キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva   作:シロX

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いつもより少し長いです


第37話 掴んだ夢の果て

 次の日の早朝。まもる、なな、こころの珍しい3人での登校でうたを待っていた。しかしただ待っているのではなく、昨日の件の続きを話し合っていた。

 

「夢探しプロジェクト第2弾はどんな感じにしますかね?」

 

「あっ、それならわたし家から本持って来たの」

 

 ななが鞄から取り出したのは「おしごと辞典」の本だった。

 この手の本を手に取って読まないまもるとこころは、中身がどんなものか興味が湧いた。

 

「これ凄いんだよ。400種類のお仕事が載ってあるの」

 

「なな先輩、中身見ても良いですか?」

 

「良いよ」

 

 ななの了承も得たので、こころがページを捲り、隣でまもるがそっと本の中を覗く。

 400種類というだけあって、自分達が知っているメジャーなものからマイナーなものまでズラリと載ってある。

 この中なら、うたのやりたい事が見つかるかも知らない。こころはそんな期待を胸の中で膨らませていた。

 

「あっ、うたちゃんが来たよ!」

 

 ななの言葉に、2人は顔を上げた。

 

 プリルンと一緒に登校していた。手を上げて、挨拶と共に大きな声で名前を呼んだ。

 

「うたちゃーんおはよう! 今日はね、蒼風さんが良いもの持って来たんだ!」

 

「これで先輩の夢も間違いなく見つかると思います!」

 

「あの2人共、あまりハードル上げないでくれると助かるんだけど……」

 

 目の前で談笑する3人を見てうたは、吹っ切れた様子で感謝の言葉を述べた。

 

「3人共、ありがとうね。こんなにも一生懸命考えてくれるなんて、わたしは幸せもんだよ!」

 

「うたちゃんにはいつも助けられてばかりだからね」

 

「うん。わたしは勇気を貰ったし」

 

「うた先輩の願いとあらば、協力は惜しみません!」

 

 思わず涙が溢れそうな。不意に吹く風が4人の髪を靡かせる。

 少し前の自分では見られなかった景色。

 

 ゆっくりを唇を動かし、3人の前で言いたかった事を口にする。

 

「あのね、わたし夢が見つかったの! わたしの夢は──」

 

「ブルっときたプリ!」

 

 直後、プリルンがマックランダーの出現を察知した。

 早朝の登校している途中。4人は学校の事は後回しにしてマックランダーの対処を優先でプリルンの案内の下駆け付けるのだった。

 

 

 ◯

 

 

 マックランダーの出現場所に到着すると、目を疑う光景を目の当たりする。

 

「マックランダーが3体も⁉︎」

 

 マイクを片手に、スピーカーの形を模した同系統のマックランダーが3体。今までに無いパターンに一同は身を強張らせる。

 

「大丈夫。わたし達なら!」

 

 泣き言を言っている暇は無い。うたが皆を鼓舞し、引っ張ってアイドルハートブローチを手にする。

 

「「「プリキュア! ライトアップ!」」」

 

 初めて3人同時の変身。ピンク、青、紫の眩い光が周囲を包み込む。

 

「「「キラキラ、ドレスチェンジ! YEAH!」」」

 

 3人での息の合った掛け声で、瞬きの間にその身を変化させる。うたはキュアアイドル、ななはキュアウインク、こころはキュアキュンキュンへ。

 世間を魅了させているアイドルプリキュアが今此処に現れる。

 

「キミと歌う、ハートのキラキラ! 笑顔ニッコリ、キュアアイドル!」

 

「キミと瞬く、ハートの勇気! お目目パッチン、キュアウインク!」

 

「キミと踊る、ハートのリズム! 心キュンキュン、キュアキュンキュン!」

 

 3人が並び立つのと同じくして、チョッキリ団もカッティー、ザックリーにもう1人女性を加えた3人体制で対峙していた。

 

「女の人? まさか、あの人が3体目のマックランダーを出した人なのか?」

 

「こちらはザックリ言や、オレ達のボス! その名も!」

 

「『チョッキリーヌ』様ですぞ!」

 

「2人だけじゃなかったのか……」

 

「お前達の勢い、今ここで止めてやるよ。チョッキリとね」

 

 チョッキリーヌの言葉が勝負開始の合図。1体のマックランダーが、真っ直ぐアイドル達へと走り出した。

 

「うわっ、こっちに来た!」

 

「プリ!」

 

「紫雨君とプリルンは隠れてて! わたしが受け止める!」

 

 マックランダーはマイクに向かって声を出し、自身の身体であるスピーカーから音符を繰り出してきた。

 遠距離攻撃といえど、正面からの攻撃なら全てウインクが防ぐ。

 

「ウインクバリア!」

 

 音符はウインクバリアの前に突破を阻まれた。

 どんなに数が増えようとも、個々の能力はアイドルプリキュアに軍配が上がっている。いつも通りの動きをしていれば、いずれは勝てる。

 

 そう踏んでいるが、どうもチョッキリーヌは余裕の笑みを浮かべている。それが少々不気味とも思える。

 

「甘いねぇ」

 

 他2体のマックランダーは、スピーカーにコードを挿した。コードから流れるもの凄い圧力。

 察したまもるは背筋を凍らせて危険の知らせを3人に伝える。

 

「何かとんでもないものが来る! 3人共逃げるんだ!」

 

 普段とは別の、焦りの混じった声色にアイドル達は急いで背を向けて逃げ出した。まもるもプリルンを抱き抱えて、共に逃走を図る。

 

「ほら、せーのっ!」

 

「「「マークッッランダァァ!!」」」

 

 見た目は先程と同じ音符型のエネルギー弾。だが中身はまるっきり違う。超高密度にエネルギーが圧縮されており、その大きさも速さも、そして射程距離も倍となっている。

 

「──ッ!」

 

 走って逃げるにしても追い付かれる。避けるにしても、射線上にはまだ逃げきれていないまもるとプリルンの姿がある。ならばとウインクは振り返り、渾身の力を込めたバリアを展開して防御する。

 

 だがしかし。

 

「だ、ダメ!」

 

 バリアに亀裂が入る。

 次の瞬間音符は爆ぜて、脆くなったバリアと共にウインクを弾き飛ばした。

 

 爆発によってウインクはまもるの近くまで吹き飛ばされた。立ち上がろうとするが、かなり深傷を負っておりすぐに前線に復帰出来ずに足踏み。

 

「ウインク大丈夫⁉︎」

 

「わたしは平気。それよりも紫雨君は逃げて!」

 

 ウインクを心配する側で、キュンキュンはやり返した言わんばかりにブローチに手を添えた。

 

「だったら──キュンキュンレーザー!」

 

 拡散するキュンキュンレーザーだが、マックランダー3体は、その巨体に見合わない動きで軽やかに全弾回避。

 

「今度はわたしが──アイドルグータッチ!」

 

 直接殴りに行ったアイドルに対し、マックランダーはそれを2体のラリアットで迎え撃った。

 衝突するアイドルとマックランダー2体の攻撃。拮抗とするのかと期待したが、やはり数的に分が悪くあっさりと返り討ちに遭ってしまう。

 

「皆頑張れプリー!」

 

「これは、思ってた以上に……」

 

 今回は今までとは打って変わって、個ではなく集を主として動いている。実に統率が取れている。チームでの連携を専売特許としていたアイドルプリキュアが、ここまで一方的になるとは想像もつかなかった。

 

「次が来る!」

 

 2体のマックランダーがドタバタと走って来た。身構えるウインクとキュンキュンだが、2人を目の前にして急転回し、左右に散らばった。

 

「待って!」

 

「逃がさない!」

 

 当然二手に別れて後を追い掛けるウインクとキュンキュン。続いてカッティーとザックリーも。

 4人の背中が見えなくなって、そこでまもるは初めて気が付いた。これは悪手だと。

 

「アイドル! どっちでもいい、急いでウインクかキュンキュンと合流するんだ!」

 

「でも!」

 

 これは緻密に仕組まれた罠だ。チョッキリーヌは弱り切った3人を分断して、確実に1人ずつ仕留めるつもりでいる。この状況を生み出すように仕向けられていたのだ。

 

 つまり、最初の一手でアイドルプリキュアを詰めに行っていた。

 

「仕方ない。俺が呼びに行くからアイドルはそれまで踏ん張って!」

 

「そう易々と行かせると思うかい?」

 

 まもるがこの場を一度離脱しようとするが、マックランダーに先回りされて行く手を阻まれた。

 

「後ろで騒いでるだけかと思ってたけど、存外頭の回転が早いんだね」

 

 こうも手の平の上で踊らされていると、生半可な小細工ではチョッキリーヌを出し抜けない。

 安全に、迅速に、それでいて3人を合流させる為の作戦。

 

「思い付かない……」

 

 ウインクとキュンキュンが何処へ行ってしまったのか見当がつかない。ある程度の場所さえ分かれば、合流地点を立てやすい。

 

「まもる君、プリルン危ない!」

 

 策を講じるのに集中しており、周囲の警戒を怠ってしまっていた。目の前にマックランダーが拳を振り上げている。

 

 身の危険が迫っているのはまもるだけじょない。胸の中で抱いているプリルンも同様だ。

 咄嗟にアイドルが割って入り、まもるに向けられる拳を庇って自ら受けに行く。

 

 アイドルの背中に拳が直撃する。殴り飛ばされたアイドルは地面を転がり這い蹲る。

 

「アイドル!」

 

 まもるは、自分の代わりに傷付いたアイドルの側へと駆け寄り、抱き上げて心配をする。

 

「わたしは大丈夫。だから、いつものように応援して。まもる君はわたしが守るから」

 

「だけどこのまま後手に回っていたら──」

 

 お互いがお互いを思い合っている時、アイドルの右耳に自分の意思とは関係無くアイドルハートインカムが装着された。

 

『皆大丈夫?』

 

『こんな使い方も出来るんですね!』

 

「ウインクの声だ」

 

「ウインクだけじゃない。キュンキュンの声も」

 

 アイドルハートインカムから、ウインクとキュンキュン声が聴こえる。どうやら、アイドルハートインカムには遠距離での通信機能も備わっていたらしい。

 

 まもるはアイドルと頬をくっ付けながら、ウインクの話を聞き立てる。

 

『作戦考えたんだけど2人がマックランダーを引き付けて、あと1人がステージでマックランダーをキラッキランランにする』

 

『それならいけるかもです!』

 

「アイドルはどう思う?」

 

 未だ声を出して無いアイドルに、まもるはどうするかの質問を投げ掛ける。アイドルの答えによって、この作戦が実行される。

 

「ううん、一緒にやろうよ」

 

 アイドルが口にしたのは、誰も考え付かなかったもの。

 

「わたし、夢見つけた! 大好きな歌うこと、誰かにキラッキランランになってもらうこと。それをウインク、キュンキュンの3人で、アイドルプリキュアとしてやっていくこと! それが今のわたしの夢!」

 

 この状況下で、笑顔いっぱいで夢を語るアイドルの横顔を見てまもるは呆然としていた。

 

「だから、3人で歌いたい! いいよね、まもる君?」

 

「うん、良いんじゃないかな。それがアイドルの夢なら俺は全力で君の事を、皆の事を応援するよ」

 

「ありがとう。じゃあ行ってくるね!」

 

「頑張れ、アイドル」

 

 アイドルは軽くおでこを擦り寄せて、駆け出して行った。ウインクとキュンキュンが待つその場所へと。

 チョッキリーヌとマックランダーも追い掛けて行く。

 

「プリルン達も行くプリ!」

 

「だね!」

 

 まもるも、プリルンと共にアイドルの後を追い掛けようとしたのだが。

 

「痛った!」

 

 急な激しい胸の痛み、頭痛、耳鳴りが襲った。

 

「大丈夫プリ⁉︎」

 

「俺は大丈夫だから、プリルンだけでもアイドル達のステージを観に行って!」

 

「分かったプリ! まもるの分まで応援するプリー!」

 

 とうとうこの場に残ったのはまもる1人だけ。まもるも、3人のステージを観に行きたいのに体が言う事を聞いてくれない。

 

 膝から崩れ落ち、尚も痛みが続く状態に嫌気がさす。特に、アイドルの事を思えば思う程それは強くなる。そして、頭の中で悲鳴の様なものが鳴り響く。

 

「みんな……」

 

 まもるはゆっくりと、一歩、また一歩踏み出してアイドル達の元へ足を運ばせた。

 

 

 ◯

 

 

 一方でアイドルはというと、やっとの思いでウインクとキュンキュンと合流する事が出来た。

 釣られてマックランダーも3体この場に揃い、最初の盤面に戻った。

 

「始めよう! わたし達アイドルプリキュア3人の初ステージ!」

 

 3人が足並みを揃え、アイドルハートインカムを装着した後、これまでとは異なったステージが展開される。

 

「「「ウー、レッツゴー!」」」

 

 3人の掛け声で3色のスポットライトが一気に照らし出され、これまでとは打って変わっての新曲が披露された。

 

「「「ハートを上げてくよ!」」」

 

 3人が合わせて声を発した瞬間、周囲からステージ全体を覆い尽くす程のキラキラが溢れ出した。練習どころか、合わせた事も一度も無い筈が、3人の息はピッタリと噛み合っていた。

 

 一朝一夕で出来るものじゃない。これを成せたのも、これまで3人が紡いできた時間のお陰。

 

「「「プリキュア! ハイエモーション!」」」

 

 アイドルの夢が詰まった魂の一曲。その全てが凝縮された力は、3人の手から3色のエネルギー砲となって放たれた。

 

「「「キラッキラッター」」」

 

 たった一曲だけで、あれ程悪戦苦闘していた3体のマックランダーを同時に浄化した。その浄化力は目を見張るもの。

 

 

 ◯

 

 

 チョッキリ団は堪らず撤退。新たな絆と共に力を手にしたアイドルプリキュアに、プリルンは大興奮。

 

「3人の歌、凄かったプリー!」

 

「ウインク、キュンキュンの3人でアイドルプリキュアをする事がわたしの夢! キラッキランランー!」

 

 夢を曲として体現してみせたアイドルも興奮止まず。それに、探していた"夢"も見つかって最高の締め括りだ。

 

「これで校内放送にもメール出来る! バッチシだね!」

 

 笑顔でピースサインを作るが、ウインクとキュンキュンに総ツッコミされる。アイドルらしいといえばらしい。

 

「あれ? そういえばプリルン、まもる君は?」

 

「まもるなら……あっ、来たプリ!」

 

 この場に居ないまもるを心配していると、噂をすればなんとやら。まもるがゆっくりとこちらに向かって歩いて来ている姿が見えた。

 

「おーい、まもるくーん! わたしやったよー!」

 

 両腕を大きく広げて歓喜に溢れて、この気持ちを分かち合おうとするアイドル。その隣に居るキュンキュンは、少しばかり首を傾げていた。

 

「何か妙ではありませんか?」

 

 キュンキュンがそう捉えるのも無理はない。アイドルがこんなにもアピールをしているというのに、まもるからの返事が全くない。それどころか、まもるのおぼつかない足取りを見て様子がおかしい事にいち早く察した。

 

「何かあったのかな?」

 

「まもる君、どうしたの──」

 

 アイドルが歩み寄ろうとした時、まもるはなんの前触れもなく倒れた。

 

「まもる君⁉︎」

 

 冗談とは思えない倒れ方に、アイドルは顔面蒼白になりながらもまもるの元へ駆け出した。

 

「どうしちゃったのまもる君⁉︎」

 

 駆け寄り、揺れ動かすも応答が無い。突然の出来事にアイドルの頭の中はパニックを起こしている。こんな事は初めて。

 ウインクとキュンキュンも動揺を隠せず、呆然と立ち尽くしているだけ。

 

「まもる君! まもる君‼︎」

 

 呼び掛けも無駄。無情の空気だけがこの場を支配していた。

 

 悲痛な叫びは、まだまだ続く。




ようやくここまで来た。長かった、ホントに長かった…
えー、次回から主人公動かしていくオリストになります。多分4話予定。長くなる可能性もあります( ᐛ )

お気に入りもちょっとずつ増えて嬉しい限りです。この調子で、評価の方も含め今後も宜しくお願いします。

ここまでの拝読ありがとうございました!
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