キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva 作:シロX
個人的に急ぎ感もありましたが、今後の展開を考えるとあれくらいしないと色々都合が悪いので…
少しずつモチベが上がってます。
今日も好調の朝が始まっていた。
まもるはいつも通り、特にこれと言った変わり映えの無い日常を過ごす。
朝食を食べ、歯磨きに着替え。それが終わればソファーに座ってダラダラと時間の無駄遣いをする。
そんな彼でも何度も時計に目を移しては、時間を気にする素振りを見せている。
今日は喫茶グリッターでうたとなな、プリルンと会う約束をしている。時間までかなり余裕があり、そこまで神経質にならなくても良いが。
「流石に暇だね」
スマホを取り出し、徐にキュアアイドルのライブ動画を視聴し始める。
マックランダーと対峙すれば、いつも目にする光景に今更。それでも、歌って踊る彼女の姿をずっと見ていても飽きはしない。
いつの間にか指でリズムを刻み、鼻歌混じりで次第にテンションが上がりつつある。
そしてサビに突入した時、まもるは勢いよく立ち上がり、声に出して歌詞を綴っていた。簡単にだが、振り付けまでもして気分は有頂天。
家で、今そんなハイテンションでいられるのは1人だからである。
1人ならやりたい放題。誰にも邪魔されず、自分が思うままに歌って踊って。
「絶対! アイド──」
「まもるお兄ちゃん何やってるんですか?」
好きなフレーズ部分なだけあって気合いを入れていたら、そこに居る筈の無いこころが家に上がっていた。
いつから見られていたのだろうか。それなの声量で歌っていたから、確実に玄関までは響いている。いつもは兄という立場から、こんな姿は見せなかったから余計に羞恥心に来る。
そんな彼の姿を目撃したこころはというと、少しずつ口角が上がって瞳を輝かす。
「お兄ちゃんはキュアアイドル推しなんですね!」
「あーいや、まあそうなんだけど……」
「そんなに照れなくても良いですよー! 好きをもっと明るみにしましょう!」
まもるは流していたキュアアイドルのライブ動画を停止させ、自分を落ち着かせる為一度咳払いをした。
動揺を隠せないまま、まもるはどうしてこの場に居るのか尋ねた。
「おはようこころ。今日はどんな用事なのかな?」
「急にいつものまもるお兄ちゃんに戻りました」
「それは置いといて、それで?」
「あ、はい。実はですね、アイドルプリキュアに新メンバーが加わっていたんですよ‼︎」
差し出されたスマホを手に取って画面を見ると、アイドルとは別の子のライブステージの動画が再生されていた。
その別の子というのが、先日アイドルプリキュアとして覚醒したキュアウインクこと蒼風ななだった。
「事前情報が全く無かったから驚いたけど、これもサプライズ商法なんでしょうか……まもるお兄ちゃん?」
興奮するこころとは別に、まもるの表情は青ざめていた。
普通では出回る事など無い映像がそこにあるからだ。
前回のキュアアイドルのライブ動画に関しては、全てプリルンによる騒動だった。しかしそれは、ピカリーネの罰と共に反省をしてくれた。
思いたくはないが、もしかするとまたプリルンの仕業ではないかと疑りを掛けてしまう。
「もしかして、キュアウインクはお兄ちゃんには刺さりませんでした?」
「そんな事はないよ。俺も、こんな短期間での新メンバー参入で驚いていただけさ」
多分だが、キュアウインクのライブステージが出回っている事は本人も周知するだろう。いずれ、この事はピカリーネにも耳に届く筈。仮にプリルンだとしたらまた罰が下されるに違いない。
「女王様も苦労人だな」
「女王様?」
「こっちの話、何でもないよ」
まもるの独り言は一度置いて、こころは何か思い出した風な素振りで肩に掛けている鞄から何か取り出した。
「そうだ、コレも見て下さい」
目の前に出された物にまもるは、顔が引き攣った。それは、よく見るアクリルスタンドのグッズ。しかもそれが、キュアアイドルのもの。
アイドルプリキュアは、プリルンの拡散された動画で世の中に認知はされてはいるがあくまでそれだけ。
アクリルスタンドを作らせているスポンサーもいない。何故こんなものがあるのか不明だ。
「何処でそんなのを?」
「フッフッフ、実はコレ手作りなんですよ!」
「て、手作り⁉︎」
確かに材料さえあれば、個人でも簡単に作れはする。ただ、その質は一般に販売されているものと遜色無い出来栄え。
「他にも缶バッチも作る予定です」
とても器用な子だ。そこまで情熱を捧げられるというのは、ある意味褒められるべきこと。
我ながら、キュアアイドルにここまで根強いファンがいる事に誇らしく思う。
「にしても精巧に作られてるな。誰かに教えてもらったの?」
「ううん、ネットで調べたの。最初こそは失敗ばかりしてましたけど、めげずにチャレンジあるのみで成功しました!」
「キュアウインクのも作るの?」
「当たり前です。この後材料を買いに出掛けるんですけど、まもるお兄ちゃんもどうです?」
今日の予定は特に何も無い。寧ろ暇を持て余してたくらいだ。
久し振りにこころと2人っきりでのお出掛けも悪くないと思い、まもるはうんうんと頷かせる。
「準備するよ。少しだけ待ってて……おや?」
支度しようとすると、固定電話から音が鳴った。
「ごめんこころ、もう少しだけ待ってて」
「はい、いつまででも待ちますのでどうぞ」
慌てて受話器に手取り応答する。
「はいもしもし」
『あ、紫雨さんのお宅ですか?』
「その声……蒼風さん?」
珍しい事にななからの電話だった。しかし今日は確か、うたと一緒に喫茶グリッターにお邪魔している筈だ。
「蒼風さん、うたちゃんの家に居るんじゃ?」
『少し込み入った事情があって、紫雨君を頼って電話借りたの。お願い聞いてくれるかな?』
「まあ、取り敢えず聞くだけなら」
良かった、と小言が聴こえた。ななが、そこまでお願いするなんて深刻な事でも起きているのだろうか。そんな不安が少しだけ積もる。
『実は今、うたちゃんのご両親が不在でお店をうたちゃん1人で回しているんだけど……』
「この時間帯って……まだ客足が少ないと思うけど?」
お昼時に近い時間に差し掛かっているものの、まだ客足が混む時間ではない。それに、うたはお店のお手伝いくらいならこれまでも経験している。ある程度ならば1人で切り盛り出来ると思っていたが。
「俺の助けを呼ぶという事は、何かアクシデントがあったのか?」
『紫雨君も言ってた通りうたちゃんも同じ事思ってたんだけど、今日に限ってお客さんの出入りが多くて。
「そうか……えっ、3人って言った? はもりちゃんも手伝っているの?」
『ううん、はもりちゃんも居ないよ』
頭の中が混乱してきた。うたを除く咲良家全員が不在。ななも手伝っている口ぶりだが、それだとどう考えても2人にしかならない。プリルンも手伝っているのかと思いはしたが、あの子の性格を考えればそういう事はしない。
となると3人目というのは誰になるのか。
「蒼風さん、その3人目って誰?」
『その事なんだけど──』
『ななちゃーん! わたしやカイトさんだけじゃ回せないよー! ヘルプお願い出来る?』
遠くからうたの声がして、重要な部分が遮られてしまった。
電話越しでも分かるうたの焦った声に客の賑わい。今は猫の手も借りたい状態みたいだ。仕方ないが、諸々の真相は行って確かめるしかないようだ。
まもるはソファーに座って待つこころを横目に、ななのお願いを了承した。
「……予定返上して行くよ。待っててね」
受話器を置き、こころにどう切り出せば良いか頭の中で考える。
体全体を振り返らせるといつの間にか、こころの顔が目の前まで迫っていた。
突然の事で思わず足が一歩下がった。
こころは下から覗かせるようにまもるを見つめ、下がった分足を進ませた。
「まもるお兄ちゃん、約束」
「その事なんだけど……」
「……もう、分かりましたー。わたしなんか放って何処へでも行けば良いんじゃないかな?」
用事が出来た事を察したこころは、とうとう拗ねて顔を背けた。仕草はとても可愛く、第三者から見ればほっこりするような絵面にも見えるものの当事者であるまもるからすればショックがデカい。
「これには海よりも深い事情が──」
「もう知りません!」
「今度! 今度のお休みに出掛けよう! 約束!」
回れ右して帰ろうとしたがこころの足が止まり、振り返る。
「本当にー?」
「う、疑り深いね……」
「や・く・そ・く、だよ? お兄ちゃん?」
「命懸けで守ります」
言質が取れてこころの機嫌が一気に良くなった。軽く床を蹴り出して、肩同士をぶつけて軽いスキンシップを取った。
満面の笑みを浮かべたまま、こころはその日を楽しみにして家を飛び出したのだった。
まもるは気を取り直して、うたの家である喫茶グリッターを目指して足を運ぶのだった。
ここまでの拝読ありがとうございました