キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva   作:シロX

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第56話 母の日 後編

 クラヤミンダーを浄化してから、人気の無い場所で変身を解いてようやく人前を歩ける様になったこころ。あれから時間はかなり進んでおり、陽はもう落ちてしまっている。

 

 彼女は慌てて家へと駆け込んだ。

 

「ただいまー……?」

 

 勢い良く玄関の扉を開いたが、明かりが一つも点いていない。鍵の施錠すら無かった事から、誰かが家に居ると思われるが。

 

「お母さん?」

 

 呼び掛けても応答が無い。不安な気持ちを抱えたまま、リビングの戸を開けた。

 すると、一気に明かりが点き、クラッカーの音が部屋中に響き渡った。ヒラヒラと紙吹雪が舞い落ちるその景色に驚きを通り越して、目を丸くして立ち尽くす。

 

「「「こころ、お誕生日おめでとう!」」」

 

 祝ってくれたのは紫雨家は勿論まもる、うた、ななの総出であった。プリルンとメロロンもぬいぐるみのフリだが、ちゃんとテーブルの上に座って出迎えもしてくれた。

 

「今日、わたしのお誕生日? 忘れてた……って、まもるお兄ちゃんはるともかくうた先輩、なな先輩何で此処に⁉︎」

 

「いやー、こころのお母さんがウチにオードブルの注文が入ってさー」

 

「こころちゃんのお誕生日も今日って紫雨君から聞いたから」

 

「なら、皆でサプライズパーティーをやろうっていう話になったの」

 

 思えば今日1日挙動不審だったのを振り返る。まもるも何かしら家へと帰さないよう誘導している素振りも所々あったりと、思い返せば心当たりが沢山ある。

 

「と、いう訳で!」

 

「「「はい、プレゼント!」」」

 

 まもる、うた、ななの3人は綺麗に包装された紫の箱をこころに手渡した。

 

「開けて良いですか?」

 

「もちろん!」

 

 瞳をキラキラさせながら結ばれているリボンを紐解き、その中身が露わになる。両手で優しく手にしてそれを眺める。

 

 プリティホリックで商品のひとつ「プリティアップフレグランス」。こころのパーソナルカラーに合わせた紫の瓶。

 

 それに合わせて、うたとななも同じ商品でそれぞれのカラーを取り出した。

 

「これでお揃いだよ!」

 

「ありがとうございます!」

 

 お爺さんやお婆さんからもプレゼントを受け取り、そして最後にプレゼントをあげるのは。

 

「こころ、誕生日おめでとう!」

 

「ありがとうお母さん!」

 

 愛から贈られたのは、アイドルプリキュアのCDだった。サンプル品として既にうた達も手にしている。けれど、そういうのではない。

 

 ちゃんと愛がこころの事をいつも見ている証。愛娘の事を思ってくれたこのCDには特別な想いが込められている。そう、これは特別な贈り物。

 

「わたし、今日母の日だからプレゼントを!」

 

 自分の誕生日を祝われた後に本命である母の日のプレゼントをする。緊張して震える手で、一輪のカーネーションを贈った。

 愛も喜んで笑顔でいてくれている。ただ、こころには心残りがある。

 

「ホントは、メッセージカードとかお迎えとか色々考えてたんだけど出来なくて……」

 

 メッセージカードもお迎えも、クラヤミンダーのせいで全てが台無しに。仕方ないと言って切り替えるのは簡単だが、やはり母の日だけあってちゃんと想いに応えれなかった。

 

「私の為に、色々考えてくれただけで嬉しいよ。それに──」

 

 愛の両手はこころの背中に回され、そのまま優しく抱き寄せた。

 

「こうやって、私の側にこころが居てくれるだけで幸せよ。私の──私とお父さんの宝物だから」

 

 心が温かい。このぬくもりをこころは知っている。記憶にあまり覚えがないけれど、心がそれを知っている。

 

「いつでもどこでも、お父さんも、私達の事を見守ってくれているからね」

 

「お母さん、ずっと一緒だよ。いつもありがとう」

 

 たとえもう二度と逢えなくても、離れていても、気持ちは繋がっている。こころも愛も。そしてこころのお父さんとも。

 

「こころの気持ち、言葉にしなくても届いて良かったね」

 

「はい!」

 

「ところでまもる君。まもる君だけこころのプレゼントがまだだけど、タイミング的に大丈夫?」

 

「後でも良いと思ってたけど、かなりハードルが上がっちゃったよ……」

 

「でも、決めてきたんだよね?」

 

 うたに乗っかって、ななからも言葉の矢が刺さる。

 

「俺からのプレゼントって言っても、今日この日を写真として残したいなって」

 

「おー、いいじゃん! 記念撮影だね! こころ!」

 

「あっ、はい!」

 

 うたはこころの手を引っ張り、全員を集めさせてカメラ片手に母の日とこころの誕生日の今日を1枚の写真に収めるのだった。

 

 

 ◯

 

 

 誕生日のケーキを食べていたこころはふと、リビングの飾りを見てまもる達に尋ねた。

 

「そういえば3人はどうやってわたしより先回りしたんですか?」

 

「ふぇ? しゃきまふぁあり(先回り)?」

 

「うたちゃん、せめてお口の中をなんとかしてから喋ってね」

 

 うたは口の中にある食べ物を喉に通すと、まもるが汚れた口周りを丁寧に拭いてあげた。

 

「その……クラヤミンダーの後の話です。わたし、適当な所から走って家に帰ったんですよ。なのにこんな素晴らしい飾り付け、どうやって間に合わせたのか気になっちゃいまして」

 

「それなら、そのまま家に直行したよ。わたしとななちゃんでまもる君運んで」

 

「あー納得です。それで、何でまもるお兄ちゃんは沈んでいるんですか?」

 

 運んだという話題を出した途端、まもるは口元を抑えて青ざめていた。

 

「それが、2人で一緒に運んでいたのだけど、紫雨君が『2人だと走り難いでしょう?』って言ってたから、そのぉー……」

 

「わたし達いっぺんに手を離しちゃって!」

 

「こころ聞いてくれよ! それも屋根の上なんだよ? 信じられる⁉︎」

 

「プリルンは迫力があって楽しかったプリ!」

 

「今回ばかりはメロロンも同情するメロ」

 

「2人共、もっとこう、手心というものをですねー!」

 

 騒々しい母の日はまだまだ終わりそうにない。




最後のワンシーン書いてて思ったんですけど、いつか「誰が主人公を上手く抱っこ出来るか選手権!」的な話をやりたいなと思った。まだフルメンバーではないので先の話にはなりますが。

次回は箸休めの単発です。

ここまでの拝読ありがとうございました。
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