばいいのよ。少しでも霧を吸い込めばミストが使えて、私を起点に体内で次元門を設置できるわ』
『さすレイン! じゃーそれでお願いします』
セシリアには悪いが、ドリスやトライアに何かあったらマジで許さんからなクレイマン~!!