キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva 作:シロX
まもる達3人はこれまでにない程の局面に出会しており、頭を抱えてはこれからの事を喫茶グリッターで考え話し合っていた。
先日の件「うたとなながアイドルプリキュアなのでは?」という正体がバレてしまったのではないかと、冷や汗をかきながら集まっている。
「周りの人達は、皆逃げて行ってたからバレるなんて思わなかったけど」
見ている人は見ている。だとしても、まさかその正体がバレる相手がよりにもよって大人とは。
同い年や幼い子なら多少見られたとしても誤魔化しはきくのだが、大人となってはそれが容易に出来ない。
「それに」
喫茶グリッターの一階へ目を向ける。そこには、昨日まもる達3人の目の前に現れたスーツ姿の男性。
ご丁寧にうたの家まで特定はおろか、優雅にティータイムまで。
「マズいね。脅されでもしたら、こっちは何も出来ないよ」
「だ、大丈夫だよきっと!」
こういう時のうたの言葉は、基本空回りで終わる事が多いのをまもるは知っている。
「取り敢えず、最後まで誤魔化してみない? 確証が得られるまではわたし達もこの事については内緒って事で?」
「それもそうだね」
変に勘ぐったり追い返すと、逆に怪しまれる可能性の方が高い。
「にしても、どうしてうたちゃん達がアイドルプリキュアだって嗅ぎつけたんだろうね? 俺、そこだけ引っ掛かって」
「多分それ、これのせいかと」
まもるはななの隣に寄り添う形でスマホを覗く。そこには、SNS上で誰も作った覚えのない動画チャンネル、そしていつの間にかアップロードされているキュアウインクのライブ映像。
「えぇ、何でぇ?」
まもるはうたに疑いの目を向ける。
「違う違う!」
「じゃあまさか?」
今度はななへと。
「1人でそんなアングルは取れないよ」
「だよな。んじゃ、誰なの?」
「ねぇーまもる君。わたし達ばっかり疑っているけど、まもる君はどーなの?」
回り回って最終的にまもるへと視線が集まる。
「俺も2人のステージを撮れるなら撮りたいよ」
まもるも違う。これで、誰が犯人なのか完全に闇の中になってしまった。
しかし今直面している問題はそこではない。
「お取り込み中の所失礼します」
3人で話し合っている最中、噂のスーツ男性が割り込んできた。不意の事で驚き、慌ててプリルンを背中に隠すまもるとうた。
「私、田中と申します」
「あ、どうも」
ご丁寧な挨拶と自己紹介。その際、1枚の名刺も差し出された。
名刺を受け取り、マジマジと見ているととても違和感のある文面を目にした。
「『アイドルプリキュア マネージャー』?」
「はい、アイドルプリキュアのマネージャーを務めさせて頂きます」
「マネージャープリ?」
「「「……えっ、マネージャー⁉︎」」」
一瞬思考が停止してしまったが、プリルンの復唱で我に返りまもる達3人は同時に驚愕の声を店内に響かせた。
◯
これは由々しき事態である。キュアアイドルとキュアウインクの正体を看破したでは飽き足らず、今度はその2人のマネージャーをやると言い出した。
うたとななは、プリルンと共にピカリーネと相談。そして、田中と呼ばれる謎の人物をまもるが一時的に引き受ける形となっている。
「田中さん、でしたよね? 貴方は一体何者なんですか?」
「先程も申し上げました通り、アイドルプリキュアのマネージャー──」
「それはさっき聞きました。そういう意味ではなく、俺は貴方の素性の事を言ってるんです」
誰も知らない。そんな薄気味悪さも覚える得体の知れない相手に、こうして対面で接しているだけでも気分が悪い。
アイドルプリキュアに関しては、外部に秘密を洩れないよう細心の注意を払っていたのに結果この有り様。
「なるほど、確かにこちらとしても少々説明不足でした。申し訳ありません」
「あ、いえ」
自分の非に対して素直に謝罪して、どうも調子が狂う。根は良い人、というより真面目なんだろう。そんな印象さえ感じ取ってしまう。
「私は、プリルンと同じキラキランド出身のタナカーンと申します」
キラキランド出身という事は、目の前に居る田中ことタナカーンは妖精。
これもまた、関係者にしか知り得ない情報まで口にしている。
だとしても、気になる点が幾つかある。
「いやいや、それはあり得ない。百歩譲ってタナカーンさんがキラキランド出身だとしても、明らかに見た目からして違うじゃないですか」
「この世界での装いです。仮に妖精の姿で出歩けば、どうなるかはご想像出来ますよね?」
「それはまあ……」
確かに、妖精の姿のままで人間の居るこの世界を出歩けば悪目立ちしてしまうのが目に見えている。
事実、プリルンもそうならない為にぬいぐるみのフリをして今日まで過ごしているのだから。
「名前もタナカーンでは日常を過ごすのも弊害があり、田中という偽名で通していますので、そう呼んで頂けると幸いです」
聞いた限りでは、アイドルプリキュアを知っててもおかしくはない説明。ちゃんと筋は通っている。だけど油断はならない。
「信じてくれましたか?」
「いいえ、チョッキリ団という可能性だって捨て切れない」
「……随分と慎重なんですね」
「当たり前です。口からデマカセなんて幾らでも吐けます」
本当にキラキランド出身であるのならば、女王であるピカリーネがそれを証明してくれる。言質が取れるまでの間は、決して心を許してはならない。
「情報を掴むだけなら、直接キラキランドを襲撃したチョッキリ団にだって出来ます。勿論『誰かになりすます』事も可能」
保証が取れるまでは、まもるも一向に引く気はない。戦いにおいて、情報はなによりの武器だから。
田中は一息吐く。それはいつまで経っても信用しないまもるに対しての呆れや諦めとかではなく、中々その牙城を崩せない事に対しての困惑からでたもの。
「俺、何か間違った事言ってますか?」
「いえ、警戒心を持つ事は大事です。危機に瀕している今だからこそ、それはとても重要なこと。ですがいずれ、貴方にも判って貰えますよ」
田中は不適にも眼鏡を掛け直したタイミングでだった。2階からうたが顔を覗かせてまもるを呼び掛けた。
「まもるくーん、その人キラキランドの人でプリルンの知り合いだってー!」
どうやら、今の今までの話は全部本当みたいだった。怪しさ満点以外の何者でもなかったが、ピカリーネと直接話したうたがそう言うのであれば信じる他ないだろう。
「疑ってごめんなさい」
「いえ、先程私が申したように当然の事を貴方はしただけ。それ程、彼女達を心の底から大切にしている何よりの証拠」
「でも、あれだけ言っておいて結局田中さんは本当の事しか言ってなかったから。余計に申し訳無さと恥ずかしさがいっぱいで……」
「恥じる事はありませんよ」
田中は席を立ち、気にする事は無いと風に肩に手を置く仕草をした。
その振る舞いで、ようやくまもるの肩の荷が降りて軽くなった。
「疑いも晴れたという事ですので移動しましょうか」
「移動? 何処へ?」
「この町にあるキラキランド出張所です」
「出張所⁉︎ そんなものまであるの⁉︎」
「積もるお話もありますし、なにより此処では話せるものも話せません。行きましょう、案内します」
次から次へと知らない世界が広がっていく。尽きない秘密、好奇心、出来事に疲れを感じつつもまもる達は田中の後ろについて行くのだった。
そして案内された場所は町から少し外れ、あまり人気の無い深い森の奥。ひっそりとあるファンシーさのある建物だった。
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