キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva   作:シロX

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第42話 キミと出逢えた奇跡

 今アイドルは、まもるのキラキラをその身に纏わせている。それも、普通なら見えない筈のキラキラが可視化される程まで、そのエネルギー出力が凄まじい事を証明している。

 ピンク色に輝くアイドルは、これまでとは打って変わって酷く冷静である。アイドルの性格を知る者なら、それはまるで別人。

 

「雰囲気だけじゃないわね。その目つき、より鋭さを感じる」

 

 ディーヴァは、雰囲気の変わったアイドルを観察しながらゆっくりと近付いて行く。

 

「でも、みてくれだけが変わっただけで、アタシには勝てないわよ?」

 

 とはいえ、警戒する程でもない。何をしたか分からないが、小細工をしようとも圧倒的な実力差が一瞬で縮まる事はない。

 

 ディーヴァは拳を握り、自分の間合いに入った瞬間仕掛けようと臨戦態勢。

 

「さて、仕切り直しと行こうかしら──」

 

 その時だった。ふわり、と風と共にアイドルはディーヴァの横を歩いて通り抜けた。

 

「えっ?」

 

 あまりにも自然過ぎて反応すら出来なかった。まるで、最初からそこに居たような奇妙な気配にディーヴァは気色悪さを感じて飛び退いた。

 

 同時に、ディーヴァの頭の中はパニックに陥っていた。

 

 何がどうなって接近したのか。アイドルとの距離は目視で約6メートルはあった。なのに、それをさも当然の如く詰めていた。

 

「歌姫の舞台──ディーヴァ・ステージ」

 

「はい?」

 

「俺が出来るのは、キュアアイドルを応援する事だけだ」

 

「ふざけた事を──」

 

 ディーヴァが言い切る前にアイドルは動いた。それも先程より力強く、より速く。

 ディーヴァは両腕で防御するも、アイドルの拳一つで簡単に弾き飛ばされた。

 

 変わったのは雰囲気だけじゃない。短期間による爆発的な身体能力の向上。それもディーヴァと同等、もしくはそれ以上の力を有している。

 

 明らかに異常だ。

 

「舐めんじゃないわよ!」

 

「アイドル、いけるよ!」

 

 まもるの言葉を耳にしたアイドル。拳は瞬きする間も無く、ディーヴァの腹に減り込んだ。

 上体が前に崩れるディーヴァ。膝で顎を蹴り上げ、その返しで踵で頭部を蹴り落とす。

 

 一切無駄の無い動きに、一つ一つの動作にキレがある。

 

 そこから更にディーヴァの腕を掴んで投げ飛ばす。空中で体勢を整えて綺麗に着地をした。

 

 一連の流れだけでディーヴァは、今まで体験した事の無い息切れをしていた。

 

「多少パワーアップしたからって調子に乗らないでよね!」

 

 一方的に攻められ続けている。それを打開するには、自分も攻めに転じないと勝てない。受けより前に出る。

 

 ディーヴァはキュンキュンの敏捷性(アジリティ)のあるステップで撹乱しつつ、ウインクの脚技でフェイントを織り交ぜながら土煙を巻き起こして視界を封殺する。

 そのまま背後に回り込み、アイドルグータッチの姿勢を作る。

 

 アイドルプリキュアの動き全てを複合させた最高峰のリズム。

 

「どんなに凄かろうと、1人で3人分を相手にする事なんて出来ない!」

 

 完全に不意を突いた。どんなに身体能力が向上しようとも、虚を突いた攻撃なら防ぎようが無い。

 

「貰ったわ! アイドルグータッチ!」

 

 この一撃で決めるつもりでディーヴァは撃ち放つ。

 

「アイドル負けるな!」

 

 ディーヴァの拳がアイドルの背中に炸裂──とはならなかった。アイドルグータッチはアイドルの背中を通り抜けたのだ。

 

「な、何っ⁉︎」

 

 ディーヴァが攻撃したのは、超スピードから生まれた残像。アイドルは背後からの攻撃にも気付いており、絶対にキャンセル不可能な状態にまで持って行かせる為わざと動かなかった。

 

 大きく空振りしたディーヴァは、そこから体勢を整えようと踏ん張る。

 しかし、間に合う筈もない。

 

「そんな馬鹿な⁉︎ ディーヴァ・ステージの効力がここまでなんて!」

 

 考えが甘かった。まもるの力、ディーヴァ・ステージを単なる身体能力向上のものかと勝手に勘違いしていた。もはやそんな次元の話ではない。

 

「アイドルグータッチ」

 

 視覚外からの本家本物のアイドルグータッチが2発炸裂。それもとてつもない速度と威力。

 尋常じゃない痛みがディーヴァの右脇腹に襲い掛かる。

 

 大きく吹っ飛ばされたディーヴァは地面を転がり、対峙して初めて地を這った。

 

 一方でアイドルは余裕の表れなのか、ディーヴァに背を向けてはまもるに笑顔のダブルピースをしていた。

 

「こんな時にファンサだなんて⁉︎」

 

 あからさまに舐められている。

 

「このアタシが……歌姫が舐められてるなんて!」

 

「アイドルがファンサするくらい普通じゃないのか?」

 

「それが舐めてるって言うのよぉ!」

 

 アイドルはまもるを下がらせた。頭に血が上ったディーヴァは癇癪を起こしながら無策に突っ込んで行く。

 

「キュンキュンレーザー!」

 

 無数のレーザーがアイドルの身体に直撃して半身が揺れ動く。強力な攻撃を受けても尚、苦悶の表情すら浮かべない。それどころか、前に突き進んで来た。

 

 前進しながらキュンキュンレーザーを放っていたディーヴァが足を止めた。

 

「何で突っ込んで来るのよ⁉︎」

 

 果敢に向かって来るアイドルに気迫負け。キュンキュンレーザーをその身で受けながらも、アイドルは歩みを止めない。

 

 アイドルとディーヴァの距離が6メートルに差し迫った瞬間、ギアを一段階上げて目の前まで一気に詰めた。

 

 踏み込みが尋常じゃない。同時にディーヴァは一つの事実を見た。

 ディーヴァ・ステージの恩恵を受けたアイドルの射程距離は半径6メートル。それがアイドルの領域(ステージ)

 

「アイドル──」

 

 アイドルがブローチをタッチした。

 

「ウインクバリア!」

 

 まともに食らえばひとたまりもない。即座にウインクバリアで、1枚の障壁を隔たせる、が。

 

 ウインクバリアを展開したその1秒後。あっという間にバリアが木っ端微塵と化して消し飛んだ。

 左の拳のみでアイドルは打ち砕いたのだ。あの強固なウインクバリアを。

 

「アイドルグータッチ!」

 

 砕け散るウインクバリアの中から、アイドルの右拳がディーヴァの胸に突き刺さった。

 吹き飛びはしたものの、なんとか地面に踏み止まり耐えてみせた。

 

 だが、打って変わってディーヴァが満身創痍と化していた。

 

「いくらなんでもおかし過ぎる。攻撃を受けても平然としてられるなんて……?」

 

 顔を上げ、この流れを作った張本人のまもるを見ると違和感を感じた。

 

「まもる君、大丈夫?」

 

「はぁ……気にしないで」

 

 まもるには一度足りとも攻撃らしいものは受けてない筈。なのに、まるで今にも倒れそうな雰囲気を醸し出している。

 逆にアイドルは息一つ乱れていない。2人を交互に見て、ディーヴァは察した。

 

「嗚呼、そういうカラクリね。どうりでおかしいと思ったわ!」

 

 ケタケタと笑うディーヴァはまもるに指をさした。

 

「キュアアイドルが受けたダメージ全部、アンタが肩代わりしてるんだね⁉︎」

 

「……そうだね」

 

 まもるは平然と答えた。

 

「キュアアイドル、これ以上アンタが無理に戦えば大事なファンが傷付くよ。それでも良い訳?」

 

 アイドルの表情が強張る。アイドルも、この力を受けて初めて知ったのだ。自分が受けたダメージは全て、まもるに流れる。勿論自分には痛覚等は無いが、それも全てまもるが肩代わり。

 

 申し訳なさの気持ちでいっぱいの時、まもるは今アイドルが欲しい言葉を言う。

 

「アイドルと分かち合えて俺は嬉しいよ」

 

「……冗談でしょう?」

 

「本気さ。それに、推しを支えてこそのファンだ。全然苦に思わないね!」

 

 まもるは、アイドルに最高の笑顔をみせた。

 

「だからその代わり、最高の歌と踊りを見せてよ!」

 

「うんっ!」

 

 支えてくれる人が居る。それだけでアイドルの体から力が漲る。だから頑張れる。

 

(と、強がりを言ってみたものの、俺も結構限界は近い)

 

 ディーヴァ・ステージは100%のパフォーマンスを余す事無く引き出させる力。そして、不必要な情報は漏れなくカットされ、異常なまでの集中力を手にする。聞こえるのはせいぜい、応援してくれるまもるの声のみ。そして身体能力は最高を超える。

 

 しかしデメリットもある。

 

 必ず、まもるの声が聞こえる範囲に居なければならない。

 それに常に全力で応援をしているせいで体力の消耗も激しく、加えて受けたダメージは全てまもる自身に降り掛かる。

 

 まさにハイリスク、ハイリターン。

 

「でもいいんだ。最高に輝くアイドルのステージが見られるなら、これくらいどうってことないさ」

 

「なら、フルパワーで分からせてやるわ! どっちが本当の歌姫かを!」

 

 ディーヴァはアイドルハートインカムを装着して、特製のステージを展開させた。

 曲が流れるが、それはアイドルがいつも歌っている持ち歌。

 

「これで終わらせる!」

 

 曲を全て歌い終え、頭上にエネルギーが圧縮されたハートが形成されている。

 

「プリキュア! アイドルスマイリング!」

 

 手を振り翳した瞬間、溜め込んでいたエネルギーが大きな音を立てて弾けた。

 キラキラとしたそのエネルギーは、アイドルの頭上へと集まっていく。

 

 この光景にはディーヴァも愕然とした。

 

「まさか、乗っ取ったというの? アタシのステージを⁉︎」

 

「アイドルはそんな事しないさ。只、最初からアイドルのステージだったって事だけさ」

 

 ディーヴァから吸収したお陰で、浄化技はいつでも放てる状態と化した。

 大きく息を吸い、真っ直ぐディーヴァへ向けてアイドルは振り下ろす。

 

「プリキュア! アイドルスマイリング!」

 

 これまでに見ない高出力の浄化技。当たれば確実にやられる。

 ディーヴァは歯ぎしりをしながら、致し方無くこの場に置いての最善策を使う。

 

 指を鳴らし、遠くに居たであろうマックランダーと自分の位置を入れ替えた。

 

「マック⁉︎」

 

 突如として放り出されたマックランダーは、成す術も無く浄化技を正面から食らった。

 

「キラッキラッター」

 

 何も知らなかったとはいえ、マックランダーは理不尽に浄化されたのだった。

 浄化されて、街はいつもの綺麗なものへと戻っていった。

 

「……今回はそれなりに楽しめたわ。けれど、次も上手くいくとは限らない」

 

 捨て台詞を吐いてディーヴァは撤退して行った。

 

 ここでようやく緊張の糸が切れて、まもるはその場に崩れ落ちた、

 

 

 ◯

 

 

 目が覚めて、最初に視界に入ってきたのはうたの顔だった。見上げている事もあって、どうやらまもるは今、公園のベンチでうたに膝枕をされているらしい。

 目を覚ました事で、うたは安堵の表情をして優しくまもるの頭を撫でる。

 

「良かった、目を覚まして」

 

「ごめん俺こそ。今起きるよ」

 

「いいから、今は寝てて。疲れてるでしょう?」

 

 起き上がろうとした半身を無理矢理寝かせられた。実際、寝ていた方が楽である。

 

「……覚えてる? 初めてこの公園で出逢ったの」

 

「忘れる訳ないよ」

 

「あの時、わたし嬉しかったんだ。あんなにわたしの歌を喜んで聴いてくれるなんて。びっくりしちゃったよ」

 

「俺、うたちゃんと出逢えて本当に良かった。そうじゃなきゃ、こんなにもキラッキランランな毎日は過ごしてない」

 

「わたしも同じ気持ち」

 

 2人の様子を遅れて来たなな、こころ、プリルンは、遠目で見守っていた。

 

 優しく握ってくれる手。その温もりを噛み締めながら、また今日が終わろうとする。




次回から本編に戻ります。メロロンの初登場回ですね。半分忘れてました()

 その次回からなんですが、少し更新頻度を落とそうかと思っています。理由と致しまして、そろそろ力を付けるのと合わせて一次創作の方に戻ろうかと考えている次第です。元々、キミプリは評価等が少なければ未完結扱いで辞めるつもりでいました。しかしながら、良い意味で裏切ってくれたので今日まで続いております。ありがとうございます!
 気分によって更新頻度は変わりますが、週一で投稿出来たら良いかなと考えております。

 最近はお気に入り、評価と色んな方に支えてもらってる中での今の状況。物語的にも盛り上がってきた段階。私の勝手ながらの都合とはいえ誠に申し訳ありません。
 完結には持っていくよう精進はします。

改めまして、今後とものんびりとお付き合いの方宜しくお願いします。

ここまでの拝読ありがとうございました。
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