キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva   作:シロX

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第40話 シンデレラの魔法

 アイドルプリキュアのステージに乱入した謎のプリキュア・キュアディーヴァは悠々とした様子でこちらを伺っている。

 一体何を考えているのか、まもるには分からない。ただ一つ言える事は、相手はあのチョッキリ団だ。プリキュアだろうとその事実だけは覆らない。

 

 どの様な出方をするのか。

 

「どうしたのよ? もしかして、得体の知れない相手に臆した? それならこっちから攻めたっていいのよ?」

 

 攻め立てたいのは山々だが、ディーヴァの言うように得体の知れない相手に無策で突っ込むのは良くはない。マックランダー相手なら、まだ対処のしようがあるがプリキュアが相手となるといかんせん不用意に手が出せない。

 

「だけど……」

 

 ディーヴァの背後には、弱りきったマックランダーが居る。このまま手をこまねいて、回復の時間を与え続けていたら時間の経過と共にこちらが後手に回る。

 

「アイドル、ウインク、キュンキュン」

 

 まもるは3人の名を呼ぶ。名前を呼ばれて皆振り返る。その表情から察するに、考えている事はどうやら皆同じなようだ。

 

「2人共、行くよ!」

 

 アイドルの合図でウインクとキュンキュンが飛び出した。

 猛進する2人だが、ディーヴァに攻撃を仕掛ける直前で左右に散った。からの、両側から挟み込んで、それぞれ得意なやり方で同時に攻め込んだ。

 

 ウインクは蹴り、キュンキュンは拳。

 

「ま、グループならこれくらいは当然よね」

 

 グループなら、この程度のチーム連携は言葉が無くとも出来て当たり前。

 ディーヴァは特に物怖じなどせず、冷静にウインクとキュンキュンの動きを観察する。

 

「良い動き。でも──」

 

 ウインクとキュンキュンの同時攻撃を、両の腕のみで防いだ。

 

「所詮はその程度。歌姫であるアタシには届かない」

 

「ううん、届かせる!」

 

 アイドルが間合いまで走り込んでいた。急ブレーキからの、アイドルハートブローチをタッチして拳を握り締める。

 

「タイミングバッチリ! 何処にも逃げ場なんて無い。決まった!」

 

 まもるは確信していた。勿論それはアイドル達3人も同様。両手は塞がっており、防御は出来ない。例え間に合ったとしても、ここから次の動作に入るのに僅かな時間を要する。防御を掻い潜り、アイドルの拳が突き刺さる。

 

「アイドルグータッチ!」

 

「そうね、ならこうしようか」

 

 キュッと、右足でアイドルグータッチを蹴り上げて強引に直撃を回避した。

 

「そんなっ!」

 

 技をあっさりと破られ、動揺するがディーヴァはその隙さえも構わず突いていく。

 

 防御から素早く切り替え。ウインクの脚とキュンキュンの腕を掴んでは上に放り投げる。

 拳を握り、アイドルへの反撃へと転じる。

 

 素早く反応するアイドル。両の手で受け止めようと体勢を作り直す。

 

「待ってアイドル! それは囮だ!」

 

 何かにいち早く気付いたまもるだが、もう手遅れ。ディーヴァの動き出しが速い。

 足先を巧みに扱い、僅かな姿勢の動きと体重移動を駆使してアイドルの視界から姿を消した。

 

 アイドルに防御させるよう誘導された。防御に気を取られていたせいで、アイドルはディーヴァの姿を見失っている。

 

「えっ、何処?」

 

「後ろプリ!」

 

「あーあ、ネタバラシなんて空気の読めない妖精ね」

 

 プリルンの言葉で振り返るも、間に合う筈も無く背中を蹴り飛ばされてしまった。

 

「今の動き、どっかで……」

 

 流れの全体を見ていたまもるは、先程のディーヴァの一連の流れに何か見覚えがあった。

 

 ここでようやくウインクとキュンキュンが地に足が着く。

 

「アナタ達じゃ、アタシのステージにすら立てない!」

 

 次の狙いはウインク。足先を使い、あり得ない敏捷性でウインクの目の前まで急接近。反応すら出来ない。気付く頃にはもう対処のしようがない所まで踏み込まれている。

 

「ほらほら、歌姫が目の前に居るのだから少しははしゃぎなさいよ」

 

「変な事言わないで!」

 

 まんまと挑発に乗ってしまったウインクは、動きが大振りになる。捕まえようとしてくるウインクを巧みな足捌きで容易く避け、背後に回り込み、両腕を腰に回した。

 

「まかさとは思うけど……ううん、それよりも早く抜け出すんだ!」

 

 何かを感じたまもるだが、それよりもウインクの心配をする。

 

 ウインクも振り解こうにもがっちりホールドされた状態では、流石に力を入れ難い。

 

 ディーヴァはウインクを持ち上げ、そのままスープレックスで地面に叩き付ける。

 

「はい、一丁あがり」

 

 大の字に倒れるウインクはピクリとも動かない。

 

「ウインク!」

 

 キュンキュンが地面を蹴ろうとしたが、直前でまもるがその肩を掴んで無理矢理静止させた。

 

「迂闊に近付いちゃダメだ。ディーヴァのあの動き、どっかで見た事あると思ったら」

 

「普通の動きに見えますけど……?」

 

「よく見て」

 

 ウインクが倒された事でアイドルが果敢に攻め立てる。その様子をキュンキュンはじっくりと観察する。

 ディーヴァの足使い、呼吸からそのリズムまで全て凝視して。

 

「あの動き、()()()()()()()()()()()()()

 

「えっ⁉︎」

 

 ディーヴァの動き一つ一つが、キュンキュンの姿と重なる。いや、もはやキュンキュンそのものと言っていい程に再現されている。

 

「でも、動きが同じという事は、それだけ次の動作を予測しやすいという事だ」

 

 キュンキュンの動きをトレースしているのなら、それに対応出来るのはキュンキュン1人のみ。難しくも聞こえるが、攻略は案外単純で容易い。

 

 まもるに背中を押されたキュンキュンは地を蹴った。

 

 ディーヴァは左にステップを踏むと、キュンキュンも呼吸を合わせて同じようにステップを踏んで追い掛ける。

 

「へぇー、もう対応するなんて中々筋が良いじゃない。でもね」

 

 右に切り返し、キュンキュンもそれに追従しようと右足に体重を乗せた。が、それを読んでいたのか、再度左へ跳んだ。

 

「なっ⁉︎」

 

 キュンキュンは反応したが、それでも身体が追い付かない。体重を乗せた身体は、もう方向転換する事は不可能。唯一運動を得意とするキュンキュンの身体能力を上回り、左を陣取った。

 

「今度は、こういうのはどうかしら?」

 

 小さく跳躍し、空中で回し蹴り。ステップに跳躍という勢いが二段付いた回し蹴りをキュンキュンは受け止める事が出来ず直撃して吹っ飛んだ。

 

 今の蹴りを見て、まもるは歯ぎしりをした。

 

(今のは()()()()()()()()()()()())

 

 キュンキュンと入れ違いにアイドルは突っ込んで行く。

 拳を突き出すも、2ステップで避けられ、膝蹴りからの踵落としの連撃で返り討ちに遭った。

 

(キュンキュンの敏捷性+ウインクの蹴り。ただでさえ一つでも強力なのに、複合されたら手の付けようがない!)

 

 ここでようやく立ち上がったウインク。膝を振るわせながらも、急いで加勢しようと一歩踏み出した時、既にディーヴァが背後に回り込んでいた。

 

「遅いわよ」

 

「ウインク──」

 

「だから、遅いって!」

 

 ウインクがバリアを張る前に、肩で突進して阻止した。体勢が崩れたところに拳が3発突き刺さる。

 その動きも、まもるの目には一体誰の動きなのかしっかりと捉えていた。

 

「今度は()()()()()()()()()()()!」

 

 力任せだけど、それが真っ直ぐで魅力的にも感じる流れる動き。アイドルの姿とがっちり重なる。

 

 そしてまもるは確信した。ディーヴァの力は恐らく。

 

「コピーしてるのか」

 

「コピー? そんな猿芸と一緒にされたくないわ。アタシがやっているのは編曲(カバー)よ」

 

 アイドル、ウインク、キュンキュンは一度まもるの元へ集まり、どのように攻め立てるのか案を求めた。

 

「紫雨君、わたし達どうすれば良いの?」

 

「相手のペースに合わせちゃ勝てない。こうなったら、3人のペースでステージに立つんだ」

 

 アイドル達の動きをそのままトレースし、更に複合化してより混乱させている。

 呼吸を合わせて立ち向かっても、それがかえって逆効果になるとキュンキュンとの対面でそれが分かった。それなら無理に合わせる必要は無い。

 

「間髪入れずやるんだ!」

 

 3人は頷いた。

 

 本番はここから。反撃開始だ。

 

「どれだけ策を練ろうと関係無い。なんせアタシは歌姫。どんな歌も全てアタシの手のひらの上」

 

 言われずともアイドルが先行した。アイドルハートブローチをタッチして、右拳を光らせる。

 アイドルは手が届く範囲まで接近し、左足で踏み込み渾身の一撃を叩き込もうとする。

 

「アイドル──」

 

 アイドルの掛け声と同じくして、ディーヴァも右拳に黒緑のオーラが纏われている。それも、アイドルと全く動作が同じ。

 

「えっ⁉︎」

 

 アイドルとディーヴァの拳が激しく衝突した。

 

「「アイドルグータッチ!」」

 

 ディーヴァもアイドルと同じ技を繰り出した。それもアイドル以上の力で押し返そうとする。

 

「バカな⁉︎」

 

 驚愕せざるを得ない。戦闘スタイルだけならまだしも、まさか技まで同じく繰り出すとは想像付かなかった。

 まもるもこれには顔を歪ませる。

 

「クッ……アイドル頑張れ!」

 

 まもるが応援するも、それを嘲笑うかの如くディーヴァは拳を振り抜いて吹っ飛ばした。

 

「キュンキュンレーザー!」

 

 アイドルが押し負けたのを見て、すかさずキュンキュンが攻撃を仕掛ける。

 ディーヴァは右手を翳して笑みを浮かべている。何か仕掛けてくる。

 

「ウインクバリア!」

 

 黒緑のウインクバリアがキュンキュンレーザーを阻んだ。その圧倒的防御力で、バリアには傷一つ付いていない。

 

「今度はウインクの技を……」

 

「言ったでしょう? 全ての歌はアタシの手のひらの上。アナタ達に出来て、歌姫であるアタシが出来ない訳ないわ!」

 

「「だったら!」」

 

 ウインクはアイドルの目の前でウインクバリアを展開。そして、アイドルはバリアを前にしてアイドルグータッチの構えを取った。

 

「これならどうだ!」

 

 全身を捻り、その回転に更にアイドル自身の力も加えてウインクバリアを殴り飛ばした。

 

 ディーヴァはゆっくりと方向転換して、ウインクバリア同士で衝突させた。甲高い音が街中に響き渡り、ウインク側のバリアだけが無惨にも砕け散った。

 

「わたしのよりも頑丈なの⁉︎」

 

 まさかのオリジナル以上の強度にウインクは青ざめる

 ディーヴァは動き始める。その予備動作を見てウインクは全員に呼び掛けた。

 

「何か来る気を付けて!」

 

「えーっと、確かこんな感じだっけ?」

 

 ウインクバリアを目の前に、ディーヴァはアイドルグータッチの構えを取った。

 

「待って、それって!」

 

 ウインクは察した。これからディーヴァは何をやろうとしているのがはっきりと知った。

 

「これでどう⁉︎」

 

 見様見真似で、ディーヴァも先程のアイドルとウインクの連携技を繰り出した。それも、パンチの威力、バリアの強度はオリジナルを優に超えている。

 

「アイドルとウインクの連携も編曲(カバー)したのか⁉︎」

 

 ディーヴァが殴り飛ばしたバリアは、アイドルとウインクの横を通り過ぎ、その後方に居たキュンキュンと激突。

 防御をしていたが、踏ん張りが効かずにそのままビルに叩き付けられてしまう。

 

「「「キュンキュン!」」」

 

 許容量以上のダメージを負ってしまい、キュンキュンは強制的に変身が解除され倒れた。

 

「なんとかしなくちゃ!」

 

 こころが倒された事でウインクは焦りが生じ、単独でディーヴァに立ち向かって行く。しかしそれは誤った選択。

 

 ディーヴァも地面を蹴り、お互いの顔が今にもぶつかりそうな距離まで詰め寄った。

 ウインクの腹部に両手を添え、手のひらにエネルギーが収束される。

 

「もしかしてそれも⁉︎」

 

「──キュンキュンレーザー」

 

 零距離で撃ち放たれたキュンキュンレーザーは、ウインクの腹部に直撃した。

 ウインクは膝から崩れ落ち、変身解除まで追い詰めた。

 

「蒼風さん!」

 

 普段の冷静な彼女なら、このような失態はしなかった。

 これで残ったのはアイドルただ1人のみ。数の戦力差をものともしないディーヴァの力の前に、アイドルの気持ちは少しずつ悪い考えをするように傾いてきた。

 

「さてと、残るはキュアアイドルだけ」

 

 ディーヴァの視線がアイドルへ向けられる。彼女は僅かにビクつき、一歩後ろへ下がっていた。

 戦闘能力や表現力だけでなく、気持ち的にも負けの色が付き始めている。

 

 これ以上は、アイドルを壊しかねない。まもるは、たった一つの選択をアイドルに投げ付ける。

 

「アイドル、ここは一度逃げるしかない!」

 

「で、でも、まだキュアディーヴァは居るし。それに、マックランダーだって!」

 

 使命感がアイドルを退かせないでいる。それはとても讃えるべきものだが、今この場にとって一番不必要なもの。

 

「悪いけど、アタシは話終わるまで待つ人じゃないんで!」

 

 ディーヴァが地を蹴り、アイドルに接近する。

 両腕で防御姿勢を作るが、僅かな隙間を突け狙われ顎を蹴り上げられた。その返しで、脳天目掛け踵落としで追撃された。

 

 地面に伏せるアイドルはピクリとも動かない。しかしまだ、変身は解除されていない。

 最後まで油断しないディーヴァは、アイドルを掴み上げてトドメを刺そうとする。

 

「アイドル……ダメだ!」

 

 これ以上は見ていられない。まもるは、自らアイドルとディーヴァの立つステージに上がり込んだ。

 ディーヴァの腕を掴んで、アイドルから懸命に引き剥がそうとする。

 

「アイドルから離れて!」

 

 生身の人間では敵うはずもない。それでもまもるは必死になって足掻く。

 

 敵わないなんて最初から知っている。だからと言って、このまま黙ってアイドルがやられる姿を見るなんて出来ない。

 

「さっきからアンタは一体なんなのよ?」

 

「俺は、キュアアイドルのファンだ!」

 

「あっそう」

 

 アイドルを掴む手が緩んだ。倒れそうになるアイドルを受け止めようとまもるは両手を差し出すのだが、ディーヴァの拳がそれを弾いた。

 

「あ、アイドル!」

 

 力無く倒れる彼女にそれでも手を差し出そうとするも、ディーヴァがその様子を気に入らなかったか、まもるの腹を蹴り上げた。

 

「まもる君!」

 

 四つん這いで悶えながらも見上げるまもるを横目に、ディーヴァは更に精神的に追い打ちを掛けた。

 

「ファン? それなら部を弁えてちょうだい。ファン如きが、歌姫のステージに上がり込むなんて癪に障るわ。それに、アナタの応援がこの場に置いて何か役に立ったかしら?」

 

 ディーヴァの言葉にまもるは俯いた。悔しくて握る拳だが、すぐに緩めた。

 

 彼女の言う事は実に的を得ている。たかだか一般人のまもるの声援が、これまで彼女達の力になれたのかも怪しい。全ては彼女達自身の力なのだ。

 

 ──それでも。

 

「そんな事は分かってる。自分が一番。だけど、それでも俺は、アイドルプリキュアを……キュアアイドルを応援するんだ」

 

「それが何?」

 

 アイドルが立ち上がろうとしたのだが、とうとう体力の底が尽き、変身が解けた。

 

「──シンデレラの魔法は今解けた。夢は夢の中で見るもの。アナタ達が『アイドル』なんて分不相応よ」

 

 ディーヴァは、マックランダーに触れて失望の眼差しを4人に向ける。

 

「興醒めね」

 

 ディーヴァは、マックランダーを連れてその場から消えた。

 

 これは勝利とは程遠いもの。見逃してもらったと言うべきだろう。

 

 これが、アイドルプリキュアの初めての敗北。




ここまでの拝読ありがとうございますさした
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