キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva   作:シロX

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今回は少々短めです


第33話 キミのためにできること

 まもるはキュンキュンを連れ出して、出張所の裏の林の奥の奥まで歩いて行く。

 キュンキュンは何も言わず、ただその後ろ姿をジッと見てついて行っている。

 

「自然に囲まれるって良いよね」

 

 耳を澄ませば小鳥の囀りが聴こえる。そよ風で木々が揺れ、沢山の葉が織りなす音色。眩しくもあるが、受けると暖かく感じられる太陽の光。

 リラックスするにはうってつけの場所と言っても過言ではない。

 

「ねえ、何処まで進むの?」

 

「もう少し。この先に綺麗な川があるんだ。あ、抜けるよ」

 

 林を抜けた先には、まもるが言っていた通り大きく広がっている川があった。

 太陽の陽の光で水面が反射しており、その川の水も透明度が高く綺麗。

 

「深呼吸してみ」

 

 大きく息を吸い、吐いて自然の空気を全身に行き渡らせる。穢れのない地球の空気が美味しい。心も安らいで癒される。

 

「それじゃあ、遊ぼうか!」

 

「えっ、遊ぶの⁉︎」

 

 まもるは靴を脱ぎ、裾を捲り上げて川の中へ飛び込めれる準備をする。

 まだ春の風が吹くこの時期。水遊びするには少しばかり早い時期だが、そんなのはどうでも良い。暑かろうが寒かろうが、キュンキュンの気分転換さえ達成出来ればそんなのは些細なこと。

 

「冷た!」

 

「夏じゃないんだから当たり前です」

 

「でも気持ち良いよ?」

 

 話通じず。

 まもるは1人川の中へと入り、キュンキュンも入って来るのを今か今かと待っている。目を輝かせて期待している分、小さな罪悪感を抱く。

 

「言ったろ、気分転換だって。偶には肩の力を抜いて、羽目を外して遊ぶのも良いと俺は思うよ」

 

「分かった、分かりました!」

 

 半分諦めた様子で靴を脱いで川の中へ足を浸からせる。ゆっくりとまもるの元へ近付いて行くと、思わぬ攻撃を貰った。

 

「あっぷ⁉︎」

 

 キュンキュンの顔目掛けて川の水を掛けたのだ。当然ながら、キュンキュンの顔は濡れ、チャームポイントである頭頂部のアホ毛は萎れた。

 

「油断大敵だぞ」

 

「や、やったなぁー!」

 

 やられたらやり返す。キュンキュンは両手で川の水を掬い上げて、まもるに水を被せた。

 キュンキュンは今、プリキュアに変身している事もあって掛けた水の量はまもるの倍。全身ずぶ濡れとなり、立ち尽くしてしまう。

 

「あ、あー……ご、ごめんねお兄ちゃん」

 

「キュンキュンがそう来るなら俺だって!」

 

 まもるはキュンキュンの手首を掴んで、そのまま川の中へ引き摺り込んだ。そのまま下半身が浸かりながらも2人はじゃれ合いながら水遊びを堪能する。

 

 

 流石にもうお互いに力尽き、川から上がって息を荒げていた。リラックスする筈が、相当な体力を消耗してしまった。これでは本末転倒である。

 けれど、キュンキュンの顔は出張所に居た時と比べて爽やかなものとなっていた。

 

「はしゃぎ過ぎたね」

 

「全くですよ。あっ……」

 

 ハラリ、とキュンキュンのツインテールが解けて長い髪が顕になる。変身している間はずっと結ばれているから、急なストレートヘアになった時のギャップは凄まじい。

 

「解けちゃった」

 

 サラッとした艶やかな髪、水滴が滴れている事も相まって普段隠れていた色気が滲み出ている。

 キュンキュンのこういう姿を目にするのは初めて。まもるは少しだけ鼓動が高鳴った。

 

「そろそろ時間だし、帰るか。出張所なら髪も結べるし」

 

「うん」

 

 まもるはキュンキュンに手を差し出した。キュンキュンはその手をジッと見つめている。

 

「来る時見てたけど、その靴じゃ歩き難いって思って。転ばないように握っておくよ」

 

「そんな心配は不要です。わたし1人で歩けるって……あっ!」

 

 言った側からキュンキュンは水滴で足を滑らせた。そのまままもるの胸の中にダイブする形で、キュンキュンは転び、受け止められる。

 

「全く、ビックリしたよ」

 

「ありがとう」

 

 しかし、歩いてこれでは手を繋いでもまた同じ事が起きるだろう。まもるは考えて、腰を落とした。

 

「おんぶしてあげる」

 

「そこまでは。それに、この歳で今更おんぶだなんて恥ずかしい」

 

「おんぶされないと俺は動かないよ」

 

 こうなってしまったらまもるは、テコでも動かない。キュンキュンは渋々その背中に身を任せる事にした。

 

 キュンキュンが背中に乗った事を確認したまもるは、ようやく歩き出した。

 

 まもるの背中を間近で見るキュンキュンは感じるものがある。

 昔よりも更に大きく、お節介だけど任せたくなり、何より温かい。軽く頬を赤く染めさせ、温もりを感じる背中に顔を埋める。

 

 

 ◯

 

 

 水遊びではしゃいでいた分、まもるとキュンキュンは出張所に戻るのに約束していた時間より少しだけ遅れた。

 

「ただいまー」

 

「「おかえ、り⁉︎」」

 

 戻って出迎えてくれたのはアイドルとウインクだが、まもるとキュンキュンのずぶ濡れた姿を見て驚愕した。気分転換で外に飛び出したのに、帰れば水浸しとなっていれば誰だって驚きの反応はする。

 

「「何があったの⁉︎」」

 

「川ではしゃいで」

 

「そのまま……」

 

 アイドルとウインクは急いでタオルを手渡した。

 

「ありがとう2人共。それと、少しは歌えるようになった?」

 

「歌う? 一体何の事ですか?」

 

 キュンキュンは乾かした髪を結び直しながら3人に問い掛ける。

 

 まもるはアイドルとウインクとで目配せした。3人はそれぞれマイクを持ち、キュンキュンをブースへと連れ込んだ。

 

「それじゃあ、皆でキュンキュンの歌を歌おうよ!」

 

 アイドルはキュンキュンにマイクを持たせて、田中に曲を流させるように指示する。

 ただ、物事が勝手に進むにキュンキュンは困惑しており、状況を整理出来ずにいた。

 

「紫雨君に頼まれたの。キュンキュンが緊張せず歌えるように、皆で一回歌えば楽しい気持ちのままレコーディング出来るって」

 

「キュンキュンが帰って来るまで、2人で歌詞覚えてんだー!」

 

 キュンキュンを連れ出す直前に、まもるが2人に相談していた事はこれだった。全てがキュンキュンの為にと、まもるがその場ですぐに考え、行動を起こしてくれた。

 

「プリルンも一緒に歌うプリー!」

 

「それじゃあ、4人で盛大に歌おっか!」

 

 音楽が鳴り響き、それに合わせて4人で手拍子を刻む。体が弾み、笑顔が煌めき、わくわくドキドキが止まらない。キラキラが止めどなく溢れて、ブース内は瞬く間に埋め尽くされる。

 

 そして、昂った気持ちをそのままにしてキュンキュンは本番を一発で成功させた。

 

 これにて、レコーディングは終了となった。後は、CDとなって店頭に並ばられるのを待つのみ。

 

 ──の、筈だったが。まだキュンキュンの、こころの波乱は続く。




ここまでの拝読ありがとうございました
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