キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva   作:シロX

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映画観てきました。やばいです( ᐛ )

現場からは以上でした


第46話 心ドギマギしてます

 こころとそのクラスメイトの1年生5人の練習は、あれから大体30分は経とうとしていた。

 正直、器用なところはあるがなにぶん専門分野ではない。教える側として、事前に調べた事を伝え、それを練習させているが所詮は本で得た付け焼き刃の知識。彼女達の力になっているかどうか定か。

 

 それでも頼ってくれている期待だけは裏切りたくない。今自分が出来る限りの精一杯でまもるは練習に励んでいる。

 

 一方で右往左往しながら懸命に頑張っている彼の姿を、こころは横目で見ながら独り黙々とレシーブの練習をしている。皆が皆、まもるの方に群がっているから仕方のない事だが、寂しい気持ちがある。

 

「まもるお兄ちゃん人気だ……」

 

 質問された事を丁寧に答え、フォーム等の確認は一緒になって手取り足取り教え込んでいる。まるでコーチみたいな。

 こころはこころで、持ち前の運動神経で未経験の部分を少なからずカバーしており自力で上手くやっている。その為、まもるに頼らずともやる分には困っていない。

 

 今の気持ちを表しているかの様に、こころのチャームポイントの一つでもあるアホ毛がいつもより沈んでいる。

 

「こころちゃん!」

 

「わっ⁉︎」

 

 不意に背中を押しながら名前を呼ばれた。振り返れば、いつの間にか1人こちらに流れてきていた。

 

「こころちゃん、一緒に練習しよう」

 

「でも、まもる先輩に教わるんじゃ?」

 

「さっき教えてもらったのをこれから実践するの。それに、紫雨先輩ずっと付きっきりだから」

 

 2人は改めてまもるの方へ視線を向けると、1年生4人の波に揉まれていた。あの様子ではどうする事も出来ない。

 

「だから、ね?」

 

「そうですね、やりましょう!」

 

 こころが軽くボールを打ち上げ、そのままトスで交互に返していく。

 

「こころちゃんってさ、紫雨先輩とどんな関係なの?」

 

「どんな関係って、前から言ってるけどまもる先輩とは従兄妹で──」

 

「そうじゃなくて、男女での関係。ズバリ、こころちゃんって紫雨先輩好きなの?」

 

「うえっ⁉︎」

 

 唐突な質問に驚き、トスをし損ねてボールが顔面にクリーンヒット。可愛い悲鳴と共にその場で蹲り悶える。

 

「すっごい動揺してる。無理もないか、何話してても絶対紫雨先輩の名前が上がるくらいだし」

 

「単なる気のせいですよ! それに従兄妹同士でそんな関係なれる訳ないじゃないですか!」

 

「少女漫画みたいな展開があるかもよ?」

 

 息を呑み、言葉に詰まった。そういう展開を望んでいた頃もあった。あったのだが、理性がそれをブレーキして踏み止まっている。

 気にはしている、意識はしている。でもそれをはっきりと口にして、その先の事をつい考えてしまう。

 

「こころちゃん、慎重になる事は良いけどそれで後悔しないようにね」

 

「後悔ですか?」

 

「紫雨先輩ってちょっとモテはするし、それ以上に1年生の間ではかなり人気者なの。それがいつしか恋心に変わる人だっていない訳じゃない。だって裏表の無い人だもん」

 

「だ、大丈夫ですよ。だってまもる先輩なんだもん。そんな簡単にお相手なんて……」

 

 目線をまたまもるに当てる。誰でも分け隔てなく接して、笑顔を振り撒いている。

 まもるの事だしそんな早くは相手を見つけないとたかを括っているが、ここまで人が寄って来ているとなるとそれも時間の問題。

 

「あっ……」

 

 一瞬だがまもると目線が合った。一度に大人数の相手をしているにも関わらず、それでもまもるはこころの事を見ていた。例えほんの僅かな刻だったとしても。

 

「『従兄妹同士』なんて言い訳にしてたら、誰かに取られてきっと後悔すると思うよ。わたしがこころちゃんの立場なら後悔する」

 

「……わたし、従兄妹としてまもる先輩と接してきたもん。急にそんな事言われても心の整理が付かないし、何より自分の気持ちに気付けてないよ」

 

「そうなんだ。なら今の話は無しでお願い! 変に不安を煽らせちゃってごめんね!」

 

「ううん、心配してくれてありがとう」

 

 話のせいで手が止まってしまっていた。練習を再開しようとした直後、まもるがこころの元へと歩いて何やら訝しげな表情を浮かべていた。

 

「こころ大丈夫か? 遠目から見ても元気が無い様に見えて」

 

 こころはすぐに目線を逸らして唇を尖らせる。

 

「なんでもないです」

 

「本当に?」

 

「なんでもないってば!」

 

 しつこく訊いてくるまもるの背中を軽く叩いた。こんなにも心配してくれるのは嬉しい限りだが、今だけはあまり悟られたくない。

 

「それなら良いんだけど……そろそろ時間だし帰るか?」

 

 校舎に備え付けられている大きな時計に目をやると、もう既に1時間は経過していた。陽も落ちてきている。帰るには丁度良い頃合いだ。

 

 

 ◯

 

 

 まもると2人っきりでの帰りは久し振りである。アイドルプリキュアとなってからは、更にうたやななも加わって共に行動する事が頻繁だ。

 いつも話しているのに、いつも目を合わせているのに今日に限ってどうしても彼に意識を向けてしまう。

 

 だからこそ、友達が言っていた言葉が妙に胸に引っ掛かる。

 

「まもるお兄ちゃん、お兄ちゃんには好きな人とか居る?」

 

「唐突だな」

 

「まもるお兄ちゃんは訊いてなかったなぁーって思っただけ」

 

 相手にだけ、それも女の子に好きな人は居るかの質問をしておいて、自分だけ答えないのは些かどうなのか。

 先日何気に話していた会話が今掘り起こされるとは思ってもみなく、まもるは少々面を食らった。

 

 だけどすぐに余裕綽々の表情をしてみせた。見るからにして、既に言える答えは準備しているかのような。

 

「俺も好きな人は今は居ないよ」

 

「あんなに言い寄ってくるんですから、1人くらい好みの人は居る筈です」

 

「外見だけの話ならそうかも。でも、中身の話とかまでとなると違ってくるかな」

 

「じゃあどういう?」

 

 まもるはこころの手を握った。

 

「こころみたいな人が俺の好みかな、なんて。あ、こころの手、ぷにぷにしてて触り心地良い」

 

 それはとても喜ばしいものだった。わざわざ名指しで好みのタイプを言ったせいで顔は火照り、おかしな緊張が浮き彫りとなって表れる。

 今も表情筋に力を入れていないと、すぐに緩んでしまう。

 

 でもすぐに、ある事に気が付いた溢れ出しそうな感情の灯火は小さくなっていく。

 

「わたしじゃないんだ……」

 

「こころみたいな子なら退屈はしないかなって。ほら、何でも本音を話せるって言うか」

 

「──それってわたしじゃダメなの?」

 

「えっ?」

 

「……あっ!」

 

 今自分で何を口にしたのか今更気付き、慌てて口紡ぐ。そしていつもの様に笑顔を振り撒く。

 

「今のはそう、あれ! もしまもるお兄ちゃんに相手が出来なかったら、わたしがまもるお兄ちゃんのその……彼女になってあげようかと!」

 

「ありがとう。でも俺達従兄妹同士だから、そんなに気を遣わなくても良いよ。こころは、こころが想った人と一緒になれば良いんだからさ」

 

「だ、だよね!」

 

 自分でも自覚するくらい恋バナをしてからというもの、何かと言動がおかしい。普段ならこんな事は言わない。それも、かなり意識した言い回しを。

 

 ただ一つだけ。他の女の子と楽しそうに話しているまもるを見ると少しだけ、少しだけ心がモヤモヤする。そのせいで調子を狂わされている。

 

(これってやっぱり?)

 

 隣で歩く彼の横顔を見つめる。胸を握り締め、燻る感情を留める。

 この気持ちと正面から向き合うには、もう少しだけ時間が必要だから。




この手の話は少し苦手。でも書きたいんです

次回は球技大会当日らしいですよ。

ここまでの拝読ありがとうございました。
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