キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva   作:シロX

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第13話 君だけの色

 阿鼻叫喚と表すのが一番しっくりくるだろう。うたが積極的に対応すればする程、何故か状況は悪化の結末を辿っている。

 ドリンクを運ぶ際にトレイを落としそうになったり、注文の品物の誤配。その他上げればキリがない。

 

 うたが気張れば気張る程空回りし、止まる事なくそれが負の連鎖。それを見かねて、急遽まもるも含めた3人体制での対応。

 

 その効力で一段と良くなった。

 

 しかしそれと同時に、本来うたが請け負う筈の仕事をまもるとカイトの2人で掛け持ちする羽目となった。負担はかなり大きいが、単純なミスが少なくなった分幾分かマシになったのも事実。

 

「まもる君って言ったかな? コーヒーアート、中々上手に出来てるね」

 

「そ、そうですか? 今回が初めてだったんですけど……」

 

 まもるは自分の手元を見る。今回コーヒーアートを初めて挑戦してみたのだが、褒められる程上手くはない。

 可でもなく不可でもなくといった出来栄え。

 

「カイトさんはまた随分と」

 

 一方でカイトの方は、最早お店に提供されているクオリティーと遜色ない出来栄え。流石大人といったところだ。

 

「仕事柄、色んな役を演じたからね。これも、ウェイターの役を貰った時の事を活かしてるだけ」

 

 涼しい顔で謙遜しているが、手捌きを見る限りでは生半可な努力でそこまで仕上げるのは不可能。それ程までに様になっている。

 

 改めて自分のコーヒーアートを見てみよう。

 

「酷いな……」

 

 いくらまもるが器用だからといって、ちょっとやそっと齧った程度ではたかが知れている。

 経験の差もあるが、こればっかりはどうしようもない。

 

「そんな事ないよ。見様見真似で、そこまで出来てるだけでも十分だ。俺には到底出来ない芸当だ」

 

「ありがとう、ございます」

 

 ここまで素直に褒められたのは久し振りだ。これが、響カイトの魅力の一つでもあると改めて実感させられた。

 そして、褒められたらその分モチベーションも上がる。

 

「伝説は伊達じゃないって事か」

 

「はいはいそうですねー。わたしなんかじゃ全然役に立ちませんよーだ」

 

 良い所見せて自分が皆を引っ張って行くつもりだったうただが、逆にカッコ悪いところばかり見られた挙句、足を引っ張る形で迷惑を掛けて少々不機嫌な彼女。

 まもるやカイトは別にそんな事は言ってもいないし、思ってもいない。

 

 それぞれがそれぞれの役割を果たしただけなのだが、どうやらうたはそれが気に入らなかった。

 

 お手伝いのレベルといえど、これまで研鑽して積み上げてきたものを全部ポッと出の2人に全部奪われたから。

 本来なら2人のように出来る人の振る舞いをするつもりだったのに、今は見る影もなく、愚痴を垂れるばかり。

 

「そんな事ないよ。うたちゃんが教えてくれたやり方があったから、今の所このギリギリを保てているんだよ?」

 

「そのわたしが出来なきゃ意味無いよ」

 

 相当拗ねており、まもるの言葉ですら耳を傾けてくれない。

 どう言葉を掛けてやろうか悩ませていると、後ろから小さく肩を叩くななの姿が。

 

「紫雨君、今はそっとしておいた方が良いと思うよ?」

 

「いやでも、このままだとうたちゃんの機嫌が良くならないよ」

 

「じゃあ、何か良い考えあるの?」

 

 考えも何も、それに今頭を悩ませている。故にそんなものは思い浮かばない。

 自信を付けさせるにしたって、今の状態のままだとうたのプライドを傷付けかねない。

 

「無いかもね。でも、それで何もしない理由にはならない。誰かの為に何かをしてあげたいって事に、一々理由が無いと助けちゃダメなのか?」

 

「そんな事はないけど……」

 

 いつものまもるとは少し雰囲気に圧があり、何か気に障る様な事を言ってしまったのではないかと少しばかり俯く。

 

「別に、蒼風さんを責めてる訳じゃないよ。時に蒼風さんの意見も正解な事もある。だけど、俺はうたちゃんを応援したいんだ」

 

「紫雨君にとってのうたちゃんってどんなの?」

 

「そうだな……最近で例えるとなると『推し』ってやつだね」

 

 言葉の意味を理解していないななの背中を、まもるは軽く叩く。

 

「ま、今は駄弁ってる場合じゃないし目の前の事に集中だよ」

 

 それからは、手が止まる事なく皆店内を駆け回ってお店の事だけに集中した。時折、うたからの妬ましい視線が背中に突き刺さっているものの、気に留めず淡々とタスクをこなしていく。

 

 ほどなくして、ようやく和と音が帰ってきた。そのタイミングで後の事はお任せしてもらい、4人のドタバタとしたお手伝いは幕を閉じる。

 

 

 ◯

 

 

「「ありがとうございました!」」

 

 カイトとはここでお別れ。お店を出て、カイトに感謝の言葉と見送りをする為の挨拶を交える。うただけを除いて。

 彼女は未だに「自分ならもっと出来る」という愚痴を溢しながら根に持っていた。

 

「じゃあこれで」

 

「あの、少々良いですか?」

 

 用事は済んだ。カイトが帰ろうとして踵を返した矢先、ななが呼び止めた。

 

「カイトさんは、アイドルとして大切にしている事って何ですか?」

 

 投げ掛けた質問に少し考える。顎に手を添え、考えている素振りを見せた後若干下に向いていた視線を質問者であるななと目を合わせ、その内容に答えた。

 

「俺は、また会いたくなる人でいたいと思ってる。次会う事を楽しみに思ってもらえる人に」

 

 随分と模範的な回答。シンプルで、当たり障りのない、とても当たり前な返し。だけどそれでいて、「ああ、そうなんだ」とどこか納得させるものがある。

 

「他には?」

 

「いえ、ありがとうございました」

 

 カイトは微笑みながら、まもる達3人とお別れした。

 

「気になったけど、何であんな質問を?」

 

「雑誌の記事に載ってたの。カイトさんとお店を手伝ったのも、近くでその姿を見れば何か得られるのかなって。結局分からなかったから直接訊く羽目になっちゃったけどね」

 

「アイドルプリキュアとして、蒼風さんも色々考えてるんだな。まっじめー」

 

「紫雨君がそれ言う? それよりも今はうたちゃんの方だよ」

 

 2人してうたの方へ目を向ける。

 拗ねた原因であるカイト本人が居なくなっても、店内での失敗と良いとこ取りされたのを引き摺っている。

 

 呆れた、なんて言うつもりはない。というより、うたのこういう姿自体初めて目にする。やっぱり、それ程ショックだったのだろう。

 

「うたちゃん、気にする事ないよ。相手は俺達より年上な上、役者での経験が偶々この場で活きた。適応力、対応力、どれを取っても柔軟に対処してたし」

 

「むぅー、まもる君の裏切り者‼︎」

 

 フォローしたつもりがまさかの飛び火。こうなっては、もうまもるでも収集出来ない。

 そんな時、予想外の一言が横から飛び出る。

 

「しょうがないプリ。まもるは全部本当の事しか言ってないプリ!」

 

 プリルンの悪気の無い言葉がうたの心を深く抉り、今の今まで溜め込んでいたものが決壊する。

 

「ま゙も゙る゙ぐーん゙!」

 

 大粒の涙が溢れ、悲痛な叫びと共にまもるの胸の中に飛び込んだ。

 

「プリルンダメだよ。いくらうたちゃんでも、それは傷付いちゃうよ?」

 

「あの、蒼風さん……」

 

 少し、一言だけ余計な部分が混じっていた。それさえ言わなければ、まだうたの心は救われたが。

 

 まもるを抱くうたの腕が更に強くなる。どうやら、うたも拾ってはいけない部分を拾ってしまったらしく、余計に凹んでしまった。

 

 感情の緩急が激しい。

 

 お店の前でそうこうしていると、とある赤ちゃん連れのお客さんがお見えになった。

 

「うたちゃん」

 

 赤ん坊が泣いていた。小さな子が泣いている手前、うたも凛として欲しく肩を叩いて気付かせる。

 

「泣いてる」

 

「こういう時こそ、うたちゃんの出番だよ。誰かを笑顔にさせるのは、うたちゃんの得意な事でしょう?」

 

 ハンカチでうたの涙を拭い、いつの間にか持っていたスプーンを手渡す。

 

「ちょっと良いですか?」

 

 うたは奥さんを近くのベンチに座らせ、赤ん坊との目線を合わせる。

 

「あの……」

 

「少しだけ付き合って下さい。悪いようにはしませんので」

 

 この場の状況に困惑する奥さんをまもるが説得させた後、未だに泣き止まない赤ん坊に語り掛ける。

 

「お姉ちゃんが、君をキラッキランランにしてくれるよ」

 

「それじゃあ行くよー!」

 

 うたも準備万端。まもるが手を叩いてリズムを刻み、それに合わせてうたは発した。

 

 いつものように気持ちのままに歌うのではなく、簡素な歌詞で赤ん坊のご機嫌を取る。

 歌がどんなものか分からない赤ん坊でも、どうやら気持ちが伝わったらしく少しだけ大人しくなってくれた。

 

「良い感じだね」

 

 とうとう赤ん坊は泣き止み、必然的にうたの表情もいつもの輝きが戻っていた。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「いえいえ! これで赤ちゃんもキラッキランランになったね!」

 

 うたが人差し指を出すと、赤ん坊はその指を小さな手で握って笑顔を溢れさせた。

 

「私達はこれで。本当にありがとうございました!」

 

 奥さんが頭を下げてお礼する胸の中で、赤ん坊は無邪気に手を振って別れを告げてくれた。

 

「うたちゃんは、うたちゃんのままで良いんだよ。誰がどうとか関係無い。君だけの色を持っているから」

 

「そ、そう?」

 

「カイトさんにもやれない事を成し遂げた。もっと自信持って良いよ。俺が保証する」

 

「フフ、ありがとうまもる君」

 

 くすりと笑う彼、彼女らに水を差す事を突然プリルンが発した。

 

「ブルっときたプリ!」

 

「マックランダーか。仕方ない、急いで行こう」

 

「こっちプリ!」

 

 プリルンの案内の下で、3人は急ぎその現場まで走り出したのだった。




ここまでの拝読ありがとうございました
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