キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva   作:シロX

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前回のサブタイを前編扱いとして変更しました。

※内容に変更はありません。


第55話 母の日 中編

 まもるとキュンキュンは危機的状況に陥っていた。黒いクリームが、2人を覆う様にして迫っている。

 逃げようにもキュンキュンはその場で座り込んでおり、まもるもキュンキュンの手を取っている最中。2人共、今すぐに逃げられる体勢ではない。

 

「大勝利だぜ!」

 

 ザックリーが勝利を確信した時、2人の前に一つの人影が颯爽と現れた。

 

「ウインクバリア!」

 

 直前でバリアが展開され、クリームは弾かれて周囲に飛び散る。

 

「キュンキュン、紫雨君大丈夫?」

 

 人影はキュアウインクだった。間一髪のところで、2人のピンチを凌ぎ切った。今度という今度はもうダメかと思われた。

 喉の奥に詰まっていた息を大きく吐き出して、いつの間にか硬直していた筋肉を緩ませる。

 

「助かったよ。ありがとうウインク」

 

「わたしだけじゃないよ」

 

 ウインクが上へと視線を上げると、遅れてプリルンとメロロンを抱えながらアイドルも空からの登場。

 

「遅れてごめん!」

 

「プリー!」

 

 アイドル達とも合流でき、人数共に有利な状況となったが、それでも尚キュンキュンの表情は曇ったまま。そんな彼女を心配して、プリルンは寄り添った。

 

「元気無いプリ」

 

「クラヤミンダーの中に、わたしのお母さんが閉じ込められたんです……」

 

「「えっ⁉︎」」

 

 アイドルとウインクもこれには想像つかなかったらしく、驚きを隠せなかった。それも折角の母の日のタイミングでだ。2人の拳にも力がより入る。

 

「早く助けないと!」

 

「うん!」

 

「ザックリ人数増やしたところで同じだ!」

 

 アイドルとウインクは真っ直ぐクラヤミンダーへ走り出した。接近されぬよう、クラヤミンダーは苺のミサイルを2発撃ち込んだ。

 

 2人は左右に散って回避。それを見て今度はクリームを広範囲に振り撒いた。アイドルは後方へ、ウインクはその場でバリアで防いだ。

 すかさず苺のミサイルで追い討ち。

 

「「ッ!」」

 

 アイドルはジャンプで回避。ウインクは継続でバリアで防ぐものの、連続して行われる攻撃に耐え切れず一時その場から飛び退いた。

 

「攻撃の波が激しい!」

 

「これじゃあ近づけないよ!」

 

 相手の動きに合わせて、次々と迫り来る波状攻撃の前に防戦一方を強いられる。目の前の嵐を乗り越えない限り、こころのお母さんである愛を助け出せない。それどころか、手すら届く事は叶わない。

 

 まもるも後方から見守っているが、未だ打開策を見出せていない。単純な火力と広範囲による暴力に、為すすべがない。

 

「わたし突撃します!」

 

「危ないよ!」

 

「それでも行きます!」

 

 痺れを切らしたキュンキュンが、玉砕覚悟で正面から突っ込んで行く選択をした。果たしてそれは正しい判断なのか。どこか引っ掛かる部分があり、まもるは正面に立ってキュンキュンを引き止める。

 

「そのせいでさっき大変な目に遭ったんだよ。あの時ウインクが来てなかったり、到着が遅れていたら。もしもの場合は考えないの?」

 

「それは……」

 

「こんな状態のキュンキュンを行かせる事は俺には出来ない」

 

 事実これは正論だ。冷静さを欠いた戦い方では、少し前と同じ展開になるだけ。「それならばいっそ」と考えもある。

 

「だからひとつだけ、守って欲しい約束がある」

 

「約束?」

 

「──俺達の声を聞くんだ」

 

「声?」

 

「1人じゃない。君には俺達がいるんだから頼って」

 

 瞳から溢れ頬を伝う雫。細い腕で拭い、気持ちを切り替えて両頬を思いっきり叩く。今も尚渦巻いている感情を少しずつ自分の中で制御をし、心を落ち着かせる。

 

「今日は母の日、お母さんになんて伝えたい?」

 

 地面を蹴り、キュンキュンはまもるを横切った。その時、キュンキュンはまもるにある事を伝えた。

 それを聞いて、まもるはくすりと笑う。

 

「まもる君、止めなくて良いの⁉︎」

 

「キュンキュンならもう大丈夫だよ。俺達に出来る事は、キュンキュンの為に道を作る事だ。2人共やろう!」

 

 何を根拠に大丈夫なのか定かではない。けれど彼の言葉に嘘偽りはない。彼を信じて、アイドルとウインクもキュンキュンの後を追い掛ける。

 

「どうするつもりか知らないが、何度来たって返り討ちにしてやるぜ! クラヤミンダー!」

 

「さあて、それはどうかな?」

 

 苺のミサイルが、4発正面からキュンキュンを覆うようにして放たれた。

 普通ならたじろいで失速してしまうところを、逆により地面に踏み締めて走る速度を上げる。

 

 そしてキュンキュンの両脇から、アイドルとウインクが追い抜いて跳躍した。

 

「アイドルグータッチ!」

 

「ウインクバリア!」

 

 それぞれ苺のミサイルを2発を空中で叩き落とした。

 

「近付いちゃえば!」

 

 小さな隙間を手繰り寄せ、短い脚を精一杯伸ばして蹴りをかました。

 くの字に曲がるクラヤミンダー。ようやく届いた一撃に全身全霊を懸けて、キュンキュンは力の限り押し込まんとする。

 

「今日は絶対お母さんに『いつもありがとう』って伝えるんだから!」

 

「クラッ⁉︎」

 

 踏ん張り切れず、クラヤミンダーは背中から転倒して押し倒した。

 キュンキュンはアイドルハートブローチに触れて、これまで共に過ごしてきた母との時間を昨日の事のように思い出す。不器用ながらもお弁当を作ってくれた。仕事から帰った後でも一緒に勉強に付き合ってくれたり、自分が寝ている時も。

 

「キュンキュンレーザー!」

 

「クラヤミンダー‼︎」

 

 両者中央でレーザーとクリームの押し付け合いが始まる。勝負は互角、かと思われたが僅かにキュンキュンが押し負けている。このまま何も講じなければやがて呑み込まれる。

 

「お母さん……」

 

 伝えたい事が沢山あり過ぎて、1番心キュンキュンした思い出。それは何なのかと自問自答する。

 

 いつだって、どんな時だってずっと側に居てくれた。父を失い、本当に悲しみに暮れたあの日もずっと隣で寄り添ってくれた。今日は母の日。今日は絶対お母さんに「いつもありがとう」って伝える為に。

 

「これで決めるんだ。ディーヴァ・ステージ!」

 

 まもるのキラキラがキュンキュンの全身を包み込み、キュンキュンレーザーの出力を高め上げる。最上級の輝きを放ちながら、大切なお母さんの為に想いの丈をありったけ叫ぶ。

 

「これがわたしの全部! お母さん──大好きだよォォ‼︎」

 

 キュンキュンの全力で、クラヤミンダーの攻撃を押し返した。キュンキュンレーザーは技を貫通し、そのまま雨嵐とクラヤミンダーを襲う。

 

「な、なんてやつだ!」

 

「3人共今だよ!」

 

 これが最初にして最後の好機。これを逃せば次はない。まもるの合図のもとで、3人は横並びでアイドルハートインカムを装着した。

 

「「「ウー、レッツゴー!」」」

 

 Trio Dreamsのイントロに合わせピンク、青、紫色のスポットライトが点滅しながらアイドルプリキュアを照らし出す。

 

「「「ハートを上げてくよ!」」」

 

 壮大に響き渡る音楽が彼女達の絆を表し、キラキラがステージを満開にさせる。アイドルは精一杯の歌声を、ウインクは最高のファンサを。キュンキュンは培ってきたダンスを。

 それぞれが出せる最高のパフォーマンスを全力で披露して、よりステージを盛り上がらせる。

 

「「「プリキュア! ハイエモーション!」」」

 

 極限にまで高まったキラキラ。そして、こころのお母さんである愛を絶対に助けるという意志が込められた浄化技を3人で放つ。

 

「キラッキラッター」

 

 プリキュア・ハイエモーションが炸裂したクラヤミンダーは、跡形も無く浄化され、愛は元の姿を取り戻した。

 悲惨な姿になっていた街並みも修復され、完全勝利で幕を閉じた。

 

「3人の連携、上手かったよ」

 

「いえ、4人です。まもるお兄ちゃんありがとう!」

 

 キュンキュンにお礼を言われ、少しばかり照れ臭く頬を染めて視線を外してしまった。その様子にアイドルとウインクは温かい目で見守って、微笑んでいた。

 

「まだまだ母の日は終わってないよ。これからなんだから、ね?」

 

 アイドルがそう促してキュンキュンはハッとする。

 

「そうですね。ではわたしはこれで」

 

 丁寧に頭を下げて、キュンキュンは猛ダッシュで街中を駆けて行く。ある程度見えなくなった辺りで、アイドルとウインクは両側からまもるの手を掴んだ。

 

「キュンキュンよりも先回りしなくちゃ!」

 

「紫雨君が遅かったから、まだ準備が終わってなくて。急ごう」

 

 まもるは2人からそう告げられて肩を震わせる。そして、この後自分がどうなってしまうのか想像出来てしまい、次第に顔色が悪くなった。




主人公視点から別の視点に切り替える為、1話分引き伸ばしました。流石に予定外でした。

ここまでの拝読ありがとうございました。
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