「えっ! トルネコさん? 私はリヴェルと申します」
「ほっほっほ、違いますよリヴェルさんトルネゴですよ。お金が必要とのことですし、商人として手助け出来ることがあるなら手伝いますよ」
美人の奥さんがいそうなマハラジャさんが、まさか助けた商人とはな。
リムルに言ったらまた黒歴史がぶり返すぞ。
「しかし、トルネゴさんは早く帰らないと息子さんが心配では?」
「確かに心配ではありますが、事故で歩けなくなりましてな。息子は急ぎ危険な状態というわけではないのですよ。それに商人仲間と馬車で帰りますので、私の都合では帰れないのです」
友人と三人で行商をしているらしく、自分一人だけで帰れないようだ。
野営も馬車で行うので「腕っぷしもない私は、野盗に襲われて野垂れ死にますな!」とのこと。
「まずは古着屋、布、皮がある場所に行きたいですね。その後は食料関係かな?」
「丁度いい服屋がありますよ。ただ、この国は食料を大幅に輸入に頼っていますので、品揃えは期待はできませんぞ?」
知ってる。でも麦、雑穀、ジャガイモくらいはあると思うんだよね。
調味料も酒好きな国だし辛い系があるかも。
一番欲しい醤油か味噌があれば最高なんだが‥‥。
原作で、米は何処で手に入れたんだろ? やっぱりトレイニーさん経由かな?
農具、鍛冶道具、大工道具、作業道具、あと油も欲しい。
駄目だ‥‥。
リムルがいないと風音だけじゃ、収納容量が全然足りないわ。
道すがら、トルネゴが妻自慢を延々と繰り返し話しかけてくるので、少しイラっとしながら適当に相槌を打つ。
「家のネーネの料理は絶品でしてな! ぜひリヴェルさんにも食べさせ‥‥おぉ、ここですよ。店主! いますかな」
古着屋に辿り着くなり下着と服を男女50着ずつ購入。
店長さんに大量購入でオマケしてもらい、金貨1枚を支払っておつりが大銀貨5枚だ。全部で5万円だね。
「リヴェル様、流石にこれ以上は入りません」
困り顔で風音が言ってくる。
「そうだな、一度リグル達の元に行って荷物を預けるか」
ついでに外の連中にも飲み物や食事を届けよう。
「トルネゴさん、私は街の外にいる仲間に荷物を一度預けに行くので、少し失礼させていただきます」
「わかりました。私も昼食を取ろうと思いますので、中央通りのルイーザの酒場で待ち合わせしましょう」
色々と突っ込みたいところだが、グッと耐える。
俺は屋台で飲み物と串焼きを買い、リグルたちの元に戻った。
「我々の食事は気にかけずとも大丈夫ですのに‥‥ありがとうございます!」
「「ありがとうございます!」」
買ってきた荷物を中心に、ゴブリンや狼たちに食事を配った。
俺と風音も並んで食べ始める。
仲良さそうにゴブリンたちは、ペアの狼に串を抜いて食べさせているので和む。
「それじゃ〜皆! 荷物は任せたよ。まだ買うものは沢山あるから度々戻るけど、今晩は宿に泊まると思う。皆は野宿なのにすまんな」
「いえ、慣れていますから大丈夫です。どうか、リヴェル様もお気を付けください」
串焼きを食べ終えた俺たちは、中央通りのルイーザの酒場にやって来た。
「リヴェルさん、ここです!」
トルネゴさんが、三人で食事をしているようだ。
「すみません、お客様。お店にペットは困ります」
見た目が12歳くらいのウェイトレスさんが止めてきた。
「風音、外でまっ‥‥」
子犬サイズになった風音がウェイトレスさんを篭絡してしまった。
「大人しくしているので、来店を許してください」
「可愛すぎる‥‥しかも喋れるんですね」
ちゃっかり風音はウェイトレスさんに、クッションで高さを調節した椅子を頼んでくれた。有能すぎるだろ、お前。
トルネゴの居るテーブルに着くと挨拶が始まった。
「紹介しますぞ、こちらのでかい男がスコップで、その隣にいるのがロレントです」
「スコップだ。元騎士をしていたが膝に矢を受けてしまってな。引退後はこいつらと行商をしている」
「僕はロレント。しがない商家の三男坊だよ」
突っ込み待ちだろうがそうはいかんぞ! 耐えるんだ俺! いいや限界だ、押すね! と頭の中で、ツッコミスイッチを押そうとするおじさんを、頼りになる少年が抑えてる。
「スライムのリヴェルと申します。トルネゴさんにはお世話になっています」
「ははは、世話になったのはトルネゴの方だぜ? ありがとよ、これでポポロンの足も治る」
「僕からも礼を言わせてください。ありがとう、トルネゴの笑顔を久々に見たよ!」
「良い奴らでしょ? 私には勿体ない友人ですよ。リヴェルさん、この度は本当にありがとう」
順番にスコップ、ロレント、トルネゴさんが話すが限界が近い。
試されてる感が凄いんだが気になったのでスコップさんに聞いてみた。
「スコップさん、矢傷なんて魔法かポーションで治るはずでは?」
「普段ならそうなんだが‥‥その時は乱戦中でよ。矢傷以外にも怪我をしていたからポーションを飲んじまってな。矢じりの破片が残ったまま治療しちまってこのザマだ」
軽快に笑いながら膝を叩くスコップを、顔を顰めながら見る友人二人。
「リヴェルさん、中級ポーションなら問題なく破片も摘出されて回復するんです。平民上がりのスコップは貴族から目の敵にされていますからな‥‥」
「大隊長クラスに支給されて当然の中級が低級にすり替わっていて、しかも倉庫番をやっていた奴は戦死っていうね」
トルネゴとロレントが続いて闇深い話をしてくる。
この世界は個人の力が大きいから、隊長クラスだと優遇されるのは当たり前か。
トルネゴ達が、急に辺りを見回して小声で会話し始めた。
「それでリヴェルさん‥‥。申し訳ないですが、二人にポーションの件を話してしまいましてな」
「俺たちにも売ってほしいんだよ、中級ポーション50個ずつ」
「私からもお願いします。一つ金貨2枚で良いですから」
中級ポーションの定価は金貨1枚と大銀貨2枚が普通の相場らしい。
価格が高騰してる現在は、二人も十分儲けが出るみたいなので売ることにした。
2000万という大金を何故二人が持っているのか聞いたところ。
スコップさんは元上司の人からお金を貰い、買い付けに来ていたらしい。
ロレントさんは実家の商会がエルフ国に買い付けに行き、ドワーフ国にはロレントさんがという流れみたい。
「助かったぜ、世話になった上司に顔向けできらぁ」
「えぇ、糞兄貴にマウント取りに行くのが楽しみですよ」
一人黒い笑みをしている、ホイミを使うと死んでしまう病の人を無視してトルネゴさんに話しかける。
「これで三人の用事は済んだってことですかね? 国に帰られるので?」
「そうですな‥‥。穀物や酒も二人が卸ろしてきましたし、目的の品も手に入りましたからな」
「今晩の宿は俺たちが奢るぜ! 明日にはファルムスに戻る予定だ」
「うちの国には魔物は入れませんが、ジュラの森でエルフ・コボルト・ラビットマンとは交易をしていますのでよろしければ一度来てください」
ジュラの森で商品が買えるのはありがたい。
しかし、ファルムスか‥‥難儀な国に住んでるな。
三人とはずっと仲良くしていきたいものだ。
「そういえば、この話知ってるか? ドワーフ国の戦争に魔王が絡んでるらしいぞ」
「あら? 面白そうな話をしていますわね。私にも聞かせてくれませんか?」
スコップの話題に乗ってきた赤髪の女が話しかけてきた。
「何だ? 嬢ちゃんも聞きたいのか?」
「もちろん、
赤いドレスに、赤い髪、異様な雰囲気を持った女が静かに金貨を置く。
「いや、こんな噂話の情報じゃ金は取れねえよ。座りな嬢ちゃん」
「私、ルージュと申します。先ほどの魔王の話をお願いします」
簡単に纏めると話はこうだ。
最初はドワーフ国の内戦、次に見計らったような帝国との小競り合いが同時に起きた。
帝国はいつもは軍事演習にかこつけて海戦。
又は海賊行為で集積所を襲い、鉱石を奪取する。
本格的な戦争は皇帝が許可しておらず、こうした小競り合いは日常茶飯事である。
しかし、今回は海からではなくある方面から攻めてきた‥‥。
「魔王クレイマン‥‥」
ルージュさんが呟くと深く考え込んでしまった。
「ジスターヴ方面からジュラの森の上空をこえて侵入したらしい。商人仲間が見たんだが巨大な何かに乗っていたそうだけど、隠蔽魔法かなにかで詳細までは分からなかったみたいだな」
トルネゴとロレントが続く。
「帝国と魔王が繋がっているということですかな? ジュラの森の遠征失敗は数百年前の話ですからな‥‥」
「空からって帝国の新兵器? それとも魔王クレイマンの飛行魔物か‥‥」
帝国が飛行船の起動実験をしている? 隠れ蓑としてドワーフ国で内戦を起こし、他に目を向けさせ起動実験か、あるいは別の目的が。
しかも魔王クレイマンの仕業に見せかけて?
無くも無いが、虎の子だろう飛行船は? 存在を匂わすだけでもリスクだろうに‥‥。
絶対なにか裏があるな‥‥。
一言も喋らずに深く考え込んでいると、物凄く鋭い眼光でこちらを見ているルージュさんが訊ねてきた。
「そちらの珍しいスライムさんはなにを考え込んでいらっしゃるのかしら?」
「いえ、皇帝の命令は絶対。にもかかわらず軍事行動のようなことをして問題にはならないのかと思いまして」
ますます笑みを深めて訪ねてくるルージュさん。
「つまり皇帝の命令で動いていると? 魔王クレイマンが帝国兵に偽装したかも知れませんよ?」
「それはないでしょう。帝国は世界統一を目的としているような相手です。帝国に偽装することは非常にリスクが高い。その上にドワルゴンの内乱に応じて攻撃を仕掛けるでしょうか? 同盟を組んでいたとしても同格の国力のドワルゴンを相手にし、更に他の魔王を全て敵に回すようなリスクは背負いませんよ」
「魔王は皆が自国を治め、好き勝手してる集団だと思うけど?」
「そこに関しては魔王たちに聞いてみないと分かりませんよ。ははは」
ルージュさんに更に鋭く見つめられ、危機感知がさっきから煩すぎて怖いんだが。
《悪魔の誘惑のスキルを受け、誘惑無効化を手に入れました》
《亡者の煽動のスキルを受け、洗脳無効化を手に入れました》
《悪魔の福音のスキルを受け、混乱無効化を手に入れました》
何だ!? なんだよ!? 一体何が起きている?
ルージュさん超怖いんだがその笑顔‥‥。
「へぇ〜面白いわね‥‥。貴方」
《蟲毒の吐息スキルを受け、猛毒無効化を手に入れました》
《バジリスクの瞳のスキルを受け、石化無効化を手に入れました》
世界の声が聞こえる。
たぶん大ちゃんのキラキラポーンだろうな、状態異常が効かないの‥‥。
「すべての状態異常無効を持っているのかしら? 貴方何者? フフフ」
周りは全く気が付いていないな? 美人なお姉さんに迫られているスライムにしか見えてないなこりゃ。
逃げようとしたら頭を鷲掴みにされて全く動けない。
「あらあら? 何処に行こうというの? 初めて会ったときからずっと私を警戒していたわよね? ね?」
「ひっひえぇ! き、危機感知スキルを持っているので、出会った頃からずっと鳴りっぱなしでした。マム!」
ルージュは静かに舌打ちをし、ゆっくりと俺の頭を離す。
形が変わった頭で泣きながら許しを請う。
「また面倒なスキルを持っているわね‥‥。私は今後貴方に危害は加えない。これでどう?」
「あっ! 危機感知が止みました。姉御!」
姉御は止めなさいと、頭をニギニギされ許された。
突然の事に周りは皆、ポカーンだ。
妙に静かな風音は誘惑されてルージュさんに撫でられている。
「面白いものも見れたし、金貨は差し上げますわ。飲み代にでもしてください、私はこれで失礼します」
三人は高い酒のお代わりを頼み、俺は物凄い大きなため息を吐いた。
「じゃーね。スライムさん、また会いましょう」
ウインクしながら去っていく魔女? 女帝? に戦々恐々としながら俺はさようならと静かに呟いた。
その後にリムルから念話で夜の蝶で宴会をやるから来ないか? とお誘いらしいがその気力は既に無く、酒はこちらでも飲んでいる事や衣服の購入をした事だけ伝えて念話を切った。
酒場が宿屋も兼任してるらしく、すでに料金も支払ってくれたみたいだ。
三人は金貨1枚分しこたま飲んだらしく既に部屋で寝ている。
現在俺は酒場の裏手の井戸の中に向けて叫んでいる。
「ドラクエじゃねーか! トルネコじゃねーか! スコップってなんだよ! 腹いてーわ! 膝に矢を受けてな‥‥。を真顔で言うなや!」
その後も溜まっていたものを大声でハッサンしていった。
トルネゴが酔いながら「自分の店はボンドールにあります!」とか言うから耐えきれなくなった。
レジスト失敗の影響なのか気持ち悪くなった風音が、子犬サイズになりベッドに寝ている。俺もかなり酒を飲んで眠いので隣で横になった。
「ネーネさんやポポロンには会ってみたいな、不思議のダンジョンは凄く好きだったわ」
今更ドラクエ世界だとは思わないけど、もし俺の潜在意識がスキルを通して世界に影響してるとしたら? 俺が一番好きだったドラクエシリーズは4だ。
転スラの世界の魔王にピサロいないだろうな? まさかな‥‥。
俺だけ精神的に疲れ切っているのに、今頃エロフに囲まれて楽しんでいるリムルにモゲろ! と呪いながら風音に寄り添い眠りについた。