キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva 作:シロX
騒ぎが起きている場所まで駆け付けると、クリームソーダを模したマックランダーが街中で暴れていた。
しかもただ暴れて破壊しているのではなく、液体を拭き掛けて建造物を溶かし尽くしている。
「また厄介なマックランダーのようだね」
プリルンは瞳を凝らして、マックランダーに囚われている人物を見通す。
「さっきお店に居た人プリ!」
「まもる君はプリルンと隠れてて。ななちゃん!」
「うん!」
まもるはプリルンを抱き抱えその場から離れ、うたとななはアイドルハートブローチを構えて変身する準備をする。
「「プリキュア! ライトアップ!」」
2人同時に変身アイテムを用いて、光りを身に包ませて己を変化させていく。
「「キラキラ、ドレスチェンジ! YEAH!」」
息の合った掛け声、そしてアイテムの使用で寸分の狂いも無く2人は瞬く間に変身を終えて姿と名を変えてマックランダーの前に立ち塞がる。
「キミと歌う、ハートのキラキラ! 笑顔ニッコリ、キュアアイドル!」
「キミと瞬く、ハートの勇気! お目目パッチン、キュアウインク!」
同時に2人のプリキュアが現れた事で、マックランダーは狙いを街から目の前に居る邪魔者へと殺気を露わにさせる。
そして、裏でマックランダーを召喚したカッティーも2人の出現に眉を険しくさせた。
「現れたところで、やる事は街からアイドルプリキュアの始末に変わっただけですぞ! マックランダー!」
カッティーの指示によって、マックランダーはストローからメロンソーダを2人に放出させた。
即座に左右に回避して、その場から離れる。
「うわっ⁉︎」
2人が先程まで立っていた場所を見て、まもるは思わず驚嘆の声を上げた。
頑丈なコンクリートの地面はあっという間に溶かされ、大きな穴が出来上がっていた。
「まるで溶解液だ。軽く付着するだけでも致命傷だから気を付けて!」
まもるの忠告を胸に締まって、改めて気を引き締めるアイドルとウインクの2人。
「うちのお客さんになんて事するの!」
アイドルの怒りの飛び膝蹴りが炸裂。からの回し蹴りを食らわす連撃。
「世界を真っ暗闇にする。たかだか1人程度、誤差の範囲ですぞ?」
「ムッカァー! なんなのあの言い草はー!」
「冷静なってアイドル。相手の挑発に乗っちゃダメだよ?」
ウインクが宥めて、頭に血が昇ったアイドルはすぐさま勢いにブレーキを掛ける。
感情に身を任せ、無作為に突っ込めば敵の思う壺。
「だけどどうしよう。あんな攻撃当たればひとたまりもないし……紫雨君何か良い案ある?」
「って、言われても」
「また来るプリ!」
思考を巡らせている間もマックランダーの容赦の無いスプラッシュ。雨の如く降り注ぐメロンソーダに怯えながら、3人は蜘蛛の子のように散っていく。
マックランダーの攻撃は非常に強力。その上連射も出来て隙が無い。
しかし、攻略の糸口が無いわけでも無い。それは意外とシンプルな答え。
「亀作戦だ!」
「「か、亀作戦?」」
「ウインクのバリアで一つずつ、それでいて丁寧にマックランダーの攻撃を捌いていく。アイドルの手が届くまで、辛抱強く踏ん張るんだよ」
「「そのまんま過ぎない⁉︎」」
これしかない。だけどこれには、ウインクのバリアの耐久がかなりあっての前提である。
一瞬で溶かされてしまっては耐えるも何もない。
「この作戦の要はウインク、君に掛かっている」
「わ、わたし⁉︎」
「大丈夫。俺は信じてるよ、ウインクの力をね」
絶対的な信頼。まもるの屈託の無い瞳と熱意に感化され、自然とウインクの胸の内側から力が溢れてくる。
「分かった。行こう、アイドル!」
実行に移す。まもるは急いで建物の影に隠れ、2人の行く末を見守る。
「ウインクバリア!」
ウインクバリアが展開されるのと同時に、マックランダーの攻撃も再開される。
ウインクバリアにメロンソーダが降り掛かるも、それを跳ね除け、一歩一歩確実に前に進んで行く。
「ここまでは紫雨君の作戦通り。今だよ、アイドル!」
「まっかせて!」
ウインクの背後、合図と共に飛び出したアイドルが一直線にマックランダーへと駆け出して行く。
虚を突いた、と誰しもが思った。が、それはカッティーやマックランダーも同じこと。
「この時を待ってましたですぞ」
マックランダーの目が光る。
「アイドルストップ! 何か狙っている!」
「もう遅いですぞ! マックランダー!」
ウインクが防御に徹し、アイドルが単独で攻撃に回る。どうやら、ここまでの流れを引き寄せられていた。
全部マックランダーの手の平の上で転がらされていた事に勘付くも、一手出遅れた。
マックランダーのメロンソーダが襲い掛かる。そこからアイドルは、咄嗟の判断で行動を起こす。
「こんの!」
アイドルは前に出す足を緩めるどころか逆に早め、飛び込むようにして地面に両手をついた。そのまま全身の勢いを利用し、両腕をバネのようにして一気に引き伸ばして蓄えたエネルギーを爆発させる。
腕のみでの跳躍となったが、それでもなんとか回避には成功した。
そう、"回避には成功した"。
「プ、プリー⁉︎」
「あっ、ちょっとそれは!」
本来アイドルに降り掛かるメロンソーダは、弧を描きながらまもるとプリルンが身を隠している建物に直撃してしまった。
瞬時に溶かされ、形、そして重さに耐え切れなくなった建造物はメロンソーダごと共にまもる達へと雪崩落ちていく。
息を呑む。
「まもるくん‼︎」
迂闊だった。戦闘に夢中になり過ぎて周囲に気を配るのを怠ってしまった結果がこの有り様。
いくら身体能力が上がっているプリキュアとて、今からでは到底間に合う筈が無い。
「紫雨君!」
遅れてウインクも動き出した。
どうする事も出来ない。抗う事もままならない。迫り来る運命に受け入れようと脱力する。
その時だった。
「えっ、誰──」
庇うようにして一つの人影が飛び込み、まもるの窮地を何者かが救った。
崩れ落ちる瓦礫の山を横目に、助けてくれた者に目を向けるとその人はとても意外な人物だった。
「か、カイトさん⁉︎」
「ふぅ、間一髪だったね。怪我は無いかい?」
「無い、ですけど。どうして此処へ?」
「それは──」
カイトが言おうした矢先、まもるの背後からアイドルが覆い被さって会話を強制的に終了させられた。
「まもる君無事で良かったー!」
流石のアイドルも肝を冷やした。張り詰めていた緊張の糸が途切れ、未だ浄化出来ていないマックランダーを目の前にしてもこの様子。
そんな彼女の事を静かに、優しく撫でる。
「良かった無事で。びっくりしたよ」
ウインクも胸を撫で下ろし、安堵のため息を吐いた。
「君達は一体?」
「まもる君、わたし達が引き付けるからその間に逃げて」
まもるは小さく頷き、カイトの手を掴んだ。
「カイトさん、此処は彼女達に任せて俺らは行きましょう」
状況が状況だけに困惑から抜け出せないでいるが、言われるがままにカイトはまもると共に安全な場所へと再度避難をした。
「「これ以上好きにはさせない!」」
ウインクが先行し、マックランダーに足払いで体勢を崩させる。
両手両膝を突いたところにすかさず、サマーソルトの追撃。
身体をのけ反られ、天を仰ぐマックランダーへアイドルが駆け込む。
「アイドルグータッチ!」
ウインクからアイドルへと繋ぎ、トドメに気迫の込もった拳を叩き込んでみせた。
「クライマックスはわたし! 盛り上がっていくよー!」
間髪入れず、アイドルは自分だけのステージを作り上げてマックランダーを逃さぬよう観客席に座らせた。
この場面まで持っていったアイドルの粘り勝ちだ。
「プリキュア! アイドルスマイリング!」
アイドルによる豪華なハートの浄化技をモロに直撃したマックランダーは、真っ暗な心からキラキラなものへ晴れて倒された。
フィニッシュは、当然お決まりのファンサービスを提供してアイドルのステージは閉幕となった。
「やった! やっぱりアイドルのステージは最高だな!」
歓喜の声を上げて2人の勝利を祝うも、ゆっくりとまもるの表情が暗くなっていった。
先程まで自分が居た場所へ目を向ける。瓦礫の山だった場所は、瞬く間に元の形に戻っている。
しかし、まもるの目にはまだ瓦礫の山を写し込んでいた。
(あの時、カイトさんが偶々助けてくれたから助かったけど……)
もしもの場合を考え、その先の惨状を想像してしまう。
歯を噛み締め、己の無力さに情け無くなってしまう。
「俺、2人の側に居ても良いんだろうか?」
まもるは遠くへ去って行ったアイドルとウインクを追い掛けに、静かにこの場を後にするのだった。
今回は戦闘だけでした。正直次の話と合併させようかと考えましたが、内容が長くなりそうなので読みやすくさせる為分けましたー。
ここまでの拝読ありがとうございました