キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva 作:シロX
オリ回の戦闘シーンはとにかく「あれやりたい!」「これやりたい!」で書いていますので、普段の倍くらい長いです。
キュアキュンキュンに変身した直後、掌打でクラヤミンダーを跳ね退けてみせた。
しかし、ぬいぐるみのクラヤミンダーだけあって打撃での攻撃が半減されている。目立った傷どころかダメージすら見えない。
「これ以上の好き勝手は許さない!」
キュンキュンはクラヤミンダーの目の前で急接近し、右、左に蹴りを放ち、最後に両の足で蹴り飛ばした。
その後、地面に着地して素早く次の攻撃に転じる。
「キュンキュンレーザー!」
ブローチをタッチし、紫色の光線を浴びせた。
ダメージは無くても、怯ませる事は出来る。たじろぐクラヤミンダーの様子に、キュンキュンは一気に勝負に出る。
「クライマックスはわたし! 準備はOKー⁉︎」
自分だけのステージを展開させ、その中心で歌い、踊る。
少し勝負を焦り過ぎているかも知れないが、状況を考えれば短期決戦は妥当だ。
「プリキュア! キュンキュンビート!」
放たれたキュンキュンの浄化技。しかしそれを阻む者が居る。当然ながらバッサリーネ。
バッサリーネは右腕を振るい、風のバリアでキュンキュンビートの軌道を逸らしてクラヤミンダーを守った。
こうも容易くキュンキュンの浄化技を跳ね除けられると精神的にも参り、顔を俯けてしまう。
「顔を上げるんだー!」
事実としてキュンキュンとディーヴァの実力差は明確。それでも顔を下げてしまう事だけは絶対にしてはならない。
「アイドルなら、どんなに苦しくたって笑顔であり続けるんだ!」
呪いのような言葉かも知れない。もしかしたらキュンキュンを余計に苦しませてしまうかも知れない。しかし自分で選んだ道。最後まで貫き通すのが筋だ。
「俺が後ろで支えるから、前だけ向いて歌うんだ!」
「まもるお兄ちゃん──はい!」
気持ちで負けそうになっていたキュンキュンの心に、再び火が灯る。まだ舞台を投げるにはまだ早い。キュンキュンのステージは始まったばかりだ。
「立ち上がるも折れるも、どちらでもいい。クラヤミンダーもアンタも魚を釣る為の餌に過ぎないんだから」
「──キュンキュン! まもる君!」
「ほら釣れた。釣りは根気が大事って言うでしょう?」
遅ればせながらもキュアアイドルとキュアウインクが合流した。
「良かった2人共」
正直安堵しかない。このままキュンキュン1人でディーヴァとクラヤミンダーを相手をするのはあまりにも酷。3人集まれば怖いもの無しだ。
「キタ! キュアアイドルゥゥゥ‼︎」
雄叫びのような声を上げ、アイドルに過剰反応を示したディーヴァ。
「アンタを待っていた! さあ、本気で歌い踊ろう!」
「何あの人、あんなに狂気的になるなんてメロ……」
今までにない気迫に遅れてやって来たメロロンが気味悪がって眉を顰めた。
昂る感情を抑え切れず、陽炎まで生み出している。熱気がヒシヒシと伝わる。
「プリキュア! ダークアップ!」
アイドルハートブローチとプリキュアリボン無しで、バッサリーネはプリキュアの力を行使した。
地面から無数の邪悪なオーラが湧き出し、バッサリーネを包み込んだ。
「クラクラ、ステージオン! YEAH!」
闇はバッサリーネの衣装を変化させ、強大な身体能力を授ける。
「キミと輝く、ハートのステージ! 煌めきステップ、キュアディーヴァ!」
誰よりも美しく、輝き、誇り高き歌姫が2人の目の前に降り立つ。
威圧感が変身前と比べかなり深みを帯び、全身に重くのしかかる。立っているだけでも相当な体力の消費。
「アイドル行くよ──ディーヴァ・ステージ!」
まもるも臆する事なくアイドルに応援の力を与える。何もそこまで怯える必要はない。何故ならディーヴァ・ステージの恩恵を受けて前回は大勝している。加えて今回はアイドルは万全の状態。ウインクもキュンキュンも居る。
何も心配は無い。
「プリルンとメロロンは俺と来て」
妖精2人を連れて、邪魔にならない所まで移動し終えた。
「まさかとは思うけど、前回勝ったからと驕っている訳じゃないよね? だとしたら勘違いも甚だしいわ」
「「「「ッ⁉︎」」」」
ディーヴァは強く一歩踏み出した瞬間、その場に居る者全員が戦慄した。生存本能が危険信号を発し、今すぐにでも逃げた方が良いと脳に刺激を送らせている。
たったその一歩で全員がディーヴァの射程圏内に入り込んでいたのだ。ディーヴァから一番遠いまもるもその中に入っている。
(えっ⁉︎)
(まさか、届くというんですか⁉︎)
(だとしてもあり得ません! わたし達はともかく)
(俺との距離は10メートルもあるのにそれすらだなんて!)
明らかに次元が違い過ぎる。ディーヴァの領域はアイドルのそれを遥かに上回っている。
「プリ!」
「まもる来るメロ!」
プリルンとメロロンが僅かな空気の流れを感じ取り、危険を察知してくれた。だがそれでも遅い。遅過ぎる。
4人が反応するよりも早く、ウインクの懐まで飛び込んでいた。それも距離にして約6メートルを悠々に。
「ウインク!」
まだディーヴァ・ステージの効力のお陰で、ディーヴァの速さについていけるアイドルがすかさずフォローに入った。
両者の間に割った入り、牽制するも腕を掴まれてしまう。
アイドルを振り回して身体をウインクに叩き込み、2人を容易く吹っ飛ばした。
「キュンキュンレーザー!」
素早い動きの中でも、僅かな隙を見つけたキュンキュンは遠くから反撃を狙った。しかし、キュンキュンレーザーが撃ち放たれる前に動き出して避けた。
当然、ディーヴァが動いた後にキュンキュンレーザーが遅れて着弾。
反応速度も尋常ではない。
「キュンキュンレーザー! キュンキュンレーザー! レーザー‼︎」
どんなに速くとも乱発すれば当たる。そんな単調な策を講じるも、それすらも嘲笑うように華麗なステップで悉く回避。
「何で当たらないの⁉︎」
「焦んないでキュンキュン!」
体勢を整え、アイドルが駆け付けてくれた。まだアイドルの体力は残っている。少しでも動ける限り彼女は歌い続ける。
「大丈夫だよ、わたしについて来て!」
「アイドル待って下さい!」
手を伸ばすもアイドルの速さも尋常ではない。瞬く間にその姿を消し、ディーヴァと激しく、そして何度も衝突し合っている。
キュンキュンはそれをただ呆然と眺めているだけしか出来なかった。
「頑張れー! キュアアイドルー!」
「メロ……あれじゃダメメロ」
プリルンが応援するのとは反対に、メロロンは辛辣な言葉を投げ掛けた。身体能力等、どれを取ってもディーヴァが一枚も上手なのは事実。けれども、アイドルだって負けてはいない。寧ろ、いつか訪れるだろう好機に目を光らせている。
「えっ、ダメって何が?」
アイドルの調子は良い筈だ。それでも、メロロンの視点からするとどうやら悪いらしい。
アイドルの動きを凝視するも、一体何処に調子の悪さが出ているのか不明。
「見る所はそこじゃないメロ。他の2人をちゃんと見るメロ」
メロロンに言われ、まもるはウインクとキュンキュンに目を移す。
ウインクはアイドルのカバーに入ろうとしているが、タイミングが無くずっと様子を伺っている。キュンキュンも次元の違い過ぎる2人について行けれず、その場で呆然と立ち尽くしているだけ。
「もしかして!」
「やっと気付いたメロ」
「何プリ?」
メロロンが何を伝えたかったのかようやく理解した。
「ちょっと見ただけでもメロロンにも分かるメロ。アイドルプリキュアは、チームでの連携を大事にしてるメロ。なのに今はキュアアイドル頼みになってるメロ。随分と皮肉メロ」
盲点だった。ディーヴァ・ステージで更なる高みに昇ったアイドル。しかしそれと同時に、アイドルプリキュアとして大切なものも失ってしまった。
まもるは今一度アイドルに目を向ける。
アイドルは今孤軍奮闘をしてはいるが、ウインクとキュンキュンが援護に入れずに体力だけが大幅に削られていく。ディーヴァ・ステージのタイムリミットも着々と近付いている。
これ以上の足踏みは危険だ。
「随分と動きが鈍ってきてるわね。そんなんでアタシを倒せる訳?」
「やる!」
元気に声を出して自分を焚き付け、疲れを無理矢理吹き飛ばそうとやっている。しかし、身体は正直である。
「そう、なら全力で応えてあげる」
ディーヴァが指を鳴らすと、アイドルハートインカムを装着して自分だけの特設ステージを展開させる。これまで編曲で展開させたアイドルプリキュアのステージとはどれも異なる。
まもる達4人はその中心で立つディーヴァに注目が行く。
「クライマックスはアタシ! 震わせるよー!」
最初から歌もダンスも全力で飛ばしていく。そこに妥協というものは存在せず、ディーヴァが出せる最大にして最高のパフォーマンスを披露。
それは他を寄せ付けない程繊細で、時には大胆さのあるステージ。
「わたしだって!」
対抗してアイドルも自分だけのステージを広げた。
「正面から挑むその心意気は認めてあげるわ。でも、勝つのはアタシ!」
歌い切ったディーヴァの頭上に、ハート型をした黒緑色のエネルギーが集約される。それはとてつもなく大きく、膨大なエネルギーの塊。一度浴びれば、無事では済まない。
「プリキュア! ディーヴァセレブレーション!」
アイドルがまだ歌い切る前に技を撃ち放った。
「これが歌姫の力よ!」
地面を抉りながら迫り来るディーヴァの必殺の一撃。まだアイドルのステージは終わっていない。かといって、今ここで降りる訳にもいかない。
そんな時だった。ウインクがアイドルの正面に立って少しでも時間を稼ごうと防御体勢を作る。
「ウインクバリア!」
ウインクバリアを張るのと同じくして、ディーヴァセレブレーションも衝突する。
「ぐぅぅ‼︎」
全身にディーヴァセレブレーションが重くのしかかり、ズルズルと後ろへ押される。ウインクバリアも衝突した衝撃のみで半壊している。
それでもまた維持出来ているのは、ウインクが皆を守りたいという意志の強さのお陰。
しかし──。
「今までよりももの凄い力!」
「無駄よ」
ここまで踏ん張っていたウインクだったが、気持ちだけではどうにも出来ず、とうとうウインクバリアを砕かれ突破された。
耐え抜いた時間は僅か数秒。短く、ほんの些細な時間稼ぎだが、アイドルが歌い切るにはおつりが貰えるレベル。
「プリキュア! アイドルスマイリング!」
両者の最高峰ともいえるキラキラが激しく激突する。
ウインクが言っていた通り強力な力がある。だが、油断はしてはいないが勝機はある。
ウインクのお陰で多少なりとも威力は落ちている。それに技同士の勝負にも打ち破っている。
後は全力で押し切るのみ。
「本当の歌姫はどちらかしら?」
アイドルの歌はディーヴァの歌に呑み込まれ、打ち砕かれた。
攻撃に全力を出していた事もあり、防御は完全に疎か。無防備に直撃したアイドルは吹っ飛ばされ、地面を這い蹲り、ダメージの許容量を超えて強制的に変身が解除した。
拮抗していたかと思われた勝負。それはあっさりと決着がついてしまった。
「うた先輩!」
「キュアアイドルばかり気にして良いのかな? 周りをよく見たら?」
うたは完全に戦闘不能は当然だが、それに伴ってディーヴァ・ステージの力の影響でまもる自身にも倒れている。ウインクは変身解除までは至ってはいないが、先程の防御で両手を負傷。体力も底を尽いて戦える状態ではない。
立っているのはキュンキュンのみ。
「残っているのはキュアキュンキュンだけだけど……」
ディーヴァの瞳がキュンキュンの姿を映す。
「プリルン、メロロン。2人はもっと離れてて」
まもるは体に鞭打って立ち上がり、2人を避難させる。そして、孤独と化しているキュンキュンの側へと寄り添う。
「……1人でも大丈夫です」
「そうもいかない。1人でなんて無茶にも程がある」
ディーヴァどころか、まだクラヤミンダーすら浄化出来ていない。それをたった1人で全部対処するなんて不可能だ。
「でも、やらなきゃいけないの」
どれだけ無茶で無謀なのかは本人が一番知っている。
「だから、まもるお兄ちゃんの応援を下さい」
「応援って。こんな時に何言っているんだい。応援よりも今は作戦を──」
「らしくありませんよ」
「らしく、ない?」
その言葉を聞いて、どこか少し前の自分達を重ね合わせた。
「わたしの知っているお兄ちゃんなら、こんな時は推しが元気になる応援をするって知っています。昔からそうだったように」
まもるは自分の胸を握り締める。いつものまもるなら、確かにこんな状況でも応援している。
「推しとファンの力を見せつけてやりましょう!」
喉から静止の声を出したかった。しかし、今のキュンキュンはとても煌めいており、その気持ちに少しでも応えたいとも思っている。だから言葉を飲み込んだ。
キュンキュンの言葉は励ましなんかではない。だからまもるも、その信頼に応えたい。応えてみせる。応えなくちゃいけないんだ。
「頑張れキュンキュン」
そのたった一言で、キュンキュンは今までにない程の力を与えられた。
気持ちにも余裕が出来、それは表情にも出ている。
「頑張ります!」
「気合いでどうにかなるほど甘くないわ。クラヤミンダー!」
もはや自分で手を下すまでもなくと判断してか、ディーヴァがクラヤミンダーに指示を出した。その命に従い、クラヤミンダーはキュンキュンへと突進した。
「そうだ。いつだって俺は応援してきたんだ。いつも通り、ただ推しに対して全力で向き合っていれば良いんだ!」
クラヤミンダーの突進をキュンキュンは紙一重で避けた。地面を蹴り、隙が生まれた横腹に蹴りを叩き込む。
反撃の一撃としては十分だ。
クラヤミンダーはキュンキュンを振り払い、口から綿を飛ばして動きを封じようと切り替えてきた。
息を深く吸い込み、息継ぎせず飛んで来る綿を全力で避ける。
「良いよキュンキュン! カッコいい!」
まもるとキュンキュンは、次第に笑みを浮かべ始める。それは別に余裕の表れとかではない。今この時を全力で楽しんでいる様子にも見える。
そして少しずつだが、キュンキュンの動きにキレが増している。その異変にもディーヴァは気付き、解いていた警戒心を少しだけ強めた。
「今だ!」
またもキュンキュンの一撃がクリーンヒットし、クラヤミンダーの動きが止まった。この機を逃すまいとフィニッシュまで叩き込む。
「クライマックスはわたし! 準備はOKー⁉︎」
ステージ展開して、クラヤミンダーを観客席に座らせてライブを始める。心なしか、いつもよりキラキライトの数が多く感じる。
気分も高揚として、今までより自分を出せている。歌も踊りも過去最高と言って良いくらい調子が良い。
「プリキュア! キュンキュンビート!」
水滴型のエネルギー弾の雨がクラヤミンダーを襲い、真っ暗闇な心をキラキラにして浄化させる。
核とされていた家族4人は解放され、完全にクラヤミンダーを浄化したのだった。
「キュアアイドルに続きキュアキュンキュンまで。余興としては面白いけど、歌姫としては面白くないわね」
調子を取り戻したどころか、それ以上の力を得てキュンキュンは再びステージに降り立った。
ファンの期待を一心に背負い、キュンキュンは己の全てを出し尽くしてこのライブを成功させる。
「ホント腹立たしいわね。ディーヴァ・ステージ」
笑顔を浮かべるキュンキュンに悪態を吐き、ディーヴァは再び臨戦体勢となった。
どうしても分割になってしまうー
ここまでの拝読ありがとうございました。