キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva   作:シロX

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第12話 お手伝い!

 ななに呼び出されてまもるは走って、ようやく喫茶グリッターの前までやって来た。

 電話で聞いていた通り、外からでも分かるくらい客の出入りが多く、それだけで人数も容易に想定出来る。

 今日は別段、祝日や何かしらのお店側で特別な事はしていない筈。本当に偶々、客足が多い日なんだろう。

 

 それはお店側に取ってはとても好都合だが、それに人数が伴っていなければ意味が無い。

 

「助っ人として来た以上、粉骨砕身しなきゃね」

 

 ガチャリ、とお店の扉を開けると、既に満身創痍なうたがふらふらとして重たい足取りで店内を回っていた。

 

「う、うたちゃん大丈夫なの⁉︎」

 

「あっ、まもるくーん! 待ってたんだよー‼︎」

 

 まもるの姿を目にして早々、救世主でも来たかのような大袈裟な態度で泣きついて来た。

 改めて店内を見渡すと、その苦労や涙の訳も納得する。明らかにお手伝い程度でしか済ませていないうたには、かなり負担が掛かる。

 

「取り敢えず、裏に来てもらって良いかな?」

 

「う、うん。分かったから離れてくれると助かる。周囲の目もあるから……」

 

 うたに案内され、お店の奥へと入るとななと電話で聞いていた3人目の人がうたの手伝いをしていた。何処かで見た覚えのある違和感はあるが、地元ではあまり見慣れない人。

 

 自分よりもずっと歳上で、まだまだ青年とも呼べるくらいの見た目やルックスの高さ。加えて慣れた手つきで淡々とお手伝いをこなしている。

 

「どっかで見た事あるんだけど、誰あの人? かなり手際も良いし、その道の職人さん?」

 

「フッフ、聞いて驚いて刮目して! あの伝説のアイドル響カイトさんなんです!」

 

「な、なんだってー⁉︎」

 

 全身に雷が走ったような衝撃が駆け巡った。

 

「響カイトと言えば、今人気絶頂中のアイドルだよね? 老若男女問わず、誰もが魅了する生きる伝説とまで呼ばれたあの!」

 

「それは流石に褒め過ぎかな?」

 

 乾いた笑いと共に噂の響カイトに声を掛けられた。

 

「カイトさん、もう1人の助っ人のまもる君!」

 

「紫雨まもるです。宜しくです」

 

「こちらこそ、今日は宜しくね」

 

 超有名人と会話出来た事で、まもるは今猛烈に興奮している。こういう機会は金輪際、2度と訪れる事は無いだろう。

 喫茶グリッターに来てラッキーと思う反面、本当にこころには申し訳ない事をしたと胸が痛む。

 

「それで、見る限りはうたちゃんとカイトさんが表。蒼風さんが裏方だったから、俺は蒼風さんと一緒に手伝いをすれば良いんだよね?」

 

「それで何も問題ないよ。良いよね、ななちゃん?」

 

「わたしと紫雨君と? あぁー……」

 

 ななは、先日のまもると音楽室でのやり取りを思い出しながら顔を横目で見る。

 まもるはななに見られた事に気付いたが、特に何か気にする素振りは全くなく、何故見られているのかに首を傾げる。

 

 頬を紅潮させて顔に熱が籠る。

 

 そんな彼女のおでこに、まもるは右手を添えさせた。

 

「し、紫雨君どうしたの急に⁉︎」

 

「顔が異様に赤いから熱でもあるんじゃないかって」

 

「そんな事は全然無いから!」

 

「無理してない?」

 

「全然!」

 

 本人が「大丈夫」と豪語している為、まもるはこれ以上の心配は逆に迷惑だと思いその手を退ける。

 

「その言葉を信じるよ。じゃあうたちゃん、カイトさん。俺らは中で頑張りますので表は任せました」

 

「まっかせなさい、大船に乗ったつもりでいて! なんなら、困った事があればわたしを頼ってね!」

 

 そんな訳で素人集団4人で、急遽喫茶店を切り盛りする事となったのだった。

 これがどう機能するか、うた以外心配で気になってしょうがなかった。

 

 

 ◯

 

 

 まもるとななは、基本裏方に回って食器洗いの片手間にドリンクの注文も請け負う形となっている。

 作業は順調。寧ろ快調ともいえるくらい事が上手くいっている。

 器用なまもるに、慎重で丁寧ななな。今のところ、これといった目立つ失敗はしていない。

 

 滑り出しは完璧だ。

 

「この分ならなんとか行けそうだね」

 

「あ、うん」

 

 どうにも様子がおかしいと頭を抱えるまもる。普段の彼女を見る限り、こんなにも心ここに在らずな事は一度も無かった。

 

 折角この前の一件で更に距離が縮まったというのに、これでは去年までとの関係となんら変わらない。

 

「あの、紫雨君。この前の音楽室の事なんだけど……」

 

「うん」

 

「どれくらい意識してる?」

 

「あっ、もしかして」

 

 なながこんなにもおかしな事になっているのは、事故とはいえど異性と接吻を交わした事が原因なのでは。

 その考えにようやく辿り着いたまもるは、急いで謝罪の意を示す。

 

「ご、ごめん。あの時は本能的に手を引いちゃって」

 

「あいや、そういう意味じゃなくて──」

 

「だよな。そりゃいきなりあんな目に遭ったら誰だって愕然とするもんな。あの事故を『仕方のない』って纏めるのも癪に触るし、納得もしないよね」

 

「待って待って。紫雨君、一度落ち着いてわたしの話を──」

 

 相手の事を何も考えていなかったデリカシーの無さをつらつらと語るまもるに、ななの言葉など耳にしない。

 今のまもるからするれば、ななの言葉は全部同情の類いに聞こえる。

 

「これからは、もう少し蒼風さんと適切な距離を──」

 

「──わわわッ⁉︎」

 

 ななとの距離感を改めようとした矢先、表の方からうたの慌てふためく声を耳にした。

 何事かと思わずまもるとなな、2人して顔を覗かせた。

 

 目に映る光景は、トレイに乗せたドリンクを運ぼうとしてバランスを崩すうた。それを片手で受け止めるカイトの姿だった。

 2人して「おー!」と口を溢す。

 

 ただ、お手伝いを普段からしているとはいえこの客の波。見た限り、てんてこ舞いな状態のうたを中心に回すのは非常に危険。それに、このままだとカイトの負担が相当なものになる。

 

「蒼風さん、少しの間だけ俺もうたちゃんを手伝ってくるよ。少し負担を掛けちゃうかもだけど、手が欲しくなったら遠慮無く言って。大丈夫かな?」

 

「あ、うん」

 

 話を遮られた挙句、事態が急転直下。言われるがままになな返事をして、今だけ裏方の仕事を全部任された。

 

「うたちゃーん! 俺も手伝うからお仕事教えて!」

 

 ななは、元気に歩き出した彼の後ろ姿を手を振って見送るしか出来なかった。

 

 ちょっとだけ、ほんのちょっとだけだけど、まもるとの間に溝が出来た事に虚しさを感じる。

 

 1人孤独に、哀愁漂わせたまま食器洗いを再開した。




今回の話でストックが切れました。
今後は出来る限りで早目に更新していきますが、1週間に1本更新出来れば良いくらいのペースになるかもです。

ここまでの拝読ありがとうございました。
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