キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva 作:シロX
うたの部屋でメロロンは、机の上で腕を組んで何か考え込んでいた。よく見ると、足下には沢山の海の生き物に関する本が散乱と開かれていた。
1ページずつ丁寧に捲り、中身を目を通す度に眉を険しくしている。
「咲良うたに対抗する為に何が必要メロ?」
今メロロンは、うたがいつもプリルンの為にと作っているタコさんウインナーに対抗出来るウインナーを考えていた。タコという事もあって、海の生き物からなんらかのヒントを得ている最中なのだが、どうやら相当頭を抱えている様子。
「あ、メロロン此処に居たプリ。何してるプリ?」
いつもなら側に居るメロロンが居ない事に心配してか、プリルンが探しに来てくれた。わざわざ自分の為にと知ったメロロンは、喜びに満ち溢れていた。
「ねえたま! メロロンの為に。嗚呼、メロロンはなんて幸せ者メロ」
「それで何してるプリ?」
「それは……そうメロ! ねえたまねえたま! ねえたまは海の生き物の中で何が好きメロ?」
「プリ? 海の生き物プリ?」
メロロンは1冊の本を試しに手渡した。プリルンは適当にページを捲っては「プリ」と呟く。そして、とある生き物に手が止まった。
「プリ! タコさんウインナープリ!」
プリルンが興奮している生き物は、自身が口にもしているタコ。
その反応を示しているプリルンにメロロンは、何とも言えない難しい表情をしていた。喜んでいる様子に嬉しさ反面というやつだ。
「ね、ねえたま。タコさん以外はどうメロ? メロ、こういうのはどうメロ?」
「タコさんじゃないプリ」
「メロ……」
こうなる事は知っていたが、ここまでとなると反応もし辛い。ウインナーにおいてタコが絶対のプリルン。そこを否定せず、上手く他に誘導させたいのがメロロン。
本人に聞けば手っ取り早いと思っていたが、予想通り難航となった。
「メロ。決めたメロ」
徐にメロロンは立ち上がって一大決心した。
「ねえたま、メロロンは少し旅に出るメロ」
「プリ? メロロン独りじゃ心配プリ。プリルンも一緒について行くプリ!」
「ね、ねえたま! とても嬉しいメロ。でも、今回だけはねえたまはお留守番していて欲しいメロ!」
メロロン自身もこれには辛い決断だった。何せ、わざわざプリルンが自分からついて来てくれると言っていたのを、自ら断ったのだから。
「分かったプリ。メロロンがそう言うなら、プリルンはお留守番してるプリ!」
素直なプリルンは、それ以上は言わずメロロンの気持ちを汲み取ってくれた。
「絶対絶対、あの咲良うたよりも美味しいウインナーを食べさせるメロー!」
こうして、タコさんウインナー以上のウインナーを作る為にメロロンの長い1日が始まるのだった。
◯
メロロンが最初に訪れたのはこころがいつもダンスの練習をしている場所。この場所ならこころと会える可能性が高いとプリルンから教えられて来たばかり。
案の定、こころは独りで大きなガラスの前でダンスの練習に没頭していた。
ふわふわと近付くと、どうやらガラスの反射でこころもメロロンの存在に気付き一度練習を止めた。
「あれ、メロロンどうしたの? プリルンは此処には居ないけど」
「少し不服だけど、貴女にお願いがあるメロ」
「人にお願いする様な言い方ではないけど。まあ、なんでも聞いて」
「ズバリ、タコさんウインナーを超えるウインナーってあるメロ?」
神妙な面持ちでわざわざ訪ねて来たと思ったら、意外と中身は可愛いものだった。こころはそう印象に残った。
「タコさんウインナーを超えるウインナー? 嗚呼、なるほどそういう事ですか」
察しの良いこころは、メロロンの考えている事の粗方は理解した。恐らく、うたやプリルン関係に違いないと。でなければ、わざわざタコさんウインナーなんて言葉は出てこない。
「で、タコさんに対抗出来るウインナーあるメロ?」
「そうですね。タコと対となる存在、イカさんウインナーはどうでしょう?」
「残念ながら、それはもう試したメロ」
「それで結果は?」
試したというのであればその結果を知りたい。プリルンの立場になって一応想像をしてみた。
無難にウインナーが美味しい事に喜ぶとか、単純にイカさんウインナーという心境地に心キュンキュンするのか。
「タコさんウインナーだと勘違いして食べたメロ」
「あ゙ーそっちかー!」
もっと簡単な事だった。よくよく考えれば、タコとイカなんて足の本数くらい大きな差異はない。それをウインナーで再現するのだから勘違いしても致し方ない。
「うーん、でしたらなな先輩を頼るのはどうでしょうか?」
「メロ?」
「なな先輩なら知識豊富そうですし、何よりわたしなんより発想が凄いんだよ。偶に別の意味でベクトルが凄くなるけど……」
自分では気付けない新しい扉をなななら開けてくれるに違いない。そうすれば、メロロンの理想とするウインナーが見つかる。そう信じてあとの事を先輩へと託すのだった。
◯
こころの言葉を信じて、メロロンは蒼風家のななの部屋に訪れた。
メロロンはななに会って、こころに話したように同じ説明をした。すると、ななは瞳を輝かせて何故だが興奮する。
「プリルンの為に頑張るなんてメロロン可愛いー!」
「ねえたまの為ならなんだってやるメロ。それよりも貴女の意見を聞きたいメロ」
ななは、メロロンが片手に持っている海の生き物図鑑を横目にある提案を思い浮かばせた。
「メロロン、タコさんウインナーを超えるウインナーなら見た目とかに拘りはない?」
「メロ……特にないメロ」
「ふふ、だったらなにも海の生き物じゃなくても良いかなってわたしは思うの」
わざわざ視野を狭めるより、もっと世界を広げて新しい発見を数多く見つけた方が有意義。
タコに対抗出来るものとずっと偏った考えをしていたメロロンからして、ななのその発想は確かに目を見張るものだった。
「メロ。敢えてその路線も良いかもメロ!」
「そうね例えば、サヘラントロプスチャデンシスなんてどうかな?」
「そ、想像の斜め上メロ……」
メロロンはてっきり、犬や猫を想像していたのだが。ななの口から出たのは、遥か昔の生き物の名前。
「そんな難しいのウインナーで再現出来ないメロ!」
「いけると思ったんだけどね」
「出来たら職人技メロ」
ななならと期待していたが、結果としてはこころと同じ道を辿った。いや、答えた内容としてはななの方が酷い。メロロンは肩を落とし立ち去ろうとする。
「ごめんねメロロン。わたしじゃ力になれなくて」
「別に期待してた訳じゃないメロ」
「そうだ! こういうのは、うたちゃんに相談してみるのはどうかな?」
背を向けていたメロロンが振り返る。今までにない程の嫌な表情を見せており、もはや溜め息すら吐こうとは思わない。
「咲良うたからねえたまを取り返すのに、何でその本人から作り方を教えてもらわないといけないメロ」
「ダメ?」
「当然メロ」
「うたちゃんもお店のお手伝いしているから、料理は出来ると思うんだけど。あっ」
他に料理出来る人がいない考えると、1人だけ心当たりがある人物を頭の中で浮かび上がった。
◯
メロロンは心底嫌そうな表情でまもると対面していた。ななの紹介で、メロロンはまもるの家へと赴く事に。
器用貧乏なまもるなら、メロロンの希望に沿えられるウインナーを作れるとななは自信を持って彼の名前をあげた。
とはいえ、メロロンはまもるに対して相当苦手意識を持っている。何故かと言うと、全てまもるに原因があるからである。
「メロロンどうしたのー? 珍しいね、君から俺に会いに来るなんて。何かあった?」
(ち、近いメロ……)
メロロンがまもるの部屋に入って早々捕まえては、抱き抱えられている。
聞いた話では、まもるは小動物が好きとうた達が言っていた。だが、それなら何故プリルンにはこのような行為に至らないのか。
メロロンからしたら、それはそれでありがたい事なのだが。
「やっぱ帰るメロ」
「本当に何があったの?」
訪ねてきたと思ったら即帰宅宣言に、流石のまもるも動揺を隠せずにいる。
そんな彼の気持ちなど微塵も興味無く、窓から帰ろうとした時だった。なにやら良い香りのする匂いが鼻をくすぐらせた。
「何作ってたメロ?」
「うん、丁度さっきまでクッキーをね。出来立て食べる?」
机の上にまもるは視線を向ける。皿の上に山積みとなっているクッキー。それを見たメロロンは目を奪われたが、すぐさまそっぽ向いて気を紛らわす。
「別に要らないメロ」
言い切りはしたが、ほのかに香るクッキーのせいで嗅覚を刺激され、腹の虫を鳴らしてしまった。
これだけ出回って間食すらしなかったら、お腹が空いてしまうのも無理はない。
「……やっぱり食べるメロ」
「どうぞ」
少し癪だが、まもるの言葉に甘える事を選んだ。メロロンは皿からクッキー1枚を取り、小さな口で一口食した。絶妙な塩とバターの比率。焼き立てでしか味わえない、まだ少し柔らかみのある食感。
小腹を空かせた今のメロロンを満足させるには十分過ぎる出来栄え。
無意識にもひとつ、ふたつと手を伸ばして口の中へと放り込んでいた。
「ご馳走様メロ。ま、中々良い線はいってるメロ」
「ありがとう。それで話を戻すけど、メロロンはどうして此処へ?」
「しょうがないメロ。クッキーをご馳走してもらったお礼に教えてあげるメロ」
「いつの間にか立場が逆転してる。ま、いっか」
一度咳払いをしてから、ななやこころに話した内容をそのまままもるに伝える。
「咲良うたに対抗する為、タコさんウインナーを超えるウインナーを作りたいメロ。色々聞き回った結果、貴方ならと太鼓判押されたメロ」
聞いただけではない。ちゃんとその料理の腕も確かだ。お菓子の初歩とも言えるクッキーも難なくこなしている。どこか、ななの言葉にイマイチ信用性が無かったがこれなら任せられるとメロロンは素直に思った。
「うたちゃんの作るウインナーに秘密とか無い筈なんだけど。強いて言うなら」
「教えて欲しいメロ!」
「『愛情』!」
「愛情無しにねえたまのお料理は作れないメロ」
プリルンへの愛情は常に全力投球。そのようなスパイスは常に混ぜ込んでいる。メロロンにとっては当たり前の事に過ぎない。
「違うメロ。タコさんを上回るデザインを考えて欲しいメロ!」
「そうだな。赤くて、それでいて簡単に作れるとしたら……あっ、カニなんてどうかな?」
「カニメロ?」
メロロンは一緒に持って来ていた生き物図鑑を開いた。カニはタコと同じ赤色が似合い、再現するのにもそこまで難易度高くないはず。
「カニさんウインナー、悪くないメロ」
「だろ? 善は急げ、作ってみよう!」
「貴方は咲良うたの味方じゃないのメロ?」
協力してくれるのは喜ばしい事だが、正直そこまで付き合ってくれるのは思いも寄らなかった。未だ付き合いが浅い第三者であるメロロンでも、まもるとうたとの関係性はそれなりに近いものと知っている。
だからこそ、疑念を抱くのだ。敵視している自分とこうやって何事もなく接しているまもるに。
「それとこれとはまた別だよ。それに頑張っている子を応援するのは、俺結構好きなんだよ」
「変な人メロ。お人好しが過ぎるメロ」
理由はどうだっていい。手伝ってくれるというのなら、とことん付き合わせてやるつもり。
「で、やるかい?」
「ちょっとだけならメロ」
こうしてメロロンは、まもると一緒にカニさんウインナーを作り始めるのだった。
簡単に終わらせるつもりが少しばかり長くなってしまった。
次回からは本編にまた話を戻して行こうと思います。プリメロのデート回でしたね。
ここまでの拝読ありがとうございました。