キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva 作:シロX
春の風が吹く今日この頃。まもるは小さな手提げを片手に咲良家に向かっていた。しかも、かなり上機嫌にスキップもして。
先日メロロンと一緒にカニさんウインナーを作っていたまもる。しかし、残念ながら1日では納得のいくものは出来なかった。あれから試行錯誤の末、ようやく完成させた故上機嫌ということだ。
「これでメロロンからの好感度が上がるのは間違いない。早く喜ぶところ見たいなー」
喫茶グリッターに着き、ドアノブに手を掛けたところで中から騒がしい声を耳にした。
一体何があったのだろうかと思いながら中へ入ると、かなり不機嫌なメロロンが去って行くのを目にした。
「あっ、まもる君いらっしゃい!」
グリッターの2階から顔を覗かせてうたが声を掛けてくれた。なのだが、元気な挨拶とは裏腹にその表情は少しだけ沈んでいた。
まもるは2階へ足を運んで事情を訊く事にした。
「あっ、蒼風さんにこころも。何でこんなに空気が重たいの?」
「そ、それはね……」
「まあ、全面的にうた先輩が悪いと言いますか」
「えぇ⁉︎ わたしが悪いの⁉︎」
「一度うたちゃんの事は置いといて、何があったのか教えて?」
「酷い!」
今だけは彼女の事は放っておこう。それよりも今はメロロンの事が気掛かりだ。
「うた先輩がメロロンを怒らせたんですよ」
「起因となったのは?」
「配慮に欠ける言葉、ですね」
「割とド直球だね」
メロロンが不機嫌となった理由は分かった。うたの事を目の敵にしているとはいえ、流石にずっとこのままだというのはいただけない。
それにまもるは、メロロンに用事があってグリッターを訪れたのだ。
拗ねて、いつまででも引き篭もられても困る。
「メロロンはなんとかしてみるよ。任せて」
手提げを持ち、まもるはメロロンが向かったと思われるうたの部屋に足を運ばせた。
◯
うたの部屋に赴くと、メロロンが枕に突っ伏して埋もれていた。
部屋の明かりも付けず、只々泣き崩れていた。
「隣、座るよ」
「メロ……まもる?」
まもるは手提げからタッパーを取り出した。その中には沢山のカニさんウインナーが詰め込まれていた。蓋を開け、フォークで刺してメロロンにひとつ差し出した。
「味付けも加えたやつ。食べる?」
「今はそんな気分じゃないメロムッ⁉︎」
食べないときっぱり断ったメロロンだが、まもるは口を開けたところに有無を言わさず無理矢理突っ込んだ。
落ち込んでいる時こそ、美味しいものを食べて気持ちを切り替える。そうすればモヤモヤとした心も晴れるというものだ。
「美味しいだろ?」
無邪気に笑うまもるにメロロンは顔を背けた。
「美味しいメロ。でも」
「でも?」
「まもるよりねえたまの方が良かったメロ」
「それは残念でなにより」
なんて言っているまもるだが、別に残念がっている様子は微塵も感じさせていない。平常運転な彼に、メロロンはまた不機嫌となる。
「意地悪してるのに、何でそんなに笑っていられるメロ?」
「えっ、意地悪してたの? 気付かなかったよ」
「それ本気で言ってるメロ?」
「そうだけど? はむっ」
この男は鈍感さ故に相手の悪意に気付かない。メロロンの中で、まもるはこれが普通なのだろう。
「……少し心配メロ」
だからこそ、相手の気持ちに気付きにくいというのはとても危険だ。場合によっては自分も相手も傷付けてしまう恐れがある。
「言葉の棘には敏感になった方がいいメロ」
「そうだね、アドバイスありがと。メロロンは優しいね」
「いくらメロロンでも、ここまでしてくれる人に存外な扱いはしないメロ」
「うたちゃんは?」
「ねえたま泥棒には容赦しないメロ」
「ブレないねー」
メロロンが口を開けている。カニさんウインナーのおかわりを要求している合図だ。仕草に釣られるまま、まもるはまたカニさんウインナーを放り込む。
「で、本題はメロ?」
「あっ、すっかり忘れてた!」
「何しに来たのメロ?」
「ごほん。メロロンは一体どうして落ち込んでいるんだ?」
開けていた口が閉じた。メロロンはまもるに背を向けて、ひたすらカニさんウインナーを頬張って無言を貫いている。
「話したくなかったり、話しにくいとかなら別に無理しなくてもいいよ。只、相談相手は必要だと俺は思うよ。何かあった時、寄り添える相手がいつか絶対必要になるから」
「……そこまで重たい話じゃないメロ。ねえたまに少しでもメロロンの事を見て欲しくてメロ」
プリルンの事を頭に思い浮かべる。タコさんウインナーやうたばかりに目移りしているのが、手に取るように分かる。
メロロンは自分に対して、好意的な視線を送ってこない事に不満を帯びつつあるらしい。それがこうして拗ねている理由。
その気持ちは分からない事もない。精一杯、沢山アプローチをしているにも関わらず、好きな人に限って中々振り向いてくれやしない。
他人の感情をコントロールするのはどう足掻いたって不可能。正直、まもるが力になれる事は少ない。
「プリルンって良くも悪くもマイペースだからな。悪気があってやっている訳じゃないから、難儀なものだね」
「どうしたら良いのか分からなくなってきたメロ……」
プリルンの事なら、いつも自信満々なメロロンも今回ばかりはかなり堪えている。
「それは頼ってくれているって解釈で良いのかな?」
「どこかの誰かさんが、相談相手になってくれるって言ったからメロ。それとも、さっきまでの言葉は全部嘘だったのメロ?」
「そんな事ないさ。俺で良ければ全力で協力するよ。勿論、皆同じ気持ちだよ」
「それはどうかなメロ」
「疑り深いね。ま、メロロンと仲良くしたいって気持ちは皆あるんだから。でしょ、皆?」
まもるが視線を別方向へ向けると、そこには様子を見に来ていたうた、なな、こころが顔を覗かせていた。
「メーロロン!」
一番にメロロンの側へと向かって来たのはプリルン。
「お揃いでデート行くプリ!」
「お揃い」と言ってプリルンが手にして、メロロンに渡したのはとあるアイドル衣装。勿論、プリルンも今それを着用している。
「可愛いメロ。どうしたのメロ?」
「うた達に作って貰ったプリ」
「メロ……」
うた達が作ってくれた衣装というだけで、正直抵抗感はある。しかし、大好きなプリルンとお揃いという事も相まって渋々着用してみる事にした。
「これ何の衣装メロ?」
「キュアアイドルとお揃いプリ」
「……やっぱり脱ぐメロ」
「「「えぇ⁉︎ 脱いじゃうの⁉︎」」」
女性陣揃って「可愛い」と大好評なのだが、キュアアイドルというだけで一気に萎える。衣装に手を掛けようとした時だ。
「プリ……」
プリルンからのため息。それを目の当たりにしたメロロンはこのまま着るか脱ぐかで葛藤する。頭を抱えて数秒で、またため息を吐く。どうやら、メロロンの方が先に根負けしたみたいだ。
「しょうがないメロ。ヘアアレンジならやらせてもいいのメロ」
「任せろ!」
うたが自信を持ってメロロンの髪を手を掛ける。笑顔のユニゾンを歌いながら、手慣れた手つきでメロロンの髪型が瞬く間に変わった。
ヘアアレンジしただけでメロロンの魅力は、普段の倍以上となった。いつの間にか、鏡に映る自分の姿を見て笑みを溢している。
「デートの行き先だけど、ハートの木はどうかな? すぐ近くに、デートスポットがあったよね」
「あ、それ俺も知ってる。確か、恋人や友達同士で一番大切なものを教え合って、ハートのロックで永遠の愛を誓うだったよな」
「今すぐ行くメロ! ねえたま、メロロン達も永遠の愛を誓うメロ!」
「プリ?」
プリルンは何のことかあまり分かっていない様子だが、その辺りはいつもの事なのでメロロンがフォローするしか方法がないようだ。なんだかんだで、プリルンもデートには乗り気な様子に、まもる達は2人を微笑ましく見守るのだった。
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