キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva 作:シロX
街での騒ぎを終えて、とある海外近くのベンチで合流したまもるとうた達。
チョッキリ団を撃退し、キラルンリボンも回収出来た。これ以上無いくらい完全勝利で幕を閉じたのだが、その内容とは裏腹に4人の空気はとても暗かった。
特にうた。
「元気無いけど、どうしたのうたちゃん?」
落ち込んでいるそんな彼女に、ななが心配になって声を掛けた。
「ちょっと反省」
「プリ? 今日も最高のステージもだったプリ」
「でも、カイトさんが助けてくれなかったら、まもる君やプリルンがどうなってたか分からない。それに、お店の事だって迷惑掛けてばかりで、『ありがとう』もちゃんと言えてないのに……」
今にも泣きそうになる表情に、まもる達はなんて声を掛ければ良いか躊躇する。下手にフォローしたとしても、それがかえってうたを傷付けかねない。
そうなってしまえば、今以上の沼にハマって立ち上がり難くなる。
(こんな時こそ、俺が彼女の事を支えないといけないのに)
友達として、幼馴染として、こんなにも参った姿を見るのは辛い。だからこそ元気の言葉を投げ掛けたいが、見繕った言葉ではどうにも出来ない。
彼女が今、本当に必要とする言葉が出てこない。
そんな時だった。
「あ、れ?」
海風に乗って聴こえる誰かの美声。その声を耳にしたうたは、俯いていた顔を上げる。
「この声!」
その声を頼りにうたは走り出した。
「うたちゃん!」
ななの声も無視して、うたはその声を追い掛けた。プリルンも何も言わず駆け出すうたについて行く。
ななも追い掛けようとしたが、その歩みを止めた。
「紫雨君も行こう?」
まもるが動いていない事に気付いたななが呼び掛けた。しかし、まもるは一向に動こうとしない。
「どうしたの? いつもの紫雨君らしくないけど」
「……俺、2人の側に居て良いのかなって考えてた」
「何で急にそんな事言うの?」
「だって、下手に前に出てしまったせいで2人の足を引っ張っちゃったし。何より、
「そんな事ない!」
荒げた声にまもるは両肩をビクつかせた。ななが、そこまで声を出すとは思わなかったからだ。
「紫雨君は足なんか引っ張ってないよ。それに紫雨君は少し思い違いをしてる」
「思い、違い?」
「『応援しか出来ない』じゃないよ。『応援だって出来る』だよ。皆怖くて逃げている中で、紫雨君だけは必死にわたし達を応援してくれている。それって、とても勇気がいる事なんだよ?」
面と向かってそう言われると、なんだか照れ臭くなる。
「それに、紫雨君の声援。わたしは安心するよ。背中を押されているって言うか、力をくれるみたいで」
「それなら良いんだけど」
「もっと自信を持って! そこ、全然悩むところじゃないよ?」
悩むほどではない。その言葉で少しは楽になった。確かに、無いものねだりしたり、存在の有無に価値観を付けてそれに何の意味がある。
「そこまで言われたら俺も頑張るよ。自信持って応援する。2人の友達として。そして、2人の『ファン』としてこれからも背中を支えるよ」
「頼りにしてるよ」
背中がむず痒い。
いつの間にか、不思議とまもるの悩みの曇りは晴れていた。
◯
2人は話に夢中なっており、うたを追い掛ける事をすっかり忘れていた。その事を思い出して慌てて歌を探しに歩き出した。
「うたちゃんだ……ってあの人って」
うたを発見した。しかし、その入れ違いでカイトもその姿を目にした。何故この場に居たのか疑問だが、恐らく先程の歌声はカイトのものだと勝手に納得した。
すれ違うカイトに2人は頭を下げ、その場で呆けているうたの元へ行く。
「うたちゃん、カイトさんと何話しての? 顔真っ赤だけど?」
「べ、別に!」
「プリ?」
うたから目を離してまだ数分程度。どうやら、先程まで抱えていたモヤモヤは晴れているように見えた。そこだけは3人は安心したが、今度はまた違った動揺の仕方をしている。
相変わらず感情の緩急が激しく、掴み難い子だ。
「その顔、いつものうたちゃんに戻ってる。何を話していたかまでは聞かないけど良かった」
「それはまもる君もでしょう?」
「えっ?」
「まもる君も、表情が柔らかくなってる。さっきまでムスーってしてて、いつものまもる君らしくなかったから」
自分もあんな状態になっていたのに、よく他の人の顔色まで把握して。よく周りを見ている証拠だ。
「気付いてたのか」
「そりゃ勿論幼馴染だからね!」
うたには何でもバレている、なんて感心した。
そんな時だった。まもる達の前に1人の男性が現れた。
「貴女達──プリキュア、ですよね?」
キッチリとスーツを着こなしている大人の男性。
思わぬ呼び掛けに、その場に居る一同は困惑の色を隠せずにいた。
ここまでの拝読ありがとうございました