キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva   作:シロX

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第32話 デビュー!

 それはあまりにも突然の事だった。

 

 ある日、田中に呼び出されたまもる達4人は大事な報告があると言われてキラキランド出張所に呼び出された。そこで聞かされた内容は、いつもマックランダーを浄化する際に歌っているあの歌が、シングルCDとして世に出したいという事だった。

 

 この件に関しては田中の案ではなく、レコード会社という外部からの声があった為だ。

 

 うた、なな、こころは勿論それを承諾。更にその事を見越してか、田中は既にレコーディングスタジオを出張所内部に用意していた。

 

 そして現在。アイドルプリキュアに変身して、準備が整いレコーディング開始を目前にそれぞれ緊張をほぐしている。

 

「よーっし、歌うぞー!」

 

「アイドル、気合い入れるのは分かるけど屈伸まではしなくてもいいよ」

 

「わたし、ちゃんと歌えるかな?」

 

「ウインクなら大丈夫プリ!」

 

 アイドルにはまもる、ウインクにはプリルンと会話して大分気持ちにも余裕が生まれている。

 一方でキュンキュンの方はというと。

 

「そわそわ……」

 

 収録目前にして、未だ緊張の色が落とし切れていない。落ち着き無く歩き回ったり、かと思いきやソファーに座っては立ち上がってを繰り返す。しまいには、わざわざ擬音を口にしている。

 

 なんというか、第三者からの視点で置き換えると。

 

「キュンキュン、異常なくらい挙動不審だけど大丈夫?」

 

 つい、まもるの口から溢れてしまう。

 

「大丈夫です! 盆踊りなら任せて下さい!」

 

「うん、大丈夫じゃないね」

 

 もはや、これからレコーディングだというのに的外れな事を口にしている始末。

 見かねたウインクは、救済の提案を一つ浮かばせる。

 

「もう少し時間空けてから始める?」

 

 その提案に喉から手が出る程食い付きたかったが、なにぶん収録する準備がもう終わろうとしている。変身もしており、この高まっている雰囲気を壊したくない。それに、今回は皆予定を合わせてこの場に集まっている。いつも3人が集まれる訳ではない。

 

 故に、キュンキュンが取る選択は一つしかない。

 

「か、構いません!」

 

 どもっている。緊張している事はもう隠す気ないみたいだ。

 

「それでは早速やりましょうか。キュアウインク、お願いします」

 

「トップバッターはウインクか。頑張って!」

 

 先鋒に任命されたウインク。名前を呼ばれて初めて緊張というものを得た。少しだけ表情が強張っていたが、まもるのエールと勇気のウインクを貰ってすぐさま和らいだ。

 

 ブースに入り、ヘッドホンを着用。セットされているマイクの前に立ち、田中に合図を送った。

 田中はその合図を受け取り、音楽を流した。

 

 指で小さくリズムを刻み、口を開ける。

 

 

 数分後。ウインクは満足気な表情でブースから出て来た。頬が火照っており、緊張で帯びていた熱が今になって表面に現れたのだろう。

 そして肝心の中身は完璧な仕上がりとなっている。

 

「ふぅ、心臓がずっとドキドキしてたよー」

 

「それでは次は──」

 

「はいはいはーい! 次わたしがやりたーい!」

 

 田中の声を遮って、アイドル自ら挙手をして名乗りを上げた。元気な声と共に、ウインクと入れ違いでブースに入る。

 

 ウインクやキュンキュンと違い、アイドルに緊張の色は無い。それどころか自信満々で、やる気に満ち溢れている。

 なのだが、マイクを目の前にして眉を顰め、少々不満の様子。

 

「それでは始めま──」

 

「待って田中さん」

 

「……またですか」

 

 始まる直前で、まもるがストップを掛けた。曲を流そうとした指を止める。

 

「何か気になる事あるの?」

 

「んー、なんかしっくりこなくて」

 

 立てられている目の前のマイクの周辺をぐるりと回って、呻き声を出す。

 グー、パーとアイドルは手を握っては広げたりとする仕草を繰り返している。その手の動きを見て、アイドルは何か閃いたらしい。

 

「分かった! あっ、ちょっとタンマ!」

 

 アイドルは、隣にあるマイクを手に取った。

 

「よし、これで準備OK!」

 

 どうやら、普段からスプーンを持って歌っている事もあってか、マイクが手に馴染んでいないと違和感を感じての不満顔だったみたいだ。直に持つ事でそれは解決したらしい。

 

「自由な人だ」

 

「それがアイドルですよ!」

 

 まもるからの圧を感じた田中だが、それを無視して本題に進ませる。

 

「では今度こそ始めます」

 

 曲が始まり、アイドルは全身を使って収録に挑んだ。

 

 

 また数分の時が経ち、レコーディングを終えたアイドルがブースから出て来た。

 ハイテンションで歌えた事に、上機嫌なアイドルは未だその余韻に浸っている。

 

「2人共一発でいけたね」

 

「歌のは得意だから!」

 

「残るは」

 

 まもるはキュンキュンの方へ振り返る。

 

「最後に、キュアキュンキュンお願いします」

 

「ひゃい!」

 

 2人の歌声は完成度が高かった。しかし、キュンキュンに取ってはそれは逆効果でしかなかった。手と足が一緒に前に出ており、緊張に限界が達しようとしていた。

 ぎこちなくブースに入り、ヘッドホンをしていつでも歌える準備を整えた。

 

「キュンキュン落ち着いて。いつも通りで良いんだよ」

 

「は、はい! いつも通りいつも通り……」

 

 まもるの言葉を真に受け、余計に拍車が掛かってしまった。

 どうしようかと迷った末、致し方ないと思いつつまもると田中は強硬手段を取る。

 きっと歌えば自然と楽になる。無理に一発取りする必要性はない。失敗する事前提で曲を流す事にした。

 

「曲流すよー」

 

 ボタンを押し、イントロが流れ始めたのだが。

 

「落ち着いて落ち着いて。深呼吸して気持ちをリラックスに……」

 

 曲が既に流れている事に全く気付いていない。集中する事に意識を持って行き過ぎたせいで、ヘッドホンから聴こえる筈の音を認識出来ていない。

 

「キュンキュン?」

 

「はい……あ、あれ?」

 

 ここでようやく曲が流れている事に気が付いた。

 キュンキュンが独り言を呟いている間に、音楽は一人歩きをしてサビに入っている。

 

「いつの間に流れてたんですか⁉︎ 教えて下さいよー!」

 

「それなら、まもる君がずっと教えてたよ?」

 

 ハッとしてキュンキュンは赤面する。

 

「テイク2行くよ。今度は歌い逃さないようにね」

 

 もう一度再生する。手拍子から始まるキュンキュンの曲。今度はしっかりとリズムを刻んでいる。

 口を開け、最初の第一声が発せられる。

 

「ねえキミ゛ッ゛⁉︎」

 

 上擦った声のまま、キュンキュンは出だしで思いっきり舌を噛んだ。悶絶する彼女の姿を見たまもる達は、苦笑いしか出なかった。

 

「まあ、口元が震えてたしなんとなく予想はしてたけど」

 

「しかしどうしましょうか」

 

 田中的には、キュンキュンがここまで固くなるとは思いも寄らなかった。いつかは成功するだろうと思うが、この調子では、その成功がいつになる事やら。

 

 まもるは、キュンキュンの様子を伺いながら顎に手を添えて何か対策を考えている。

 ふと、何か閃いたのか、アイドルとウインクに視線を向ける。

 

「2人共、ちょっといいかな?」

 

 まもるは、2人だけにある提案をした。その話を聞いて2人は了承して深く頷いてくれる。

 

「良いよ! 勿論協力するよ!」

 

「うん、急いで覚えなくちゃね!」

 

「ありがとう。助かるよ」

 

 アイドルとウインクの話が丁度済んだタイミングで、失敗ばかりして落ち込んだキュンキュンがブースから出て来た。

 かなり参っており、目に精気が感じられない。

 

 深い溜め息を吐く彼女にまもるは声を掛けた。

 

「キュンキュン、俺と今から気分転換しないかいっ⁉︎」

 

「あ、いや……今はそんな気分じゃ──」

 

「田中さん、20分……15分だけ外に出て行きますね」

 

「えっ、あはい。キュアアイドルとキュアウインクのお2人が思いの外早く終わりましたし、時間はたっぷりありますから大丈夫です」

 

 田中からの了承も得た。まもるはキュンキュンの手を掴み、颯爽と出張所の外へ飛び出した。

 

「ま、まもるお兄ちゃん待ってー⁉︎」

 

 いきなり連れ出されたキュンキュンは困惑する他なかった。大きな声で訴えているが、まもるはそんな声など全て無視して森の中へキュンキュンを連れ込んで行った。

 

「プリルンも行きたいプリー!」

 

「今はダメだよプリルン」

 

 2人の後をついて行こうとしたプリルンだったが、ウインクが抱き抱えて静止した。

 

 外へ飛び出した2人の背中を見ていた田中がポツリと言葉を溢す。

 

「まもるさんも自由な人ですね」

 

「えーそうかな? わたしはそんな事思わないけど?」

 

 アイドルの言葉に田中は少女呆れた様子。幼馴染だからなのか、まもるとアイドルは何処か近しい何かを感じ取った。




今回の話は、当初の構成とは別方向に走ってしまったのでキュンキュンだけ次の回に回します。なんでやねーん( ᐛ )

ここまでの拝読ありがとうございました
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