キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva 作:シロX
引き続き、評価や感想等今後も宜しくお願いします
球技大会当日。体育館に全校生徒が集められており、それぞれ出場する種目で一心不乱に汗を流して奮闘をしている。それは勿論、まもるやうた、なな、こころも同様だった。
どのクラスも順調に勝ち進み、いよいよ次は男女共に準決勝が始まろうとしていた。
「皆、準備は出来てるかい?」
「「「「「「はい!」」」」」」
こころ率いる1年生組の元気な返事に、まもるは満足な笑みで強く頷く。
その様子をうたとななが眺めており、一体どういう状況なのか声を掛けた。
「何でまもる君はこころ達と?」
「俺がちょっとだけコーチしてました」
「紫雨君が⁉︎」
まもるはバレーの準決勝の対戦表のプリントに目を移す。こころのクラスと当たる相手は、まもるのクラス。つまり、うたとななと衝突という事だ。
「えー、そんなの聞いてないよー」
「秘密の特訓ってやつだよ、うたちゃん」
「でもそれって紫雨君は練習出来てないよね? ここまで勝ち上がっているから心配はしてないけど大丈夫だったの?」
「『勝つ』というより『楽しむ』を優先にしてるからノリでここまで勝ち上がってこれたよ。まあでも──」
まもるは3人から背を向け、とある人集りの方に体を向ける。その視線の先には、最初の対戦相手でもあり、若葉が今絶賛恋をしている相手。翔太率いる3年生チームだ。
「楽しみながら勝つけどね」
まもるの視線に気付いたのか、翔太もまもるの方へ顔を向けて火花を散らす。
「ま、まもる君が珍しく燃えてる⁉︎」
「いつもは応援している側だけど、こういうのも悪くないよね!」
「応援しているよ紫雨君!」
「蒼風さんが応援してくれるなら、力百万倍だよ!」
気合いは十分。まもると翔太の両チームはコート内に入ろうと歩き出した時、それは起きてしまった。
「危ない!」
別のコートから聞こえた誰かの声。バレーとは別でドッジボールの試合をしている隣のコートから、ボールが真っ直ぐ飛んで来た。
ボールの行き先はこころの顔面。ボールの方が速く、避ける間も無く、こころは反射的に身を縮こませて目を瞑った。
乾いた音が体育館に鳴り響く。しかし、こころには全くもって痛みは感じなかった。
恐る恐る目を開けるとまもるの大きな右手がボールから守ってくれていた。
「ギリギリセーフってね」
キャッチしたボールをすぐさま投げ返した。
「ありがとう……」
驚きのあまりにこころは、未だ今の状況を呑み込めれていなかった。呆然と立ち尽くしてへたり込んだ。
そんなこころにまもるは右手を差し伸べる。
「びっくりしたね。立てる?」
「う、うん」
こころが手を取った時、まもるの表情が歪んのを見逃さなかった。
「先輩、手を怪我しました?」
「全然!」
誤魔化しているが、こころはわざと手を強く握って何かしらの変化を探っている。そして。
「痛っ!」
「やっぱり怪我してるじゃないですか」
深くは無いが爪が割れており、そのうえ突き指までしてとても平気とは思えない具合をしていた。笑顔だけは絶やさないようにしているが、それが余計に心配を煽らせる。
「適当にテーピングか絆創膏でも貼っとけば──」
「ダメです!」
「皆期待しているから俺は出たい!」
「まもる君が我が儘言うなんて珍しい」
「でも、それじゃあボールを叩く事すら出来ないよ?」
強行しようとするまもるに対して、ななも賛同は出来ないでいる。その場にいる全員が、満場一致で無理と判断する。
それにこれから準決勝なのだ。ここまできてリタイアというのはなんとも情けない。かと言って、あの時こころを助けていなければ代わりに彼女が大怪我をしていたに違いない。
「まもる先輩は、わたしが責任を持って保健室に連れて行きます」
「お願いね、こころちゃん」
うたとななに見送られ、まもるは保健室へ連れて行かれるのだった。
◯
保健室に来てはみたものの、肝心な先生が何処にも見受けられなかった。入れ違いで外出しているのだろうと思い、勝手ながら自分達だけで怪我をなんとかしようとする。
「救急箱って何処にあるんでしょうか? 棚にあったり?」
こころが棚の隅々まで確認しており、まもるは大人しく椅子に座って手当てされるのを大人しく待つ。
「あ、見つけました!」
探し物の救急箱を発見した。しかし置かれていた場所は棚の一番上。こころの背丈だと、背伸びをしてやっとの所にある。
腕と脚を精一杯伸ばして、無理矢理取ろうと試みる。側から見ていても、かなり危ない事をしているのは明白。その程度の高さなら、まもるなら十二分に届く。
自分で取ろうと席を立った時だった。
「届いた……あっ!」
「こころ⁉︎」
指が微かに救急箱に掠めたのは良いが、それに気を取られてしまいバランスを崩して後ろに転倒。
まもるは慌てて両手を広げて、抱き抱える形でこころを受け止めた。
「ふぅ……危なかった。あまり無茶しちゃダメだよ?」
呆然とするこころ。しかし、その瞳はずっとまもるの顔を見つめている。
「こころ?」
「あ、ありがとうございます‼︎」
受け止めて貰ったばかりではなく、そのまま抱えられている状態を今更ながら気付いて1人で立ち上がった。
体勢が崩れただけでこころの身には何事も無かった。けれども、胸の内だけはどうしようもなかった。突発的な事だったとはいえ、心拍数が急激に上がって鼓動の音が耳まではっきり届いている。
「届かないなら届かないで俺に任せれば良いのに」
そのような事を呟きながら、まもるは救急箱を棚から取り出してこころに手渡した。
「まもるお兄ちゃんは怪我人です。無理はさせられません」
「でも、こうやって届いた訳出し」
頬を膨らませて少しだけ不機嫌になる。先程まで脈打っていた感情は何処へやら。
ひとまずは怪我の手当てをしないといけない。救急箱を開けた。
その時、保健室の窓からノック音がした。2人揃って視線を窓へ集めると、プリルンとメロロンが血相を変えて窓ガラスを叩いていた。
「プリルン、メロロン⁉︎」
こころは窓を開けて中へ2人を入れると、大声である事を知らせてくれた。
「まもる、こころ大変プリ! チョッキリ団が来たプリ!」
「こんな時に⁉︎」
まもるの怪我の治療もしなければ。だが、チョッキリ団も放置する訳にはいかない。先にどっちを取るのかで色々変わってくる。
こころは若干迷いが生まれていたが、一方でまもるは最初から取る選択肢は決まっていた為行動が早かった。
「俺の事は構わないよ。こころ急ごう」
「は、はい!」
「プリルン、メロロン案内して」
「こっちプリ!」
プリルンが先頭に立って案内をしてくれる。2人もその後に続いて保健室を出た。その際まもるは右手を押さえ、苦痛の表情に満ちていた。
「メロ……」
調子が未だ戻っていないまもるの様子を、メロロンはほんの少しばかり気にしていた。
◯
場所は戻って体育館。帰って来て早々、体育館内でボールを模したクラヤミンダーが暴れていた。
囚われているのは若葉。体育館内にはまもる達とクラヤミンダーを召喚したカッティー以外の人の気配は無い。どうやら皆、クラヤミンダーを恐れて避難をしたみたいだ。
「うた先輩! なな先輩!」
「こころ! まもる君! 良かった来てくれて」
「プリルンとメロロンは俺と一緒に来て」
まもるはプリルンとメロロンを連れて、クラヤミンダーの手が届かない場所まで身を遠ざけた。
「皆行くよ!」
うたの合図一つで、ななとこころもアイドルハートブローチとプリキュアリボンを構えた。
「「「プリキュア! ライトアップ!」」」
アイドルハートブローチにプリキュアリボンをセット。3人はブローチにあるボタンを2つを同時に押した。
「「「キラキラ、ドレスチェンジ! YEAH!」」」
阿吽の呼吸で掛け声から他に至るまでのタイミングが上手く噛み合う。
その身にキラキラが纏われ、キミとアイドルプリキュアの衣装チェンジを果たそうとする。
うたはキュアアイドル、ななはキュアウインク、こころはキュアキュンキュンへと変化を遂げた。
「キミと歌う、ハートのキラキラ! 笑顔ニッコリ、キュアアイドル!」
「キミと瞬く、ハートの勇気! お目目パッチン、キュアウインク!」
「キミと踊る、ハートのリズム! 心キュンキュン、キュアキュンキュン!」
「「「ウィアー! キミとアイドルプリキュア!」」」
華やかな変身をして、3人合わさった決めポーズを取って名乗りを上げる。
「それにしてもボール……ううん、バレーボールか?」
クラヤミンダーの姿を観察して、まもるは少し嫌な予感がした。
「やってやるのですぞ!」
「クラヤミンダー!」
クラヤミンダーは自身の丸みを活かして、床を抉りながらアイドルへ猪突猛進。
アイドルは素早く上へ跳躍してひらりと身を避けた。クラヤミンダーは壁に激突。動きが止まったと思い、身体を翻して攻撃へと大勢を整えようとした。
「クラヤミンダー‼︎」
壁に激突して勢いが殺された筈のクラヤミンダーは、ボールの特徴の一つでもある弾力性を上手く使い、自身を弾いて間髪入れずアイドルに再度仕掛けて来た。
「また!」
アイドルは拳を握って対抗しようとするも、跳ね返った勢いでスピード共に威力が更に増している。拳を振り翳す前にクラヤミンダーの突進がアイドルの全身に突き刺さり、そのまま天井に叩き込まれた。
劣勢を強いられるアイドルプリキュアを、まもる達はキラキライトを手にして懸命に応援を送る。
「頑張ってプリー! メロロンも応援するプリ!」
「応援してもしなくても、どっちも同じメロ」
「そんなことないプリ。『頑張れー』は届くプリ」
「でも、厄介だよ。あのクラヤミンダーは」
今度はウインクとキュンキュンが両サイドから挟み込んで仕掛けに行った。
「クラヤミンダッ!」
クラヤミンダーは大きく跳ね飛び、自身の身体を床、壁、天井へとわざと打ちつけて速度を上げる。
己の身体を最大限に活かした戦法。その俊敏な動きで攻撃にも守りにも利用出来る。攻守共にバランスの取れたやり方でウインクとキュンキュンを惑わせる。
「メロロン、俺達もプリルンと一緒にアイドルプリキュアを応援しよう!」
キラキライトを右手で手に取るも、痛めた手は正直にその痛覚を脳にまで発信した。じんわりとくる痛みで、キラキライトをその場に落としてしまう。
拾おうとするも、上手く右手に力が入らず中々拾えない。
「はいメロ」
そんな時、メロロンが気を利かせて代わりに拾ってくれた。
「ありがとうメロロン。ねえ、メロロンも一緒に」
「したところで、あの子達は勝手に勝つメロ。メロロン達がわざわざ応援しなくてもメロ」
「そうだな、そうかも知れない。でも」
まもるはメロロンの手を優しく取って、一緒にキラキライトを振った。
「応援を貰ったら、今よりももっと頑張れるんだ。それに元気も沢山貰える。それって、とても素晴らしい事だと思うよ」
「まもるは何故、そこまでして応援するメロ?」
「俺が強く想っているからだよ」
「メロロンには分からないメロ」
「大丈夫。今は分からなくても、きっと分かる時がくるさ」
まもるはプリルンとメロロンを両肩に乗せて、精一杯の大声でアイドルプリキュアに声援を送る。
「行けるよ皆!」
「プリー!」
応援は力になる。確かにそうなのだが、あともう一押しが欲しいところ。
まもるは応援しながらも、クラヤミンダーの事をよく観察する。縦横無尽に跳ね回るクラヤミンダーにも弱点はある。
「……ボールは床や壁で跳ねているメロ。それなら、跳ねさせなかったら良いメロ」
「跳ねさせない……なるほど! ありがとうメロロン、これでクラヤミンダーを攻略出来る!」
真っ直ぐな素直な言葉にメロロンはたじろいだが、満更でもない表情でまもるからそっぽ向いた。
「ウインク、キュンキュン。レシーブだよ! クラヤミンダーを打ち上げて勢いを殺すんだ!」
「そっか、それなら!」
「なんとかなりますね!」
ウインクは構えを取った。それに目掛け、クラヤミンダーが向かって来る。今までより数段速い。
クラヤミンダーを上げる。口で言うのは簡単だが、実際それをやってみるまではどうなるのか分からない。あの巨体から出る威力にウインクが耐えられるかどうかが鍵になる。
「キュアウインクー! 頑張ってプリー!」
プリルンが振るキラキライトが周囲を照らし出すくらいの輝きが生まれた。その気持ちに応えるべくウインクは。
「今だ!」
クラヤミンダーを捉えた。腕が接触する時、僅かな踏ん張りと力の流れを外へ流すようにバックステップも織り交ぜた。
クラヤミンダーを完全にコントロールし、まもるが心配する以上にウインクは容易く打ち上げてみせた。
「な、なんですと⁉︎」
「やった……じゃない!」
クラヤミンダーの落下先にそこには誰も居なかった。このまま地面に着いてしまえば、同じ事の繰り返し。
アイドルは未だ復帰と出来ておらず、ウインクの拾いに行く体勢までにはなっていない。
「わたしが行きます!」
キュンキュンが走り出したが、それでも届くか届かないかの瀬戸際。
「応援、メロ……」
メロロンは自分が手にしているキラキライトを見つめる。そして、意を決した様子で光を灯し、キラキライトを振ってキュンキュンを応援する。
「頑張るメロー!」
メロロンの声援にキュンキュンが次に踏み出す一歩が大きくなった。その一歩で、紙一重で落下地点に間に合った。
「ラスト、お願いします!」
キュンキュンからのトス。天井にまで届く綺麗な放物線を描くパス。このラストを受け取るのは勿論。
「アイドル行くよ──ディーヴァ・ステージ!」
まもるが振るキラキライトの光量が体育館内を埋め尽くし、天井全体に大きくヒビが入った。その中心には、アイドルがいつでも飛び出せれるようにタイミングを見計らっている。
「人の恋路を邪魔しないで!」
アイドルが飛び出した。凄まじい瞬発力に上乗せされたアイドルの拳はクラヤミンダーに突き刺さり、そのまま床に捩じ込んだ。
「「「ウー、レッツゴー!」」」
アイドルハートインカムを装着し、3人だけのステージが開演される。その後イントロが流れ出し、クラヤミンダーを強制的に着席させた。
「「「ハートを上げてくよ!」」」
アイドルをセンターにアイドルプリキュア3人が歌う「Trio Dreams」が盛大に披露される。
完成度の高いシンクロされたダンス。歌唱力も以前よりも更に格段と増した歌声がステージ全体に響き渡り、聴いているだけでキラキラが身体中から溢れ出る。
ステージのボルテージがMAXに達すると、アイドルプリキュアもまた爆発的な力を解放させる。
「「「プリキュア! ハイエモーション!」」」
膨大なキラキラがクラヤミンダーを呑み込み、瞬く間に浄化されていく。
3人はそれぞれ可愛くポージングを決めてフィニッシュ。これにて、ステージは閉幕となる。
「やったやった!」
まもるはプリルンとハイタッチ。メロロンにもと手の平を向けてハイタッチを要求する。しかし興が乗らないメロロンは、そっぽを向いてまもるを無視する。
「照れ屋なんだから」
「照れてないメロ!」
「メロロンはハイタッチしないプリ?」
「ねえたまとなら喜んでメロー!」
まもる、プリルン、メロロンと騒がしい様子をアイドルプリキュアは微笑ましく思い見守っていた。
◯
球技大会は先程の騒ぎなど全くなかったと言っていい程滞りなく進み、程なくして幕を閉じた。
結論から言うと、若葉率いる女子バレーは決勝での3年生を打ち破って念願の優勝を果たした。残念ながらまもる率いる男子バレーは、まもるの不在から一気にリズムを崩して準決勝で敗退。
優勝チーム、そうでなかったチームも含めて誰もが一丸となって同じゴールを目指した。それは掛け替えのない思い出となっただろう。
放課後、うたとななは若葉の勇姿を最後まで見届けるべく共に行動。まもるはこころと下校の為別行動。
「今日は疲れましたねー」
「なんせ皆気合い入れてたから余計にね」
帰路でのんびりと今日の出来事を話す2人。最初から最後まで息吐く暇も無い状況だったからに、疲れはピークに達している。鞄を持つ腕がいつもより怠い。
「……告白、上手くいくと良いですね」
「ああ、そうだね」
まもるはふと、こころに目を移す。こころの様子は右へ左へと足がおぼつかない。瞼も少しばかり閉じ掛けている。
「眠たいの?」
「うん……」
「おんぶしようか?」
コクリと小さく頷いた。とうとう声を出す気力も無くなったらしい。
荷物を受け取り、こころを背負った。こんな風に彼女を背負うのはいつ以来だろうかと感傷に浸る。
「お兄ちゃん」
「まだ何か?」
「練習、付き合ってくれてありがとう」
今日までの感謝の言葉を最後に、こころは深い眠りについたのだった。
久し振りに良い夢が見られそうだ。
分割しようかと思いながら書いてたら、いつのまにか5000文字超えてたので素直に最後まで書き上げました←最近多い
ガイドライン読んでいたら、該当するのが歌詞に関する事だけと書いていたので「なら曲名は引っ掛からないのか!?」などと発見したので、今回から解禁しました。これで地の文も多少なりと楽に書ける。
次回は単発オリ回の後、続けて数話に続く話を書く予定です。はい、暫くオリストです。
ここまでの拝読ありがとうございました。