キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva 作:シロX
晴天に満ちた空模様。窓から差し込むお日様の光が自分の身と心を暖かくさせ、落ち着かせてくれる。今週も穏やかで、清々しい土曜日を過ごせる。
そう思っていたのだが──。
「へっくし! あ゙ー、風邪を引くなんてざい゙あ゙ぐぅー!」
毎朝ダンスの練習を欠かさず、健康的に過ごしているこころは珍しくも風邪を引いてベッドで寝込んでいる。
幸い、今日が土曜日且つ微熱だったから良かった。今の学校生活は楽しい。1日でも休むなんて勿体無い。微熱も月曜くらいには治る予定。
「折角今日、うた先輩やなな先輩と遊べると思ったのにー!」
自分の不調に怒りを覚える。これでも健康管理には気を付けていた方。しかし気を付けていても、実際熱が出てしまったのだからどうしようもない。大人しく寝て過ごすしかあるまい。
「でも、流石に暇」
自室で籠るなら推し活に励みたいが、それで熱が悪化でもしたらそれこそ余計にしんどい思いをするだけ。かといって、こういう時こそ動きたい衝動に駆られる。
「はあ……キュアアイドルとキュアウインクの動画でも鬼リピしよう」
嘆いていても仕方のない事なので、推しの動画でも観て気持ちを切り替えよう。
スマホの電源を入れて、再生ボタンをタップしたタイミングでインターホンが鳴った。
タイミングが悪い事に、今家に居るのは病人のこころのみ。このまま居留守という選択肢もあるが、ベッドから出られる口実として申し分ない。
上体を起こそうとすると、ドタバタと足音が聞こえる。誰かが勝手に家に上がり込んだ。
こころの中で一気に警戒心が強くなり、スマホを片手に布団の中に潜り込んだ。いつでも通報出来る準備だけして、この後の事をどうしようかと考える。
「こっころー! お見舞いに来たよー!」
盛大に部屋の扉が開かれると、袋片手に持ったまもるが入って来た。
家に来るという事前連絡が無いばっかりに、こころは目を点にして言葉を失っている。
「びっくりした? びっくりしたよねー! なんせサプライズで──」
満面の笑みで近づいて来るが、多少なりの怒りを覚えて枕を顔に投げ付けた。
「びっくりしました! ホントもう‼︎」
「大成功だね!」
「ちょっとハリセン作るので待ってくれます?」
という茶番はさておき。こころは膨れ上がっていた感情を抑え、一度冷静になる。
まもるから枕を返してもらい、ベッドに寝転がって不機嫌な様子のまま尋ねた。
「で、今日はなんですか? 見ての通り、わたしは今病人なので遊べませんよ? あ、勿論お触りも禁止です」
両手でバッテンを作って近付けさせないようにする。ここまで注意喚起をしていないと、まもるのスキンシップは止まらない。
「さっきも言ったでしょう? こころのお見舞いだって」
まもるは袋の中からバナナ、野菜ジュース、ゼリー飲料を出した。
「バナナは蒼風さん、野菜ジュースはうたちゃんでゼリー飲料は俺からだよ」
「あ、ありがとうございます」
「ここらが風邪なんて珍しい事もあるんだね。お腹でも出して寝てた?」
「ちゃんと布団を被りました。多分、疲れから出た微熱だと思う」
「そっか」
まもるはこころの布団を掛け直した。こころはそれを照れ臭くも受け入れつつも、顔半分を隠した。
彼女自身、ここまでしてくれるなんてやはりまもるだと思った。
昔から、いつだってまもるはこころの面倒を見てくれていた。嬉しい時も、悲しい時も、落ち込んでいる時も。ずっと隣で寄り添って、当たり前の様に接してくれた。
世界でたった1人、わたしだけのお兄ちゃん。
「何か欲しいものがあれば遠慮無くなんでも言ってね。すぐに持って来るから」
ずっとその優しさに触れて、今はもう目が離せなくなってきている。
(わたし、お兄ちゃんの事意識しているの、かな?)
「汗はちゃんと拭いた?」
(まもるお兄ちゃんは、私の事意識してるのかな?)
「おーい?」
(意識してたら嬉しいな、なんて)
「こころ!」
名前を呼ばれて、いつの間にか下がっていた顔を上げると目の前にまもるの顔が視界いっぱいに広がっていた。これで本日2回目の驚き。
「な、何ですか⁉︎」
「背中、ちゃんと拭いたかって話。聞いてなかったの?」
「あ、あー! 背中ね、まだ拭けてないけど」
「それなら上を脱いで。1人じゃ出来ないでしょう?」
異性を相手に上半身だけとはいえ、裸体を曝すのは些か抵抗はある。けれども、1人では体を拭けないのも確か。
「じゃあ、お願い。お兄ちゃん」
こころは上を脱ぎ、自分の背中を全てまもるに委ねた。
◯
緊張が止まらない。小学5年生辺りだっただろうか。知らず知らずの内にこころは、まもるの事を男性として見るようになって一緒にお風呂に入らなくなったのは。
それ以来、肌を曝す事は一度もしなかったが今はこうして。
「綺麗な背中。それに筋肉もちゃんとついている。毎日欠かさずダンスの練習しているお陰かな?」
「か、かも知れませんね!」
「早く治って、また皆で遊ぼうね」
まもるは拭き終わったタオルを綺麗に畳み、脱ぎ置かれている上着をこころに羽織らせる。
「はい終わり。後はちゃんと着込んで、ぶり返さないよう寝てるんだぞ」
この優しく微笑み掛ける表情で、こころの中で何かが変わった音がした。
席を立とうとするまもる。
席を立って帰ろうと時、こころは服の裾を掴んで引き留めた。
(嗚呼、やっぱりダメだこれ)
「こころ?」
(こんなに優しくされたら、好きにならない訳ないじゃん)
熱のせいでもない。今鏡で自分の顔を見れば、きっと赤面しているに違いない。
それは、自分でちゃんと自覚した恋心の証明。
(特別な心キュンキュン。わたしはもう、まもるお兄ちゃんを昔みたいには見れない)
まもるは、今にも落ちてしまいそうな上着を整えさせる。
「はだけるよ。下着も着ていないんだから」
こころはもう体の事は気に留めてもない。
まもるは紳士的に、今にも見えそうな胸を隠してボタンで止めさせる。
「……そろそろ離してくれるとありがたいのだけど」
「今だけは一緒に居てくれないと嫌……」
「でもタオルが」
「やだ」
「病人だから今日くらいは甘えたい」という欲望が抑えられない。今だけ、今だけと興奮が冷め切れない。この気持ちを抑えるには、まもるがこころの欲望に応えてくれないといけない。
「……いいよ。その代わり、ちゃんと服を着てね。それからだよ」
「ありがと」
今日1日だけは誰にも邪魔されたくない。久し振りの2人きりのこの時間。
──独り占めしたい。
こころの気持ちだけ進展させました。
次回はオリキャラ視点から始めますが、こころメインでオリ回で進めます。
まだこころのバトルフェイズは終了してないZE☆
ここまでの拝読ありがとうございました