キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva   作:シロX

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第5話 賑わいの昼食

 あれから時間が経ち、お昼休みの為お弁当を片手に昼食を取ろうとしていたまもる。席を外すタイミングで、逃げ道を塞ぐ様にして立ちはだかるうた。

 

「ねぇまもる君! 一緒にお弁当たーべよ!」

 

 うただけではない。他友達も何人か引き連れて誘ってくれている。それはとてもありがたい事なのだが、なにぶん全員が女の子。仕方のない事なのだが、花に囲まれて食べるというのは気不味いものだ。

 

「ななちゃんも一緒に!」

 

 ななは満面の笑みで「うん!」と返事していた。そうして全員の顔がまもるへと向き、一気に視線の数が増えた。

 うたは勿論だが、ななも満更ではない表情で一緒に食べる事を期待している。

 

「まあ、一緒のクラスになったからこうなる事は予想してたけど」

 

 ななだけではなく、まさかのうたも今年の同クラス。教室に入って来たうたの姿を見掛けてから、こうやって何かしら誘ってくる事は薄々勘付いていた。

 

 嬉しくない訳じゃない。寧ろ、まもるからしたらうたの誘いは基本嬉しいものだ。

 

 なんだが、今日ばかりはそうもいかない。

 

「ごめんな。生憎今日は先約がいるもんでな」

 

「へぇー珍しいね。まもる君にそんな相手が居るなんて」

 

「今日だけ誘われたんだよ」

 

「じゃあ、その子にも宜しく伝えておいてー!」

 

 申し訳なさでいっぱいのまもるは、今度の埋め合わせは必ず何処かでしようと心に留めて教室を後にする。

 退出して廊下に出たタイミングでこころと出会した。

 

 まもるも驚いたが、こころも目を丸くさせてお互いに突然の不意打ちをくらった。

 多少の間が空いてしまうも、こころが先に口を開いた。

 

「迎えに来ました」

 

「わざわざ来なくても良かったのに。周りが上級生ばかりだから、此処まで来た姿を見て心配したぞ」

 

「初めてのお使いじゃないんですよ、先輩(・・)

 

「先輩?」

 

 いつもとは違う呼び方に、面食らってまもるは思わず聞き返した。普段なら「まもるお兄ちゃん」や「お兄ちゃん」など、呼び方様々あるが「先輩」呼びは初めて。

 

「お兄ちゃんと呼んでくれないのか?」

 

「学校とプライベートで分ける事にしたんです。いつまででも、子供じゃないって事ですよ」

 

 その心意気は立派なものだが、少しばかり兄離れした感覚なのが寂しい。

 なんて思うも、いつになってもこころは可愛い妹だ。その想いが溢れて自然と頭に手が伸び、くしゃくしゃと撫でていた。

 

「わわっ! まもる先輩、整えた髪を崩さないで下さいよー」

 

「悪い悪い。こころを見てると、いつも心キュンキュンしちゃってな」

 

「褒めてくれるのは嬉しいんですけど、いい加減この手を止めて下さいー!」

 

 こころの悲痛な叫びが2年生の廊下に響き渡り、何事かと全員が振り向いたのだった。

 

 

 ◯

 

 

「あービックリした。皆が皆、振り向いて視線が凄かったよ。もうダメだよこころ。でも、そんなところも愛くるしいから許しちゃうんだけどな!」

 

「まもるお兄ちゃん(・・・・・)は、相変わらず平常運転ですね」

 

「こころだってそうだろ? あ、お兄ちゃん呼びに戻ってる」

 

「今は2人っきりなので」

 

 校舎の外に出て、陽当たりの良いベンチに2人して腰を掛けてお弁当を広げる。

 春の心地に身を委ねながら、2人の温かい談笑は終わらない。寧ろ始まったばかりで、その口が止まる事はない。

 

「それよりもさ、クラスの友達から聞いたんだけど『キュアアイドル研究会』って変な同好会みたいなのがあってよ。知ってるかこころ?」

 

「おかしな人がいたもんだ、わはは」と呑気に喋りながらこころの方へ顔を向けてると、先程までとの和やかな表情から一変して不貞腐れた様子になっていた。

 

「何で怒ってるんだ?」

 

「その研究会の会長をしているのがわたしです」

 

「え゙っ⁉︎」

 

「ついでに言いますと、その研究会を立ち上げたのもわたしですが?」

 

 衝撃の事実。まさか、創設者がこんなにも身近に居たとは思いも寄らなかった。

 まるで小馬鹿にした風な言い回しを聞けば、そりゃ機嫌も損ねる。

 

「いやー、キュアアイドル研究会は素晴らしいものだな!」

 

「どうせ、わたしはおかしな人ですよーっだ!」

 

「悪かった悪かったって。ほら、母さん特製の卵焼き。こころも好きだろこの味付け」

 

「誤魔化したって無駄なんですから、全く」

 

 なんて文句を言いながらも、こころは差し出された卵焼きを口を大きく開けて食した。

 先程までまもるがつついていた箸なのだが、間接キスなど全くのお構いなしのこころ。まもるもまもるで、そこら辺の事は"些細な事"で片付けている為、驚いたり動揺する素振りすら見せていない。

 

 この日常が普段通りという訳だ。

 

「でも何で研究会なんて……あっ、いや何でもないや」

 

 理由を聞こうとしたが、喉の奥へと飲み込んだ。こころの事だ、心に燻っていたものがキュンキュンとして突発的に行動したに違いない。

 

「心配はご無用ですよ。先輩ら含め、嬉しい事ながら人は集まって来てます。どうぞお返しですお兄ちゃん、あーん」

 

「はむっ……ちゃくちゃくと、それも順調に進んでるみたいだね。感心感心……なのか?」

 

 こころが好きでやっている事に、とやかく言う資格は無い。本人の好きなようにやらせておくのが一番。疑問符が尽きないが、平常運転なのでこれ以上構ったって仕方のない事だ。

 

「少し相談なんですが、キュアアイドルのここからのステップ」

 

 ご飯中にも関わらず、こころはスマホを取り出してはキュアアイドルの動画をほんの数秒まもるに見せる。

 

「この時の足から腰に掛けての振りがイマイチなの。まもるお兄ちゃん見てくれますか?」

 

「それは構わないけど、素人意見だぞ? それに、ダンスの実力や経験ならこころの方が断然上なんだけど」

 

「いいですから」

 

 こころは立ち上がり、気になる部分の振り付けをまもるに見せつける。

 とてもキレが良く、リズムに乗っており、とても悪いとは言えない出来の良いダンス。何処がどう不満なのかが、イマイチ分からない。

 

「てな感じで、上手く切り返しが思った通り行かないんだけど」

 

「簡単そうに見えるんだけどな」

 

 まもるも立ち上がり、こころの隣でそれとなく踊ってみる。

 

「っと、もう少し踵に重心を当ててみたら良いんじゃないのか? こんな風に」

 

 最後にキュッと足を踏み締め終了。こころは口を開かせて唖然としていた。

 

「まもるお兄ちゃん、キュアアイドルの動画って何回見ましたか?」

 

「えっ、そうだな……目にした数ならさっき見せてくれたので3回目だ」

 

「何回踊りましたか?」

 

「今のが初めて」

 

「まもるお兄ちゃんも大概ですよ?」

 

 褒めているのか微妙な感想だが、評価はしてくれているらしい。ダンスの上手いこころから、その言葉を貰えるだけで結構な高得点。

 

「お兄ちゃんって、ホント昔から器用に何でもこなしてて羨ましい」

 

「見様見真似だ。研鑽されたこころと比べたら月とすっぽんだ」

 

「たった数回見ただけで、トレース出来る人に言われてもあまり嬉しくないですよ」

 

 ダンス経験者であるこころの姿を昔からよく見ている。そのせいか、見様見真似で隣で踊ってはそのまま成り行きでやっていた。その時に、こころから直々に手取り足取り教えてもらっていたので、そこまで褒められる程上達したという事は何もかもこころの指導の賜物だ。

 

 素人同然のまもるをここまで完成させたのだから。

 

「こころの教え方が上手いんだよ」

 

「わたしはただ、まもるお兄ちゃんと踊りたかっただけ」

 

「そうだったな。俺とダンスしている時のこころは、とってもキラッキランランだったからね」

 

「キラッキランラン」その単語を聞いてこころの耳が僅かに反応した。

 

「そ、それはキュアアイドルの! まもるお兄ちゃんは実は隠れファンですか⁉︎」

 

 不用意にキュアアイドルもとい、うたの言葉を使って喋ってしまった。うた程ではないが、まもるも「キラッキランラン」を普段使いしていたから迂闊だった。

 

 もの凄い期待の眼差しを向けるこころを落胆させない為にも、この場は一旦嘘を吐いて誤魔化す他ない。

 

「ハ、ハイソウデス。オレハキュアアイドルノファンナンデス……」

 

「これは、まもるお兄ちゃんもキュアアイドル研究会に入るべきですね」

 

「ごめんね、それはいくらこころの頼みであっても全力で断らせてもらうよ」

 

「分かりました。これでまもるお兄ちゃんは、研究会4人目になりました!」

 

「うん、人の話聞いてたかな?」

 

「もう冗談ですよ」

 

 なんて笑って話すこころだが、それが冗談に聞こえないからこうして断りを入れたのだ。

 

「なんやかんや話してたらお昼も食べ終わったし、そろそろ教室に戻るね」

 

「戻っちゃうんですか? もっとわたしとキュアアイドルについて語り尽くしましょう!」

 

「うん、帰ってからね!」

 

 素直にまもるの言う事を聞き入れ、なんとも騒がしい2人のお昼が終わったのだった。




ここまでの拝読ありがとうございました
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