キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva   作:シロX

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第17話 マネージャー

 キラキランド出張所に到着して早々、まもる達は田中について、そしてこの出張所の存在理由について聞き出していた。

 

 そして、その質問全て律儀に答えてくれた。

 

 先ず、まもる達が住んでいるはなみちタウンは、古い時代よりキラキランドとは姉妹都市としての深い繋がりがあった。

 此処では、田中曰く異変があった時のパトロールとして構えているとのこと。

 

「なるほど。チョッキリ団の動きもあり、あの拡散されている動画を観てアイドルプリキュアである2人に接触した、と」

 

「概ねそうですね」

 

「なら、尚更解せないです」

 

 眼鏡を光らせている田中に、まもるはどことなくモヤっとしている気持ちがある。

 

「でしたら、事情を説明した上でもっと早く接触出来た筈です。なのに何故今更なのか、理由が知りたいです」

 

 田中は指を2本立てた。

 

「先ず1つ、確証が保てなかったから。仮に見当違いの人に声を掛けてしまったら、アイドルプリキュアだけではなく我々やキラキランドの存在まで知られてしまう恐れがあります」

 

「それは、まあ、似たような事をさっき聞きましたか……」

 

「2つ──」

 

「ま、待って下さい!」

 

 ななが田中の話に割り込み、一旦会話をストップさせた。これには田中も首を傾げる仕草をした。

 

「どうしました?」

 

「少しだけ待って貰えますか?」

 

「蒼風さん?」

 

 ななは一度まもるに視線を向ける。何か思う事があったのか、眉を顰めてまもるの腕を取り部屋の端へと移動させる。

 

「紫雨君、何に怒ってるの?」

 

「何でそう思うの?」

 

「だって、田中さんの事さっきから睨んでいるから。気に障るような事でもあったの?」

 

「……別に、俺はただ気になった事を口にしただけで。もしかして、結構顔に出てた?」

 

 うん、と大きく、力強く頷いた。

 

「田中さんを困らせちゃダメだよ?」

 

「困らせるつもりは……」

 

 まもるはその場で蹲り、普段では考えられないような言葉をつらつら口から溢す。

 

「俺はただ、2人が少しでも楽になれたら、少しでも2人に近付く危険を排除したいだけ。だからと言って、周囲の迷惑を被るのを度外視するのはダメだよな」

 

 先程までの発言と態度の数々を振り返り、反省。そして深呼吸をして頭を冷やす。

 彼女達の事は大切だ。だけど、それが行き過ぎては問題となる。

 

「ありがとう紫雨君」

 

「急に何でお礼?」

 

「だって、そんなに必死にわたし達の事は考えてるんだから。でもやっぱり、田中さんのそれとこれとは違うから、あまり思い詰めないで」

 

 ななに諭され、ようやくそこで頭が冷え切った。冷静になって考えれば、何故自分はあんなにも熱くなっていたのか些か疑問。

 どこか焦りでも生じたのだろうか。

 

 その原因を作ったとすれば、先日マックランダーとの戦いなのかも知れない。

 

 両頬を叩き、目を覚まさせる。

 

 「よし、お待たせしました」

 

 まもるとななは席に戻る。話を再開させようと田中が口を開く時、まもるは頭を下げる。

 

「すみませんでした」

 

「何故謝るのですか?」

 

「俺が田中さんの事を不安視して、不快な気持ちにさせてしまった」

 

「私はそのような事は思ってません」

 

「それなら、ありがとうございます。俺からの質問は聞かなかった事で無視して構いません」

 

「ならそのように。これ以上、お互いに気を遣わせても疲れるだけでしょう」

 

 ホッ、とまもるは胸を撫で下ろす。その様を見て、田中は何か観察するような目つきでまもるの事を見ていた。まもるは、その事にまだ気付いていない。

 

「はいはーい! 今度はわたしが田中さんに質問です!」

 

 元気いっぱいに挙手して、うたがずっと気になっていた質問を投げ掛ける。

 

「マネージャーって事は、アイドルをお手伝いする人なんですよね? だったらわたし達が、アイドルプリキュアとしてお仕事をするんですか? だったらキラッキランラン!」

 

「違います」

 

 即答で否定された。

 

「プリキュアの使命はマックランダーを退け、世界を救う事です。こちらの世界では、アイドルタレントのように人前に出る事は避けた方が宜しいかと」

 

「「「は、はぁ……」」」

 

 合理的な考え。言っている事は理解出来るし、正論な為3人は反論する余地が無い。

 

「マネージャーには『管理する人』という意味があります。私は貴女方が、救世主として活動出来るように管理し、サポートします」

 

「な、なるほど? それって良い事なんだよねまもる君」

 

「良い事だと思うし賛成の意見だけど、なんかちょっと圧が強いね」

 

 まもるとうたが瞬いでいると、なながとある事を口にする。

 

「あの、ダメって言われるかも知れないですけど実はわたし達に、仕事をお願いしたいっていうメッセージが来てるんです」

 

 喫茶グリッターで観ていた動画のコメント欄。ななは、そこに書き出されている一文に目を付けていた。

 

 内容としては「プリティホリック」と呼ばれるお店で、新作コスメのキャンペーンをアイドルとウインクにお願いという依頼。

 

 内容は更に続いており、アイドルプリキュアとしての魅力に感動したという熱い言葉も添えられていた。

 

「プリティホリックって言ったら、確か有名なコスメブランドだったよな?」

 

「そうなんだー! まもる君、そういうのもチェックするんだね!」

 

「ああ、まあね一応色々成り行きで」

 

「よし、味方が3人いや、4人になったよ!」

 

 4人、となるとまもる、うた、ななときて恐らくプリルンも含めた数となっているのだろう。

 

「まさか、本当にやるつもりなの?」

 

「やるやる! ね、ななちゃん!」

 

「うん。わたし、キュアウインクになって何かやれる事は無いかって考えてました。だから、それが今チャンスだと思うんです。勿論、この人の力になりたいって言う気持ちも本気です」

 

 ななの熱心なお願いとその眼差し。しかし田中は、軽くあしらう。

 

「人前に出る必要は無いかと」

 

「俺も、そこまでする必要は無いって思うな」

 

「えぇー!」

 

 絶対の信頼であるまもるでさえも、まさかの田中の意見に賛同している。

 でもすぐ、新たな言葉をその唇で綴った。

 

「ただ──それでアイドルプリキュアの活動にも支障が出るくらいなら、出た方が良いんじゃないって思う。例えばそう、モチベーションの問題とかね」

 

 田中は顎に手を添えて深く考え込む素振りを見せる。田中自身もその部分に関しては考慮している。考慮し、配慮をした事も含めて出る必要は無いと判断した。

 

 田中はうたとななの瞳を見通す。

 

「問題が無い、という訳ではありませんが、そこまで言うのでしたら致し方ありませんね」

 

「それってつまり?」

 

「良いでしょう。私も出来る限り協力します」

 

「「やった!」」

 

 うたとななはお互いにハイタッチを交わして喜びを最大限まで表現した。

 

 初めての、それもアイドルプリキュアとしてのお仕事。2人は心躍らせる。

 

「しかし、返信していきなり訪れるのは些か良くありません。ですので、一旦アポを取りましょう」

 

「田中さんだけ下見に行く感じになるのですか?」

 

 ななの疑問に田中はすぐに答える。

 

「いえ、皆さんにもご同行をお願いします」

 

「『皆さん』って、流石にいくらなんでもそれは無理ですよ。だって俺達子供ですから」

 

「そんな事はありません。子供という立場を上手く利用すれば良いのです」

 

「あ、もしかして職場体験とか?」

 

「それもまた正解ですが、障害となり得る問題が出てきます」

 

 上手い口実だと思って答えたななだったが、それでも満点の解答ではなかったらしい。じゃあなんて言えば満点の答えになったのか。

 

「マネージャー見習いとして出向きます。これなら、気兼ねなく堂々と現場に干渉出来ます」

 

 学生らしく職場体験の案も良かったが、確かにその方がまだ自由は効く。しかし、中学生の身でそのような都合良く行くとも思えない。

 

「深く考えても仕方ないか」

 

「まもる君は考え過ぎたよ! 大丈夫大丈夫、わたし達はちゃんと上手くやれるから!」

 

「それもそうだね。田中さん、宜しくお願いします」

 

「では、私の方から連絡しますので少し待って下さい」

 

 

 ◯

 

 

 田中が連絡を入れてからもののたったの2時間程で、プリティホリックのお店に足を踏み入れた。

 

「こういうの初めてだから緊張するね」

 

「うんうん!」

 

「2人共」

 

 ヒソヒソと話すまもるとうたに、ななは静かに注意を促す。ピシャリと2人は雑談を止め、お仕事を紹介してくれた目の前の相手に集中する。

 

 このプリティホリック宣伝担当で、アイドルプリキュアにお仕事を依頼して来た人物の森こはる。

 

「今回、マネージャー見習いのお三方も力になれると思い連れて来ましたが宜しかったでしょうか?」

 

「勿論大丈夫。こちらとしても、人数が多い程助かります」

 

「咲良うたです!」

 

「紫雨まもるです」

 

「蒼風ななです。今日は宜しくお願いします」

 

「早速ですが、本題に参りましょう!」

 

 自己紹介を終えて早々に、こはるはお店に出す予定のサンプル品を2つまもる達の前に並べた。

 

 それぞれピンク色と青色でリボンの形をしたコスメ。どれも一目見た時の輝きは一級品。細部に拘った作り。淡い色も足され、色彩がとてもバランス良く取れている。

 

 男のまもるでさえも「可愛い」とポツリ溢す。

 

「この春の新作リップのキャンペーンで、CMに出演してもらいたいんです」

 

「これがリップ、こういう造形俺好きかも。あっ、ところでその撮影というのは何処でするんですか?」

 

「此処です。丁度はなみちタウンに新しくオープンするので、撮影は此処で行います」

 

 言われてからやっと気付いた。通りでまだお店は準備の段階で、店内は忙しなく業者の方々が行き交っていた。

 

「オープン初日はとにかくインパクト。そこで今巷で有名になっているアイドルプリキュアを抜粋したって事か」

 

 とはいえ、最近話題になっているアイドルプリキュアにお店のスタートを切るのを任せるとは、中々に肝が据わっている。普通なら、もっと有名人を起用して客を呼び寄せる方が手っ取り早い。

 

「流行りに乗っている今だからこそ、なのかも。勉強になります」

 

「おぉ、まもる君が真面目に勉強してる」

 

「俺はいつだって真面目だようたちゃん?」

 

「う、うんそだねー」

 

 和かに向ける笑顔だが、悪寒が走ったうた。

 気を取り直して、改めてサンプル品に手を伸ばす。

 

「あ、これリップがハートの形してるよ!」

 

「本当だ、可愛いね!」

 

 外側だけではなく、中のリップも拘り抜いて作られていた。

 

 感服したうたは、いつものあの言葉を口にする。

 

「キラッキランラン!」

 

「それ、それです!」

 

 うたの何気無い一言に、こはるが食い気味に反応をした。

 

「今回のコピーは『プリティアップでキラッキランランなわたし!』で行きたいんです! 宜しいでしょうか?」

 

 キュアアイドルの言葉を借り、それを今回のキャッチフレーズとして採用。アイドルプリキュアでの起用CMするにあたって、その選定は満点なフレーズ。

 

 しかしながら、未だ許可を得ずに考えた内容。その事を心配しつつこはるは許可の方をお願いした。

 

「……問題ありません」

 

 田中の一言で正式に決まり、こはるは更に有頂天な気持ちとなる。

 

「あの質問なんですけど、その撮影っていつからなんですか?」

 

 話を本筋に戻して、1番気になっていた事をまもるは質問する。

 

 対してこはるは、少し俯き、申し訳なさそうに口を開いた。

 

「それがですね、結構ダメ元でのお仕事依頼でしたので、突発的な事も相まってスケジュールがギリギリでCM撮影は明日……」

 

「「「明日⁉︎」」」

 

 いくらなんでも急過ぎて、まもる達3人は声に出して驚いた。もう少し日を跨いでの撮影かと身構えてた分、その驚きようは大きい。

 

「た、多分大丈夫だよね2人共?」

 

「「大丈夫!」」

 

「あの」

 

 勝手に3人で話を進めていた事に、田中からの視線が突き刺さる。それに、今さり気なく自分達がアイドルプリキュアだと自ら示唆してしまった。

 

 こはるはそれに気付いていないのが不幸中の幸いだった。

 

「スケジュールに関しても大丈夫です。では明日、キュアアイドルとキュアウインクのお2人をお連れしますね」

 

「ありがとうございます!」

 

「ではお任せしますね、まもるさん」

 

「はい……えっ、何で⁉︎」

 

 今その場の流れで返事をしてしまったが、ここはどう考えてもマネージャーである田中だ。なのに何故まもるに任せたりするのか。

 

「貴方にも明日は同行してもらいます」

 

 こうして、急遽決まった初お仕事。振り回されつつも待ち遠しい気持ちが先に込み上げ、明日を楽しみにするうたとななだった。




ここまでの拝読ありがとうございました。
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