キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva   作:シロX

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今回は物語を進ませるべく、少し長めの内容となっております


第19話 前兆

 業務用のビデオカメラを模したマックランダーは、今か今かと暴れたくてウズウズしていた。

 

 そしてまた、田中は初めて目にするチョッキリ団の姿を目にして表情を険しくさせている。

 

「あれがチョッキリ団か」

 

 アイドルプリキュアの姿を目にしたザックリーは不敵なる笑みを浮かべ、マックランダーに指示を出した。

 

「ザックリやっちまえ、マックランダー!」

 

「マックランダー!」

 

 レンズ部から高出力のエネルギー砲が速射される。突然の攻撃に反応し、対応するのはウインク。

 皆の前に達、アイドルハートブローチに手を添えた。

 

「ウインクバリア!」

 

 鉄壁を誇るウインクバリアがマックランダーの砲撃を完璧に受け止めた。

 しかし近くに居たまもるや田中、プリルンは助かりはしたがここまで近くに居たら2人の足手纏いになってしまう。

 

「助かったよウインク!」

 

「ここはわたし達に任せて。まもる君は田中さんを安全な場所に避難させて!」

 

「行こう、アイドル!」

 

 アイドルとウインクが飛び出し、3人が巻き込まれないようマックランダーを誘導させる。

 遠くに行くのを目にしてから、まもるも言われた通りこの場から離れる準備をする。

 

「田中さん行きます、よ……ってあれ⁉︎」

 

「タナカーン⁉︎」

 

 田中に目を向けるが、すぐ隣に居た筈がその姿は何処にも無かった。

 プリルンが田中を呼ぶ声で気付いたが、1人でプリキュア2人を追い掛けていた。

 

「嘘、田中さん!」

 

 まもるはプリルンを抱き抱え、慌てて田中を連れ戻そうと更にその後を追い掛けた。

 結局、アイドルの言葉を無視して3人はそのまま危険へと自ら足を踏み入れて行ってしまう。

 

「田中さん、ダメじゃないですか!」

 

「ですが、彼女達は必死に戦っている。それから目を背けて逃げ出す事は」

 

「それはそうなんだけど……」

 

 危険と隣り合わせ過ぎる。まもるも人の事は言えない立場だが、あまり距離が近過ぎると前回の様にアイドルとウインクが戦えないまもる達を庇いながらの形になってしまう。

 そうなってしまうと、必然的に動きに制限が掛かる。

 

「マックランダー‼︎」

 

 マックランダーの咆哮と共に砲撃が無造作に放たれた。地面を抉り、建物を破壊する。そのせいでアイドルとウインクは近付く事すら許されず。

 

「アイドル、ウインク頑張──へっ?」

 

 声援を投げ掛けた時だった。ウインクが偶々避けたエネルギー砲が、まもる達へと一直線に向かって来た。

 

「そんな何で⁉︎」

 

 3人は別の場所に避難しているとウインクは思い込んでおり、回避する事に躊躇が無かった。実際、回避行動を起こすまで存在が気付かないくらい。

 

「来るプリ! 早く逃げるプリー!」

 

「ですが間に合いません!」

 

「いや、間に合う!」

 

 まもるはプリルンと田中を突き飛ばして、エネルギー砲からの射線上から逃した。

 これで2人は最悪風圧で吹き飛ばされる程度で済む。しかしまもるは違う。

 

「まもる君!」

 

「紫雨君!」

 

 アイドルとウインクはすぐさま切り返し、駆け付けようと脚に力を込める。それでも今からでは遅過ぎる。

 

 助けもない、今度こそ終わりの鐘が鳴る。だがそれでも、だとしてもまもるは信じている。

 

「アイドル、ウインク!」

 

 ファンの声が届き──いつか彼女達の力になるとまもるは信じている。

 そして、この状況下から救い出してくれると。

 

 だからこの声は決して絶やさない。

 

「──頑張れ‼︎(・・・・)

 

 その瞬間、まもるの内側からとてつもない力と悲鳴が全身を駆け巡り、それが外部に放出される。

 それはドーム状の形となって現れ、あの強力なマックランダーの砲撃と衝突。

 

「何⁉︎」

 

「紫雨君⁉︎」

 

 轟音と共に砲撃が弾かれ、糸も容易く防いだ。ザックリーだけではなく、ウインクを始めアイドルや田中までも驚きを隠せないでいた。

 

「アイドルプリキュアでもない、あんな奴にオレのマックランダーの攻撃が効かないだぁ? ザックリ言って信じられねぇ!」

 

「なんだが分かんないけどやっ──」

 

 自分の意思とは関係無く、危なげな場面を乗り越えたのも束の間。まもるは急な脱力感に襲われ、両手両膝を着かざる羽目になった。

 

 加えて、身体が異常事態を引き起こす。

 

「何、これ……息が苦しく……それに、頭が割れそう‼︎」

 

 心臓を強く握られた様な感覚、酷い耳鳴りで頭痛まで引き起こし、足の指先から頭のてっぺんに掛けて急激な筋肉の伸縮をして熱を発生させている。

 

 明らかに何かがおかしい。全身からあらゆる悲鳴を上げている。

 

「まもるさん⁉︎」

 

「待ってて紫雨君!」

 

「今向かうから!」

 

「構うな!」

 

 まもるは声を荒げ、心配して駆け寄ろうとするアイドルとウインクを静止させる。

 

 全身に鞭打って、田中に肩を借りつつ無理矢理上体を起こした。

 

「2人にはやらないといけない事がある。それを先にするんだ」

 

「で、でもまもる君の様子が」

 

応援は最後まで絶やさない(・・・・・・・・・・・・)から、気にしないでやっつけて!」

 

 息も絶え絶え、1人でまともに立つ事すら困難。そんな自分すら顧みずマックランダーを倒す事を最優先としている。

 

 2人は多少迷いはしたがお互いに顔を見合わせ、やるべき事をする。

 

「だけどどうする? 今のままだと、マックランダーに攻撃するどころか近付く事すら難しいよ!」

 

「アイドル、攻撃は最大の防御って言う言葉があるの。あれ(・・)をやろうよ!」

 

「『あれ』? あーアレね! オッケー!」

 

 ウインクが何をやろうとしているのか、瞬時にアイドルは理解してウインクの後ろに立ち位置を変えた。

 

「へっ、何企んでんのか知らないが小細工が通用すると思うか!」

 

 ザックリーが指を鳴らすと、マックランダーはレンズ部にエネルギーを集約し始めた。

 

「次の一撃で終わらせてやるぜ!」

 

 その言葉通り、集約させているレンズ部には高密度のエネルギーの塊が誕生しようとしている。

 恐らく放たれればこの辺り一帯は吹き飛ぶ。

 

「ウインクバリア!」

 

 まだ攻撃されていない。それよりも早くウインクはバリアを展開させた。そのバリアのすぐ側にアイドルが立ち、右腕を豪快に振り回しており何やら準備をしていた。

 

 なのだが、アイドルは眉を顰める。

 

「ねぇウインク、このバリアちょっと大きくない?」

 

 見上げるアイドル。ウインクバリアの大きさは普段の1.5倍。

 勿論当の本人であるウインクもそれには気付いている。

 

「うん、なんか今日はいつもより力が溢れて」

 

「ウインクも? わたしもさっきから力が有り余ってて」

 

溢れ出る力の正体に見当付かずで「まぁ、いっか!」と楽観的な2人はそのまま続ける。

 

「いっくよー! アイドル──」

 

 アイドルが足を踏み込んだ瞬間地面が割れ、大気が揺れ、右拳に風が纏われる。

 

 深く息を吸い込み、全身に酸素を巡らせる。そして、脇を締め、身体全体を大きく、そして拳は肩の内側に捻り込む様にして渾身の一撃を打ち放つ。

 

「グータッチィィ‼︎」

 

「舐めるなよ! マックランダー発射!」

 

 マックランダーが撃ち放つと同時にアイドルもウインクバリアを殴り飛ばした。

 

「「えっ?」」

 

 バリアが軋む音がする程の威力に目を見張ったが、それ以上に驚きなのがアイドルグータッチで及ぼした周囲への影響。

 衝撃で建物の窓ガラスが一斉に砕け散り、爆発でも起こしたかの様な轟音が街中に響き渡る。

 

 殴り飛ばしたウインクバリアは時速数百キロの速度で、マックランダーが撃ち放ったエネルギー砲と正面から衝突。

 

「馬鹿め! あの時とは違うんだよ! なんせ出力が──」

 

 などと、ほざくザックリーだったのだが、その自慢のエネルギー砲は拮抗とする勝負の間も無く簡単に押し返される。

 

 そして、とうとうウインクバリアがマックランダーに激突し、カメラを盛大に破壊した。

 無造作に散らばる破片、剥き出しとなり基盤やら細かい部品が露わになっている無惨な胴体。

 

 一同唖然というか、戦慄というか正に絶句。なんとも言えない空気がそこにあった。

 

「あ、あり得ないだろ!」

 

 ザックリーと同様の感想しか出てこない。実際、あまりの威力にアイドルとウインクは青ざめていた。

 街も街で、台風でも直撃した街並みになっているのだから仕方のない反応だ。

 

「「ヒッ…」」

 

「それはこっちの台詞だ!」

 

 マックランダーはもう満身創痍で動ける状態ではない。

 2人は「倒しても良いよね?」と顔色を伺いながら、ライブステージの準備をする。

 

「く、クライマックスはわたし! 聴いてください!」

 

 若干どもりながらも、何とか言い切ったウインク。

 

 足を踏み締め、荒れた街並みが一瞬にしてウインク専用のライブステージへと空間が変化する。

 

 ピアノを演奏し、ステージ全体に響き渡る音楽に乗って自分だけの美声を皆に届ける。

 先程までの動揺など表情や声に出さず、今自分が出せる最高のパフォーマンスを披露。

 

 美しい青い髪を靡かせ、汗がよりウインクをキラキラと輝かせて最後のロングトーンを迎えた。

 

「プリキュア! ウインククレッシェンド!」

 

 戦えないマックランダー相手に、ウインクの浄化技で追撃。直撃を貰い、マックランダーは為す術もなく浄化されるのであった。

 

 全てが終わり、街並みも元通り。

 

「まもる君大丈夫?」

 

「あ、ああ大丈夫だよ。それよりも、優先すべき人はあっちだよ」

 

 指を指す方向には、マックランダーにされたこはるの影。

 少しだけ戸惑った。目の前の友達か、優しくしてくれた大人。でも、目の前に居る友達の瞳の奥には圧倒的なまでの善意。それに映るのは横たわるこはる。

 

 何を優先すべきかは明白だ。

 

「ウインク、こはるさんの介抱」

 

「紫雨君は?」

 

「まもる君なら大丈夫だよ。だから行こう!」

 

 ウインクは胸を強く握る。

 

「……すぐに戻るね紫雨君。安静にしててね」

 

 2人の背中を見送り、田中がぼそりと呟く。

 

「何故キラキランドの救世主がアイドルプリキュアと呼ばれているのか、少しだけ分かった気がします。この輝きがいつか、キラキランドを救う事に繋がるかも知れませんね」

 

「あの子達、俺の推しです。可愛いでしょう? 輝いてるでしょう? キラッキランランです‼︎」

 

「それは、はい。存じております」

 

 田中は首を傾げる。先程までの急激な不調はもう見られない。

 

「まもる凄いプリ! キュアアイドルやキュアウインクと同じくらいキラキラしてるプリ!」

 

「そりゃ、田中さんが俺の推しの良さに真に気付いたからね!」

 

「ちょっと宜しいですか?」

 

 田中はまもるの手を取り、脈を測る。見た目からした様子の変化はもう無い。好調と呼べるくらいまで回復している、ようにしか見えない。

 脈も正常。呼吸、目もしっかりと前を向いており泳いでおらず異常は何一つ無い。

 

「後日、お話出来ますか?」

 

「はい、出来ますよ」

 

 キョトンとした表情をする。

 

 その後、撮影は無事に終わる。アイドルとウインク、共に懸命に頑張った甲斐もあり内容はとても良い結果を残した。

 

 

 ◯

 

 

 アイドルとウインクのCM効果は絶大だった。プリティホリック開店初日は、行列が出来る程に快調な滑り出しをしていた。

 

 これによってアイドルプリキュアは更に幅広く世間に注目され、認知される様になるだろう。それはとても喜ばしく、誇らしく思う。

 

「それで、まさか話というのが喫茶グリッターでやるとは思いもしませんでした。お客としてね」

 

「ここのコーヒーフロートの味が忘れられなくて、アルバイトとして雇って貰いました」

 

「マネージャーの方は?」

 

「勿論並行で続けます。管理としてのマネージャー、アイドルとしてのマネージャーどっちもです。彼女達のキラッキランランを、もっと間近で見てみたいと思いましてね」

 

「行動力に関しては、その大胆さはうたちゃんと変わりませんね」

 

 まもるはメロンクリームソーダを口にする。

 

「それでお話というのは? まさか、此処でアルバイトしますって言う報告だけじゃ無いですよね……そうですよね?」

 

「ええ。では、本題に移るとしてプリルン」

 

「プリ!」

 

 プリルンは、いつも身に付けている小さなポーチから、アイドルハートブローチを取り出した。

 

「率直に言いますね。まもるさん、アイドルプリキュアになってはくれませんか?」

 

 口に運んでいるスプーンの手が止まる。

 

「俺がアイドルプリキュアに?」

 

「はい、先日のチョッキリ団との戦いで私は貴方を強く推薦します」

 

「また何で?」と口を開こうとしたが、それはあまりにも愚問過ぎる返答。

 

 一瞬とはいえ、謎の力によるマックランダーの攻撃を防御したこと。評価されて当然。それがアイドルプリキュアにになって欲しい言葉の直結。

 

「力だけで判断するのは良くありませんよ」

 

「そんな事ないプリ。あの時のまもるは、うたやななと同じくらいいっぱいキラキラしてたプリ!」

 

 プリルンの言葉で一気に状況が変わる。

 

 プリルンが見たキラキラを元に、田中はまもるを3人目のアイドルプリキュアとして推薦。プリルンの目には曇りもない。言っている事は事実間違いない。

 

「アイドルハートブローチは全部で3つ。その最後を手にする人物、まもるさんに相応しいかと」

 

 差し出されるアイドルハートブローチ。まもるは手を伸ばた。

 

「丁重にお断りします」

 

 出されたアイドルハートブローチを、優しく押し返してアイドルプリキュアになる事を拒否する。

 

「俺、実はアイドルになんてそもそも興味なんてないんですよ。うん、これっぽっちも。うたちゃんを推しているのだって、只単にあの子の魅力に気付いたから。ま、今ではアイドルプリキュアを推しているので『これっぽっちも』なんて嘘言ってますね」

 

「どうしても駄目でしょうか?」

 

「力が欲しい、とは思います。そうすれば、彼女達の隣に立って力になれる事が増えますし、負担も減らせます。最低限、足手纏いにはならない。だけど」

 

 まもるの瞳が鋭くなった。

 

「俺はあくまでうたちゃんの、アイドルプリキュアのファンなんです(・・・・・・・)。ファンがステージの上に立つのはダメなんです」

 

「何故ですか?」

 

「アイドル達の為に用意された舞台の上に、平気な顔して土足で踏み入る事はもってのほか。うたちゃん達のステージは、うたちゃん達だけのステージなんです」

 

「力になりたいと言ってましたが」

 

「別に隣に立つ事が重要ではないと思う。大切なのは気持ちです。隣に立つ事が全てでじゃない。形は様々」

 

 田中からアイドルハートブローチに視線を落とし、少しだけほくそ笑む。

 

「隣に立って『大丈夫?』なんてものも良いですけど、俺はそれよりも後ろから支えて『頑張れ』って気持ちを伝えて応援したいんです」

 

「手にするチャンスがあっても、最初からアイドルプリキュアにはなりたくなかった、と?」

 

「はい。だって俺、ファンなんですよ。ファンはファンらしく、シンデレラが舞台の上で踊り輝く様を素直に応援するもんです」

 

 この頑な意志は絶対に曲げない。例えアイドルハートブローチがまもるを認めたとしても、まもるが手にする事は絶対に無い。

 

「その意志、私も見習わないといけませんね」

 

 田中はアイドルハートブローチをプリルンに返した。

 

「俺の仕事は舞台の上に立つ事でも、ましてやマネージャーとしてフォローする事でもない。俺の仕事はとにかく推し活! 応援する事です!」

 

「余計な時間を取らせてしまいましたね」

 

「いえ、誘ってくれただけでも嬉しいんです。最後のブローチは、相応しい人に託して下さい。夢や希望、憧れを抱いてアイドルプリキュアを目指す無垢な子に」

 

 カラン、と鈴の音が店内に鳴り響き、扉が開いた。振り返ると、うたとななが居た。

 

「ただいま……って、田中さん⁉︎」

 

「本当だ。何で田中さんが此処に?」

 

「えっあれ、田中さんまだ伝えてなかったんですか⁉︎」

 

「はい、これから」

 

 こうして、アイドルプリキュアに正式なマネージャーが着任した。

 これからどう彩られるのか、皆期待を胸に抱いてアイドルプリキュアとしての活動は続く。




ここまでの拝読ありがとうございました
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