キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva 作:シロX
今日は常日頃子供達の為に頑張っている母の日。毎日沢山の愛情を注いで、苦労しているお母さんを祝う特別な日。
だけどそれと同じく、誰かの誕生日でもある大切な日でもある。
「えーっと、うたちゃんから渡されたお買い物リストはこれだけだよね?」
丸みのある可愛らしい字のお買い物メモに視線を落としながら、まもるは街中を歩いていた。
今日は母の日という事もあって、いつもより少し賑わいがあり、母の日キャンペーンという張り紙を沢山目にする。
「母の日も大事だけど、なにより今日はこころの誕生日である。盛大に盛り上げていかないと!」
両手に大きなスーパーの袋。中は今日の夜に使う材料等。只今まもるは絶賛お買い物中なのだ。
今日の為に念入りに計画を立ててある。成功間違いなしと言いたいが、問題が一つだけある。母の日は良いとして、こころの誕生日はあくまでサプライズ。本人に知られない様細心の注意を払っている。
もしバレたりでもしたら、折角のサプライズ計画が水の泡となる。
「朝から一度も会って無いし、早々こころと会わないよね。仮に出会したら、一体どんな確率だよーってツッコんじゃうな」
「あっ、まもるお兄ちゃーん!」
噂をすればという事なのか。こころの名前を出した途端、当の本人がまもるへと駆け寄った。
「偶然ですね」
「ホント、偶然だね。あ、あはは……」
「なんか、よそよそしくありません?」
態度があからさまだったか、こころに疑われた。自分は何も隠していないと言わんばかりに、正面に向き合ってこころの瞳をジッと見つめる。
数秒して、こころは目を伏せて折れてくれた。話題を変えるなら今がチャンスと見て、まもるはすぐさま口を開ける。
「こころはまたどうしたの? やっぱり母の日のプレゼントとか買いに行ってたの?」
「うん、そんな感じ」
上手く話の内容を差し替える事に成功した。サプライズ計画に触れさせないよう、このままこちらの話に乗せる。
「その手に持ってるはカーネーションだね」
「さっき買ったんだ」
こころは大事に持つカーネーションを見て、お母さんが喜ぶ様を想像して笑みを浮かべさせる。そして、そのカーネーションを持つ手とは逆のメッセージカードに、まもるは視線が移動した。
「書く内容は決めたの?」
「大雑把には。でもさっき、うた先輩やなな先輩にアドバイスを貰ってある程度固まってきました」
満足げな表情を見る限り、メッセージカードの心配は杞憂で終わるだろう。寧ろ、下手にお節介を焼くと邪魔になりかねない。
「それにしては家とは真反対だけど?」
書く内容が決まったのなら、家に帰るものだろうと思っていた。しかし、今居る場所や先程の会話を察するに喫茶グリッターにも立ち寄っている筈だ。いくらそこから逆算してもこころの家とは方向が伴っていない。
「メッセージカードを書く前に……ううん、書いてたら間に合わないから」
「何を?」
「お母さんのお迎え。先輩達と話して気付いたんです。小さい頃に、お母さんが迎えに来てくれて凄く嬉しかった。だから『今度はわたしが!』て」
母の日だからというのもあるが、それと同じくらいこころの優しさが含まれた理由だ。こころにはお婆ちゃんも一緒に住んでいるが、結局のところ母子家庭。
ちゃんとこころの心に愛情が注がれ、届いている。
◯
和気藹々と会話を繰り広げながら2人で歩いて、駅前に辿り着いた。後はこころのお母さんである愛が来るのを待つだけ。
今の時間は夕刻。時間的にそろそろ仕事から帰って来る筈。
「あっ、お母さんだ!」
2人並んで帰りを待っていると、いち早くこころが見つけた。愛に駆け寄ろうとした時、一旦足を止めてまもるの手を握った。
「ほら、まもるお兄ちゃんも!」
「俺は遠慮しておくよ。折角の母の日だし、水を差しちゃあるよ。それに、俺も俺でこの後用事があるんだ」
こころのサプライズ計画はまだ準備の段階。準備しているだろう、うたやななも待たせている。これ以上此処で足踏みをする訳にもいかない。それに、親子仲良く水入らずで過ごして欲しいのも事実。
部外者は黙ってこの場を去るのが一番良い。
「じゃあ、
「はい、また!」
まもるの背中を見送ったこころ。その直後、先程まもるが言った言葉に少しだけ違和感を感じた。
「『また後で』?」
「まあ、いっか!」と深く考えず、こころは愛を迎えに行くのだった。
◯
まもるは急ぎ足で歩き出した。こころと偶然会えた事で、少なからず帰宅までの時間稼ぎには成功した。まだ準備物を届けれていないのが懸念点だが、ここまで時間を稼いだのだ。何かしら代用なりしてくれていると信じている。
「流石に遅くなったな。こころよりも先回りして、それから準備もしないとけない。これ間に合うか?」
駅から最短距離で移動する他あるまい。足を止めずに、頭の中でルートを構築していると。
「──お母さん⁉︎」
こころが叫んでいた。
「えっ、何?」
慌てて振り返るとそこには、とても苦い光景が広がっていた。
「クラヤミンダー!」
ホールケーキを模したクラヤミンダーが突然街中に現れたのだ。
「こころ、誰が閉じ込められたの?」
「わたしのお母さんが……」
「何だって⁉︎」
母の日という今日に限って。それも、こころの目の前で大切な家族をクラヤミンダーに変えられてしまった。普段怒りを露わにしないこころも、これには怒り心頭。
わなわなと心の奥底から湧き上がる負の感情を抑え切れない。
「中々良いキラキラじゃねぇか。お陰でこんなに強そうなクラヤミンダーが誕生したぜ!」
愛をクラヤミンダーに閉じ込めたのはザックリー。安全な高い場所から傍観して、予想以上のクラヤミンダーを呼べた事に上機嫌でいる。
「よくもお母さんを──絶対に取り戻す!」
気迫の込もった表情で、アイドルハートブローチにプリキュアリボンをセットする。
「プリキュア! ライトアップ!」
滑らかな動きでブローチのボタンを押し、変身シークエンスへ移行する。
「キラキラ、ドレスチェンジ! YEAH!」
内側にあるキラキラを一気に解放し、それを身に纏う特製のアイドル衣装へと変化、形成まで至る。
それに伴い、髪から瞳の色、細部に至るまで色味も変化。そして、こころはもう1人の自分の姿に変身した。
「キミと踊る、ハートのリズム! 心キュンキュン、キュアキュンキュン!」
可愛く名乗りを上げ、身が引き締まるポーズでキュアキュンキュンが爆誕する。
「早くお母さんを助けなくちゃ!」
変身完了と同時にキュンキュンは地面を蹴った。それを迎え討つのはクラヤミンダー。クリームを前方に飛ばし、近付こうとするキュンキュンに対抗する。
「今日は大切な母の日なんだから!」
クリームの軌道を読み、掻い潜ったキュンキュンの最初の攻撃がヒットする。側から見れば気迫の込もった一撃に、調子は悪くないと誰もが思う。
しかし一刻も早く助け出したいという前のめりな焦燥感に駆られ、動きが散漫となっている。
「クラッ!」
少々浅かった。やはり感情が大きく表に出た攻撃では、少しばかり勝手が違う。
キュンキュンを雄叫びで弾き、距離が開いたところにクリームの雨を降らせる。
「攻めているようで攻められている。一気に流れを変えるにはやっぱり」
まもるが動いた。1人で立ち向かうのはとても素晴らしいが、冷静さを欠いた今のキュンキュンは危険だ。
「ディーヴァ・ステージ!」
まもるのキラキラがキュンキュンとリンクしようとした時、火花でも散らすかの如く弾かれた。
「何っ⁉︎」
「何だ何だ? よく分かんないが、どうやらザックリ失敗に終わったみたいだな」
こんな状態を目にするのは初めて。別段まもる自身が調子を崩している訳でもない。ちゃんとキュンキュンの耳に届く距離まで行き届いている。
「……と、そう思っているのは俺だけ?」
まさかと思い、まもるはもう一度キュンキュンを呼び掛ける。
「キュンキュン!」
返事は返って来ず。目の前のクラヤミンダーにしか、目に入っておらず他の情報は意に介していない。恐らくそれが原因だ。
「やっぱり」
ディーヴァ・ステージはお互いの気持ちが噛み合っていること。そして、必ずまもるの声が届いている事が最低条件。しかし今のキュンキュンは、まもるの声が届かない程感情に身を任せている。
ディーヴァ・ステージが不発に終わるのは偶然とかの類ではなく必然。
「こんな時だからこそ協力しなければいけないのに。キュンキュン!」
尚もキュンキュンの耳には届かず。必死の連撃でクラヤミンダーを食らいついて行っているが、どうしてもあと一歩が足りない。
いつものなら、アイドルとウインクの3人でそれぞれ得意なもので補っているが。
「お母さんを助け……」
猛攻撃を仕掛けていた筈のキュンキュンが膝をついた。無理もない。体力の続く限り全力で攻め続けていたのだから。時間が経てば先にガス欠になるのはキュンキュン。
「キュンキュン手を!」
側まで駆け寄っていたまもるが手を差し伸べた。心身共に疲労困憊のキュンキュンは、藁にもすがる思いでその手を握った。
その一瞬を突かれた。
「そこだ、やれ!」
「クラヤミンッダー!」
特大のクリームを撃ち出し、まもるごと纏めて始末しようと仕掛けてきた。
今からでは避けるなんて到底間に合わない。迫り来る攻撃を前に2人は。
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